家族葬の費用相場はいくら?一般葬との比較や気になる疑問について
公開日 : 2020/9/19
更新日 : 2020/9/19
近年、家族葬は一般的なお葬式の形態になりつつあります。低予算な印象がありますが、実際の相場は一般葬と比較してどのくらいなのでしょうか。また、家族葬をあげる上での注意点は何かあるのでしょうか。本記事では家族葬の費用相場を中心に、注意点や安くする方法を紹介します。
公開日 : 2020/9/19
更新日 : 2020/9/19
目次
家族葬とはそもそも何か
家族葬とは本来、参列者を家族やごく少数の友人のみに抑えた葬儀のことで、義理の関係にあった方や同僚が参列する一般葬と同じ流れで葬儀を行います。
しかし、今日において家族葬は、通夜や告別式をなくした一日葬、火葬のみの直葬、宗教者を呼ばず無宗教で行う無宗教葬のような小規模なお葬式の総称のように用いられています。
実際、家族葬とそれらの小規模なお葬式を組み合わせることも多いようですが、「費用は抑えられるが一般的なお葬式の形式を取れる」というのも家族葬の良さとして挙げられています。
家族葬と一般葬との違い
家族葬と一般葬の違いは、単純に参列者数の違いです。しかし、この人数の違いによって、家族葬と一般葬には費用の面をはじめとして様々な違いが生まれています。
普通、家族葬の場合はより柔軟なお葬式を挙げられるようになりますが、具体的にどのような違いがあるのか、比べてみましょう。
家族葬の割合
家族葬を取り入れているご遺族はどの程度いるのでしょうか。そもそも家族葬は一般的なのでしょうか。実は、近年家族葬を取り入れるご遺族の割合は増えています。
鎌倉新書の「お葬式に関する全国調査」によると、家族葬を取り入れるご遺族の割合はこの5年で約10ポイント上昇しました。2020年現在では一般葬の48.9%に対し、家族葬は40.9%であり、家族葬は一般的と言って差し支えないほど普及しています。
家族葬の割合が増加している理由
近年家族葬が増加している背景には近年の経済事情や社会事情が多く含まれているようです。それぞれ簡潔に紹介します。
まず経済的事情としては、近年の不況の中で故人やご遺族の家計への負担を考えた場合、小規模な葬儀が好まれていることが挙げられます。喪主が望まなくとも故人の「できるだけ家族に手間をかけさせたくない」といった遺志が尊重されることもあるようです。
次に社会的事情としては、昨今の高齢化や地域での人間関係の希薄化が挙げられます。喪主が高齢化したことによって、お葬式の場で大勢の参列者に対応することが体力的に難しくなり、人数的に小規模な葬儀が好まれるようになりました。
また、高齢の故人の場合、参列する友人も既に少なくなってしまっていることも多いようです。近隣住民との関係の希薄化によって、お葬式に呼ばない判断が増えたのも、近年の家族葬の増加の一因となっています。
家族葬には誰まで呼べるのか?
家族葬という名前は「家族のみで行われるお葬式」を連想させますが、必ずしも家族や親戚のみで行われるわけではなく、深い友人関係にあった方も参列することができます。では誰に連絡して、誰に連絡すべきではないのでしょうか。
式より前のお知らせには地域差やそれぞれのご家族の事情が大きく反映されます。一般的には、お知らせを送った相手の方をあまり悩ませないために、事前のお知らせはしない方が好ましいですが、地域によってはお葬式の連絡をしないと後の住民関係に強く悪影響を及ぼしてしまうこともあるようです。
葬儀社と相談し、決定することをおすすめします。一方で、式後には「家族葬を行ったこと」を、参列をご遠慮していただいた方々に必ずお知らせすべきでしょう。
家族葬の費用相場
ここまで家族葬とは何か、どの程度の人が取り入れているのか、なぜ近年増えているのか、など基礎的な情報を紹介しました。では次に本題である家族葬の費用相場について、お葬式の費用の内訳、家族葬と一般葬の費用の相場の違い、の順に辿っていきましょう。
葬儀費用の内訳
家族葬と一般葬の葬儀費用の相場を比較するには、まず葬儀費用の内訳を知る必要があります。葬儀費用は以下の4つに大きく分けることができ、家族葬と一般葬の費用相場の動き方にはそれぞれ特徴があります。
式場使用料
式場使用料は、斎場や控室、待合室等を利用するのにかかる費用です。家族葬で葬儀を行う場合、参列者数が少なくなるため、この部分の料金は抑えることができます。火葬料もこの中に含まれますが、葬儀の形態によって価格は変動せず約5万円程度です。
公営の場合、火葬料の値段を決定するのは地域自治体であり、地域による差が出る部分であると言えます。
葬儀施行にかかる費用
葬儀施行にかかる費用には、祭壇やお棺、生花装飾などの費用が入ります。例えばお棺の相場は、4万円程度から200万円程度まで、選ぶものによって大きく値段が左右されますが、家族葬と一般葬との費用相場の差には影響しません。
飲食接待費
飲食接待費は通夜や告別式の場でのお料理、会葬返礼品にかかる費用のことです。家族葬の費用相場が低い理由として、「一般葬に比べ参列者数を大きく減らすため、飲食接待費を大きく減らすことができる」があります。
また、気心の知れた方々のみで行う葬儀なので、返礼品のグレードを抑える理解も得やすいでしょう。
一方で、一般葬でも通夜の料理は必ずしも参列者全員分を用意する訳ではないことを考慮すると、家族葬だからといって期待するほどお葬式の費用負担を減らせる訳ではない、といった意見もあります。
宗教者へのお布施
仏教ならばお布施、神式ならばご神饌料、キリスト教ならば献金、御花料と言ったように、宗教者へお礼や心付けをします。例えばお布施の場合、費用の中には戒名、読経にかかる費用や心付けも含まれるため、本来定価はありません。
また、地域、宗派によって相場は異なるため、お寺の方に金額を尋ねても失礼にはなりません。ただし、日本消費者協会の2014年の調査によると全国的な平均費用相場は44.6万円となっています。
家族葬の平均費用
家族葬にかかる費用の内訳は上記に紹介した通りです。では合計した費用の平均はいくらになるのでしょうか。お葬式に関する数字はそれぞれのご家族の事情を多分に含むデリケートなものなので、大々的に集計されたデータはありません。
しかし、葬儀関連メディアや葬儀社が収集した統計は存在するので、それらから大まかな費用の傾向を見ていきましょう。
各社が集計した平均費用
家族葬の費用の全国平均は、大まかに見積もると約110万円〜約120万円です。参考にしたいくつかの元データを見ていきましょう。まず鎌倉書房による第三回「お葬式に関する全国調査」に基づくと約91万円で、最大の価格層は80万円以上〜100万円未満です。
この鎌倉書房の調査には飲食接待費や宗教者へのお礼は含まれていません。次に、安心葬儀による「(2019年調査)家族葬の平均費用・相場のデータ」に基づくと、平均費用は約117万円、中央値は100万円でした。この調査では、飲食接待費や宗教者へのお礼も含まれています。
一般葬の平均費用との比較
では一般葬の平均的な費用はどの程度なのでしょうか。家族葬の大まかな費用を見る際に参考にした調査(鎌倉書房、安心葬儀、日本消費者協会)に基づくとおよそ200万円になっています。
数字だけ見れば家族葬と一般葬には約80万円〜約90万円の差があることになります。しかし、1年間になくなる方が130万人に及ぶ現代でこれらのアンケート調査は統計的に有意なのでしょうか。
家族葬と一般葬の費用に90万円程度の差があることを踏まえた上で、次はそれらの数字をどう見るべきか、注意深く考察していきましょう。
費用の平均など統計上の数字を見る上での注意点
「平均的な相場」の使い方には、やや危険性が含まれています。平均費用相場は、一般的なお葬式の費用よりもやや高く出る傾向にあります。これはごく一部の非常に高額なお葬式費用のデータが、お葬式全体の相場を引き上げるためです。
こうした高めの平均費用に基づいて、高めに見積もった料金を提示してくる悪質な葬儀社も世の中には存在します。
アンケートで得られた費用相場は参考程度に留めて、宗派や地域、ご家族の事情を複数の葬儀社へ相談し、丁寧な見積もりを依頼すると、家族葬や一般葬の予算をより正確に知ることができるでしょう。
地域による家族葬の相場の差
全国の家族葬の費用相場を紹介する中で東京や大阪、福岡など地域による相場の差を強調しました。相場の差は物価や近親者の数の違いに基づくものです。
終活ねっとが実施した2019年4月の「葬儀に関するアンケート」に基づき、地域ごとの違いを紹介します。サンプル数の少ない調査をもとに傾向を見るので100%の信頼はできませんが、より身近な相場として参考にしてください。
家族葬の相場が最も高かった地域は「中部地方」で、132万円でした。その次には高い順に「関東地方」の125万円、「東北地方」の125万円が来るようです。一方で家族葬の相場が最も低かった地域は「沖縄県」で、67万円でした。
低い順に「北海道」の95万円、「中国地方」の98万円が続きます。残りの地域は概ね100万円程度に収まっていました。これらの金額には飲食接待費や返礼品の費用を含みます。
これらの差の大きさを見ると、「全国の相場も参考にしたいが、地域の葬儀社に相談した方がより実態に即した予算の見積もりが得られる」、そんな気がしてきませんか?
葬儀費用をより抑えるには?
家族葬の選択は参列者数を少なくする点で、お葬式にかかる費用を抑える効果を持ちます。しかし、他にお葬式の費用負担を小さくする方法はないのでしょうか。
「通夜や告別式も揃った形式を維持し、宗教者の方も呼んで、一般葬と同じ形でお葬式を挙げたい」といった場合にご遺族の助けになるような制度を紹介します。
国民健康保険の利用
故人が国民健康保険に加入していた場合、市や区などの地域自治体に「葬祭費給付金」を申請することができます。「葬祭費給付金」の給付金額は自治体によって異なりますが、5万円から7万円の間になります。
また給付先の名義はお葬式の喪主、申請はお葬式から2年以内といくつか条件があるため、地域自治体の保健年金課に直接問い合わせてみるのが良いでしょう。申請書は各自治体のホームページからダウンロードできます。
社会保険の利用
故人が社会保険に加入していた場合、ご遺族には埋葬費として一律で5万円が支給されます。また、亡くなった方が、被保険者でなく被扶養者であった場合でも、同様の金額を受け取ることができます。
申請先は加入していた保険の社会保険事務所で、期限は2年以内となっています。社会保険事務所によっては独自の補助を用意している場合もあります。
家族葬のメリットとデメリット
ここまで主に費用相場に着目して家族葬と一般葬との比較を行いました。しかし、当然お葬式の場で大事なのはその費用相場だけではありません。より広く視野を持ち、具体的にはご遺族への精神的負担に着目して、家族葬と一般葬の利点、不利な点を比較して行きます。
家族葬のメリット
家族葬のメリットとしては費用が抑えられる他に、短時間でお葬式が終わる、ご遺族で柔軟に式の形態を決められる、当日のご遺族の精神的な負担が軽減できるなどがあります。特に当日の負担については一般葬とは大きな差があります。
大勢の参列者の対応や挨拶回り、参列者やお香典の管理をする方々への挨拶などに追われる一般葬とは異なり、ごく親しい方々と最期の時を過ごすことができるというのは家族葬の最大の利点であると言えます。
家族葬のデメリット
費用相場やご遺族の精神状況のなどの点で家族葬にメリットが存在するのと同時に、やはり不利益も存在します。
特に、以下に紹介する「お香典の問題」などは有名なのではないでしょうか。金銭面以外にも、思わぬところでご遺族に精神的な負担が生まれてしまうことがあります。
費用に関わること
家族葬では、お葬式の規模を小さくすることで全体にかかる費用も小さくなります。家族葬と一般葬でお香典の相場は変わりませんが、参列者数が少なくなることで、いただくお香典の総額も当然少なくなることを考慮しなければなりません。
場合によっては、「家族葬なら費用の負担を抑えられる」といったイメージに反し、実際にご遺族が支払う金額は一般葬よりも大きくなります。こうした状況を見越して、初めからお香典を受け取らない選択をするご遺族もしばしばいらっしゃいます。
お香典を受け取らず代わりに返礼品も用意しないことで、参列者の方に納得していただき、かつ費用相場を抑えるようです。ただし、こうした場合は事前に「お香典は受け取らない」旨を忘れず連絡しておかなければなりません。
人間関係に関わること
葬儀に呼ばれなかった親族や友人、知人の方の中には当然自身が招かれなかったことに不満を持つ人もいらっしゃいます。喪主は知らなかった故人の重要な旧友や同僚もいるかもしれません。
記事の冒頭で述べたように、現在では家族葬は一般的になり周囲の理解も得やすくなっていますが、地域によっては後の人間関係に悪影響を及ぼすこともあるようです。お葬式の形を決める前に、信頼できる葬儀社に地域の傾向を尋ねておくと良いかもしれません。
お葬式の形が人間関係に軋轢を生まない場合でも、ご遺族の精神的な負担となってしまうことがあります。お葬式への参列を遠慮した故人の弔問客が後日ご遺族の自宅を訪れる場合などです。
もちろん故人が周囲から慕われる人物であったことは大変素晴らしいことですが、毎回丁寧に対応しているとご遺族には大きな負担となります。式後に落ち着いて故人へ思いを馳せる時間が取れない場合もあるようです。
安心して家族葬を挙げるために
本記事では、家族葬の費用相場を中心に、家族葬にまつわる様々なトピックに触れました。家族葬の費用相場は約110万円〜約120万円で、一般葬の平均よりもおよそ90万円低くなっています。
さらにお葬式の費用を抑える上では、保険の制度を利用することをお勧めします。また、家族葬には費用面以外でも式当日のご遺族の精神的負担を軽減する利点があります。
一方で、実際の持ち出し費用が思ったより増えてしまうことや、式後に弔問客が増えてしまい、ご遺族が落ち着かないことも多々あるようです。
その上で、本記事内で最も重要なのは「複数の葬儀社とお葬式の形をよく相談して丁寧な見積もりを出してもらうこと」であると言えます。お葬式は一生に何度もあるものではありません。
お葬式に慣れている方も少ないはずです。しかし、不慣れであるからといって、故人やご遺族にとって非常に大事なお葬式を、納得のいかないものにして良いはずもありません。
本記事でまとめた知見が、お葬式の形について考える材料となり、葬儀社と相談する一歩を踏み出す助けとなれば幸いです。
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