繰り出し位牌とは?本来の位牌との違いから種類や金額までを解説!
公開日 : 2020/12/4
更新日 : 2020/12/4
繰り出し位牌というものをご存じでしょうか?一般的な位牌とは異なり、多くのご先祖様のご位牌を一つにまとめられる位牌のことです。宗派が限られているということもあり、ご存じない方もいらっしゃるでしょう。そこで本来の位牌との違いなどについて解説します。
公開日 : 2020/12/4
更新日 : 2020/12/4
目次
繰り出し位牌とはどんな位牌?
一口に「位牌」と言っても、さまざまな種類があります。そんな中に繰り出し位牌というものがあるのですが、ご存じない方も一定数存在します。 そこで、繰り出し位牌とはどのような位牌なのかについて解説します。
札板がいっぱい入っている
繰り出し位牌とは、一般的な位牌の中に小さな札板がいっぱい入っている位牌のことです。位牌の中に札板が通常は10枚程度入っています。
一般的な位牌には、中に何か入っているということはありません。表面や裏面に戒名などの文字入れを行い、それを仏壇にお祀りします。
繰り出し位牌は一般的な位牌と見た目はあまり変わりません。少し大きい程度です。しかし、その中に小さな札板がたくさん収納されています。
札板を順番に出すところから「回出位牌」
「繰り出し位牌」の読み方は「くりだしいはい」です。ただ、同じ読み方で「回出位牌」と書く場合もあります。「回出位牌」と書いて読み方は「くりだしいはい」です。
「回出位牌」と書くのは、中に入っている札板を順番に出して供養を行うからです。繰り出し位牌の中には、10枚程度の札板が入っており、それぞれにご先祖様の戒名や没年月日が書かれています。
ご先祖様の命日になると、繰り出し位牌の中に納められている札板の中から、そのご先祖様の札板を一番前に並べ替えます。再びすべての札板を繰り出し位牌の中に納め、供養を行います。
このように、中に納められている札板を順番に出して回していくところから、「回出位牌」と書くこともあるのです。
本来は50回忌が終わったご先祖様のための位牌
本来、繰り出し位牌は50回忌が終わったご先祖様のための位牌でした。なぜなら、50回忌を迎えた頃には、仏壇の前にはたくさんの一般的な位牌が並んでいるからです。
仏壇の中や前にたくさんの位牌が並んでいると、雑然とした見た目になってしまいます。また、仏壇の手入れをする際にも、位牌がたくさん並んでいると手間がかかるなどのデメリットが生じます。
50回忌が終わる頃には、他の家族の位牌も増え、仏壇の中や前は位牌で溢れかえった状態になっているでしょう。仏壇が大きい場合は良いですが、小さな仏壇の場合はすべての位牌を並べるのは大変です。
このような理由から、50回忌を終えたら繰り出し位牌にご位牌を移すということを行います。一つの位牌にまとめることで、仏壇の中や前をすっきりさせるのです。
札位牌とは
位牌には大きく分けて2つの種類があります。一つは現在この記事で解説している繰り出し位牌で、中に小さな札板がいっぱい入っている位牌のことです。
もう一つは一般的な位牌のことで、「札位牌」と呼ばれています。位牌の表面や裏面に戒名や没年月日を書いて仏壇にお祀りする位牌のことです。中に札板を納めるようなスペースは存在しません。
繰り出し位牌は、この札位牌がいっぱいになった頃に一つにまとめるという意味で使用される位牌です。
宗派別の位牌
位牌には繰り出し位牌と札位牌の2種類が存在します。繰り出し位牌は本来は50回忌を終えたご先祖様の札位牌を供養するための位牌です。 しかし、繰り出し位牌を使用する宗派は限られています。繰り出し位牌があまり知られていない理由には、使用する宗派が限られているという点もあります。 そこで、宗派別にどのような位牌を使用するのかについて解説します。
浄土真宗は繰り出し位牌
浄土真宗は繰り出し位牌を使用します。言い換えるなら、繰り出し位牌は本来、浄土真宗でしか使用されません。
浄土真宗では家族や親族の誰かが亡くなると、札位牌ではなく繰り出し位牌を作り、そこに魂を込めます。通常、浄土真宗で札位牌は使用しないということです。
最初から繰り出し位牌を使用するため、自宅にすでに繰り出し位牌が存在する状態です。そのため、誰かが亡くなった時、繰り出し位牌に納められているまだ使用されていない札板に、戒名や没年月日を書き入れてもらいます。
浄土宗や曹洞宗などは札位牌
浄土宗や曹洞宗など、浄土真宗以外の宗派では札位牌を使用します。家族や親族など、誰かが亡くなった時にはまず最初に札位牌を作り、そこに戒名や没年月日を書き入れて魂を込めます。
ただし、浄土真宗以外の浄土宗や曹洞宗では繰り出し位牌は使用しないというわけではありません。浄土真宗以外の宗派では、それぞれの故人が50周忌を終えたのち、繰り出し位牌に魂を移すのが一般的です。
浄土真宗以外のほかの宗派では、繰り出し位牌は本来の目的に則って使用するということです。異例なのは浄土真宗のみと覚えておくと良いでしょう。
繰り出し位牌の書き方
繰り出し位牌は、一般的に知られている札位牌とは形が特殊です。そのため、書き方も札位牌とは異なります。具体的にどのような書き方をするのでしょう。 ここでは繰り出し位牌の具体的な書き方やルールなどについて紹介します。
1枚目には「先祖代々之霊位」と文字入れする
繰り出し位牌には中に札板が10枚程度納められています。これら10枚の札板はすべて同じものと言うわけではありません。一番前に納められている1枚目だけは黒塗りにされた特別な装丁をしています。
この黒塗りの札板は「先祖位牌」と呼ばれており、「〇〇家先祖代々之霊位」と文字入れを行います。「先祖位牌」と呼ばれている札板が一番前になる札板です。
先祖位牌の札板に文字入れする文言は、地域や宗派によっても異なります。「〇〇家先祖代々」や「先祖代々」という文言を文字入れすることもあります。
先祖位牌の札板に文字入れするのは表面のみです。裏面には何文字入れはしないので、その点には注意してください。
2枚目からは没年月日順に書く
先祖位牌と呼ばれている黒塗りの札板以外は、すべて白木や塗札です。先祖位牌とは明らかに見た目が異なります。
2枚目以降の札板には、ご先祖様の戒名や没年月日を文字入れします。具体的な文字入れの文言や内容は以下の通りです。
- 表面・・・梵字、戒名(法名)、没年月日
- 裏面・・・生前の名前、享年
梵字や戒名がない場合は、表面に生前の名前を入れることもあります。その場合、裏面には享年のみを文字入れします。
また、2枚目以降の札板に文字入れをするのは、没年月日順です。先祖位牌を先頭にその後ろは没年月日順に札板が並ぶようにします。
関東と関西で書き方が異なる
2枚目以降の札板には、表面と裏面にそれぞれ文字入れする内容が決まっています。しかし、これはすべての地域で同じというわけではなく、関東と関西では書き方が異なります。
関東では、すべての文言を表面に文字入れします。裏面には文字入れしないということです。享年や生前の名前なども表面に文字入れします。
関西では、一般的に没年月日は裏面に文字入れします。ただし、梵字や戒名がない場合はすべての文言を表面に文字入れし、裏面は文字入れしないというケースもあります。
繰り出し位牌の切り替えるタイミング
浄土真宗以外の宗派では、ご先祖様の50周忌終了後に繰り出し位牌に切り替えます。しかし、50周忌まで行うというところは少なく、それ以外のタイミングで繰り出し位牌に切り替えることも増えてきています。 それでは、具体的にはどのようなタイミングで繰り出し位牌に切り替えると良いのでしょう。おすすめの切り替えタイミングを紹介します。
位牌がいっぱいになった頃
近年、繰り出し位牌に切り替えるタイミングとして多く見られるのが、位牌がいっぱいになった頃です。仏壇の中や前に位牌があふれかえってくると、繰り出し位牌に切り替える人が増えてきています。
位牌の数があまりに多すぎると、見た目が雑然としてしまい、良いとは言えません。また、仏壇のお手入れをする際にも手間がかかってしまいます。
仏壇に位牌をお祀りすることが困難になってきたと感じた頃、繰り出し位牌に切り替える人が多く存在します。一つにまとめることで、仏壇もすっきりし、見た目も美しくなるでしょう。
年忌法要
次におすすめのタイミングは、年忌法要です。通常、50周忌を終えた後に繰り出し位牌に切り替えるのが良いとされていますが、そこまで待つ必要はありません。
位牌の数や仏壇のスペースにもよりますが、13回忌や33回忌で繰り出し位牌に切り替えるところが増えてきています。早めに繰り出し位牌に切り替えることで、仏壇のスペースを広く保つことができます。
また、近年では7回忌の法要のタイミングで繰り出し位牌に切り替える人も存在します。札位牌と繰り出し位牌は、見た目や形が異なるだけで、位牌であることに変わりはありません。早いタイミングで切り替えても問題ありませんので、安心して下し亜。
引っ越し
引っ越しのタイミングで、札位牌から繰り出し位牌に切り替えるという人も存在します。これは、引っ越し先の住宅スペースが狭くなるからという理由です。
広い家の管理が難しくなり、管理が簡単なマンションやアパートに引っ越す人が増加しています。住居スペースが狭くなると、仏壇のサイズも小さくするという人一定数存在します。
仏壇のサイズが小さくなれば、位牌をお祀りするスペースも狭くなります。そのため、複数の札位牌を一つにまとめて繰り出し位牌に切り替えるのです。
繰り出し位牌の種類や値段
繰り出し位牌にはさまざまな種類が存在します。豪華なものから簡易的なものまであり、装丁によって金額も異なります。 どのような繰り出し位牌があり、どれくらいの値段がするのか、それぞれ紹介します。
春日型繰り出し位牌
春日型繰り出し位牌とは、江戸時代から存在する最も伝統的な繰り出し位牌です。繰り出し位牌と聞くと、春日型繰り出し位牌を想像する人は多く存在します。最もポピュラーな形ということです。
通常、先祖位牌と呼ばれる塗板1枚と、白木板9枚の合計10枚の札板が納められています。繰り出し位牌上部の表面の板が取り外し可能になっており、その中に札板が入っています。取り出しやすい形と言えるでしょう。
金額は大きさは3寸~6寸まであり、大きさによって値段は異なります。一般的な相場は40,000~50,000円です。
勝美型繰り出し位牌
勝美型繰り出し位牌とは、金虫食いという伝統的な塗り技法が用いられた繰り出し位牌のことです。見た目がかなり豪華な繰り出し位牌です。
金虫食いとは、下地に漆を塗った後、その漆が乾かないうちにもみ殻などを蒔きます。漆が乾いた後、もみ殻を取り除いてその部分に銀箔を蒔いて漆を塗り、磨き上げます。これを何度も繰り返すという塗り技法です。
勝美型繰り出し位牌は手間暇をかけて作られている位牌なので、他の繰り出し位牌よりも高価です。一般的な相場は60,000円程度です。
二重繰り出し位牌
二重繰り出し位牌とは、他の繰り出し位牌に比べて奥行きがある形の位牌です。奥行きがたっぷりあるので、中には先祖位牌を含めて20枚前後の札板が納められています。
二重繰り出し位牌は、金蒔絵などが施されたものが多く、位牌一つで仏壇のような趣を呈しています。豪華な見た目の繰り出し位牌なので、大きな仏壇が自宅にある人に人気が高いという特徴があります。
ただ、見た目は豪華ですが、相場はあまり高くありません。大きさは3~5寸まであり、その大きさによって金額には変動があります。一般的な相場は30,000~80,000円程度です。
反屋根回出
反屋根回出は、前の部分が開閉式の扉になっている位牌です。蝶番式の扉が付いており、法事が近いご先祖様の札板を前にしてお祀りします。
このタイプの繰り出し位牌は紫檀などの高価な素材が使われていることが多くあります。造りにも手が込んでいるため、素材や塗りなどにも同様に手間暇がかけられています。
造りにも素材にもこだわっているため、他の繰り出し位牌よりも高価になりがちです。一般的な相場は、90,000~100,000円ほどです。もっと高いものも存在します。
モダンコレクト
モダンコレクトは、数ある繰り出し位牌の中でも最もシンプルな形の位牌です。中には5枚の札板が納められてます。
近年、居住スペースなどの関係から、小さな仏壇を購入する人が増加しています。また、仏壇を購入せず、位牌だけを自宅にお祀りするというスタイルも増えつつあります。
そのような現代の流れに対応したのがモダンコレクトです。ほかの繰り出し位牌に比べて大きさが小さいので、スペースを取りません。また、札板を取り出して立てるためのスタンドが付属としてついています。
金額は、素材や塗り技法などによって大きな差があります。一般的な相場は10,000~30,000円程度です。ただし、高価なものになると50,000~60,000円するものもあります。
繰り出し位牌で仏壇内をすっきりさせよう
家族や親せきが亡くなると、必ず位牌をお祀りします。しかし、数が多くなってくると雑然として見た目も良くありません。そんな時は、繰り出し位牌を活用してください。仏壇内がすっきりして、ご先祖様も喜ばれるでしょう。
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