葬儀の引き出物|香典返しとの違い・相場・選び方・渡し方を解説
公開日 : 2021/3/19
更新日 : 2021/3/19
葬式を行った際には、参列してくださった方に引き出物をお渡しします。これは香典を頂いたことへのお礼である「香典返し」とはまた別のものです。引き出物と香典返しの違い・引き出物の費用相場・選び方・渡すタイミングなど、葬式の引き出物についての基礎情報を解説します。
公開日 : 2021/3/19
更新日 : 2021/3/19
目次
葬儀の引き出物とは
引き出物とは、結婚式や葬式に参列した方にお礼として渡す品物を指します。平安時代、貴族が宴席の参加客に、馬を庭に「引き出して」贈ったことに由来し、招待客へのお礼の品を「引き出物」と呼ぶようになったと言われています。
その由来からも分かるように、結婚式や祝賀会などおめでたい席での贈呈品を指しますが、広義では葬式や法事など、冠婚葬祭全般で配られるものも含まれます。葬式の引き出物は特別に「会葬御礼」とも呼ばれています。
香典返しとの違い
葬式の際に参列者に渡すものといえば、香典返しが思い浮かびます。しかし、この香典返しと引き出物は全く性質が違うものです。香典返しは香典をくださった会葬者に対して、お礼として渡すものです。それに対し、引き出物は香典の有無に関わらず、葬式に足を運んでくださった方に対して渡します。
引き出物と香典返しは価格や渡すタイミングも異なります。引き出物は会葬者全員に同額のものを渡しますが、香典返しは香典の3分の1~半額を目安として、送り主ごとに品物を変えて渡します。
また、引き出物は基本的に葬式当日に渡しますが、香典返しは伝統的には忌明け後(四十九日後)に渡します。しかし現在では香典返しを当日に返すケースも増えており、それが引き出物と香典返しが混同される原因にもなっています。
葬儀の引き出物に関する基礎知識
続いて、葬儀の引き出物の準備方法や費用相場、品物の選び方などの基礎知識をご紹介します。
基本的には葬儀社に任せられる
先ほどご紹介した通り、葬式の引き出物は原則として葬式当日に会葬者に渡します。そのため香典返しとは異なり、吟味している時間がありません。
現在では葬式を葬儀社に依頼することがほとんどですが、その中に引き出物の準備も含まれています。品物を選び、準備する数と御礼状に記載する情報(故人や喪主の名前など)を葬儀社に伝えるだけで、葬儀社が全て手配してくれます。また、余った場合は返品に応じてもらえることもあります。
このように、引き出物は葬儀社に一任してしまって大丈夫ですが、品物の選び方や掛け紙の掛け方など、基本的な情報は押さえておきましょう。また、地方や家風によって引き出物のしきたりが違うことがありますので、年上の親戚や近所の方に確認することも必要です。
相場
引き出物の相場は、300~1000円程度です。香典返しはいただいた香典の金額によって品物や費用が異なりますが、引き出物は参列していただいたことへのお礼ですので、全員同じ金額、同じ品物で構いません。
品物の選び方
引き出物は参列した方にその場で持ち帰っていただくものなので、軽くてかさばらないものを選ぶのが原則です。また、長く家に留まる物は縁起が悪いとされるため、使ったらなくなるものにしましょう。
さらに注意したい点が、香典返しと似たものにならないことです。例えば引き出物はお茶にしたのであれば、香典返しはお菓子やタオルなどお茶以外のものを選びます。一般的な引き出物用の品物としては、食料品・タオル・ハンカチ・ギフトカードが挙げられます。以下に詳しくご紹介します。
お茶や砂糖などの食料品
引き出物として良く選ばれるのが食料品です。シュガースティックや緑茶など、軽くてかさばらず、どの家庭でも良く使われるものが好ましいです。また最近では、インスタントコーヒーや紅茶などが選ばれることもあります。
タオルやハンカチ
ハンカチやタオルは食料のように消費して消えるものではありませんが、普段使いするため消耗品と同じであると考えられます。軽くて持ち運びやすいことも引き出物向きです。無地やチェックのものなど、好みや性別を問わず使えるデザインのものを選ぶと良いでしょう。
ギフトカード
最近ではギフトカードを引き出物として送るケースも増えています。JCBやVJA(VISA)ギフトカードや図書カードなど、多くの店舗で使えるものが適しています。特に引き出物としてはQUOカードが良く使われています。金額の幅やデザインが豊富で、葬式にふさわしいしめやかな雰囲気のカードも選べることが魅力です。
掛け紙と表書き
引き出物を渡す場合は、掛け紙をかけて表書きを入れるのがマナーです。掛け紙は水引が印刷されており、冠婚葬祭やお祝いの際の贈り物に掛けます。「のし紙」と呼ばれることもありますが、のしとはお祝い用の掛け紙の右上にあるひし形の飾りを指すものであるため、弔事用ののしのないものは本来は掛け紙と呼びます。
引き出物の掛け紙は黒白の水引を用いますが、関西地方など地域によっては黄白のものを使うこともあります。水引の形は「結び切り」もしくは「淡路結び」です。これは1度結ぶとほどけないことから、「2度と繰り返したくない」葬式や結婚式、快気祝いなどに使われる形です。
表書きは「志」、もしくは「会葬御礼」が一般的ですが、こちらも地方によって異なり、「粗供養(西日本)」、「茶の子(岐阜県)」と書くこともあります。
掛け紙(のし紙)の掛け方には「外のし」と「内のし」があります。外のしは品物を包装紙で包んでから掛け紙を掛ける方式、内のしは逆に品物に掛け紙を掛けてから包装する方式です。
外のしは特にお供え物に良く使われる方式で、誰からもらったお供え物か包装を解かなくても分かるというメリットがあります。内のしは掛け紙が破れたり傷んだりしにくいというメリットがあります。明確にどちらが良いと決まっているわけではありませんが、引き出物には内のしが採用されることが多いです。
お礼状の書き方
葬式の引き出物には必ず会葬礼状を添えます。引き出物の準備を葬儀社に依頼する場合は、会葬礼状も一緒に作って引き出物に添えてくれます。 自分で書く場合は、故人と喪主の名前、故人との続柄、葬式の日付を間違えないよう気をつけて作成します。また、忌み言葉や重ね言葉、句読点を使わないようにしましょう。
渡す相手
香典返しは香典をくださった方に渡しますが、引き出物は会葬者全員に渡します。しかし、親族や会社の代表で来た方は、この「全員」の中に入るのでしょうか。以下に解説します。
親族
会葬礼状に「親族一同」と書くことからも、親族は施主側と考えられ、引き出物を渡す必要はないのではないかと思うかもしれません。しかし、喪主の家族以外の親族には引き出物を渡すのが基本です。
会社の人
故人や喪主、喪主の家族の会社の人が、会社を代表して葬式に参列することもあります。その場合は、他の参列者と同じく来た人にだけ引き出物を渡せば問題ありません。
ただし、会社によっては会社の福利厚生で香典を出し、香典返しは受け取らないとするところもあります。同じ流れで引き出物も受け取らないということもありますので、事前に確認しておくと良いでしょう。
相続税控除対象になる?
葬式にかかる費用は、本来喪主が支払うべきものであり、故人の債務にはなりません。とはいえ、人が亡くなるとほとんどの場合葬式が行われ、その費用は一般的に相続財産から支払われるため、債務と同様に相続財産から差し引くことができます。
葬式は宗教や宗派、地域や規模によって内容はさまざまで、どの範囲までを葬儀費用とするか、明確に定義するのは困難です。しかし、目安として「葬儀をやるに当たり必ず発生する費用」を指すとしています。引き出物は葬儀費用のひとつと認められており、相続税控除の対象となります。
ただし、香典返しは相続税控除対象外となります。また、引き出物を渡して香典返しを渡さなかった場合、引き出物が香典返しであるとみなされ、相続税控除対象外となりますので注意が必要です。
葬式の引き出物についてまとめ
葬式の引き出物の基礎知識をご紹介しました。香典返しと混同されやすいので、その違いをしっかり押さえて、会葬者や香典をくださった方に失礼のないようにしましょう。引き出物は会葬者への感謝の気持ちを示すものです。品物や渡し方に気をつけて、心を込めて渡すようにしましょう。
ご相談・お問い合わせください