木魚とは具体的に何?用途や歴史、値段などについて解説
公開日 : 2020/4/20
更新日 : 2020/9/8
お坊さんがお経を読み上げる際にはほとんど必ず木魚の音色を耳にします。何気なく使用される木魚ですが、具体的にどのような用途で使われているのでしょうか?この記事ではあまり知られていないであろう木魚の様々な事柄について解説します。
公開日 : 2020/4/20
更新日 : 2020/9/8
目次
木魚とは?
木魚とは、僧侶が読経を行う際に叩いて慣らすための木製の道具です。楕円形のラグビーボールのような形をしており、外側には魚の鱗をかたどった文様が彫られています。
木魚は中が空洞で真ん中に大きな割れ目があるのが特徴です。中に空洞を作ることによって、特徴的な「ポクポク」という音を奏でることができます。叩く際には、先端に布を巻いたバチを用います。それらのバチは「木魚バチ」「木魚バイ」「木魚しもく」と呼ばれます。
一般的には仏壇に置く小さめのサイズがなじみ深いですが、本格的なお寺ではかなりの大きさの木魚がある場合もあるようです。それらの音色もサイズによって異なります。
木魚の用途
木魚は読経の際に打ち鳴らすことでお経のリズムを整える用途があります。絶えず打ち鳴らすことで、寝る間を惜しんで修業をする僧侶の眠気覚ましとしても使われたようです。
木魚は読経の際だけでなく楽器としても使われています。清朝時代の中国では民衆音楽の楽器として用いられたとされており、日本でも特に歌舞伎の下座音楽の楽器として用いられます。特に歌舞伎の中の寺院が登場する場面で木魚の音が奏でられます。
近年では木魚を原型とする「テンプル・ブロック」と呼ばれる楽器が西洋で開発され、クラシックやジャズのリズム楽器として用いられています。西洋といえども木魚の柔らかい音色は変わらないようです。
木魚の歴史
木魚の本格的な伝来は江戸時代、黄檗宗の高僧である隠元法師によるものとされています。当時の木魚は今より大きく平たく、より魚に近いデザインで、時刻を知らせる鐘として使用されていました。隠元法師が住んだとされる長崎県興福寺では木魚の原型「魚版」を今でも見ることができます。
かつて平たい形をしていた木魚が丸くなり、本格的に今の用途で用いられるようになったのは明治時代とされています。かつては禅宗のお寺のみで用いられていた木魚ですが、広まる過程で様々な仏教宗派で用いられるようになりました。
木魚はなぜ魚の形?
木魚はその名の通り魚をモチーフにしており、外側には魚の鱗を模した文様が彫られます。では魚をかたどる意味とは何なのでしょうか?
魚は眠っている時でも目を瞑らない習性があり、昔の人はこの習性を見て「魚は眠らない生き物だ」と解釈しました。これが転じて、「魚のように眠らず修業しなさい」という意味が込められるようになったのです。実際に木魚には眠らず修業出来るよう、眠気覚ましとしての役割もあります。
木魚が魚に見えないのはなぜ?
もともと魚をモチーフにしていた木魚ですが、現在のフォルムはあまり魚には見えません。なぜこのような形になったのでしょうか?
木魚の先端部分には魚の鱗に加え、龍が二頭向かい合った姿が彫刻されています。これはかつて、激しい川を登りきった鯉が龍に変身するという故事成語が起源とされています。つまり魚をモチーフとしていても、実際に彫られているのは龍の形なのです。
木魚と使用する宗派
木魚は主に真言宗、浄土宗、禅宗、天台宗で用いられます。そのため、それらの宗教で読経をお願いする場合は仏壇に木魚を用意する必要があります。
日蓮宗では木魚の代わりに木鉦と呼ばれる円形の仏具を鳴らします。日蓮宗ではお経を他宗派よりも速いスピードで読むことがあり、木鉦の甲高い音色はそれらのお経により適しているとされています。
浄土真宗では木魚を使用しません。浄土真宗では修業に励むのではなく、念仏を唱えることが徳とされているので、修業に用いる木魚は使用しないとされています。
木魚はどこで買える?
木魚は仏具店で買うことができます。安いものでは、バチと座布団とセットになって6千円前後で買うことができます。仏壇では一般的に5寸(15センチくらい)の木魚が使用されます。
木魚の高級品になると数百万のものまで生産されています。木魚の生産は愛知県でのみ行われており、特にお寺で用いるものは愛西市でしか生産されません。仏具としてだけではなく、地域の工芸品としての面が強いのも値段が高くなる要因でしょう。
木魚はどこに置く?
木魚を仏壇に置くときは、仏壇手前の右側に置きます。配置としてはリンが左側、木魚が右側というのが一般的です。リンとは仏壇に置いて「チーン」と慣らす金属のお椀のことを指します。
木魚はどのように作られる?
一見単純な構造に見える木魚ですが、複雑な手作業を行い時間をかけて作られています。では具体的にどのような工程で木魚は作られるのでしょうか?
木取り
原料となる丸太を木魚のサイズに合わせて切り出し、大まかな形を作ります。原料の木には楠や桑が用いられ、あらかじめ2~3年寝かせてから使用します。基本的に丸太の外側を加工し、芯はひびがはいるので使用しません。
整形・乾燥
基本的な形が整ったら、さらに細かく整形していきます。ノミとカンナで手作業で寸法や細かい形を整えていくのです。
外側に次いで、木魚の内側をくりぬきます。この際には専用の特殊なノミが用いられ、中を掘った割れ目の部分は響孔と呼ばれます。
整形が終わった木魚は数年間、乾燥させなければいけません。その期間は小さいものでは1年、最長で15年にもなります。サイズによって乾燥期間は左右され、より大きいものほど長く乾燥させる必要があります。
彫刻・研磨
乾燥が終わった木魚に彫刻を施します。彫刻には「並彫」「龍彫」「鯱彫」「蛇彫」といった種類があり、それぞれデザインが異なります。値段的にも彫刻により異なり、並彫の木魚がもっともリーズナブルに取引されます。反対に、龍彫や鯱彫のような複雑な文様になるほど、技術が要求され値段も高くなります。
彫刻の後、紙やすりで研磨をすることで木魚の最終的な仕上げをします。つや出しワックスを使い全体をきれいにしたところで木魚は完成します。
音取り
木魚のサイズや材質に応じて、最終的な音のチェックを行います。その木魚によって最高の音が出せるよう、手作業で確認していきます。木魚の音は「ポクポク」という柔らかい音色がポピュラーですが、サイズや材質によって重い音色や高い音色になることもあるようです。
木魚に関してのまとめ
この記事では木魚の意味や歴史、宗教との関わり、値段や製造方法について解説しました。
普段何気なく目にする木魚ですが、実はその形や用途にはしっかり意味があることがわかります。次に読経を聞く機会には、木魚を叩くのを聞いて「リズムをとっているんだな」と想像するのも面白いかもしれません。この記事が皆さんの生活の知恵の一つになれば幸いです。
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