神式の葬儀に香典は必要?金額相場や書き方マナーについて解説
公開日 : 2020/12/4
更新日 : 2020/12/4
神式の葬儀に参列する場合、香典はどうしたらよいのでしょうか。以下では、神式の葬儀の香典にまつわる疑問について解説しています。香典袋の選び方や表書きの書き方など、基本的なマナーを改めて確認してみてください。神式葬儀におけるそのほかの注意点にも触れています。
公開日 : 2020/12/4
更新日 : 2020/12/4
目次
神式の葬儀とはどんなもの?
神式の葬儀のことを「神葬祭」と呼びます。神葬祭と仏式の葬儀では、死生観や葬儀の内容が大きく異なります。たとえば、仏教では、葬式は故人の魂を極楽浄土へ送り出すための儀式です。
一方、神葬祭を行うのは、故人の魂を家に留めて守護神にすることが目的です。これは、神道の先祖崇拝に基づく考え方です。また、神道と仏教では葬儀を行う場所にもちがいがあります。
仏教では寺院で葬儀をあげることがあります。しかし、神道では神社で葬儀をあげることはありません。神道において死は「穢れ」であり、聖域である神社に穢れを持ち込むのはよくないとされているからです。
神式の葬儀の大まかな流れ
神葬祭は2日かけて行うのが一般的です。1日目は通夜祭と遷霊祭が行われます。これらは仏式の葬儀の通夜にあたる儀式です。通夜祭では、神職が祝詞を奏上し、参列者は玉串を奉って拝礼します。遷霊祭は通夜祭の中で行われ、死者の御霊を遺体から霊璽に移すための儀式です。霊璽とは、仏教でいう位牌にあたります。
神葬祭2日目には葬場祭・火葬祭・埋葬祭・帰家祭が行われます。いわゆる告別式にあたるのが葬場祭です。神職による祝詞奏上や参列者による玉串奉奠などが行われます。その後、故人の遺体を火葬・埋葬するための儀式に移ります。
帰家祭とは、埋葬祭後に自宅に帰り、塩や手水で身を清めた後、霊前に神葬祭が終わったことを報告する儀式です。こののち、神職などを招いて食事などをふるまう「直会の儀」が行われます。
香典とは
香典とは、死者の霊前に供える金品です。通夜や葬儀のほか、法要などに参列する際に、参列者が持参します。香典の香は、「線香」を表します。もともとは、葬儀の参列者は自分で上げる線香を持参していました。
それが、いつしか現金を包むという習慣に変化したわけです。現金を包む理由として、故人への弔意を表すほか、急な不幸が起こった遺族への助け合いの気持ちがあります。このように、香典は線香の代わりに出す金品です。線香は仏式のものであり、したがって香典も仏式の葬儀に基づいた風習だといえます。
神式の葬儀には香典が必要?
前述のように、香典は仏式の葬儀の風習です。しかし、神葬祭であっても、参列者は現金を包んで持参するのがマナーです。ただし、香典ではなく「玉串料」や「榊料」と呼ばれています。
葬儀に現金を包むのは、故人への敬意と、遺族への助け合いの気持ちが理由です。そのため、神式の葬儀であっても香典にあたる現金を持参するのが一般的です。神式の香典は、仏式の香典と名称や表書きの書き方が少し異なるものの、基本的なマナーは共通と考えてかまいません。
神式の葬儀の香典の相場
神式に限らず、香典を包むときに頭を悩ませるの香典の金額です。香典は、故人との関係性や香典を包む人の年齢によって金額が変わります。また、葬儀後の会食の有無によっても微妙に変動します。ちなみに、神式と仏式では、香典の相場に大きな違いはありません。
金額は故人との続柄によって異なる
香典の金額は、故人との関係が深いほど大きくなります。つまり、近しい親族ほど大きくなり、遠い親戚や友人・知人は少額を包むのが一般的です。故人との関係別の香典の相場を以下の表にまとめました。
故人との関係 | 金額 |
両親 |
20代:3~10万円 30代:5~10万円 40代以上:5~10万円 |
祖父母 |
20代:1万円 30代以上:3~5万円 |
兄弟姉妹 |
20代~30代:3~5万 40代以上:5万 |
叔父叔母・そのほかの親族 |
20代:5000~1万円 30代以上:5000円~3万円 |
友人知人・同僚 |
20代:3000~5000円 30代以上:5000円~1万円 |
以上が目安です。近しい親族であっても、交流が少なかったのなら少なめの金額を包むのが一般的です。反対に、親交が深かった場合は、金額を上乗せすることもあります。ただし、香典を包む人が若年の場合は、無理に多額の香典を包む必要はありません。故人との関係性を考慮しながら、金額を決めてください。
会食がある場合
葬儀後には、直会の儀などの会食があることが多いです。会食に参加する場合は、飲食費を上乗せした金額を香典として包みます。飲食費は1人あたり5000~1万円が妥当です。子供の場合は、1人あたり3000~5000円が目安です。
神式の葬儀の香典袋の選び方
香典袋は、金額や宗教にあわせて使い分けが必要です。たとえば神葬祭の香典では、仏式の香典袋を使用することはできません。また、水引の色や結び方にも注意が必要です。
柄が入っているものは注意
香典袋の中には、柄が印刷されているものがあります。このうち、蓮の花が印刷されているのは仏教用の香典袋です。また、十字架やユリの花のプリントがあるものはキリスト教用です。どちらも神葬祭に持参する香典には使用できませんので、注意してください。
神式の香典では、白無地の香典袋を選びます。白無地の封筒はコンビニエンスストアなどでも市販されているので、手に入りやすいでしょう。水引が印刷されたものか、白無地の封筒に水引をかけて使用します。香典の金額が大きい場合は、白い和紙でできた香典袋など、高級感のあるものを用いてください。
水引の選び方
水引は、香典の金額に応じて使い分けが必要です。神道の葬儀の香典に用いられる色は、黒白・双銀です。香典袋によっては、水引が印刷されているものもあります。水引が印刷された香典袋は、香典の金額が1万円より少ない場合に利用します。
香典の金額が1万円以上なら、水引がついたものを選びましょう。1~3万円程度を包む場合は、黒白の水引が一般的です。5万円以上の場合は、双銀の水引を選びましょう。また、5万円以上を包む場合は、「中金封」などすこしサイズの大きい香典袋を用います。
弔事に用いる水引の結び方は、「あわじ結び」あるいは「結び切」です。以上の水引のマナーは神式・仏式・キリスト式で共通です。
神式の葬儀の香典の書き方マナー
ここからは香典の書き方のマナーについてご紹介します。基本的に葬儀の香典の書き方のマナーは、神式・仏式・キリスト式に関わらず共通です。表書きだけは宗教ごとに書き方が異なりますので、注意してください。
筆記用具
香典袋を書く時の筆記用具は、毛筆です。筆ペンで代用できます。また、筆記用具を選ぶときは、墨の濃さにも注意しましょう。葬儀の香典には薄墨を使うのがマナーです。これは、「悲しみで墨が薄まった」という弔意を表すためです。
薄墨を使うのは仏式のマナーと言われていますが、神式にも共通です。仏式の場合は、四十九日以降の香典には通常の濃さの墨を使用します。神式の場合は50日祭が、仏式の四十九日にあたります。そのため、五十日祭以前に行われる儀式の香典には、薄墨を使用するようにしましょう。
表書き
表書きは、包んだお金の題目です。香典袋の表側の上段中央に縦書きします。ちょうど水引の飾りの真上です。神道の香典に用いる表書きは「玉串料」「御玉串料」「御神饌料」「御榊料」などが代表的です。いずれも葬儀へのお供え物のことを指し、お供え物の代わりの金品という意味になります。
「御霊前」という表書きも使用できます。神道では、人は亡くなってから50日目に神様になると考えられています。逝去から50日目までは、霊として存在しています。そのため、逝去~50日祭までの期間に出す香典なら、「御霊前」という表書きが使用できるというわけです。
氏名
氏名は、香典袋の表側の下段の中央に書きます。水引を挟んで、表書きの真下の位置です。氏名は、かならず香典を包んだ人のフルネームを書きましょう。葬儀には同姓の参列者がいる可能性もあるため、あとで遺族が誰からの香典なのか分かるようにするためです。
夫婦連名の場合は、右側に夫の氏名を書き、左側に妻の名前だけを書きます。また複数人で連名で香典を出す場合は、立場が上の人の名前から、右から左へ順番に3人までフルネームを書くことができます。
4人以上になる場合は、代表者の名前を書くか、「〇〇一同」のように所属や団体名を表しましょう。職場関係者で包む場合は、一番右に会社名を記載します。
中袋の書き方
香典袋は、のし袋と中袋の二重になっているものが多いです。中袋の表側には金額を書き、裏側には香典を包んだ人の住所と氏名を書きます。それぞれの書き方について、具体的に見ていきましょう。なお、中袋にはボールペンや細いサインペンを使用できます。
表側
中袋の表側には金額を縦書きします。このとき、旧漢数字を使うのが作法です。旧漢数字を使うのは、金額の改ざんを防ぐのが目的です。同じ理由から、金額の頭と末にはそれぞれ「金」「円」と加えます。
たとえば3万円を包む場合は「金参萬円」と書きます。一目で金額が分かりやすいよう、すこし大きめに書くのがよいでしょう。香典袋によっては、横書きの欄が設けられているものもあります。金額を横書きする場合は、算用数字を使用します。たとえば3万円の場合は「金3万円」「¥30000円」などと書きます。
裏側
香典袋の裏側には、香典を包んだ人の住所と氏名を書きます。中袋にも氏名を書くのは、外袋と中袋がバラバラになっても、誰が香典を包んだのか分かるようにするためです。住所と氏名は、香典袋の裏側の下段の左側に書くのが一般的です。
一番左に氏名を書き、その右隣りに住所を書きます。バランスよく配してください。縦書きのため、住所の番地や部屋番号には漢数字を用いますが、常用漢字でかまいません。また、住所を横書きすることもあります。横書きの場合は、算用数字を使用します。
中袋がない場合
中袋がない香典袋もあります。また、不幸が二重になることを避ける意味から、あえて中袋なしの香典袋を用いる風習がある地域などもあります。中袋がない場合は、のし袋の裏側に金額と住所を書きます。氏名は表側に記載していますので、裏側は省略します。
金額と住所は、のし袋の裏側の下段の左側です。一番左に金額を書きます。住所はその右側に書きます。中袋がある場合と同じく縦書きで、金額や番地には漢数字を用います。とくに金額は旧漢数字ですので注意してください。
また、のし袋の裏側に限っては、ボールペンの使用も許容されています。細々とした記載が多いため、読み取りやすさを重視しているからです。ただし、インクの色は黒です。
神式の葬儀での香典を渡すタイミング
神式の葬儀の香典は、仏式と同じく通夜・本葬のどちらか一方にのみ出します。両方準備する必要はありません。神葬祭の通夜祭・遷霊祭と葬場祭の両日に参列する場合は、通夜祭のときに香典を渡すのが一般的です。
どちらか一方に飲みん参列する場合は、そのときに持参しましょう。香典は、受付で記帳をした際に、受付係に預けます。あるいは、喪主や遺族に直接手渡したり、祭壇や祭壇脇に設けられている置き場に出したりする方法もあります。いずれの場合も、儀式が始まる前に渡しましょう。
神式の葬儀のそのほかのマナー
神式の葬儀には、香典以外にも気をつけたいマナーがあります。代表的なものを3つご紹介します。
服装のマナー
神式の葬儀に参列する場合には、一般的な喪服を着用します。具体的には、男性はブラックスーツ、女性は黒のワンピースやスーツです。また、ネクタイ・バッグ・靴下などもすべて黒で統一します。
数珠は使わない
葬儀といえば数珠というイメージがありますが、神式の葬儀では数珠は使用しません。なぜなら、数珠は仏教の僧侶が、読んだお経の数を数えるために使う仏具だからです。神式の葬儀に参列する場合は、数珠を準備する必要はありません。
お悔やみの言葉に注意
神式の葬儀で特に注意したいのが、お悔やみの言葉や忌み言葉です。神式の葬儀で用いられるお悔やみの言葉は、主に以下があります。
・御霊のご平安をお祈りいたします ・御霊の安らかならんことをお祈り申し上げております ・心より拝礼させていただきます
「お悔やみ申し上げます」「御愁傷様です」なども使用できます。反対に、神式の葬儀で使用できないのが「冥福」「成仏」「供養」などの言葉です。これらはすべて仏教の死生観に基づく言葉であるため、神式の葬儀では使用できません。知らず知らず使うことも多い言葉ですので、特に注意しましょう。
弔意を表すことが大切
神式や仏式などの宗教に関わらず、香典とは、故人への弔意と、遺族への慰めを表すための手段です。誠意のつもりが逆に不愉快な思いをさせてしまわないよう、マナーをしっかり守る必要があります。
もし神式の葬儀で、香典の書き方や金額について迷ったときは、おもいきって遺族や葬儀会社のスタッフに問い合わせてみるのも1つの方法です。神式の葬儀はあまり馴染みがありませんので、しっかり確認を行ってから、喪服や香典の準備をしましょう。
ご相談・お問い合わせください