馬場元子さんの葬儀|ジャイアント馬場と全日を支えた妻の最後とは

ジャイアント馬場さんの妻である馬場元子さんの葬儀は親族のみで執り行われました。葬儀についてお伝えする前に、全日本プロレスの女帝とも評された馬場元子さんの生涯をご紹介いたします。

馬場元子さんは、1940年1月2日に兵庫県明石市で誕生します。実家は石油販売会社を経営しており、裕福な家庭で育ちました。そんな折、15歳だった馬場元子さんは近所でキャンプを行っていた読売ジャイアンツの馬場正平(後のジャイアント馬場)さんと出会います。

身長が175cmもあったといわれている馬場元子さんにとって、209cmもあった馬場さんは理想の男性だったのかもしれません。その後、馬場元子さんは留学、プロレスラーに転向したジャイアント馬場さんは遠征とお互いにアメリカで生活を送っていたことから交際が始まります。

そして、1966年にふたりは婚約。しかし、馬場元子さんの実家がプロレスラーの妻になることへの反対や、ジャイアント馬場さんのファン心理にも配慮して、ふたりの結婚生活は1982年まで伏せられていたのでした。

馬場元子さんは力道山が設立した日本プロレス所属時代から、ジャイアント馬場さんのプロレスラー人生を支え続けます。それはジャイアント馬場さんが全日本プロレスを旗揚げし、代表取締役社長に就任してからも変わることはありませんでした。

しかし1999年1月31日、最愛の夫・ジャイアント馬場さんは肝不全のため、61歳で入院先の東京医科大学病院で死去してしまいます。全日本プロレスの代表取締役社長には、2代目タイガーマスクだった三沢光晴さんが後継者として選ばれたのでした。

馬場元子さんは60歳のとき、全日本プロレスの代表取締役社長に就任します。ジャイアント馬場さんの後継者だった三沢光晴さんが、プロレスリングノアを旗揚げし、全日本プロレスを退団してしまったからです。

苦境に立った馬場元子さんでしたが、別団体にいた元全日の天龍源一郎さんを呼び戻したり、新日本プロレス所属だった武藤敬司さんなどの全日本プロレス移籍により、なんとか経営を持ち直していくのでした。

一時期、グレートムタとしても有名な武藤敬司さんに全日本プロレスの社長を任せていたこともありました。しかし、全日本プロレスの工業は盛り上がりつつも、なかなか経営が安定することはなく企業としての借金は膨らむばかりだったのです。

2014年7月、最終的に馬場元子さんはジャイアント馬場さんの最後の教え子・秋山準さんに全日本プロレスの社長業を託します。秋山準さんはジャイアント馬場さんが理想とした王道のプロレスを実現してくれる人だと、馬場元子さんが確信できたからです。

2018年4月14日21時9分、馬場元子さんは肝硬変のため東京都内で死去します。病院で余命2週間であることを医師に告げられた際には、弱っている姿を見られたくない思いからから、全日本プロレス関係者の前に姿を見せなくなったといわれています。

最後に公の場へ馬場元子さんが現れたのは、2016年10月15日に行われたジャイアント馬場さんへの新潟県三条市名誉市民贈呈式でした。「馬場さんもとっても喜んでいると思います」と、馬場元子さんは感無量の様子であったと伝えられています。

馬場元子さんといえば、注目されるのが三沢光晴さんとの関係です。ジャイアント馬場さんが死去した後、代表取締役に就任した三沢光晴さんは馬場元子さんの方針に反発して、プロレスリングノアを旗揚げしてしまったからです。

しかも、三沢光晴さんは全日本のレスラーをノアへ根こそぎ引き連れていってしまいました。全日本に残ったのは3人のみ。副社長だった川田利明さん、フリーランスレスラーの渕正信さん、後に鈴木みのるさんと愚連隊としてタッグを組む太陽ケアさんだけでした。

ジャイアント馬場さんが築き上げた王道のプロレスを守りたい馬場元子さんと、新体制を組んで全日本プロレスを大改革したい三沢光晴さんとでは、目指す理想が180°違ってしまっていたことが確執の原因であったといわれています。

ジャイアント馬場さんへの愛情が深すぎる馬場元子さんは、いろいろとプロレス界を騒がせてしまいます。そのひとつには、ジャイアント馬場さんの遺体隠蔽事件がありました。これは、死期が近づき弱っていくジャイアント馬場さんの姿を弟子たちに見せたくなかったからです。

強いレスラーだったジャイアント馬場さんを強いイメージのまま送り出すべく、葬儀を密葬にしようと馬場元子さんは考えていたのです。自宅がある高級マンションまで、ジャイアント馬場さんの遺体を全日本プロレスの若手に運ばせたといわれています。

しかし、結局はマスコミに嗅ぎつかれてジャイアント馬場さん死去の報道が流れてしまいます。この時点で、後に社長に就任する三沢光晴さんら全日本プロレスの重鎮メンバーは、ジャイアント馬場さん死去を知らされていなかったことも、後の確執の原因になってしまうのです。

ジャイアント馬場さんの遺体隠蔽計画、三沢光晴さんのプロレスリングノアの旗揚げなどが災いして、馬場元子さんは「全日本プロレスの女帝」などとよからぬイメージをつけられ、一部のアンチファンからバッシングされてしまいます。

しかし、このような事態になることは生前のジャイアント馬場さんもお見通しだったようです。「三沢光晴さんと馬場元子さんは上手くいくはずがない」と予見したジャイアント馬場さんは、自分亡き後、元子さんの後ろ盾になってほしいと和田恭平レフェリーに託していたのです。

ジャイアント馬場さんの側近だった和田恭平さんは遺言どおりに、全日本プロレスに残り、陰ながら馬場元子さんを支えていきます。ジャイアント馬場さんの理想を追い求めるばかりに、周囲が見えなくなっていた馬場元子さんに後進へ託すことの大切さを伝えていくのでした。

G馬場さんが残した全日本プロレスを守りたかった馬場元子さん。三沢光晴さんの後に社長に就任した武藤敬司さんの新体制にも心から頷くことはできませんでした。武藤敬司さんが王道プロレスとは真逆の方針をとったこと、和田恭平レフェリーを退団に追い込んでしまったことが原因であるでしょう。

その後、武藤圭司さんは、スーパーヘイト殴打事件の責任を取って辞任することになります。経営的に立ち行かなくなっていた全日本プロレスは、企業再生事業を請け負っていた企業・スピードパートナーズに再生を託すのです。

しかし、スピードパートナーズの白石伸生さんのやり方についていけない武藤敬司さんは全日本プロレスを退団。そんな折、馬場元子さんは、三沢光晴さんに追従したもののノアと上手くいかなくなったG馬場さんの最後の教え子・秋山準さんに社長就任をお願いするのです。

2014年、秋山準さんの新体制に全日本プロレスを託した馬場元子さんは、役職から退きます。そして2018年4月14日、肝硬変のため死去。余命を医師から告げられたことを全日本関係者に伝えることなく逝ったのは、「馬場元子さんらしい」と多くのレスラーから悼まれています。

馬場元子さんの葬儀は、親族のみで執り行われました。4月19日が通夜、20日が告別式でした。場所などは公表されていないようです。ジャイアント馬場さんの巨人症が原因で子供をつくらなかったことからも、馬場元子さんの遺産は養女となった30代女性が相続したといわれています。

馬場元子さんのお別れ会は、2018年7月18日に東京永田町にあるザ・キャピトルホテル東急にて開催されました。全日本社長の秋山準さん、天龍源一郎さん、阪口征二さん、徳光和夫アナウンサーなど、レスラーや著名人を含め160人が参会したそうです。

馬場元子さんのお墓は、兵庫県明石市の本松寺です。馬場元子さんの父親が逝去したとき、あまりにも悲しむ元子さんを心配したジャイアント馬場さん。「お義父さんのお墓の横に、自分たちのお墓をつくるから」と慰めたことから、実家のお墓の隣で眠ることになりました。

お別れ会の前月に当たる6月に納骨式が行われました。その時に、馬場元子さんの遺骨とともに、ジャイアント馬場さんの遺骨も納められました。ふたりは「一緒にお墓に入ろう」と、約束していたからだったのです。

ジャイアント馬場さんのプロレスラー人生を支え続け、全日本プロレスを紆余曲折しながら守り抜いた馬場元子さん。葬儀の後は、最愛のジャイアント馬場さんと一緒にお墓に入る選択をしました。愛するパートナーがいる方は、馬場元子さんの最後をぜひ参考にしてみてください。