お通夜に焼香だけ参加してもよい?香典や時間のマナーについて解説
公開日 : 2021/3/19
更新日 : 2021/3/19
なにかと忙しく、お通夜や葬儀に最初から最後まで参列する時間がないという場合もあるでしょう。忙しいことを理由にお通夜を焼香のみで済ませることは、果たして許されるのでしょうか。本記事では、お通夜に焼香のみ参列することの是非や、焼香の作法を解説します。
公開日 : 2021/3/19
更新日 : 2021/3/19
目次
お通夜に焼香だけ出席してもいい?
訃報は突然やってくるものであり、駆け付けたくても通夜や葬儀に参列する時間がないということも多いでしょう。そのようなとき、せめてお通夜の焼香だけでも参列したいと考えるのは人情といえます。
しかし、お世話になった人の葬儀なのに、お通夜の焼香だけ参列するのはマナー違反ではないのか気になる人も多いはず。以下では、お通夜に焼香だけ参列する場合の考え方について解説します。
お通夜に焼香だけ出席するのはマナー違反?
結論から言えば、お通夜に焼香だけ参列するのはマナー違反ではありません。近年は仕事や私用のために、葬儀に参列できないというケースは珍しくありません。
そのようなときに「せめて焼香だけでも参列したい」というのは、故人や遺族への誠意の表れとも言えます。むしろ、お世話になった人の葬儀を無視することの方が礼儀知らずといえます。
さらに、近年は家族葬や小規模葬の普及が見られます。小規模葬は身内だけでゆっくり最後の時間を過ごすためのものであるため、通夜の焼香だけを済ませてすぐに帰るという弔問の仕方は、現代の葬儀事情に合致するスタイルでもあります。
そもそもお通夜とは
お通夜とは、告別式の前夜に行う儀式です。遺族は夜通し線香の火を絶やさず、故人の遺体を囲んで過ごすのが習わしです。これは、故人との最後の時間を惜しんで冥福を祈るとともに、故人の遺体を見守るという意味が込められています。最近は葬儀事情の変化から、3~4時間で切り上げる「半通夜」を行うケースも増えています。
焼香の意味とは?
焼香とは、抹香を用いる儀式のことです。具体的には、焚かれた香を用いて、参列者が故人や仏を拝みます。焼香は葬儀のほかに、法要でも行います。
仏教では、焼香の香りは仏の食物と考えられています。つまり焼香とは、故人や仏に食事を捧げる行為といえます。故人に香を捧げることで、魂を慰めるとともに、冥福を祈ることができます。
焼香は、行なう側にも深い意味があります。焼香は、参列者の心身の邪気を払うと考えられています。つまり焼香は、参列者が故人と向かい合う前に、心身を清めるための行為でもあります。
お通夜に焼香だけ参列する場合のタイミング
お通夜に焼香だけ参列する場合には、いくつかタイミングがあります。具体的なタイミングと注意点について解説します。
お通夜の時間帯と流れ
お通夜で焼香だけ参列する場合には、お通夜全体の流れや時間を把握しておくことが重要です。一般的にお通夜は、18時~19時に開始されます。場合によっては、20時過ぎが開始時刻となることもあります。
法要だけであれば所要時間は1時間程度です。その後、参列者で会食がある場合は、さらに1時間程度要します。なお、一般的なお通夜の式次第は以下のとおりです。所要時間とあわせて参考にしてください。
- 司会者の開式宣言
- 喪主挨拶(5~10分)
- 僧侶の入場
- 僧侶の読経(30分)
- 焼香(10分~30分)
- 僧侶による説法(10分)
- 僧侶退場
- 喪主挨拶(5分)
- 司会者の閉式宣言
- 通夜振る舞い
最近は僧侶の説法は省略されるケースが多くなっています。また、最後の通夜振る舞いとは参列者同士で行う会食であり、こちらも省略される場合が多いです。
焼香に参列するタイミング
お通夜に焼香だけ参列する場合、弔問のタイミングは「お通夜の開始前」「お通夜中」「お通夜の終了後」の3パターンがあります。それぞれについて解説します。
お通夜の開始前
焼香だけ行う場合は、お通夜が始まる前に伺うというのがもっとも一般的です。この場合、お通夜の開始時刻の1時間~30分前を目安に会場に着くとよいでしょう。お通夜は18時~19時から始まることが多いため、17時~18時くらいに会場に入るのが理想的です。
受付が始まるタイミングか、少し前くらいの時間であれば、遺族も弔問客を受け入れる準備が整っています。そのため、お通夜中やお通夜後に伺うよりもゆっくり焼香することができ、さらに遺族へお悔やみを述べる時間も確保しやすくなります。
どうしてもタイミングが合わないのであれば、それよりも早い時間帯に弔問を行なうこともあります。この場合は、必ず遺族の了承をとっておきましょう。
お通夜の途中
開式前に間に合わない場合は、お通夜で焼香が行なわれる時間帯に伺うのが無難です。焼香は僧侶の読経の後に行われます。だいたい開式から僧侶の読経が終わるまでに30分~50分程度かかりますので、会場到着の時間帯の目安はお通夜開始から30分後程度です。
お通夜の途中に入場することは厳格に禁止はされていませんが、場合によっては僧侶の読経が終わるまで入場できないこともあります。あるいは、焼香が終わったあとに入場するのはバツが悪いものです。そのため、お通夜に途中入場する場合は、焼香の開始予想時刻よりも少し早めに到着しておくことが望ましいです。
到着後は、葬儀場スタッフや受付の指示に従いましょう。場合によっては、焼香が始まるまで会場の外でしばらく待機することもあります。
お通夜が終わった後
どうしても時間に都合がつかない場合は、お通夜が終わった後に弔問に伺うこともあります。お通夜はだいたい21時前後には散会しているため、その後の時間帯ということになります。お通夜の終了後は、遺族も一息ついている時間帯です。迷惑をかけないためにも、なるべく早い時間に伺うのがマナーです。
もう1つ注意したいのが、半通夜の場合です。半通夜の場合、お通夜が終わると遺族はすぐに帰宅していることもあります。そのため、お通夜後に焼香に行く場合は、遺族がいるかどうかや、焼香に行ってもよいのかを確認する必要があります。半通夜の場合も開始時刻や所要時間は、通常のお通夜と変わりません。そのため、遅くとも21時~22時には会場に着くことが望ましいでしょう。
帰るタイミングは?
お通夜に焼香だけ参列する場合、迷うのが帰るタイミングです。基本的に、焼香を済ませたらすぐに帰っても構いません。お通夜に途中入場する場合であっても、焼香を済ませたら席を立っても大丈夫です。あるいは、事前にスタッフに事情を話しておき、帰るタイミングを指示してもらうのもよいでしょう。
お通夜の開始前に伺うのであれば、比較的時間がゆっくりあるため、焼香後に遺族に挨拶を行います。お通夜の終了後の場合も、なるべく早く帰ることが望ましいものの、遺族に挨拶する時間くらいはあるでしょう。いずれの場合も、会場を出るときは受付に一声かけるようにしましょう。
お通夜に焼香だけ参列するときの香典とは?
お通夜に参列する場合は、香典を持参するのが一般的なマナーです。それでは焼香だけ参列する場合には、香典はどうすべきでしょうか。
香典は持参するのが基本
焼香だけ参列する場合であっても、香典は持参するのが原則ルールです。そもそも香典とは故人への弔いの気持ちを表すためのものであり、お供えするお花や線香の代替品にあたります。あるいは、突然の不幸に見舞われた遺族への助け合いの気持ちという意味もあります。
お通夜に参列しない場合であっても、知人の訃報に際して香典をおくることはあります。まして、焼香だけとはいえ、通夜に顔を出す以上は、通常通り香典の用意が必要です。
お通夜の香典の金額相場
焼香だけ参列する場合の香典の金額相場は、通常どおりお通夜に参列する場合と同様です。香典の金額相場は、焼香だけの参列かどうかではなく、故人との関係や自身の年齢によって変動します。
一般的な香典の金額相場について、年齢別・故人との続柄別に以下の表にまとめました。
20代 | 30代 | 40代以上 | |
両親 | 3万円~10万円 | 5万円~10万円 | 5万円~10万円以上 |
兄弟姉妹 | 1万円~5万円 | 3万円~5万円 | 5万円以上 |
祖父母 | 1万円 | 1万円~3万円 | 3万~5万円以上 |
おじ・おば | 1万円 | 1万円~3万円 | 1万円~3万円以上 |
そのほかの親族 | 3000円~1万円 | 3000円~1万円 | 1万円以上 |
友人知人、同僚など | 3000円~1万円 | 5000円~1万円 | 5000円~1万円以上 |
上記はお通夜の法要のみに参列する場合の金額相場です。今回は焼香にのみ参列することが前提ですので、香典の金額は上記の相場内で構いません。ちなみに、法要後の通夜振る舞いに参加する場合には、食事代として5000円~1万円を上乗せします。
不要な場合もある
香典が不要な場合もあります。例えば、遺族から前もって香典辞退の意志が伝えられているときです。特に家族葬や小規模葬などの場合には、香典を辞退される傾向があります。遺族は香典を受け取ると、香典返しを送るのが習わしです。そのため、辞退されているにもかかわらず香典を贈ると、かえって遺族の負担になることがあるので注意しましょう。
あるいは、さほど親しくない相手のお通夜であれば、香典が不要なこともあります。この場合ならば、香典なしにお通夜の焼香に参列することはマナー違反ではありません。気になるようであれば、「気持ちとして焼香だけ参列したい」と伝えれば、先方も不愉快には思わないでしょう。
香典が必要かどうか判断がつかない場合は、用意しておくのが無難です。会場の様子や遺族の態度を見て、香典を出すべきかどうか判断してください。
家族葬での焼香だけの参列はできる?
家族葬は、近親者だけでゆっくり最後の別れの時間を過ごすためのスタイルです。そのため、家族葬の案内があった場合は、近親者以外は参列を遠慮するのが基本的なマナーです。しかし、心情的に焼香だけでも参列したいという場合もあるでしょう。
その場合は、事前に遺族の意向を確認すれば、参列してよいこともあります。ただし、基本的には遠慮するのがマナーですので、遺族の態度が芳しくない場合は無理強いしてはいけません。また、参列する場合にも、焼香と最低限の挨拶を済ませたらすぐに帰るのがマナーです。
一方、家族葬であっても、参列を受け入れているケースもあります。例えば、家族葬という案内とともに、葬儀会場や日時などが記載されている場合は、参列者がいることを想定しています。ただしこの場合も、あらかじめ遺族に確認をとってから行くのが無難です。
香典は一応用意しておくべき
家族葬の場合は、香典を辞退しているケースが多いです。そのため、基本的には香典は不要と考えられています。しかし万が一の場合に備え、念のため香典を準備しておくのが無難でしょう。とくに、家族葬であっても弔問客の来訪を想定している場合や、「香典辞退」の明記がない場合は、香典が必要なこともあります。
お通夜での焼香の作法とマナー
焼香の基本的な作法について解説します。社会人として最低限のマナーでもありますので、あらためて確認してください。
焼香の種類
焼香の種類や作法は宗派などによって異なりますが、一般的には「立礼焼香」「座礼焼香」「まわし焼香」の3種類に分類できます。もっとも一般的なのが「立礼焼香」で、参列者は焼香台の前に進み、立ったまま焼香を行います。椅子が用意されている会場では立礼焼香が採用されることが多いです。
対して「座礼焼香」は、焼香台の前に膝行し、座って焼香するスタイルです。会場が和室などの場合に行われます。「まわし焼香」は焼香台を参列者の間でまわしながら、座ったまま焼香するスタイルです。参列者が少ない場合や、自宅・小さな葬儀場でお通夜を行うときに、参列者の移動を省略するためによく用いられます。
焼香の順番
焼香は故人と関係の深い人から順番に行います。具体的には、喪主・遺族・親族・そのほかの参列者の順番です。その他の参列者の場合は、着席している順番で案内されることが一般的です。
一般的な焼香の作法
一般的な焼香の作法である「立礼焼香」のやり方について解説します。立礼焼香は以下の流れで行います。
- 焼香台の前に進む
- 焼香台の前で遺族・僧侶・遺影の順番に一礼する
- 抹香を人差し指と親指でつかみ、額の位置まで押し戴く
- 抹香を香炉に撒く
- 上記を1~3回程度繰り返す
- 遺影に合掌する
- 遺族に一礼する
- 席に戻る
焼香の作法は宗派によって異なる
焼香のやり方や回数は、宗派によって違いがあります。例えば浄土真宗では、抹香をつまんだら押し戴かずに、そのまま香炉に撒きます。抹香の他に線香を用いる宗派もあります。また焼香の作法は、地域や家庭の風習によっても異なります。
お通夜に焼香だけ参列する場合の服装
お通夜に焼香だけ参列する場合の服装は、一般的な通夜での服装に準じます。お通夜には喪服を着用することが望ましいです。しかし、突然連絡が入ることも多いため、スーツやスーツに準じる平服での参列も許容されています。
具体的には、男女ともに黒や灰色などの暗い色味の服装です。必ず上着を着用し、ネクタイは黒色にしましょう。女性は落ち着いた色やデザインのワンピースでも構いません。ただし、アクセサリー類は控えましょう。
お通夜は焼香だけ参列してもマナー違反ではない
お通夜に焼香だけ参列することは決してマナー違反ではありません。むしろ、時間が無くても故人と最後の別れを惜しみたいという気持ちの表れです。しかし、場合によっては焼香だけの参列を歓迎されないこともあるため、事前に遺族に確認を取ることが望ましいでしょう。
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