享年の計算は数え年?満年齢?「行年」「没年」との違いと共に解説
公開日 : 2020/8/31
更新日 : 2020/9/9
享年の計算方法は数え年です。昨今では満年齢で表記されることも多くなりましたが、ほとんどの場合、享年は数え年で計算されています。享年を使うのは葬儀や訃報、法要や墓石など、弔事の場です。享年の捉え方を間違えることのないよう、享年の計算について確認しておきましょう。
公開日 : 2020/8/31
更新日 : 2020/9/9
目次
享年とは
享年は、「受ける・受け入れる」という意味をもつ「享」と「年数」を表す「年」の組み合わせでできています。故人が天から与えられた生を全うした年月が、享年です。「享年79」、「享年86」のように数字を合わせて使います。
享年の計算
享年の計算は、数え年で計算されます。日常的に使われている満年齢とは、考え方が違いますので、注意してください。
満年齢
まず、馴染みが深い満年齢について確認をしておきましょう。満年齢は、産まれた日を0歳とし、誕生日を迎えるたびに年齢を重ねていきます。表記方法は「満○歳」です。年齢の前に「満」をつけます。
1950年(昭和25年)1月1日より施行された「年齢のとなえ方に関する法律」により、数え年ではなく常に満年齢で言い表すことが決められました。満年齢で表記することにより、数え年よりも若い年齢で常に記載され、国民の若返りが期待されたのです。
また、数え年では、12月に生まれた子供が年越しをして1月1日には2歳を迎えます。年のとり方が早く、早期結婚が主だった当時は事実とは違った生年月日を届け出るなどの問題が発生してました。満年齢に変えることで、正確な届け出を促す意味もあったのです。
さらに、諸外国を見ても数え年ではなく、満年齢が適用されていたため、国際標準に合わせる目的もありました。特に配給では満年齢でカロリー計算されているにも関わらず、実際には数え年に合わせて配給していたため、矛盾が生じていたのです。
数え年から満年齢に表記を変更したことでこれらの問題が解決され、以来、公的な書類や年齢を表したり記載したりする場合には、満年齢を用いるのが常識となりました。
数え年の計算方法
数え年の特徴は、生まれた年を1歳とすることです。満年齢(実年齢)のように0歳の概念がありません。0歳が無いため、数え年は満年齢+1歳です。
年齢の重ね方も、満年齢とは違います。誕生日で年が加算されるのではなく、毎年1月1日に1歳ずつ増えます。全員の年齢が同時に加算されるのも数え年の特徴です。
そのため、誕生日を迎える前と後では、満年齢と数え年の間に生じる年数が違ってきます。誕生日を迎える前の数え年は満年齢+2歳、誕生日を迎えた後は満年齢+1歳です。
胎児期間
前述したように、数え年は生まれた年を1歳とするため、0歳がありません。数え年が1歳から始まることから、胎児期間が含まれているとの説がありますが、実際には考慮されていません。胎児である期間も命として考慮するかどうかは、僧侶次第です。
僧侶による判断となりますので、非常に少ないケースですが、胎児である期間も命として年齢に含むべきとする場合は、数え年でも満年齢でもない方法がとられます。亡くなった満年齢に胎児である期間、妊娠している十月十日(280日間)を加算することで享年を算出する方法です。
この場合、胎児期間の日数が加算されます。計算式は、亡くなった満年齢+日数+280日です。亡くなった日が、その年の86日以上経過していれば享年は1歳増えます。
例えば、80歳と86日で亡くなった場合を見てみましょう。計算式は、86日+280日=366日です。1年は365日ですから、366日-365日=1日。享年は満年齢80歳ですが、胎児期間を加算すると81歳+1日へと変わります。
数え年の年齢早見表
数え年は享年の計算のほか、長寿のお祝いでも使われます。数え年がわかりにくい場合は、数え年の年齢早見表を利用すると良いでしょう。数え年の年齢早見表は、「数え年 年齢早見表」で検索してみてください。
数え年の年齢早見表には、産まれた年別に、数え年が記載されています。とてもわかりやすくて便利です。
享年が2020年の場合
例えば、2020年に満91歳を迎える1929年(昭和4年)生まれの方を見てみましょう。1929年8月1日生まれの方は、2020年1月1日で数え年は92歳です。この時点では誕生日前なので実年齢は満90歳、数え年との間に2歳の開きがあります。
2020年8月1日に誕生日を迎えると実年齢は満91歳です。数え年との開きは1歳に変わります。享年となる日付によっては、実年齢との差が1歳、または2歳と異なるのがポイントです。
88歳(米寿)の享年は?
2020年に88歳「米寿」を迎える方の場合はどうでしょうか。米寿のお祝いは、数え年88歳(1933年/昭和8年生まれ)の方が対象です。昨今では、満年齢でお祝いされることも多いため、満年齢88歳(1932年/昭和7年生まれ)の方も対象とします。
数え年を見ると、2020年1月1日で1933年生まれの方は88歳、1932年生まれの方は89歳です。もしも2020年に享年を迎えた場合、1933年生まれの方が享年88。1932年生まれの方は享年89です。同じ米寿でも享年が違うことがわかります。
享年の計算サイトと計算アプリ
享年の計算は数え年を用いるため、実年齢とは異なります。誕生日前なら「実年齢+2」、誕生日を迎えた後なら「実年齢+1」です。わかりにくい場合は、享年を計算してくれるサイトがありますので、そちらのご利用をおすすめします。
インターネット上にある計算サイトを探す際には、「享年 計算サイト」で検索してみてください。故人のお誕生日と亡くなった日を入力するだけで「享年」や「満年齢」を算出してくれるので便利です。
この世に産まれてから亡くなるまでの経過日数なども算出してくれる計算サイトもあります。目的に合わせて利用されると良いでしょう。
アプリは、需要が少ないため提供も少なく、仏事や冠婚葬祭に関わるスタッフ用のアプリがあるのみです。享年を計算するのは、日常的なことではありません。仕事で携わっているのでなければ、人の死に対して準備しておくのはあまり良い印象ではないでしょう。
こちらのアプリでも享年や満年齢に加え、存命期間なども算出してくれます。「法事」などの日程を計算して算出してくれるので、予定を立てる際など、参考にしてみたらいかがでしょうか。
享年以外の表記方法
故人が亡くなるまでの年月などを表記する方法は、享年以外にもあります。「行年」と「没年」です。享年と同様、故人が亡くなった年齢を表現する際に使用します。それぞれの違いを見ていきましょう。
行年
「行年」は、娑婆(しゃば)で修行をした年数を意味しています。娑婆とは、現生です。私たちが暮らしている俗世間で何才まで生き、修行したかをあらわしています。
享年と同様、計算方法は数え年です。産まれた年を1歳とし、何才まで生きてきたかを年数であらわします。享年が「故人が天から与えられた生を全うした年月」を表しているのに対して、行年が表しているのは「故人がこの世で何才までいきたかをあらわす年数」です。
また、享年との違いは表記方法にもあります。行年の場合は「年齢」として考えるため、「才」を用いるからです。例えば、実年齢90歳で亡くなった場合、享年は「享年91」と表記しますが、行年は「行年91才」と表記します。
行年も数え年で計算をするため、誕生日を迎える前と後では満年齢との差が最大2歳、生じます。誕生日を迎える前なら「行年91才(満89歳)」、お誕生日を迎えた後なら「行年91才(満90歳)」です。
没年
没年も故人が生きた年数を指します。享年や行年と違うのは、故人が「亡くなった年齢」を意味する場合と「亡くなった年月日」を意味する場合があることです。
「没年○歳」と、「歳」をつけて表記されている場合は、故人が亡くなった年齢をあらしています。「没年月日」と表記されている場合は、故人の命日です。
昨今では、数え年がわかりづらいという声もあり、享年と没年を組み合わせて使う場面も見受けられるようになりました。「享年91(没年89歳)」などです。これは、亡くなった時の数え年は91歳でしたが、実年齢は満89歳だったことを意味しています。
歴史上の人物を紹介する際や伝記などで、「生没年不詳」と記載されている場合があります。これは、 誕生した年も亡くなった年も不明だが、存在はしていたことをあらわしています。「確かに存在した」ことを意味する重要な要素です。
故人の年齢計算方法はどれを選ぶか
故人の年齢を表記する形式は享年、行年、没年と選択肢があります。年齢の計算方法も満年齢と数え年の2通りです。どの方法を選ぶべきかについては、決まりがありません。
先祖代々のお墓がある場合は、墓石に刻まれているご先祖様の表記を確認してみてください。今までの流れに合わせて、故人の年齢を刻むのが一般的です。ある代から表記方法を変更することは、まずありません。
菩提寺がある方は、住職さんに相談するのが良いでしょう。菩提寺によって、「享年」を使用するのか「行年」を使用するのかは、決まっているからです。
相談する菩提寺が無い場合は、葬儀を行う僧侶の方に相談してみてください。僧侶のお考えや伝統、地域のならわしなどをふまえた回答をいただけます。
享年の使い方
享年は、葬儀で亡くなった年齢を伝えたり、墓石に亡くなった年齢を刻む際に使われます。先にも述べましたが、享年を使うのか行年や没年を使うのかは、お寺や霊園、地域のならわしなどによって異なります。どれも正しい選択です。
日本古来から引き継がれてきた「享年」ですが、難点もあります。享年の計算が数え年で行われることです。近年では満年齢で年齢をとらえることが常識となっているため、数え年は馴染みがうすく、知らない方にとっては年齢が違うとの誤解を招くこともあります。
打開策として用いられるのが「享年」と「没年」を組み合わせて表記する方法です。「享年100(没年99歳)」と記載をすれば、実年齢99歳で他界されたことがわかります。
享年を使う場面
享年は、弔事で使われることがほとんどです。日常生活では使うことがほぼありません。テレビやラジオのニュースなどの訃報で耳にしたり、新聞、ネットなどで目にするぐらいでしょう。
主に使われる場面は、「訃報」「お悔やみ」「告別式」「通夜」「喪中はがき」「四十九日や一周忌、三回忌などの法要」「お墓参りで墓石を見た時」「位牌の裏側を見た時」などです。
「享年90」などの表記を目にしたり耳にすると、故人の生きた年月を再確認する機会にもなり、供養の思いも新たになります。改めて故人への気持ちが心に浮かぶなど、思いをお伝えするのも良いでしょう。
享年の計算を満年齢にする場合
従来、享年の計算は数え年を用いてましたが、時代の流れに伴い、満年齢で計算をするケースも増えてきています。年齢の記載や、年齢を伝える方法として満年齢が世間に常識として浸透したからです。
そのため、ご先祖様の年齢の記載が「享年」であっても、数え年ではなく満年齢で計算されていることがあります。この場合は、享年の計算方法を満年齢で合わせましょう。
「歳」または「才」の使用
享年は、故人が天から与えられた生を全うした年月です。「何歳」まで生きていたかではなく、「何年」生きていたかを表記します。満年齢94歳で亡くなった場合、「歳」や「才」は使わず「享年95」と記載するのが一般的です。
ただし、享年の表記にはルールがありません。満年齢が常識として浸透した現代では、年齢には「歳」をつけて表現するのが日常的です。わかりやすさが求められるニュースなどで、「享年95歳でした」と訃報を封じる際に「歳」をつけるようになったのも、そのためでしょう。
宗派や地域によっては、「享年○才」と表記するケースも見受けられるようになってきました。先祖からの継承などがなければ、ご自身が遭遇するケースに合わせて進めるのが良いでしょう。
享年の計算と時代の流れ
天から与えられた生を全うし、故人が亡くなるまでの年月は「享年」として表記されます。計算方法は、数え年がほとんどです。数え年は、誕生日を迎える前は満年齢+2歳、誕生日を迎えた後は満年齢+1歳と、満年齢とは1歳から2歳の開きがあります。
数え年の計算を知っていれば享年を見た際に、故人がこの世で生きた年数を知ることができます。故人が生きていた時代や生き様、故人との関わりなどに思いを馳せるのも良いでしょう。
本来、享年の計算は数え年のみでしたが、時代の流れと共に満年齢で計算することも増えてきました。先祖からのお墓がある場合は、享年の表記方法を見ておくことをおすすめします。
享年と没年の組み合わせであれば、享年は数え年で計算されてます。享年のみで表記されている場合は、お墓が建立された時代によっては満年齢で計算されている可能性があります。享年の計算方法について、お寺に相談しておくと良いでしょう。
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