中曽根康弘さんの葬儀｜引退勧告したのは小泉総理大臣？偉大な功績も

中曽根康弘さんは風見鶏と揶揄されながらも、アメリカのレーガン大統領とのロンヤス外交や3公社の民営化、基礎年金制定など偉大な功績と高い評価を後世に残した政治家です。葬儀についてご紹介する前に、中曽根康弘さんがどんな政治家だったのか足跡をたどっていきましょう。

材木商の次男として、群馬県高崎市末広町に生まれた中曽根康弘さん。エリートコースを歩み、東京帝国大学法学部政治学科卒業後は内務省に入省します。23歳のとき、海軍の短期現役制度に応募して太平洋戦争を経験しました。

内務省に復員後、主にアメリカ軍との折衝を担当するなかで、中曽根康弘さんは日本が敗戦した無念さを感じたそうです。このような想いが、中曽根康弘さんの政治家を志す原点になったとされています。

そして、一念発起した中曽根康弘さんは内務省を辞めてしまいます。そして、郷里の群馬県高崎市に戻り、「地盤、看板、カバン」なしで第23回衆議院議員総選挙で初当選するのです。当時は、内務省の退職金で購入した自転車に乗って選挙活動をされていたそうです。

様々な政党を渡り歩いた中曽根康弘さん。改進党時代に、読売新聞の社主だった正力松太郎さんとタッグを組んで原子力開発をスタートさせます。原子力発電の燃料となるウラン235にちなんで、2億3千5百万円の原子力予算を国会に上程したのです。

原子力開発の目的は、日本に新しい資源エネルギーと商業利益を確保するためなど、様々な目論見があったとされています。中曽根康弘さんは原子力予算を通したことで頭角を現し、第2次岸改造内閣で科学技術庁長官として初入閣を果たすのです。

中曽根康弘さんは、かねてから批判していた佐藤栄作内閣にあっさりと入閣したことから「風見鶏」と揶揄されるようになります。理由は、佐藤栄作さんが沖縄返還を目指していたことに共感したからだそうです。

中曽根康弘さんはこういった持ち前の処世術で運輸大臣、防衛庁長官の要職を歴任していきます。三角大福中の権力争いのなかでも、真っ先に出馬を取りやめ、田中角栄支持に回ります。そして、第一次田中角栄内閣で通商産業大臣兼科学技術庁長官のポストを手にするのです。

読売新聞の社筆・ナベツネこと渡邊恒雄さんのバックアップと、政界の最大派閥だった田中角栄派の支持を得て圧倒的得票数で第71代内閣総理大臣に就任した中曽根康弘さん。しかし、自分の派閥ではない田中派の人間を要職に就かせたことから「田中曽根内閣」と呼ばれるように。

さらには、翌年に田中角栄さんがロッキード事件で有罪判決を受けてしまいます。しかし、風見鶏と揶揄される中曽根康弘さんは、ロンヤス外交など着々と自身の政権固めに着手していくのです。

政治的影響の大きかった田中角栄さんが脳梗塞で死去したことをきっかけに、中曽根康弘さんは翌年の1986年に「死んだふり解散」を決行します。解散しないと言い続けておきながら、不意打ち的に解散して与党である自民党を大勝させたのです。

第3次中曽根内閣を発足させた後は、赤字まみれの国鉄、NTT、JT(日本公社)を次々と民営化させていきます。国営企業を民営化して再建することで、さらなる権力を手に入れた中曽根康弘さんは、自分の思うがままに偉大な功績を積み上げていくのです。

政界でトップに登り詰めたかに思えた中曽根康弘さん。しかし、売上税の導入失敗、リクルート事件への関与が原因で、竹下登さんに後継を託し、自民党を離党します。その後復党し、これまでの活躍を称えて自民党の比例北関東ブロックにおける終身一位を保証されるようになります。

中曽根康弘さんは、このとき85歳。比例代表73歳定年制の導入を推進していた時の首相・小泉純一郎さんから、例外なしと政界からの引退勧告を告げられてしまいます。ふたりの確執は、中曽根康弘さんがリクルート事件への証人喚問を拒否したことが発端だったそうです。

小泉首相からの引退勧告を「政治的テロ」と反論し、抵抗を見せた中曽根康弘さん。しかし、小泉純一郎さんという新しい政治の風に対抗することは叶わず、政界から去ることになってしまいます。

晩年は、財団法人世界平和研究所で会長を務めながら、研究に尽力します。2019年11月29日、老衰のため東京都内の病院にて死去。享年101歳の生涯でした。中曽根康弘さんは、偉大な功績と高い評価を残した政治家として現在でもたくさんの人から敬われています。

中曽根康弘さんの死因は老衰です。病気で亡くなったのではないそうです。享年101歳でした。歴代の総理大臣で100歳の誕生日を迎えたのは、中曽根康弘さんを含めてわずかふたりしかいません。

晩年は、病院に入院することはあったものの、病室でテレビを見たり、新聞を読んだりするぐらいの元気があったそうです。中曽根康弘さんの最後は、お孫さんや子供たちが看取ったそうです。大往生だったのでしょう。

中曽根康弘さんの妻は、蔦子さん(ツタコ・ナカソネ)といいます。早稲田大学教授の父を持ち、日本女子大学卒で中曽根康弘さんより3歳年下の女性でした。出会いは、蔦子さんの兄が中曽根康弘さんの戦友であったことがきっかけだったようです。

中曽根康弘さんは、戦時中の男性としては高身長で178cmもあったといわれています。さらに、内務省から短期現役制度で海軍に勤めるスーパーエリートだったこともあり、蔦子さんの母から「ぜひ婿に」と望まれたそうです。

結婚式は、昭和20年2月11日の建国記念日に挙げられたそうです。愛国心の強い中曽根康弘さんらしい日取りの選び方なのではないでしょうか。中曽根康弘さんは26歳、蔦子さんは23歳のことでした。ちなみに、その約半年後に日本は終戦を迎えています。

中曽根康弘さんの子供は3人です。娘さんがふたり、息子さんがひとりです。息子さんは中曽根弘文さんで、中曽根康弘さんと同じ自民党に所属しています。終戦直後に群馬県高崎市で生まれ、慶応義塾大学商学部を卒業した後は中曽根康弘さんの秘書として働いていたそうです。

そして、1986年の衆参同日選挙にて群馬県選挙区から出馬し初当選しました。小渕再改造・第1次森両内閣文部大臣や科学技術庁長官を歴任されています。2008年には麻生内閣で、外務大臣に就任しています。

中曽根康弘さん一家は、まさに華麗なる一族です。息子さんが内閣での大臣経験者だけでなく、お孫さんたちもエリートコースを歩まれています。お孫さんのひとりは中曽根康隆さんです。慶應義塾大学法学部を卒業されています。

ジャニーズのアイドルグループ「嵐」の櫻井翔さんとは慶應幼稚舎からの同級生なのだそうです。大学を卒業後はコロンビア大学の大学院に進み、父親の弘文さんの事務所で働いていました。第48回衆議院議員総選挙で初当選されています。

そして、中曽根康隆さんの妹の文子さんは、大手タクシー会社として有名な日本交通の会長・川鍋一郎さんの奥様です。

中曽根康弘さんの通夜・告別式などの葬儀日程は令和元年の12月2日と3日です。東京・大塚にある護国寺でしめやかに営まれました。当初は近親者のみの葬儀の予定でしたが、安倍晋三総理大臣を始め、政界の大物が300人も参列したといわれています。

中曽根康弘さんは偉大な功績を残した総理大臣であることから、国費で葬儀を行う国葬になるのではないかと考えた人も多いかと思います。しかし、通夜・告別式は近親者のみでお別れ会として内閣と自民党の合同葬となりました。

令和2年3月15日、グランドプリンスホテル新高輪で執り行われる予定でした。しかし、中曽根康弘さんの合同葬は新型コロナウィルスの影響で無期限延期となってしまいます。その約半年後、同ホテルにて10月17日14時から合同葬が実施されることに再決定されました。

中曽根康弘さんの葬儀は国葬ではありませんでした。通夜・告別式は近親者のみで、合同葬は令和2年10月17日となっています。コロナ禍にあって、お別れ会の開催が難しいようなら、中曽根康弘さんの葬儀のように、適した時期の訪れを待つのもひとつの選択肢といえるでしょう。