知っておきたいお布施のマナー|お盆法要での金額や渡し方、書き方
公開日 : 2021/1/15
更新日 : 2021/8/13
毎年やってくるお盆ですが、お盆法要でのお布施の受け渡しに自信はありますか?お布施の金額の相場や紙幣の包み方、表書き、渡し方にも作法があります。そもそもお盆の法要とはどのようなものかを振り返りつつ、住職や親戚の方には聞きづらいお金に関する話を解説して行きます。
公開日 : 2021/1/15
更新日 : 2021/8/13
目次
お盆とは
お盆は、ご先祖や故人の霊を家に招いて供養する日のことで、通常は8月13日から16日までの期間です。期間中は故人の魂が帰ってきて家族と一緒の時間を過ごし、期間が終わると再びあの世へ帰っていきます。
盆提灯のたくさん灯る納涼祭に参加したり、茄子とキュウリの精霊馬を作ったりした思い出のある人も多いのではないでしょうか。このお盆は仏教の盂蘭盆経に記載される「盂蘭盆会」が日本に入って秋の魂祭りと融合したことで誕生しました。
様々な飲食を以って故人を供養し宗教者を招いて法要することで、ご先祖様の魂を苦しみから救うことを目的としています。
お盆の法要
先に述べた精霊馬のような飾り付けやお墓参りのほかにも、お盆の法要の中には住職の方を自宅に招いてお経をあげてもらい、ご先祖様の霊を供養する「棚経」があります。ただ、普段のお盆は親戚で集まるだけでもう法要はしていない、といった方も多いかもしれません。
確かに風習は義務ではないので、親戚との日程調整や金銭面の都合、これまで家族にそのような習慣が無かった等で法要を上げるのが難しい場合は無理にすることはありません。一方、普段のお盆では法要をあげなくても新盆・初盆だけは必ず行う方が多いようです。
新盆・初盆法要とは?
新盆・初盆とは故人の逝去の後の四十九日以降初めてのお盆のことです。もし四十九日の法要を行う以前にお盆の時期が来てしまった場合は、翌年のお盆が新盆・初盆となります。
初のお盆では、少し遠い親戚や故人の知人も招いて法要を上げるためやや規模が大きくなります。それらの要因が合わさってお布施の金額は普段のお盆よりやや高くなり、参加者にも略礼服程度の格式の服装が求められることも多いようです。
合同法要とは?
地域によって若干の違いはありますが、お盆の法要の際にはお供物として、花、水、食べ物、香、明かりの「五供(ごく)」を供えるのが基本的です。
しかし普段このような習慣がなければ、自宅でこれだけのものを揃え、さらに宗教者の方を呼ぶのはハードルが高いのではないでしょうか。その場合、寺院でまとめてお盆の法要をあげてもらうことができます。その機会を「合同法要」と言います。
他のご家族と一緒に法要を上げる合同法要ですが、お布施の相場は自宅で上げる時と変わりません。また、服装もそれほど正装をする必要はなく、男性の場合は落ち着いたスーツならば、女性の場合も派手な色や柄でなければ問題ありません。
お布施とは何か
お布施とは法要の後に宗教者の方にお返しするお金のことです。法要を行っていただく機会やその法要の内容、さらには宗派、宗教によってその金額は異なります。
今回はそもそもお布施はなぜ払うのか、そして仏教の法要、特にお盆の際に一体どれだけかかるのかを焦点にします。
お布施の捉え方
お布施は読経を上げてもらう対価、ではありません。何かの商品やサービスに対してお金を支払うのではなく、「宗教者を通じて御本尊に捧げる」役割や「お布施でそのお寺や住職の方を支えることで間接的に御本尊を支える」意味合いを持ちます。
故人の冥福を祈っていただいたお礼の気持ちを住職に表すのがお布施です。
お布施の金額について
先の段落で述べたようにお布施とは住職の方に法要の感謝の気持ちを示すためのものです。したがって決まった値段は存在しません。宗派や地域によって金額が変わるだけでなく、お寺との普段の付き合いによっても変化します。
かつては地域社会が一体となって生活していたので、お寺との付き合いも深くお葬式の作法などの知識も共有されていましたが、高度経済成長期に農村から都市部へ人口が移動し家族の結びつきが弱まるにつれて、これまで明言されずとも受け継がれてきた風習は徐々に薄まってきてしまいました。
お布施の相場もその一つです。相場について全く検討がつかないときは地域に詳しい葬儀社に相談することも可能です。またもし普段お世話になっているお寺の住職と親しいならば、直接聞いてしまうのも一つの手かもしれません。
お布施の相場
お布施は宗教者の方へ感謝の意を示すもので、金額はお寺との関わりや個人的な都合(例えば金銭状況など)でも変化します。
だからこそ普通どの程度の金額を包めば良いのか、誰に聞けば良いのか分からず気になりますよね。大きく通常のお盆の法要と新盆・初盆にわけて金額の相場はどの程度なのか解説します。
新盆・初盆でのお布施
新盆・初盆のお布施は普通より多めに包む、と聞いたことがあるかもしれません。新盆・初盆では故人の旧友、知人や少し離れた親戚も呼ばれることが多く、法要の規模も比較的大きくなります。
住職の方の気遣いや法要に関わる手間も大きくなるため、感謝の気持ちを示すために普通のお盆よりも多めに包むようです。相場は一般的に3万円〜5万円と言われています。
普段のお盆でのお布施
新盆・初盆以降の普段の年のお布施ではいくら包むのが普通なのでしょうか。一般的な相場は5000円から1万円程度のようです。初盆・新盆に比べて法要の参列者数が減ることも価格が下がる原因の一端です。
一方で、規模が小さくなることでお盆の法要は遺族の自宅で行われることが多くなります。住職に自宅まで来ていただく場合は、お車代と御膳料もお渡しするのが一般的です。お車代と御膳料は何に対して支払うのか、その相場はどの程度なのか後述します。
宗派によってお布施の相場は変わるのか?
宗派によって法要、お布施の捉え方がやや異なるため金額にもその差が反映されていますが、大まかに5000円〜3万円の範囲以内には収まっています。大半の宗派では、5000円〜1万円がボリュームゾーンですが、例外的に日蓮宗は1万円〜3万円です。
宗派によるお盆の捉え方の違いを紹介すると、例えば浄土真宗ではお盆にご先祖は帰ってきません。なぜならば故人はすでに極楽浄土と呼ばれる浄土の世界に生まれ変わっているからです。代わりにお盆では先祖への感謝の気持ちを述べます。
お車代の相場
お車代とは、住職の方に自宅まで来ていただくご足労に対してお支払いするお金です。移動距離にもよりますが、相場は5000円から1万円です。また、お車代を出す代わりにタクシーを手配しその往復の料金を直接支払う手段もあります。
お車代を渡す封筒はお布施の封筒とは別に用意し、面に「お車代」と書きましょう。金額や名前などを書く必要はありません。
御膳料の相場
御膳料とは、住職の方にお食事を提供する代わりにお渡しするお金です。御膳料は会食の内容や場所によっても変わりますが、相場は5000円〜2万円です。もっともお寺との関わりが深い場合や、地域によっては住職の方とそのまま食事会をすることもあるかもしれません。
そういった場合には御膳料は必要ありません。ただし住職の方にも日程の都合がありますから、念のため用意しておくと不測の事態に備えることができるでしょう。
お布施を包むときのマナー
宗教者の方に法要の感謝の気持ちを示すお布施ですが、感謝の気持ちを示すためには礼儀やマナーがしっかりしていなければなりません。もし間違えていたとしても住職の方はきっと指摘しませんし、親戚にも注意されないことが多いでしょう。
そうすると正しいマナーはいったいいつ学べば良いのでしょうか?そもそも感謝の気持ちを示すのは弔事なのでしょうか?それとも慶事なのでしょうか?お金の包み方や表書きについても解説していきます。
何で包めば良いのか
最も正式な作法では、奉書紙に紙幣を包んで渡すことになっています。奉書紙というのは日本に古来よりある白い和紙で、江戸時代には公文書に使われていました。これが転じて現在では大事な場面に使う紙になったようです。
奉書紙には表裏が存在し、つるっとした手触りの方が表、ざらついた手触りの方が裏です。筆で文字を書く際、表に比べて裏の方が滲みますが、絶対に裏に書いてはいけないという事はなく個人の好みが尊重されることもあるようです。
もし奉書紙が用意できない場合は郵便番号などの印刷のない白い封筒を使いましょう。
紙幣の入れ方について
紙幣は新札が好ましいとされていますが、用意できなくても問題ありません。紙幣はまず半紙で一度包みます。この時肖像画が表面に来るようにしましょう。半紙で包んだ紙幣を、その上から奉書紙、あるいは封筒で包みます。
お盆の法要は不幸の場ではないため、奉書紙で包む際は不祝儀の折り方にならないように注意しましょう。上側の折り返しに下からの折り返しを重ねる慶事の折り返しにしなければなりません。
ただし封筒を用いる場合は封筒を二重にしたり、もともと二重の封筒を使ったりすることはできません。不幸を「重ねる」ことに繫がるため避けるべきです。
しかし、お布施用の封筒と一回り小さい中袋用の封筒がセットになって売っている場合は、同時に使うことが可能なようです。
水引の色
奉書紙で包む場合でも白い封筒に入れる場合でも水引は必要ないとされていますが、地域の風習によっては水引をかけることもあるようです。もし水引をかけるときは、関東では双銀や白黒のものが一般的で、一方関西では白黄のものを使います。
水引の数は5本か7本で、結びきりかあわび結びにします。水引を使うか否かは親族や普段お世話になっているお寺に聞き、それでも迷うなら付けなくても問題ありません。
お布施袋の表書き
既に「お布施」あるいは「お礼」と印刷されている封筒の場合は書く必要はありませんが、奉書紙や無地の封筒の場合は自身で「お布施」あるいは「お礼」と書く必要があります。奉書紙あるいは封筒の上段に「お布施」と書いたら、下段には自分の名前を書きます。
この際もちろん家の名前でも問題ありません。先述したように法要は弔事ではなく、お布施は宗教者の方に感謝の気持ちを示すために渡すので、薄墨ではなく普通の黒い墨を使うようにしましょう。
中袋の書き方
中袋がある場合は中袋に、ない場合はお布施袋の裏に名前、住所と金額を記しておくと丁寧です。お盆の時期には住職の方は1日に複数の檀家を回ることも考えられるので、あとで見分けがつくようにしておくと良いでしょう。
金額を書く際には「金〇〇圓也」の形式に従い縦書きします。数字は壱、弐、参のように漢数字の旧字体を使いましょう。圓も円の旧字体です。百や千、万の旧字体は佰、阡、萬と著します。
一般的に旧字体の漢数字を使う目的は、あとで金額の書き換えができないようにすることです。
お布施を渡すときのマナー
先ほどマナーの重要性、そしてそのマナーを学べる機会が少ないことを主張しました。お布施を渡すときというのは、ある意味でそういったマナーが住職や親戚一同に見られてしまう場でもあります。
感謝の気持ちを示しつつ、できるだけ親戚の前で恥をかかないように渡す際の作法を確認しておきましょう。
タイミング
お布施を渡すタイミングに関する意見はかなり割れています。お盆の法要を自宅であげていただいた時に渡すタイミングとして有力なのが、読経に来てくれた時と読経後お帰りの準備をする時の二つです。
前者では「本日はどうぞよろしくお願いします」と挨拶しながら、後者ではその日の感謝を伝えながら手早く渡しましょう。合同法要の場合は会場にお布施の受付が存在することがあります。
もしなければ読経前に挨拶をする時か、読経後にお礼を言う時が適切です。住職の方を妨げることなく感謝の意を伝えられればそれほどタイミングは重要ではないようです。
渡すときの注意点
渡すときにお布施の文字を相手に向ける、感謝の言葉を添えるなどは一般的な社会常識と変わらず特筆する点でもありません。ただ、お布施を渡すときにお布施袋や奉書紙を直接持って渡す、あるいは畳や床の上に置くのは一般的ではありません。
菓子折りの上にお布施袋を乗せて渡すこともありますが、切手盆か袱紗(ふくさ)を用いるのが基本です。
切手盆を用いて渡す
屋内でお布施を渡す場合は切手盆があると最も丁寧です。切手盆とは黒く小さいお盆で、金封を渡すために慶弔両方で使うことができます。お盆は宗教者の方へ真っ直ぐ向くようにしましょう。
袱紗を用いて渡す
切手盆がない場合袱紗を用いて渡すこともできます。袱紗は色合いによって慶事用と弔事用が分かれますが、紫のものを一つ持っておくと両方に使えて便利です。実際に袱紗を用いて渡す時には、住職の方の前で袱紗の上にお布施を載せて差し出します。
自信を持って感謝の気持ちを示すために
お盆のお布施の金額相場は5000円から1万円でした。新盆・初盆ならばやや高く1万円から3万円になります。お布施は宗教者の方へご先祖さまを供養していただいた感謝の意を示すために送るものです。
お盆で毎年お世話になるならば、一度しっかりマナーを身につけて自信を持ってお布施を送ることをお勧めします。その上で本記事が参考になれば幸いです。
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