葬儀のお布施の金額は?書き方や渡すタイミングを合わせて解説します
公開日 : 2020/12/16
更新日 : 2020/12/16
仏式の葬儀では僧侶が読経をあげて故人をこの世から送り出して供養します。読経に対してのお礼であるお布施の金額は、葬儀で悩む事柄の一つです。今回、葬儀でのお布施の金額相場や封筒の書き方、渡すタイミングなどを詳しく解説をしていきます。
公開日 : 2020/12/16
更新日 : 2020/12/16
目次
お布施とは?
葬儀でのお布施は枕経からお通夜、葬儀に初七日法要の読経をして頂いた僧侶へのお礼です。今でこそ謝礼金という側面が強いお布施ですが、本来の意味は少々異なります。元々はお布施とは他者に施しをするという仏教の悟りへと至るための修行の一つとして行われるものなのです。
お布施には「財施(ざいせ)」=「金銭や食料などの財を施すこと」、「法施(ほうせ)」=「仏の教えを説くこと」、「無畏施(むいせ)」=「恐怖心を取り除き安心を与えること」など様々な種類があります。
どれもが見返りを求めず差し出す行為が自分自身の功徳を積む行為であり、昔の人々は積極的にお布施を施しました。それが仏教へ帰依することであり、自分自身の修行であり、功徳を積めば極楽浄土へ行くことができるという教えだからです。
見返りを求めないというお布施の意味合いがあるため、お寺様にお布施の金額を聞いても「お気持ちで」と言われることがほとんどです。読経の長さにも、説法の有無にも関係ありません。
お布施を決めるのは自分自身です。読経という僧侶からの法施に対してのお礼ではなく、見返りを求めないお布施を仏教の修行の一環として僧侶に施すことが本来の在り方ですので、ぜひ理解して頂ければ幸いです。
ただ、現実問題として財施のお布施は寺院を維持していく費用として使われるため、少なすぎるお布施は僧侶にとって悩ましい問題となっています。加えて現代では仏教離れが進み、葬儀のお布施の金額がわからないという声も多数あがったこともあり、僧侶の中にはわかりやすく金額を伝える人も出てきています。
お布施の金額で不安であれば僧侶に直接訪ねるのが良いでしょう。失礼にはなりませんので安心してください。
お布施の相場
お布施で最も気になるのは金額です。ここではおおよその金額相場を提示しますが、あくまで相場であり、様々な要件で大きく変動することを覚えておくとよいでしょう。
お布施に決まった金額はない
お布施の大前提は「決まった金額は無い」ことです。上述したようにお布施は見返りを求めず相手に施すことですので、お布施は自分自身で金額を決めるのが本来です。ただ、お布施も僧侶にとっては大事な収入源でもあることと、他者とかけ離れた金額ではいけないとの考え方から、ある程度の相場が出来上がっています。
ともかくまずは僧侶に直接尋ねましょう。はばかられる場合には親族に相談しましょう。特に同じ菩提寺である親族で葬儀をしている場合には参考になります。直接僧侶に聞いた場合には、提示された金額をお支払いしましょう。
お布施の金額がどうしても納得がいかなかったり、支払いが難しい場合はその場で僧侶に相談をして、お互いが納得するように話し合うと後のトラブルを防ぐことができます。
金額は宗派や地方によって異なる
お布施の金額は宗派や地方によって大きく異なります。例えば浄土真宗は15~30万円程度ですが、日蓮宗や浄土宗などは35万~50万円が相場金額です。加えてここに、お寺の格式が高ければお布施も10万~50万円高くなります。
地方でも比較的差があります。2017年の「日本消費者協会のアンケート調査」では、北海道と四国・九州地方が30万~40万円、関東・中部・近畿・中国地方などは40万~55万円、東北地方で60万円程度という結果があります。
ここには戒名料・御車代・御膳料が入っていますので比較的高い数字が出ています。戒名料は戒名の格によって10万~100万円以上かかり、御車代は5000円程度、御膳料は5000~1万円程度です。
そのため、戒名料・御車料・御膳料を抜いた金額だと関東・中部・関西地方で20万円~30万円、北海道と関西よりも西の地方では20万円程度となっています。
葬儀の人数による
お布施は葬儀に来て読経をあげてもらった僧侶すべてに渡すことが一般的です。そのため、葬儀に呼ぶ僧侶の人数が多ければ多いほど、お布施も高くなります。基本的には浄土真宗は1人もしくは2人のお勤めが多く、禅宗の曹洞宗や臨済宗などは2人から7人と幅があります。
葬儀に呼ぶ僧侶の人数は、予め僧侶と相談して決めます。元々仏教では多くの人の縁で故人を送り出すことが良いとされ、僧侶も複数が一般的でした。特に禅宗はおりんや太鼓を打ち鳴らし盛大に催されるものでしたが、葬儀の簡素化とともに僧侶の人数も減っている傾向があります。
ただ宗派によっては1人では葬儀の作法が不可能であるという問題もあるため、遺族の希望と僧侶の希望をすり合わせる必要があります。
お布施と菩提寺
菩提寺とは代々その専属の寺に先祖の供養を依頼し、位牌を納めていて普段から付き合いのあるお寺のことです。先祖の供養を一任しているお寺のため、菩提寺がある場合には葬儀は菩提寺に頼みます。
菩提寺があるのに違うお寺に葬儀を依頼することは避けるべきです。菩提寺も責任をもってお付き合いをされています。お布施が高いから、と違う寺を希望する気持ちはわからなくもありませんが、先祖代々の関係がありますので無碍にしてはいけないのです。
菩提寺か否かでお布施の金額の差はありませんが、お付き合いのある菩提寺であれば融通は聞いてくださる可能性が高いです。葬儀社からの紹介やネットでのお寺様手配サービスですと融通はなかなかききません。
ネットなどの僧侶の手配サービスは定額
昨今では菩提寺がない家も増えてきました。そこで登場したのが僧侶の派遣サービスです。通夜や葬儀など読経がほしいと思うところへピンポイントでお願いすることができます。またお布施が定額ですので、わかりやすいのも特徴です。
ただどこのお寺から僧侶が派遣されるかはわかりませんし、僧籍はもっていてもお寺を構えていない、いわゆるサラリーマン僧侶や副業で僧侶をしている人も含まれます。このサービスは葬儀だけに低額で読経が欲しい場合には便利です。
葬儀社の紹介でも僧侶に読経をお願いすることはできます。その場合、葬儀社がお寺とつながって商売としている場合は基本的にお布施は低めですが、地域のお寺の紹介は相場の金額がかかり、受けてくれるお寺によって金額が異なります。
この場合には葬儀社はお寺と遺族の中つなぎをするだけで、お布施の目安の金額を伝えることはできますが決めることはできません。そのためお布施の金額に上限がある場合は先に葬儀社に伝えると話がスムーズに進みます。
お布施の書き方
お布施は白い無地の封筒に入れて渡します。表書きは「お布施」とし、水引きは本物で、双銀としましょう。葬儀は法要よりもお布施の金額が高いため、最も格が高い双銀がふさわしいからです。
表書きの下には氏名を書きますが、フルネームでも名字だけでも構いません。中袋がある封筒の場合は、中袋の表に金額を縦書き且つ漢数字で書き、裏側の左下に氏名住所などを記載します。
氏名などを記載する際にはボールペンではなく毛筆のペンを用いましょう。この時、薄墨でなく濃い黒で構いません。薄墨は「悲しみの涙で墨が滲んだ」または「墨を濃くする時間がないまま駆けつけた」という意味合いがあり、香典袋を記載する時に使いますがお布施は僧侶に渡すもので薄墨の謂れは関係が無いのです。
お布施の渡すタイミング
しっかりとお布施を準備したら次は渡すタイミングで悩むことでしょう。故人が息を引き取ってから、一連の葬式が終わるまで、僧侶は枕経・通夜・葬儀・初七日法要と多くて4回に渡って駆けつけてくださいます。
どのタイミングで渡すことが最も良いのかを見ていきます。
渡すのは葬儀の前か初七日法要の後
お布施を渡すタイミングは葬儀の始まる前又は、初七日法要後が一般的です。通夜や葬儀の前には僧侶に挨拶をすることができますので、枕経や通夜の時に僧侶と戒名やお布施の金額などの相談をして、葬儀の前または初七日法要後に渡すのです。
お布施は現金が基本的です。そのため初七日法要まで多額の現金を持ち歩くことに不安がある人は葬儀の前に先に渡しておくと安心です。また菩提寺である場合には、後日に改めてお礼と共にお布施を渡すこともあります。
渡す際はお礼の言葉と共に
お布施を渡す際は、葬儀を受けてもらい読経を上げてもらう僧侶からの施しに対してお礼を述べてから渡しましょう。僧侶は枕経から初七日法要まで2・3日の時間を割いて故人と遺族のために尽くしてくださいます。
小さなお盆または袱紗の上で
お布施を僧侶に差し出す際は、黒い小さなお盆または袱紗(ふくさ)の上に乗せて差し出します。袱紗は香典をなどを包むときに使う小さめの布です。寒色系または紫が葬儀で使える色ですので、冠婚葬祭の儀礼のために紫を一枚は持っておくと双方に使うことが可能なので便利です。
差し出す封筒の向きはお布施の文字が僧侶から読めるように置きます。
お布施の疑問点について
お布施は金額や渡すタイミング以外にもわからないことが多いので、いくつかの疑問点をお答えしていきます。
お布施の金額を僧侶に聞いてもよい?
お布施の金額は僧侶に直接聞いても構いません。お布施の金額を決めるのは難しいものです。何かが正しいのか基準が一切ありません。金額はこれまでの先祖代々の付き合い方や、寺院の格、僧侶の考え方、地域性、宗派、戒名の位など様々なものがあって決まるので、簡単にわかるものではないのです。
現代では特に普段から僧侶との付き合いがない人が多いため、僧侶の側でもお布施に悩む人が多いことは把握しています。遺族が悩んだり、金額でのトラブルを避けるためにお布施を明確化して伝える僧侶もいます。
またお布施は領収書がないやりとりがほとんどですが、お金の流れを把握したい人が増えているため僧侶側で領収書を準備することもあります。なお直接にお布施の金額を聞いても「お気持ちで」と言われることも、もちろんあります。
その場合は仕方ありませんので親族の人に相談して決めましょう。そしてお布施は無理をする必要はありません。どうしても金銭的に厳しい場合にも、僧侶にその旨を伝えましょう。お布施を待ってもらったり、金額を下げてもらえる場合もありますが、すべては話し合いです。僧侶とはしっかりと話をすることが大切なのです。
家族葬でお布施は安くなる?
一般の葬儀と家族葬の葬儀でのお布施の金額は変わりません。これは一般の葬儀と家族葬でも僧侶の行うべきことは変わりがないからです。ただ家族葬だから、僧侶は少なくていいとの考え方はありますが、基本的には間違いです。
僧侶の読経は故人を送り出し、遺族に安心を与えるためのものです。僧侶の人数は宗派の教義、僧侶の考え方や故人がお寺のために尽くしたかなどで総合的に判断されるべきものです。そのため、家族葬だからという理由で簡単に人数を遺族が決めることは難しいですが、僧侶との相談をする必要があるでしょう。
偶数は避けるべき?
お布施は偶数でも問題はありません。何故偶数がいけないという考えがあるのかは、葬儀の際に遺族へと参列者が渡す香典に、その考え方があるためです。日本では昔から言葉や行為に力が宿るとされ、験を担ぐ考えがありました。
香典で偶数を避けるのは偶数が不幸を招く数字だとされ、遺族への不幸を願っているという意味に捉えられてしまうからです。そのため、香典では2千、4千、6千・・・などの数字を避けますが、香典とお布施は全くの別のものですので偶数でも構わないのです。
新札を用意すべき?
お布施に入れるお金は新札でなくても構いません。この悩みも香典のマナーから出てきたと考えられます。香典には新札を用いません。これは新札は用意しなければ手に入らないものなので、香典に用いると「故人の死を準備して待っていました」という意味になってしまうからです。
故人の死を待っていたと言われて気分のいい遺族はいないでしょう。そのためどうしても新札しかない場合は、一度折り目を付けて香典袋の中にいれるようにするのです。お布施では逆に、新札は丁寧だというイメージがついていてこのような悩みが聞かれますが、全く気にしなくても構いません。
先ほども言ったようにお布施と香典は意味が違います。そして新札も旧札もお金であることにかわりはありませんし、新札が丁寧だという意味合いもありません。
葬儀のお布施について
葬儀のお布施は現在では僧侶へのお礼という意味合いが大きくなっていますが、元々は僧侶への施しであり仏教徒の修行の一つでした。「お気持ちで」と僧侶から言われる所以を理解した上でもお布施の金額はやはり悩ましいものに変わりはありません。
時代に合わせて僧侶も遺族に寄り添うべく、お布施の金額をはっきりと示す姿勢が見られます。お布施の金額に悩みすぎて、故人を偲ぶ時間が失われてしまっては元も子もありませんので、僧侶に直接訪ね悩みを解決しましょう。
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