仏壇の引っ越しに関する方法と注意すべき点をわかりやすく解説
公開日 : 2020/10/15
更新日 : 2020/10/15
引っ越しの際は、仏壇も一緒に運搬する必要が出てきます。ご先祖を供養するための仏壇、容易に動かしてよいものか悩む方々は多いかもしれません。そこで今回は仏壇の引っ越しに関する手順や、その費用および注意点について解説していきます。
公開日 : 2020/10/15
更新日 : 2020/10/15
目次
仏壇の引っ越しについて
先祖を供養する仏壇、ご家族はお供え物や線香等を欠かさずあげていることでしょう。しかし、何らかの事情で引っ越しをしなければいけなくなることもあるはずです。
その際には、もちろん仏壇も引っ越しする必要が出てきます。ご先祖を供養するための仏壇、果たして容易に動かしてよいものか悩む方々は多いかもしれません。
そこで今回は、仏壇の引っ越しの際に行うべき方法と、引っ越しの際の注意点について解説していきます。
仏壇の引っ越しには何もしないで良い?
仏壇の引っ越しにはサイズの大きな物となると、さすがに他の家財と同様、気を付けて運搬する必要が出でてくるでしょう。
もちろん、運送業者に依頼して引っ越しを行う場合、他の家財道具と同様に一時保管する場所に安置し、その後は引っ越し先に搬送されます。このように仏壇だからといって搬送手順が変わることはありません。
とするなら「全く家財と同様の扱われ方でも構わない。」と、思われるかもしれません。ただし、ご先祖を供養する仏壇である以上、電気機器や家財とは異なる準備を行う必要が出てきます。
仏壇の引っ越しに必要な準備がある
仏壇は高価でかつ、それなりの重さや高さもあります。移動させるときは丁寧な対応が求められます。それに加え、仏壇にはご先祖様がまつられている以上、いきなり搬送するのはやはり失礼に当たります。
まずは僧侶によって仏壇を引っ越しする前に行う供養が必要です。仏壇の引越し・移動をすならば、次のような供養が行われます。
- 引っ越し前:旧居→魂抜き
- 引っ越し後:新居→魂入れ
仏壇はご先祖を参拝する対象です。つまり、仏壇に魂が宿っていると解されます。そのため、僧侶にまずは「魂抜き」をしてもらいます。
魂抜きの後、仏壇は参拝対象から家財道具として扱うことができ、他の家財と同様に運搬することも許されます。
新居へ搬送された仏壇に、今度は僧侶から「魂入れ」を行ってもらいます。これでご先祖の魂は仏壇へ戻り再び参拝対象となるのです。
仏壇の引っ越しの際の供養について
仏壇を含めた引っ越し日程が決まったなら、引っ越す1ヶ月前から供養の準備をはじめましょう。主に次のような手順で行われます。
- 引っ越し1ヶ月前:菩提寺の僧侶へ相談、供養の日時を決め依頼
- 引っ越し1週間前~前日:僧侶が魂抜きを行う
- 引っ越し後:僧侶が魂入れを行う
魂抜きをした後、引っ越し当日は仏壇も家財道具と同じく搬送します。ただし、全ての家財道具を家から出し終え、一番最後に家から運び出すのがご先祖への礼儀と言えます。
なお、引っ越し先の新居に入れる際は、他の荷物を入れる前に、一番最初に搬入する方が良いでしょう。引っ越し後は魂入れをして、ご先祖をお迎えします。
ただし、宗派によって供養方法はやや異なってきます。こちらでは、各宗派の引っ越しの際の供養方法を解説します。
浄土真宗の供養方法
実のところ、浄土真宗では「魂抜き」や「魂入れ」といった儀式が行われません。なぜなら「往生即身仏」という考え方が根幹にあるためです。
この往生即身仏とは、死者の魂は死後すぐに成仏するという教えです。そのため、浄土真宗では位牌そのものを作りません。
つまり、仏壇にご先祖の魂が宿ると言う考え方自体もないわけです。浄土真宗の場合、ご本尊が入っていないなら、仏壇の引っ越しのときは前述した儀式を行わず、他の家財道具と同様に運搬しても構いません。
とはいえ、引っ越しの際に粗雑に扱っていけないのは当たり前であり、搬送中に破損しないよう細心の注意を払う必要があります。
なお、魂抜き・魂入れのような儀式はいかなる場合も全くないのか?と言えばそうではありません。
仏壇を新しく購入したならば、ご本尊を信仰の対象とするため入仏法要が実施されます。これは仏の教えに触れる生活が始まることを祝う意味で執り行います。一方、何らかの理由でご本尊を信仰の対象から外すならば、遷仏法要が執り行われます。
「仏壇にご本尊があったり、たとえご本尊が無かったりしても、いきなり仏壇を動かしたらご先祖が怒るのではないか。」と、不安に思うこともあるでしょう。
そんな時は、魂抜きの代わりに遷仏法要を、魂入れの代わりに入仏法要を行いましょう。これで安心して引っ越しを行えるはずです。
浄土宗の供養方法
浄土宗では前述したように、引っ越し前は魂抜きを行う「閉眼供養」、引っ越し先で魂入れを行う「開眼供養」が執り行われます。
浄土宗は法然を宗祖とし、浄土真宗は法然を師と仰ぐ親鸞が宗祖です。とはいえ、法然や親鸞の仏教への解釈は、やや異なったものとなっていることがわかります。
開眼供養の準備は次の通りです。
- 炊いたご飯を仏飯器へ供える
- 花を供える
- 朱色のローソクを用意(開眼供養は慶事のため朱色)
- 仏器膳に料理を少々供える
- 高杯に果物・お菓子を供える
地域によって供物の種類等が異なる場合は、その地域の慣習に従います。一方、同じ家屋内で別の階に移動する必要がある時、仏壇の配置を替える程度なら閉眼供養・開眼供養も不要です。
とはいえ、仏壇の移動はかなりの重労働です。壁や襖、他の家具にぶつけないよう注意しましょう。
曹洞宗・真言宗の供養方法
曹洞宗・真言宗でも、「魂抜き」や「魂入れ」は望ましいですが、無理に行う必要は無いと言われています。また、家屋内で別の階に移動する必要がある時、仏壇の配置を替える場合も、それに伴う儀式は不要です。
あくまで引っ越しの際、「魂抜き」や「魂入れ」の儀式を行うかどうかは、ご家族次第です。もちろんこれらの儀式を行うなら、僧侶を呼んで読経してもらいましょう。
仏壇を置く際のふさわしい方角と場所について
慌ただしい引っ越しですが、いざ仏壇をどこへ置いて良いのか?判断に迷われる皆さんも多いことでしょう。こちらでは、仏壇を置く際にふさわしい方角と場所について解説します。
理想的な仏壇の方角
仏壇を置くのは「必ずこの方角でなければならない。」という決まりはありません。しかし、置くとするならば「東面西座」が良いと言われています。
つまり、西側を背にし、仏壇の正面が東側を向くようにします。なぜこの方角が良いかは、極楽浄土が西にあるという言い伝えに由来するからです。
一方、「南面北座」も良いと言われています。北側を背にし、仏壇の正面が南側を向くように置きます。釈迦が説法をする場合、いつも南を向いていたという言い伝えがあるからです。
また、本山の方を背にして仏壇を設置した方が良い、という宗派もあります。仏壇を拝む際に、本山へも祈りを捧げていることになるからです。
ご自分や世帯員がどんな宗派なのか、総本山は新居から見てどの方角か、を確認して設置してみるのも良いでしょう。
湿気の少ない場所が理想
仏壇を置く場所はどこが良いのか?こちらも明確な決まりはありません。ただし、仏壇は信仰の対象である以上、大切に扱い、なるべく傷まないように心がけることが大切です。
仏壇は直射日光を避けることができ、湿気の少ない場所へ置くのが無難です。西日が当たってしまうと仏壇に限らず家財は傷みやすくなります。
この点さえ気を付けていればリビングに置いても、ご自分の寝室に置いても構いません。
仏壇の引っ越し方法と費用について
引っ越しのとき仏壇も一緒に搬送する場合は、業者に頼むと特別な料金が取られてしまうのか、不安に思う方々もおられるはずです。こちらでは、仏壇の引っ越し方法とその費用、魂抜き・魂入れをした場合の僧侶へのお布施について解説します。
引っ越しを自分で行うか業者に頼むか
仏壇の引っ越しを行う方法は、ご自分で行うまたは引っ越し業者・仏壇店へ依頼する二通りの方法があります。
自分で仏壇の引っ越しを行う場合
マイカーで仏壇を運んだ方が、その分引っ越し費用もかからず安上がりと言えます。しかし、仏壇は大きな荷物である以上、新居への運搬には細心の注意が求められます。
- 仏壇:マイカーで安全に運搬できるよう、助手席にしっかり固定。解体して運んでも良いが、元に戻せなくなくことに注意。
- 香炉:火元が残っていないかチェックして梱包
- 火立て・花立て:水をしっかり拭き取り梱包
- 仏飯杯・木魚・照明類・装飾類:緩衝材、新聞紙やタオルで保護
ただし、運搬に使うマイカーの大きさや、仏壇のサイズによっては、ご自分で仏壇の引っ越しをすることが難しい場合もあります。この場合は無理せず業者・仏壇店へ搬送を依頼しましょう。
引っ越し業者・仏壇店へ依頼
引っ越し業者ならば新居まで仏壇をはじめとした家財道具も全て、それなりの大きさのトラックで搬送してくれます。家財の積み込みに慣れ、利用する側は非常に楽です。
ただし、仏壇は高価で通常の家具よりデリケートです。引っ越し業者が他の家財道具と同様の扱い方をすれば破損する危険もあります。業者へ依頼する前に、仏壇の扱いは大丈夫なのか等をしっかり確認してから契約しましょう。
一方、仏壇店へ依頼するならば、専門知識のあるスタッフが引っ越しの対応をしてくれるので安心です。費用は割高ですが、宗派の決まり事も熟知し仏具の扱い・作法に対応できます。仏壇・仏具の梱包から移動、設置まで任せられとても頼りになるはずです。
お布施と引っ越しの料金
魂抜きや魂入れで僧侶から読経してもらった場合は「お布施」が、引っ越し業者等を利用すればその料金がかかります。こちらでは、仏壇の引っ越しにかかわる費用を解説します。
僧侶へのお布施はどの位か
魂抜きや魂入れで僧侶から読経してもらったならば、お布施を渡す必要があります。魂抜き(閉眼供養)では、2万円~5万円程度が目安です。
魂入れ(開眼供養)の場合も同額程度のお布施を用意しましょう。お布施・お車代・お膳料をワンセットで用意することが一般的です。ただし、最近はお布施のみを頂くという寺院が多いです。
また、寺院のホームページではお布施の額も明記されている場合があります。どの位の金額を用意したら良いかわからなければ、事前に寺院のホームページをチェックしてみましょう。もちろん僧侶に直接聞いても構いません。
仏壇の引っ越しの料金
仏壇の引っ越しは大手運送会社の他、小さな引っ越し業者でも行ってくれます。その際の費用は仏壇だけなら10,000円〜20,000円程度が相場です。ただし、他の家財道具も搬送するなら、それなりの費用がかかります。
一方、他の家財道具は引っ越し業者に依頼し、仏壇だけは仏壇店・仏壇専門の引越し業者へ搬送を依頼したい場合もあるでしょう。
仏壇店・仏壇専門の引越し業者の場合は、より丁寧な対応となるので30,000円〜60,000円程度が相場です。
なお、大手運送会社等へ頼んでも、仏壇だけは提携している仏壇店・仏壇専門の引越し業者が対応する場合もあります。その際はオプション料金がかかります。
引っ越し時に仏壇を処分したい場合
引っ越し時に仏壇を処分して、別の新しい仏壇に買い替える、一見ご先祖に失礼な方法とも思えます。
ただし、前述した通り魂抜き(閉眼供養)・魂入れ(開眼供養)という儀式を行えば問題はありません。魂抜きをした仏壇の処分方法は3通りあります。
寺院に処分を依頼する
ご自分の先祖代々のお墓がある寺院へ魂抜き(閉眼供養)と共に、仏壇の引き取り処分ができるかどうか聞いてみましょう。寺院側が承諾したら日程を調整し、寺院へ運び入れます。
もちろん、運搬費用は自費ですしお布施の方も必要です。ただし、寺院側から処分が難しいと回答されたら、次の(2)または(3)のいずれかで対応します。
仏壇店・回収業者に処分を依頼する
以前に購入した仏壇店等で、古い仏壇の処分・引き取りサービスを行う場合もあります。また、仏壇店のホームページで料金を明示していることがあります。引き取り前に魂抜き(閉眼供養)を行うサービスが付加できる業者もあります。
まずは仏壇店や専門の回収業者に電話連絡してみましょう。詳しい処分方法・料金を提示してもらえます。
自治体に処分してもらう
粗大ごみで処分をする場合は、自治体の環境課または生活環境課窓口へ連絡します。仏壇のような大きな物は、集積所からの定期収集は行っていません。
職員が自宅まで収集に伺う戸別収集か、ご自分でクリーンセンターへ持ち込む直接搬入のいずれかの方法で対応します。
仏壇の引っ越しにも先祖を敬う気持ちが大切
仏壇と共に引っ越しをするのは、皆さんが日頃から手を合わせているご先祖と共に、引っ越しすることを意味します。
魂抜き(閉眼供養)をすれば仏壇も家財道具の一つですが、引っ越し先で魂入れ(開眼供養)をすれば、先祖の魂は再び戻ってきます。
当然、魂抜きをした後も粗雑に扱うことは許されません。引っ越し費用がもったいないからと、強引にマイカーに詰め込んで仏壇が破損した場合は、ご自分も家族も先祖も気分が悪いまま新居での生活を迎えることになるでしょう。
仏壇の引っ越しは素人が無理やり行うものではなく、プロに任せた方が安全で確実です。先祖を敬う気持ちも忘れずに、魂抜きをした後でも大切に扱うことが求められます。
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