喪中の新年の挨拶は?喪中はがきの書き方やお正月の過ごし方を紹介
公開日 : 2021/2/20
更新日 : 2021/2/20
喪中は新年の挨拶を控えるのが原則です。しかし、気を付けていても年賀状を受け取る場合もあれば、仕事関係の相手に新年の挨拶を行わなければならない場合もあります。そのようなときは、どうすべきなのでしょうか。以下に、喪中における新年の挨拶マナーについてまとめました。
公開日 : 2021/2/20
更新日 : 2021/2/20
目次
喪中とは?
喪中とは、近親者が亡くなった場合に、故人を悼んで喪に服している期間のことです。「服喪」や「忌服」という言い方をすることもあります。古くは門戸を閉じて人との交流を避け、酒や肉などの贅沢を絶ち、祝い事を行わないという風習がありました。
現在はそこまで厳格な禁止事項はないものの、喪中には故人の冥福を祈り、お祝い事はもちろん普段の行動も慎み深く行うのが喪中の過ごし方です。
忌中とのちがい
喪中とよく似た言葉に「忌中」があります。忌中は故人の逝去から四十九日までを指すことが一般的で、喪中と同じく故人の冥福を祈って身を慎む期間とされています。そもそも喪中を「忌服」とも言うように、もともと喪中とは「忌」と「服」の2つから成り立つ言葉です。
「忌」は前述のように、酒肉や歌舞音曲を絶って身を慎むことを表します。一方「服」とは、身を慎む期間を表します。しかし時代の変化によって意味合いが変化し、現代では「喪中」は期間を表す意味合いが強く、身を慎む「忌」とは区別して使われることが多いです。しかし、「喪」も「忌」も故人の冥福を祈って身を慎むという習慣であることは変わりません。
ただし、忌中は喪中よりももっと厳格に身を慎むべき期間とされています。日本では古来より、神道に基づいて「死」を「穢れ」と考える文化があります。「穢れ」は他人に移ってしまうものであるため、近親者などの死に触れた場合は、他人に穢れを移さないように身を慎む必要があります。
とくに四十九日までは故人の逝去から間がなく、近親者は穢れを負っている状態だと考えられます。そのため、現代においても、四十九日を迎えて忌が明けるまでは、遺族は他人との交流や祝い事を避けて、身を慎むという風習が残っています。この身を慎む期間を忌中と呼びます。
喪中の期間
現代では喪中の期間は、故人の逝去から満1年とされています。故人の逝去から満1年後には一周忌という法要を営みますが、喪中はその一周忌法要をもって終わると考えるのが通例です。ただし、故人との関係性によっては、喪中の期間が1年より長くなったり短くなったりすることもあります。
たとえば1親等にあたる両親・子の場合、喪中の期間は12カ月~13カ月および3カ月~12カ月とすることもあります。2親等である祖父母や兄弟姉妹では3カ月~6カ月および1~3カ月となります。
ちなみに、これらの考え方は、明治時代の太政官布告によって規定された喪中や忌中の期間に由来があります。明治7年の太政官布告による忌服は以下の表の通りです。
続柄 | 忌中日数 | 喪中日数 |
父母 | 50日 | 13カ月 |
夫 | 30日 | 150日 |
妻 | 30日 | 13カ月 |
子供 |
嫡子:20日 それ以外:10日 |
90日 |
兄弟姉妹 | 20日 | 90日 |
祖父母 |
父方:30日 母方:20日 |
父方:150日 母方:90日 |
おじ・おば | 20日 | 90日 |
喪中の範囲
喪に服する範囲は、故人との関係性によって異なります。一般的には2親等以内の親族が亡くなった場合が喪中に該当します。具体的には1親等である父母(養・義父母を含む)と子供、そして2親等に含まれる兄弟姉妹、祖父母、孫です。配偶者は0親等と考えます。
この範囲内の近親者が亡くなった場合は喪に服する対象となります。ただしこれ以外のケースであっても、同居していた場合や、生前親しくしていた場合には、自主的に喪に服してもかまいません。
新年の挨拶とは?
新年の挨拶とは、その名の通り、新しい年が明けたときに最初に行う挨拶です。新年を祝う言葉であることが多く、「あけましておめでとうございます」などが代表的です。同じく年賀状における「賀正」「迎春」「謹賀新年」などの文言も、新しい年を祝う挨拶に分類されます。
喪中の新年の挨拶はどうするべき?
喪中とは、故人の冥福を祈り、祝い事を避けて身を慎む期間です。対して新年の挨拶とは、新年を祝うための挨拶です。現代における服喪期間は一般的に1年間とされており、近親者が亡くなると必ず1回は「喪中の正月」を迎えることになります。それでは喪中に新年の挨拶を受けた場合、遺族はどうすべきなのでしょうか。
基本的にお祝いの言葉は避ける
喪中とは「おめでたい」ことを慎む期間であるため、服喪期間の人は「新年のお祝い」を行わないのが原則です。そのため、「あけましておめでとうございます」などの新年の挨拶は行いません。おなじく新年を祝う言葉である「謹賀新年」や「迎春」といった言葉も使用できません。そもそも、新年を祝う手紙である「年賀状」は慎みます。
ただし、単なる新年の挨拶であれば喪中であっても行ってかまいません。たとえば「昨年はお世話になりました」「今年もよろしくお願いいたします」などの挨拶は、「めでたい」という意味を含まないため、喪中の場合でも使用することができます。
同じ考え方で、新年の挨拶回りも許容されています。正月には親戚の家を回って挨拶を行うという家庭もあります。このときも、祝いの言葉に気をつけさえすれば、新年の挨拶をして回ること自体に問題はありません。
仕事関係の相手には新年の挨拶を行うこともある
仕事関係の相手には、公私を分けて、例年通りに新年の挨拶を行うのが一般的です。仕事は「公」の部分であり、喪中であることは「私」の部分であるからです。そうはいっても、心情的に「あけましておめでとうございます」と挨拶するのが苦痛な場合もあります。
そういった場合には、前述のように「おめでとうございます」という表現を避けた挨拶をするのがよいでしょう。「今年もよろしくお願いいたします」のような、お祝いの表現抜きの新年の挨拶を考えてみてください。
初詣は控える
新年には、神様への挨拶に神社に初詣に行くという場合も多いでしょう。しかし、喪中の場合は神社への初詣は慎むというのが一般的な風習です。そもそも死を穢れとするのは神道の考え方であり、喪中の穢れを聖域である神社に持ち込んではいけないと考えられているためです。
ただし、忌中の神社参りは避けるべきだが、喪中の神社参りは許容されているという考え方もあります。どちらを選択するかは個人や親族の考え方、または地域の風習によって異なりますが、迷った場合は初詣は避けるのが無難です。
年末の挨拶は?
新年の挨拶の前に、年末の挨拶を行うという人も多いでしょう。年末の挨拶にはたとえば「今年もお世話になりました」「来年もよろしくお願いいたします」「よいお年をお迎えください」などがあります。これらの挨拶はお祝いの意味を持たないため、喪中の人も行うことができます。反対に、喪中の人に行っても失礼には当たりません。
喪中の年賀状について
年賀状とは奈良~平安時代から続く日本独特の文化です。日ごろお世話になっている相手に対し、感謝の気持ちを込めて、新年のお祝いなどを述べるために出す令状が、年賀状です。そのため、年賀状とは基本的に「新年を祝う手紙」と捉えることができます。つまり、お祝い事を避ける喪中は年賀状を出すことは控えます。
事前に喪中はがきを出しておく
そうはいっても、日ごろお世話になっている相手には、新年の挨拶を行うのが礼儀と感じる人も多いでしょう。喪中の場合は、年賀状ではなく喪中はがきを送ることで、新年の挨拶にかえることができます。
喪中はがきのマナー
喪中はがきは年賀状と異なり、年内に先方に届けるのがマナーです。喪中であるために年賀状を失礼することをお詫びするとともに、相手が年賀状を準備しなくて済むようにするためです。そのため、遅くとも12月頭~中旬までには先方の手元に届くように投函します。
喪中はがきには、私製はがきと通常のはがきのどちらを使ってもかまいません。切手も通常でかまいませんが、喪中であることを知らせる一環として、弔事用の切手を使用することが一般的です。なお、弔事用の切手は郵便局で購入できます。あるいは、専門業者に作成・印刷を依頼することもできます。
喪中はがきの書き方
喪中はがきの文面を考えるときは、以下のポイントを押さえるようにしましょう。
・誰がいつ亡くなったのか
・新年の挨拶を控える旨と、そのお詫び
・年始の挨拶に代わる言葉または結びの挨拶
「誰がいつ亡くなったのか」では、たとえば「父の〇〇が何歳で何月何日に~」のように、続柄・名前・享年・没年月日を記します。死因については記す必要はありません。新年の挨拶を控えるお詫びについては、「喪中につき年末年始のご挨拶を失礼させていただきます」などの文言が一般的です。
結びの挨拶では、たとえば先方の無事や健康を祈る言葉などがあります。「健やかなる新年をお迎えになりますよう心よりお祈り申し上げます」や「よいお年をお迎えください」は、新年を迎えることへの挨拶ですが、お祝いの意味を含まないため、喪中の場合でも使用できます。
使ってはいけない言葉
喪中はがきには、新年を祝うような言葉は使いません。たとえば「年賀」などが該当します。喪中であるために新年の挨拶を控える旨のはがきですので、おめでたい言葉は使わないようにしましょう。
喪中はがきを出す範囲は?
まず、どの範囲の近親者が亡くなった場合に、喪中はがきを出すべきかのかを解説します。喪中はがきを出すのは、一般的に2親等以内の近親者が亡くなった場合です。ただし、それ以外のケースでも、故人と生前信仰が深かった場合は喪中はがきを出すこともあります。
次に、喪中はがきを送る相手の範囲について考えます。喪中はがきを送る対象となるのは、日ごろ年賀状をやり取りしている相手全般です。加えて、故人が生前年賀状をやり取りしていた相手や、通夜・葬儀の参列者にも喪中はがきを出します。
1つ注意したいのは、仕事関係の相手への年賀状です。公私は分けるべきという考え方から、仕事関係の相手には例年通りに年賀状を出す場合もあります。
受け取るのはNG?
年賀状を出さなくても、年賀状を受け取ることもあります。たとえば先方に訃報を知らせていない場合などに起こりやすいケースです。喪中とは、自分の穢れを相手に移さないために身を慎む期間です。そのため、相手からなにかを受け取るということはとくに禁止されていません。つまり、喪中であっても年賀状を受け取ることは許容されています。
受け取った場合はどうする?
年賀状を受け取ったら、年賀状を送り返すのが一般的なマナーです。しかし喪中の場合は年賀状は控えるべきであり、受け取った返事の場合でも同様です。もし喪中に年賀状を受け取ったら、寒中見舞いや年始状を返事とするのがよいでしょう。
寒中見舞いや年始状を出すタイミングは、一般的には松の内が明けてから立春の前日までとされています。年賀状を控えた理由やお詫びとともに、厳寒の時期に相手を気遣う言葉を添えましょう。
喪中の人への新年の挨拶はしてもいいの?
知人や友人が喪中になることもあります。喪中とは遺族が死の穢れを周囲に移さないための考え方であり、周囲から喪中の人に穢れが移ることはありません。そのため、基本的には、喪中の人への新年の挨拶は行ってもかまいません。
しかし、相手の心情を思いやれば、おめでたい言葉や新年を祝う言葉は避けるのがマナーです。喪中の場合の新年の挨拶と同様に、「去年はお世話になりました」「来年もよろしくお願いいたします」のような、お祝いの意味を含まない新年の挨拶をするように配慮しましょう。なお、「よいお年をお迎えください」は喪中の相手にもかけてよい言葉です。
間違って年賀状を送ってしまったら?
「喪中と知っていたのに間違って年賀状を出した」「喪中と知らずに年賀状を出した」というケースは起こり得ます。もし年内に喪中であることに気づいたら、郵便局に請求して年賀状を止めてもらうことも可能です。
手遅れな場合や、相手から寒中見舞いなどが届いて喪中を知った場合は、気づいた時点で速やかにお詫びの電話かメール、手紙を送ります。あるいは松の内が明けてから、お悔やみとお詫びの言葉を添えて寒中見舞いを出す方法もあります。
ただし、新年の挨拶の考え方と同様、喪中の人に年賀状を出すことは、基本的には問題ではありません。場合によっては、先方からの喪中はがきには、年賀状を受け取ることを楽しみにしている旨が記される場合もあります。
しかし心情的に気になる場合や、相手に配慮する場合は年賀状を出すことは避けるのが無難です。もし間違って投函した場合は、上記のような方法で対応してください。
喪中の正月の過ごし方
喪中のお正月では、新年の挨拶の他に、どのようなことに配慮すべきなのでしょうか、喪中でも行ってもよいことと、慎むべきことに分けて解説します。
喪中でもOKなこと
年末年始に親族で集まるという家庭も多いでしょう。たとえ喪中であっても、親戚が集まること自体は問題ありません。「おめでとう」という言葉やお祝いの行事は控えるように気を付けましょう。
親戚の子供へのお年玉も問題ありません。現代ではお年玉は「お小遣い」の意味合いが強いからです。ただし気になる場合は、お年玉ではなく「お小遣い」などの表書きを使うとよいでしょう。
また、年末年始の恒例といえば「年越しそば」や「おせち」があります。年越しそばは「健康長寿祈願」や、「今年の厄を落とす」ことを祈るためのものなので、喪中でも問題ありません。おせちについては、海老や鯛、紅白のかまぼこなどの「おめでたい料理」を避ければ、喪中でも食べることができるという意見もあります。
もう1つ喪中のお正月に行ってよいこととして、お寺参りやお墓参りがあります。死を穢れとするのは神道の考え方であり、仏教は関係ありません。そのため神社への初詣に行く代わりに、菩提寺やお墓にお参りするという家庭も多いです。
控えるべきこと
前述のように、神社への初詣や年賀状は控えます。また、門松やしめ飾りといった「お正月飾り」は新年を祝うためのものですので、喪中には控えます。
喪中の新年の挨拶では相手を気遣おう
新年の挨拶は、日ごろの感謝を伝えられる機会でもあります。喪中の場合であっても、マナーさえ守ればむやみに控える必要はありません。周囲の人々も、遺族の心情を配慮しつつ、マナーを守った新年の挨拶を考えてみてください。
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