危篤状態となったら家族が対応すべきことについてわかりやすく解説
公開日 : 2021/1/15
更新日 : 2021/1/23
危篤状態とは意識がなくなり死亡する寸前の状態になることです。家族の方々はこのような事態になっても、冷静に対応する必要があります。今回は危篤状態となったとき親族等へ知らせる連絡方法、そして知らせを受け取った側がどう対応すべきかについて解説します。
公開日 : 2021/1/15
更新日 : 2021/1/23
目次
危篤状態とは
家族の一人が危篤状態であることを知らされたら、死期が近づいている事態に直面し、皆さんは大変慌ててしまうかもしれません。しかし、このような場合にも冷静な対応が求められます。
まず危篤とはどんな状態をいうのか、この状態となっても意識の回復はあるのかについて解説します。
危篤の読み方や血圧の低下等の症状について
危篤は「きとく」と読みます。危篤状態とは心臓の機能が低下し、意識もなくなり死亡する寸前の状態になることです。血圧が60以下になると危篤状態とされます。もちろん、この血圧とは収縮期の血圧のことです。よく「上の血圧」と呼ばれたり「最高血圧」と呼ばれたりします。
収縮期の血圧は全身に血を送りだそうと心臓が頑張っている状態といえます。しかし、この収縮期の血圧が60以下となれば心臓の動きは鈍くなり、自発呼吸が困難な事態に陥り意識もなくなってしまいます。医療機関側からすれば手の施しようがない事態と言えます。
危篤状態になっても意識の回復はあるのか
危篤状態にまでなってしまうと、いかに設備の充実した医療機関で治療が行われても、患者が全快することはまずあり得ません。ただし、危篤状態となって数時間で亡くなる人もいれば、1週間以上、意識がないままの状態を維持する人もいます。
ご家族が臨終に立ち会う場合、医療機関へ泊まり込み最期を見届けることになるでしょう。しかし、その最期が危篤状態となってから数分後か、それとも数日を要することとなるのかは誰にもわかりません。
危篤状態となったときの連絡手段と対応
最愛の人が危篤状態となれば、動揺するのが当たり前の反応です。しかし、医療機関側から連絡を受けたら、まず医療機関へ向かうことが何よりも大切です。こちらでは、危篤の知らせを受けたご自分が他の家族・親戚に連絡する方法と、危篤の連絡を受けたときの対応等を解説します。
連絡方法する相手
医療機関から危篤状態であると連絡が来たら、ご自分が入院先へ向かうだけではなく、他の家族はもちろん、親戚、危篤となっている人の親しい友人・知人等、一緒に看取ってもらいたい方々へ連絡をすることも大切です。
夜間の場合ならいきなり連絡をしては迷惑がかかるので、家族、そして危篤となっている人の兄弟姉妹までに連絡した方が無難です。とはいえ、連絡だけにとどめるか病床へ駆けつけてもらうかは、距離的な問題、日ごろの付き合い等を考慮にいれて判断するべきでしょう。
親族への連絡は、主に3親等くらいまでが目安です。具体的に言えば、危篤となっている人の配偶者、子、孫、ひ孫、父母、祖父母、おじおば、兄弟姉妹、甥姪までです。
連絡方法は電話が確実
迅速に危篤状態であることを伝えたいなら、看取ってもらいたい相手に電話で連絡します。相手方の携帯電話番号・自宅の電話番号を知っていれば、そちらに電話をかけてみましょう。
現在では、パソコンやスマートフォンのメール、LINE等で知らせることができるものの、相手がメールやLINEの通知になかなか気づかないこともあります。そのため、電話で連絡した方が確実です。相手が電話に出たら次の内容を簡潔に説明します。
- 自分の名前
- 危篤になっている人・ご自分の続柄
- 危篤になっている人がいる医療機関名、病室、その住所・電話番号
- 電話をしたご自分の電話番号
危篤の連絡を受けたときの対応
危篤状態になっている人の家族から連絡を受けた場合は、やはり慌てないことが第一です。そして、ご自分の状況によっては駆けつけることができる場合、すぐには駆けつけることが難しい場合もあるはずです。こちらではそれぞれのケースに応じた対処法について解説します。
危篤の知らせを受け駆けつけることができる場合
危篤状態となっている人のご家族から連絡があったら、次の内容を確認しましょう。
- 入院中の医療機名、病室、住所・電話番号
- 電話をかけて来たご家族の携帯電話番号(着信履歴が確認できれば不要)
危篤状態になっている人のもとへ向かう場合、私服や背広でも失礼には当たりません。ただし、派手なアクセサリーを外し、できるだけ地味な服装で訪問した方が無難です。なお、まだ亡くなっていないので喪服は厳禁です。
危篤状態になっている人に対面したら邪魔とならないよう、危篤となっている人と・家族に声をかけ、医療機関から退出します。
危篤の知らせを受けて都合がつかない場合
仕事の都合やその他の理由で危篤となった人のもとへ向かうことが困難な状況にある場合、無理に訪問するのは避けましょう。正直にご自分の状況を伝え、わだかまりの残らないよう丁寧にお断りすることが大切です。
できれば危篤となった人が亡くなったという報告を受け取った場合も考慮し、せめて通夜・葬儀・告別式に参加する準備はしておいた方が無難です。
駆けつける際に仕事を休むのは非常識なのか
ご自分が危篤となった人の家族で、その一方を受けたら、居ても立っても居られなくなるはずです。この場合、ご自分の勤務する事業所へ相談することが大切です。
有給休暇を利用し仕事を休むこともできます。ただし、残った仕事が滞りなく進むよう、引き継ぎ等の必要な手続きを済ませる必要があります。
もちろん、無断で休むことは勤務先の信頼を損なうことになるでしょう。しかし、家族の危篤の知らせで「その最期を看取るのは当然。」という考えは勤務先にもあるはずです。親族が危篤状態のとき仕事を休むのは、決して非常識ではありません。
危篤のときお見舞いする際のマナーについて
危篤状態になったとの一報を受け、大慌てでその人の入院先へ向かう場合、困ってしまうのは服装、手土産を持って行くかどうかです。前述したように喪服など着用して行ったら、たいへん非常識な行為と、家族の反感を買うことでしょう。
こちらでは、危篤の人をお見舞いする時の服装、家族にかける言葉、危篤のときの手土産について解説します。
危篤の人をお見舞いする時の服装
やはり派手な服装やアクセサリー、場にそぐわない服装を除き、何を着て行っても構いません。通常のお見舞いと同じ服装で入院先へ向かって問題は無いです。
ただし、向かった先で数日程度の滞在が可能なら、喪服の準備をしても良いでしょう。もちろん、喪服を持参していることを、危篤状態の人の家族に気づかれない配慮は行います。
例えば、事前に駅のコインロッカーに預けておいたり、滞在している宿泊施設に自分の家族から後日郵送してもらったりすることも良い方法です。
家族にかける言葉
危篤となっている人のご家族には、どのような言葉をかけて良いのか悩んでしまうかもしれません。少なくとも「お通夜・葬式の時も協力させて下さい。」等、危篤となっている人が亡くなった後の話をするのはマナー違反です。
相手の事情を推し量り、かける言葉はできるだけ少ない方が良いでしょう。例えば「どうか皆さまも、お体をお大事に…。」、「私に何かできることがあれば、ご連絡ください。」が妥当です。
逆に言ってしまいがちな「気落ちしないで。」「頑張れ。」は、避けた方が良いでしょう。なぜなら、危篤となっている状況下で気落ちするのは、家族として当然のことです。
また、頑張れと励ましているつもりでも、家族には無責任な言葉と捉えられる場合もあるので気を付けるべきでしょう。
危篤のときの手土産は無礼か
危篤となっている人のお見舞いには、持参する物を選ぶ時間があったら、その時間を移動に費やし、速やかに入院先へ向かうことが大切です。そのため、通常のお見舞いと異なり手土産は不要です。
ただし、次のような場合は例外と言えます。例えば、危篤状態になっている本人が、昔からの学友であるようなとき、本人とご自分、その他の友人たちが写っている写真立て等を持参することは、本人との友情に恥じない行動です。
意識が戻らない本人のもとへ懐かしい思い出の品や写真を置くことができれば、「この場に他の学友が来ることは難しくとも、いつも心は君と共にある。」という思いを伝えることができるはずです。
危篤状態だった人が亡くなった後の対応
危篤状態だった人が亡くなった場合、いつまでもご家族は悲しみにくれているわけにいきません。故人を見送るための通夜・葬儀・告別式の準備が必要です。こちらでは、故人の遺志に合った葬儀の行い方を解説します。
葬儀社に葬儀を依頼する
危篤状態だった人が残念ながら亡くなってしまった場合、医療機関から葬儀社を紹介してもらえることがあります。どこの葬儀社に頼むか全く決まっていないなら、紹介された葬儀社へ依頼しても構いません。
しかし、限られた時間で他の葬儀社との比較が難しいため、結果的に葬儀費用が高くなってしまったり、故人の希望した葬儀内容で執り行うことが難しかったりすることも考えられます。
そのため、亡くなる前に本人の方で葬儀の生前予約をしておいた方が良いでしょう。この方法なら葬儀内容は事前に決められるので、理想に近い葬儀を行うことができるはずです。
一方、故人が葬儀内容を決めておらず、遺族がどうすれば良いか迷うこともあることでしょう。そんな時、代々家族の亡くなるたびお世話になっている葬儀社があるなら、そちらに頼んだ方が無難です。
どのような作法で葬儀を行うべきか葬儀社がしっかり把握しています。そのため、スムーズに葬儀の準備等を行ってもらえるはずです。
葬儀の執り行い方を決める
葬儀の内容は葬儀社と相談しながら進めていきます。最近では昔ながらの仏式の葬儀の他、ユニークな葬儀を扱う葬儀社が多くなってきました。
例えば故人の好きだった花、遺族の思いに近い花言葉の花等で祭壇を作り葬儀が執り行われる「花葬」、厳かな雰囲気は壊さないものの故人の好きだった音楽をかけ執り行う「音楽葬」等、故人が喜ぶであろう趣向を凝らした葬儀があります。
特に、生前から故人が宗教色の強い葬儀を嫌っていた場合は、このような宗教色の薄まる葬儀で見送るのも良い方法です。
まずは葬儀社との間で、このような葬儀内容を執り行える会場があるのか等、よく相談しながら準備を進めることが大切です。
危篤状態となる前に本人が行うべきこと
ご自分が危篤となって、家族へ何も伝えられない状態となる前に行っておいた方が良い作業もあります。こちらでは、ご自分の遺志を家族へしっかり伝える方法について解説しましょう。
自分はなかなか死なないと油断しない
高齢となっても、身体を動かしまだまだ足腰が衰えず、食生活にも気を使う健康的な方々は数多くいらっしゃいます。「自分は十分健康だから90歳になるまで、自分が亡くなった場合のことなど考えなくて良い。」と思う皆さんもおられることでしょう。
しかし、認知症となりその症状が進行すれば、うまく家族へ自分の意思を伝えられなくなります。また、病気やケガで入院したことが発端となり、急激に思考や体力、足腰の衰えが進行することも考えられます。そうなっては、ご自分が望む葬儀内容を思案する余裕はなくなるはずです。
この様な事態を想定しご自分が健康な内に、ご自分の遺産の分配や、葬儀に関すること等をよく考え、可能な限り取り決めを行っておいた方が良いでしょう。
老衰や病気となる前に終活を
老衰が進んだり、病気となったりして回復が見込めず危篤状態となれば、亡くなってからの葬儀等の希望を家族に伝えることは不可能です。そのため、健康で思考力も十分ある内に、ご自分が亡くなってからのことを取り決めておきましょう。その作業は「終活」と呼ばれています。
終活では主に次のような準備を進めていきます。
- エンディングノートの作成:人生の終末期で迎える死の前に、ご自分の希望を書き留めておくノート。財産・貴重品に関する情報、延命措置の有無、葬儀の希望等を記載する。
- 葬儀の取り決め:遺族が葬儀の準備で困らないよう、葬儀社に葬儀の生前予約等を行う。生前予約については家族へ話しておくか、エンディングノートへ記載しておく。生前予約をしなければ、エンディングノート等へ葬儀内容の希望を記載する。
- 遺言を作成する:ご自分の財産を調査した上で、各相続人(遺族)の不満が出ないよう、財産分与について法定された作成方法で記載する。遺言を作成しない場合は各相続人間で「遺産分割協議」が行われる。
なお、エンディングノートを作成しても、遺族に法的拘束力はありません。しかし、遺言状の存在、葬儀に関する希望または葬儀の生前予約の事実を記載しておけば、家族もその内容を参考として、スムーズに葬儀・相続手続きを進めていけるはずです。
危篤状態でも家族や親戚は冷静に対応しよう
危篤状態となった本人の意識が戻らず、その最後を看取ることは誰でもつらいものです。しかし、このような時でも何とか冷静に対応し、危篤の状態を連絡しなければいけない人に、その旨を伝えることが大切です。
また、残念ながら亡くなった後は、故人が安らかに何の不安もなく極楽へ向かえるよう、家族や親戚は速やかに通夜・葬儀・告別式の準備を行いましょう。告別式の後は、式の慌ただしさから解放され、改めて故人を悼む家族だけの時間が訪れるはずです。
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