仏壇の飾り方は?宗派別の飾り方や基本のパターンから略式まで解説
公開日 : 2020/11/15
更新日 : 2020/11/15
毎日何気なく手を合わせている仏壇ですが、仏壇には飾り方にさまざまな決まりごとがあります。今回は仏壇の基本的な飾り方や仏壇に関する知識まで解説してまいります。併せて宗派による違いもご説明します。新たに仏壇を購入するという方もぜひ参考にしてください。
公開日 : 2020/11/15
更新日 : 2020/11/15
目次
仏壇の飾り方を知ろう
仏壇は先祖や亡くなった親族をお祀りする大切なものです。代々に渡って引き継がれてきたので飾り方に疑問を持ったことがないという方も多いと思いますが、仏壇の飾り方にはルールがあります。そこで仏壇の飾り方を解説します。併せて宗派による違いも解説します
そもそも仏壇とは?
仏壇の飾り方の説明の前に、仏壇の歴史や仏壇を設置する意味に触れておきます。
仏壇の歴史
現存する最古の仏壇は奈良県法隆寺にある「玉虫厨子」とされていますが、その時代では貴族や役人といった限られた人々のものでした。
鎌倉時代に仏教が広まり、室町時代には家の中に床の間が作られるようになると仏具を置いて礼拝するようになりました。現在のような仏壇が一般の家庭に普及するようになったのは江戸時代です。
仏壇の意味は
仏壇は亡くなった家族をお祀りし供養するためのものととらえられていますが、本来の仏壇の目的としてはご本尊を祀ることにあります。
仏壇は、寺院の中でご本尊を安置している場所である内陣(ないじん)を小さな箱型にしたもので、その中に本尊と位牌、仏具を飾ります。そのため仏壇は仏様を祀る家の中の小さなお寺、ご本尊や先祖のいる家のようなものと考えられています。
現代では仏壇を家に置くということには信仰の意味に加え、仏壇に向かって手を合わせることで先祖に日々の出来事などを報告するという、日々の心のよりどころの役目も果たしています
仏壇の種類
仏壇にはいろいろな種類があります。ここからは仏壇の種類についてご説明いたします。特徴を良く知って、ご自分の家にぴったりな仏壇を探してください。
現代仏壇-モダン仏壇
「現代仏壇-モダン仏壇」と呼ばれる種類の仏壇は現代の住まいにマッチするデザインの仏壇です。この種類は明るい色調のものや、他の家具と並べても違和感を感じさせないのが特徴です。モダンなデザインのものが多く、比較的宗教色を抑えていて近年人気の仏壇です。
また、サイズや形状、デザインもバラエティに富んでいます。材質は一般的な家具に使われるウォールナットやホワイトオーク、メープルなど種類はさまざまです。比較的に価格は手に入れやすいものが多いです。
金仏壇
「金仏壇」はその名前からもわかるように内部が金色の仏壇です。杉やひのきなどの白木に黒い漆を塗り、内部に金箔を貼り、さらに金具や彫刻、蒔絵を施した豪華な印象の仏壇です。つやつやとした黒と金のコントラストが特徴的です。別名を漆仏壇とも言います。
いろいろな宗派のお宅に置かれますが、特に浄土真宗ではこの金仏壇が推奨されています。これは荘厳な様が浄土の世界を表しているからと言われています。金仏壇には伝統的工芸品のようなものまであり、価格は漆や金箔の質、施した細工によって大きく変わります。
唐木仏壇
サイズや形状による違い
仏壇は種類別の他に置き場所を確保できるか、どんなふうに置くかによってもタイプも変わってきます。
台付きタイプ
こちらは専用の台の上に仏壇を載せたタイプで、台と仏壇がセットのセパレートになっています。畳やフローリングの床に直接置きます。台は収納台なのでこまごまとしたものも入れられて便利です。
一見するとドレッサーのような、椅子を備えた便利な台付き仏壇もあります。タンスのような背の高いものや高さを抑えたものもあるので設置する部屋に合わせて選ぶことができます。
上置きタイプ
こちらはタンスや棚などの上に置くタイプの仏壇です。特別に仏壇用のスペースを設ける必要はないので、マンションなど現代の住宅環境にマッチしています。また、コンパクトなので移動も簡単で引っ越しの際も楽に運び出せます。
色合いや材質を手持ちの家具に合わせてトータルコーディネートも可能です。
壁掛けタイプ
こちらは、あまり知られてはいませんが文字通り壁に掛けるタイプの仏壇です。上置き仏壇よりもさらにコンパクトで置き場所に困っている方におすすめです。一見してインテリアの一部のようで仏壇とは分からないモダンでスタイリッシュなデザインのものが多いです。
額縁や写真のフレームのように壁に取り付けます。奥行は浅くなっているので、動線を妨げることもありません。また、好みの高さに設置できるところも人気の理由の1つです
必要な仏具とは?
仏具は仏壇に欠かせない大切なものですが、種類はいろいろあってわかりにくいという方も多いようです。ここからは仏具についてご説明します。
基本の仏具は三具足
さまざまある仏具の中で、三具足(みつぐそく)と呼ばれる花立、火立、香炉の三点は必須です。どのような宗派においても三具足は必ず用いられます
花立
花立(はなたて)は仏前に花を供えるための花瓶のことを指します。仏前には香りの強すぎる花やとげのある花は避けた方がいいと言われています。ただ故人がその花を好きだった場合はかまわないとされています。
火立
火立(ひたて)とは、仏前に灯明と呼ばれるロウソクの火を灯すための仏具です。ロウソク立てや燭台とも呼ばれます。供えたロウソクの火はあの世とこの世とを結ぶ役目を果たすとされているためです。
香炉
香炉は線香を焚くための道具で、線香を立て、仏様に手を合わせるときに使います。香には周りを浄化するとともに、線香をあげた本人も清めることができるとされています。
三具足の飾り方
三具足は中央に香炉、向かって右に燭台、左に花立を置きます。正式な飾り方は五具足と呼ばれるもので、中央に香炉、その両脇に燭台を置き、さらにその両脇に花立を置いたものです。仏壇が小さく置けない場合は三具足で問題ありません。
他に揃えたい仏具
五具足に仏飯器と茶湯器を加えた「七具足」という形式があります。仏飯器とは炊いたご飯を入れ仏前に供えるための器のこと、茶湯器はお茶や水を供えるために使う器のことです。七具足で花、灯り、香、ご飯、水で行う供養のことを「五供(ごくう)」と言います。
他には音で人の邪念を打ち払い祈りを仏様に届けるされるリンとリン棒、香炉やリンなどを置く経机、菓子や果物をお供えするための器である高月(たかつき)、線香を差しておく線香差、マッチの燃えかすを入れておくマッチ消などがあります。
揃える仏具は仏壇の大きさにもよって変わってきます。購入の際にはご自分の仏壇にはどれほどが置けるかを確認しておきましょう。
仏壇の飾り方
それでは仏壇の飾り方を具体的にご説明してまいります。
基本の飾り方
まずは各宗派のご本尊を仏壇の一番上の段の中央にお祀りします。どの宗派でもご本尊は一番上の真ん中に据えることになっています。
ご本尊の左右にはその宗派の脇侍(わきじ)を配します。脇侍とは本尊の補佐役である仏の仏像や絵画のことを言います。ご本尊と同じく、宗派によって脇侍も異なります。
故人の位牌は本尊が隠れないように左右、もしくは一段低い段に安置します。なお宗派によっては位牌を必要としていないところもあります。
その次の段には中央に仏器膳を置き、仏飯器と茶湯器を配置します。そしてその両サイドには高月を置きます。
一番下の段には花立、香炉、火立、線香差、マッチ消、リン、リン棒などを置くのが一般的な飾り方とされています。線香を手向ける時に使う線香差やマッチ消は香炉の左側が使いやすくておすすめです。
宗派別の飾り方の特徴
仏壇の飾り方は宗派によっても異なってきます。ここでは各宗派の飾り方の特徴をご説明いたします。
浄土真宗 本願寺派
浄土真宗本願寺派のご本尊は阿弥陀如来なので、一番上段の中央には阿弥陀如来の仏像を祀ります。脇侍である親鸞聖人と蓮如上人の掛け軸を向かって右側に親鸞聖人、左側には蓮如聖人を飾ります。
浄土真宗の仏壇の飾り方で一番の特徴は位牌の代わりに過去帳を配することです。一番下の段に見台を置き、その上に過去帳を置きます、現代では他の宗派と同様に位牌を祀っているお宅もあります。
浄土真宗 大谷派
ご本尊は「阿弥陀如来」で、大谷派では仏像より掛け軸を用います。ご本尊を最上段の中央に配し、本尊の左に脇侍の「九字名号」を、右に「十字名号」の掛け軸を祀ります。なお阿弥陀如来の後光は6本のものと決まっています。他は一般的な飾り方と同様です。
大谷派においても基本的には位牌は使用しません。本願寺派と同じく一番下の段に見台を置き過去帳を載せます。
浄土宗
一番上段の中央にご本尊である阿弥陀仏の彫刻か仏画を配します。阿弥陀仏は立像を祀るのが浄土宗においては基本としていますが坐像でも構いません。ご本尊の両脇に脇侍の善導大師を向かって右に、左には法然上人を祀ります。
さらに余裕があれば法然上人の隣に勢至菩薩、善導大師の隣に観音菩薩を祀りますが、観音と勢至の両菩薩は省略しても構いません。
曹洞宗
最上段の中央にご本尊の釈迦牟尼仏を祀り、向かって右に道元禅師、左に瑩山禅師の両祖を配します。他に右に達磨大師、左に道元禅師と瑩山禅師を祀る場合もあります。ご本尊だけでも構いません。
天台宗
天台宗のご本尊は一般的には釈迦如来ですが、阿弥陀如来や観世音菩薩を祀ることも多く、近年は阿弥陀如来の仏像を祀る方が多いようです。迷ったら菩提寺のご本尊にならいましょう。脇侍である天台大師を向かって左に、右には伝教大師最澄の掛け軸を配します。
真言宗
真言宗でのご本尊は大日如来ですが信仰している仏様があればその仏様を祀っても構いません。主なご本尊には大日如来、観音菩薩、薬師如来、不動明王、弘法大師などが挙げられます。
脇侍は向かって右側に「弘法大師」を、向かって左側に「不動明王」もしくは「興教大師」を祀るのが一般的です。
臨済宗
臨済宗では特定のご本尊を定めていないので宗派によって釈迦牟尼仏、大日如来、観世音菩薩、地蔵菩薩などを本尊としていることもありますが、一般的には釈迦牟尼仏を本尊としています。
脇侍についてもそれぞれの宗派によって違います。妙心寺派では左脇侍に達磨大師、無相大師、右脇侍に無相大姉や花園法王の掛軸を配します。他に左脇侍に文殊菩薩、右脇侍に普賢菩薩とする派もあるので菩提寺に確認をしてください。
時宗
時宗のご本尊は一般的には阿弥陀如来ですが、寺院の中には薬師如来や観音菩薩、地蔵菩薩をご本尊としているところもあります。向かって右に一遍上人、左に真教上人の脇侍の掛け軸を配します。
無宗派
仏壇の飾り方は各宗派によって決まりごとがありますが無宗派の場合、仏壇の飾り方にこうでなくてはという決まりはありません。位牌を祀って花や線香を手向けるだけでもいいでしょう。
また無宗教の方には故人の遺骨の一部を容器に入れて祀り、毎日供養するという「手元供養」という形も選択肢の1つとしておすすめです。
仏壇を設置する際の注意
仏壇を設置する際に注意していただきたい点をご紹介いたします。
仏壇の設置場所
仏壇を設置するのに一番ふさわしい場所は仏間です。仏間は仏壇のための場所なので一番おすすめです。
床の間は家の中で上座とされた場所にあるので、床の間があるお家は床の間に設置しても良いでしょう。
現代の住宅においては仏間がないお宅も、床の間がないお宅も数多くあります。そんなお宅では居間やリビングに設置しても構いません。居間やリビングは家族が集まって賑やかにすごすことが多い場所なので仏壇に手を合わせやすくおすすめです。
仏壇を置く場所は、湿気が少ないところや直射日光が当たらないところがいいでしょう。また北向きは避けて置いた方がいいとされています。それぞれの住宅事情に合わせて設置してください。
仏壇を置く方角
宗派の中には仏壇の向きをこの方角がいいと推奨しているところもあります。主な宗派が薦めている方角を紹介します。
臨済宗、曹洞宗
臨済宗や曹洞宗においては釈迦が南を向いて説法を説いていたということから、南の方角に置くことを推奨しています。
浄土真宗、浄土宗、天台宗
浄土真宗、浄土宗、天台宗においては、一般的に東の方角に置くと良いとされています。本尊である阿弥陀如来が西方浄土にいるということから、西の方向に向かい手を合わせることになるため東の方向に仏壇を置きます。
真言宗
真言宗では本山に向かって手を合わせるという考えの本山中心説に則り、本山の方角へ仏壇の背中が向くように置くことを推奨しています。総本山は京都にある教王護国寺なので、配置の方向は住んでいるところによって変わります。
日蓮宗、創価学会
日蓮宗と創価学会では仏壇の向きを特に決めていないので、そのお宅に合った方角に設置してください。
時宗
時宗では極楽は西方にあることから、仏壇の向きは東向きがふさわしいと言われています。ただし、お家の状況に応じて方角を変えることも可能です。
心を込めて手を合わせましょう
今回、仏壇の種類や飾り方をご説明してまいりましたが一番大切なのはご先祖を敬う気持ちです。心を込めて手を合わせましょう。各宗派にさまざまな決まりごとがありますが、詳しく知りたいときは菩提寺にお尋ねください。
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