仏壇引っ越しの重要ポイント【方法・費用・注意点など】を解説
公開日 : 2020/12/5
更新日 : 2020/12/10
家の引っ越しや建て替えなどで、仏壇の引っ越しが必要になることがあります。仏壇はご本尊や位牌の礼拝供養を行う大切な祭壇であるため、特別な準備が必要です。この記事では仏壇の引っ越しを行う際の方法、費用、注意点などを分かりやすくお話していきます。
公開日 : 2020/12/5
更新日 : 2020/12/10
目次
仏壇の引っ越しが特別な理由
仏壇は先祖や亡くなった親族の位牌を祀り、供養のために毎日手を合わせるものという認識がありますが、本来はご本尊を納め、仏様を祀るためのもので、いわば小さな寺院のようなものです。
そのため、移動の際には仏様に一度仏壇から出ていただき、新居に引っ越した後にはまた仏壇内に戻っていただく特別な供養や準備が必要です。このような理由から、他の家具のようにむやみに移動するべきではないと考えられています。
仏壇の引っ越し方法
仏壇の引っ越しには、いくつか方法があります。自分が一番安心できる方法で行うようにしましょう。
仏壇店に頼む
仏壇仏具店では、仏壇の引っ越しサービスを行っているところも多くあります。仏壇を知り尽くした専門スタッフがそれぞれの仏壇に合った包装を行い、仏壇内の掃除はもちろん、宗派に合わせて仏具の飾りつけもしてくれます。
安心して任せられるサービスとして利用する人も多いですが、全ての仏壇仏具店に引っ越しサービスがあるわけではありません。とはいえ、仏壇引っ越しを専門に扱っている業者を紹介してくれることもありますので、まずは仏壇を購入した店舗に問い合わせましょう。
仏壇配送専門業者に頼む
仏壇はものによっては大きさもあり、装飾や金具を傷つけないように移動するのは容易ではありません。通常の引っ越し業者ではなく、仏壇を専門に扱う業者に依頼すれば、適切な梱包で仏壇にキズが付くこともなく、丁寧に運んでもらえます。
また仏壇の知識もあるため、引っ越し後の仏具の飾りつけなども行ってくれるところもありますが、料金によって内容の異なるプランが複数用意されている場合もあります。
依頼の際には配送だけなのか、梱包から行ってくれるのかなど、内容をきちんと確認するようにしましょう。
通常の引っ越し業者に頼む
通常の引っ越し業者に依頼すれば、専門業者より安い費用で仏壇の引っ越しができます。しかし仏壇の引っ越しに慣れていないと、運び方が適切でなかったり、運送に時間がかかったりするだけでなく、大切な仏壇にキズが付いたりすることも。
まずは仏壇の運送を行っているか、また仏壇の運送に慣れているかを確認することが大切です。
ヤマト運輸などの大手配送会社の中には、仏壇はもちろん、美術品や骨董品を専門とする「美術品輸送サービス」を行っているところもあります。運送料は通常よりも高くなりますが、仏壇知識のある専門スタッフが担当してくれるため、安心して任せることができます。
自分で行う
専門業者に依頼するだけが仏壇の引っ越し方法というわけではなく、もちろん自分で仏壇を移動することも可能です。とはいえ、仏壇は一人では運ぶことが出来ないので、必ず家族や友人にお願いして、2人以上で運ぶようにしましょう。
仏壇内の全ての仏具を出し、外せる扉や装飾なども除きます。出した仏具同士がぶつかって破損したりすることのないよう、一つずつ丁寧に包んで箱などに入れておくと安心です。
一般的な乗用車で運ぶ場合は、助手席に立ててしっかり固定します。その際は仏壇の扉が走行中に開くことがないよう、柔らかい紐などで縛っておくと良いでしょう。ガムテープなどの粘着力の強いものは、仏壇の塗装が剥がれる恐れがありますので、あまりおすすめできません。
仏壇の引っ越しにかかる費用
通常の引っ越し業者の場合、仏壇の引っ越しにかかる費用は1~2万円が相場です。仏壇の大きさによって料金にも違いがあり、場合によってはオプション料金が加算されることもあります。
仏壇引っ越しの専門業者の場合は、小さな仏壇で2万5千円ぐらいから、大きいものでは6万円以上かかることもあります。
しかし通常の引っ越し業者と違って、梱包はもちろん、運送、クリーニング、飾り付けまで行ってもらえることがほとんどです。何より仏壇の引っ越しに慣れているので安心感が違います。
ただし、引っ越しの移動距離が長くなると、燃費や高速料金などが加算されますので、事前にしっかり確認をしておきましょう。
仏壇の引っ越しで行うべき供養
仏壇は単なる家具とは違い、魂のこもった大切なものです。基本的に仏壇の移動はあまり望ましいことではありませんが、やむを得ない場合は特別な供養をしてから運び出します。供養は宗派やお寺によって違いがありますので、菩提寺や近くのお寺に相談しましょう。
閉眼供養
閉眼供養(へいげんくよう)は「お性根抜き(おしょうねぬき)」や「魂抜き(たましいぬき)」とも呼ばれ、仏様の眼を閉じることで、仏壇に宿っている魂を抜き、仏壇をただの箱に変える儀式です。
仏壇の移動だけに限らず、お墓を作り直す時や墓石に文字を刻む時にも行われ、僧侶を招いて読経をしてもらいます。
菩提寺か近くのお寺に問い合わせ、仏壇の引っ越しを行う数日前に閉眼供養を行うのがベスト。もちろん引っ越し当日でも問題はありませんが、事前に供養を済ませておけば、当日に慌ただしくならずに余裕を持って引っ越し作業を進めることができます。
準備するもの
供養がスムーズに行えるよう、最低限のものはそろえておく必要があります。中には木魚のように一般家庭にはあまり置いていないものもありますので、その場合は事前に僧侶に相談しましょう。
・線香と香炉(線香立て)
・ロウソクと燈台
・仏花と花立て
・お供え(お菓子、果物、酒類など)
・経机
・おりん
・木魚
・座布団
お布施
読経をしてくれる僧侶に渡す謝礼として、お布施とお車代を渡します。閉眼供養ではだいたい1~5万円が相場とされていますが、具体的な金額で言うと、お布施に3万円、お車代に5千円から1万円が一般的とされています。
基本的には気持ちを渡すものなので、絶対にこの金額でなければならないということはありません。とはいえ、今後もお世話になる菩提寺ですから、ある程度の金額はお渡しするのがマナーと言えます。
お布施の金額は宗派やお寺によっても変わりますので、金額に迷うようでしたら直接お寺に問い合わせると良いでしょう。
お布施の封筒と渡し方
お布施を入れる封筒は、表書きに「お布施」と書かれている不祝儀袋を使用するのが一般的ですが、僧侶に対するお礼のため、通常の白い封筒を使用しても良いとも言われています。ただし、お布施とお車代は別の封筒に包んで渡すのが、より丁寧です。
お布施は紫や紺などの袱紗(ふくさ)の中央より右寄りに置き、右・下・上・左の順に包んでおきます。僧侶に渡すときには逆に包みを開き、袱紗の上に乗せて渡します。また切手盆と呼ばれる小さなトレーに乗せて渡すのも良いでしょう。間違っても直接手渡すことがないように注意してください。
開眼供養
引っ越しが無事に済むと、仏壇から抜いた魂をまた仏壇に戻す供養が必要になります。そのための供養が開眼供養で「お性根入れ(おしょうねいれ)」や「御魂入れ(みたまいれ)」など、さまざまな呼び方がされています。
閉眼供養をしてもらった僧侶にお願いするのが一番理想ですが、僧侶の都合が合わなかったり、遠くに引っ越しをした場合などは違う僧侶に供養をしてもらう必要があります。まずは閉眼供養をお願いするお寺に事前に相談をしておきましょう。引っ越し先周辺にある同じ宗派のお寺を紹介してくれます。
準備するもの
閉眼供養が弔事であるのに対し、開眼供養は慶事として行われます。そのため、準備するものに多少の違いがありますので注意が必要です。何を用意すれば良いのか分からない場合は、お寺にたずねましょう。
・仏具一式
・朱ロウソク
・海の幸(わかめ、昆布など)
・山の幸(栗や椎茸など)
・里の幸(果物や野菜)
・赤飯
開眼御礼
お布施は閉眼供養に対して支払う謝礼で、開眼供養の場合に支払う謝礼は「開眼御礼」や「御入魂御礼」などと言います。開眼御礼の相場も3~5万円程度で、別にお車代として5千円~1万円を渡すのが一般的です。
開眼御礼も特に金額が決まっているわけではなく、お寺にたずねても「お気持ちでご判断ください」と言われることもあります。その場合は「みなさんはどれぐらいお渡ししていますか」とたずねれば、具体的な金額を知ることが可能です。
開眼御礼の封筒と渡し方
開眼供養が慶事ですので、開眼御礼には熨斗袋を使います。特に自分で水引を結ぶ必要はなく、コンビニエンスストアなどで売られている、熨斗や水引が印刷された封筒でも構いません。ただし、不祝儀袋を使用することがないように注意しましょう。
表書きは「開眼御礼」「御入魂御礼」などとしますが、宗教によっては閉眼供養と同様に「お布施」とする場合もあります。僧侶に手渡す際には、直接手で渡すのではなく袱紗を使いましょう。袱紗の色は慶事にふさわしい、赤や朱色などが適切です。
封筒を袱紗の中央より左よりに置き、左・上・下・右の順に折りたたみます。渡す時には逆に開け、袱紗の上に乗せたまま僧侶に差し出しましょう。
何もしないのはバチが当たる?
閉眼供養も開眼供養も、それぞれ数万円かかることもあり、金銭的な余裕がない場合には供養を躊躇してしまう方もいるでしょう。
仏壇の引っ越しを行う際に、絶対に行わなければならない供養というわけではありませんが、引っ越し業者に仏壇の運送を頼む場合、閉眼供養をしていないと断られることもあります。
供養を行わないとバチが当たるのではと心配になる人もいるでしょう。供養を行わないことを後ろめたく思う気持ちがある時に、同じタイミングで何か悪いことが起きると、バチが当たったように感じてしまいます。
しかし何か理由があって供養できなくても、先祖を大切にする気持ちがあればバチが当たることはありません。
とはいえ、仏壇には普段から家や住人を守って下さる先祖の魂が宿っています。感謝の気持ちを表すという意味でも、供養は行ったほうが良いでしょう。
仏壇の引っ越しで供養が不要な場合
仏壇の引っ越しには、閉眼・開眼供養を行ったほうが良いのですか、供養が必要ない場合もあります。
別の部屋への移動
仏壇の引っ越しに供養が必要なのは、家の外へ出る場合です。そのため、同じ家の中の1階から2階への移動や、隣の部屋への移動には、閉眼・開眼供養は必要ではありません。
しかしマンション住まいの場合、同じ建物でも違う階に移動する際には供養を行います。同じマンションの一室ではありますが、それぞれの部屋を「家」とみなすため、違う家に移動するのと同じことになるからです。
宗派が浄土真宗
浄土真宗では、仏壇に魂が宿るという概念を持たず、仏壇はご本尊を納めるための場所と考えるため、仏壇の引っ越しの際には閉眼・開眼供養は必要がありません。
しかしご本尊に対する供養として、移動前には「遷仏法要」、移動後には「入仏法要」を行うことがありますが、たいていは仏壇を新しいものに変える場合です。
引っ越しの場合はそれぞれの判断に任されることもあるので、どうしたら良いのか分からない場合は、お寺に相談しましょう。
仏壇の引っ越しで注意するポイント
仏壇の引っ越しを行う時には、丁寧に扱うのはもちろんのこと、普通の家具とは違う点に配慮する必要があります。いくつかポイントをまとめたものを見ていきましょう。
引っ越しに最適な日を選ぶ
一般的に、引っ越しは暦注の一つである六曜(ろくよう・りくよう)でいう「大安」に行うのが良いとされています。しかし六曜は月の周期がベースになっているとも言われていて、仏教とは関係がないため、仏壇の引っ越しではあまり気にする必要はないでしょう。
とはいえ縁起を担ぐ人には重要なことですし、特に高齢者の中には六曜を重んじる人もいます。まずは家族で話し合って、仏壇の引っ越し日を決めることをおすすめします。
また、台風や大雨などの悪天候が予想される日は出来るだけ避けて、お天気の良い日を選ぶことも大切です。悪天候での引っ越しは大変なうえに時間もかかり、雨風にあたって大切な仏壇が傷む可能性もあります。
移動前に写真を撮っておく
仏壇はあまり頻繁に動かすものでもないため、仏具の配置などを覚えている人は少ないでしょう。移動の際には一度全ての仏具を取り出さなければならないので、移動後に戻す時、どのような配置だったのか分からなくなることがあります。
引っ越し前に仏壇全体の写真と仏壇内部の写真を撮っておくことで、そのようなトラブルを避け、スムーズに仏壇の引っ越しが行えます。ただし、仏壇引っ越しの専門業者に頼む場合は、飾り付けまで任せることができるので、心配は無用です。
ご本尊・位牌は家族で運ぶ
閉眼供養を行っても、ご本尊と位牌には魂が宿っているため、家人が大切に運ぶのが原則です。キズなどがつかないようにそれぞれを包み、風呂敷などを使って運ぶのが望ましいでしょう。
間違っても引っ越し業者に運んでもらうことのないように注意してください。
運ぶ順番に気を付ける
基本的に引っ越しでは、仏壇を運ぶ順番が決まっています。全ての家具を運び出した後、一番最後に仏壇を運び、新居には仏壇を最初に運び入れます。
専門業者は運ぶ順番を当然心得ていますが、通常の引っ越し業者の中には仏壇の引っ越しに慣れていないため、順番について知らない場合も考えられます。念のため、作業が始まる前に話をしておくと良いでしょう。
仏壇を処分する場合
「新居に仏壇を置くスペースがない」「仏壇をもう少し小さなサイズに変える」「両親との同居で2つの仏壇を1つにする」など、やむを得ない理由で仏壇を処分しなければならないこともあります。
まずは閉眼供養を行い、そのあとで菩提寺や仏具店に引き取ってもらうのが一般的です。菩提寺の場合はお布施として5万円程度、仏具店は1~3万円程度かかりますが、きちんとお焚き上げをしてくれます。
自治体でも処分をしてもらえますが、大型家具として粗大ごみに分類されることが多いのが現状です。数千円という安い費用で済みますが、長年お世話になった仏壇をゴミとして処分することに抵抗がある人には、おすすめできません。
感謝の気持ちを忘れずに
ご本尊や先祖の魂を納める仏壇は、引っ越しの際にも特別な配慮が必要です。不明な点があれば、菩提寺や近くの仏壇仏具店に問い合わせすることをおすすめします。
どんな方法で移動するのかは人それぞれですが、どんな場合にも感謝の気持ちを忘れずに、大切に扱いましょう。
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