鯨幕とは?鯨幕を張る意味や由来・歴史・幕の種類について
公開日 : 2020/12/5
更新日 : 2020/12/10
鯨幕(蘇幕)は葬儀で張られる黒と白の幕のことです。葬儀でよく見かける幕ですが、その意味や由来を知る方は意外と少ないでしょう。また、青白幕(浅黄幕)など鯨幕以外に葬儀で使用される幕もあります。鯨幕の意味や由来、歴史などについてご紹介します。
公開日 : 2020/12/5
更新日 : 2020/12/10
目次
鯨幕(蘇幕)とは
鯨幕は、葬儀の際に式場に張られる白黒の幕のことをいいます。鯨幕は「くじらまく」あるいは「げいまく」と読み、「蘇幕」という別名もあります。白布と黒布を交互に縫い合わせることで作られており、黒い縁が上下についているのが一般的です。
鯨幕は全国の葬儀で用いられていますが、地域や宗派で利用しない場合もあるので見たことがない方もいるかもしれません。鯨幕はどれも同じに見えますが、関東では下に黒い縁のない鯨幕もあります。
葬儀で見るのが一般的で必需品ともいわれる鯨幕ですが、実は弔辞の時だけ使うものではありません。鯨幕の由来や歴史、用い方などをご紹介します
鯨幕の由来
鯨幕という名前の由来は諸説ありますが、哺乳類の鯨から名前がつけられたという2つの有力な説があります。鯨は背中が黒くお腹が白くなっていますが、この見た目に似ているから鯨幕という名前がつけられたという説です。
また単純な見た目ではなく黒い皮の鯨を捌くと肉は白いことから、鯨幕という名前がつけらえれたともいわれています。昔は鯨を食べる習慣は一般的だったため、鯨の皮と身が由来になった説が有力だといわれています。
鯨幕の歴史
鯨幕は、かなり昔から利用されています。しかし、弔事に利用されていたわけではなく、葬儀に鯨幕が登場したのは意外と最近です。鯨幕の歴史についてまとめました。
昔は慶事・神事で使われることが多かった
葬儀で使われることが一般的な鯨幕ですが、葬儀で使われるようになったのは大正から昭和の初期頃といわれています。元々黒に弔辞の意味合いはなく、古来の日本では高貴な色とされていました。黒は結婚式で使われることが多い色でした。
歴史が浅いともいわれる鯨幕ですが、古来より神事で使われていたことがわかっています。現在でも、旧暦で行事を行う地域や出雲大社などの神社の慶事では、鯨幕が利用されています。皇室の結婚式や納采の儀などでも、鯨幕が使われています。
鯨幕が葬儀で用いられるのは西洋の影響
本来日本では弔事は白い色を用いるのが一般的で、葬儀でも白い服を着ることになっていました。鯨幕ではなく、葬儀では白単色の幕や青白2色の浅黄幕が使われていたそうです。しかし、西洋では黒の喪服を着るのが当たり前でした。
海外の方が日本の葬儀に黒の喪服で参列した影響は大きく、少しずつ弔意は黒で表すという考えが一般的になったようです。葬儀も鯨幕を使うようになり、これがきっかけで弔辞で鯨幕を使うようになったといわれています。
鯨幕を張る意味とは
葬儀を行う際に、式場や葬儀を行う家の周囲に鯨幕を張ります。鯨幕を張る意味は、葬儀を行っていることを周囲に知らせる、仕切りを作ることで見られたくない部分を隠すなどの意味合いがあります。鯨幕で結界を作り、浄と不浄を分けるとも考えられています。
式場の雰囲気を作るために、鯨幕を張る意味もあるといわれています。自宅で葬儀を行う場合は、見られたく場所がある方は多いでしょう。鯨幕で仕切りを作ることで、自宅の見せたなくない部分を隠して葬儀を行うことができます。
ただし、鯨幕は必ず使用しなければならないものではありません。地域の慣習や宗派によっては鯨幕を使わない場合もあります。鯨幕を使用するのが心配な場合は、葬儀社や菩提寺、地域の方に相談するといいでしょう。
鯨幕の張り方(使い方)
鯨幕を自分で張る場合は、ひもやロープを自分で鯨幕に通して式場に設置する必要があります。まず、鯨幕の表と裏を確認しましょう。鯨幕の上部にはひもを通すための筒状になった部分があり、チチや耳と呼ばれています。チチにひもを通して、式場に設置します。
鯨幕がたるんだ状態で張ってしまうと、地面に触れて汚れたり、破損の原因にもなります。鯨幕がたるまないようにしっかりと設置することが大切です。ひもを通すのが大変な場合は、ガムテープや画鋲などで鯨幕を張る方法もあります。
ただし、この方法はひもを通すのに比べて鯨幕を傷めやすいです。自分で購入したものなら良いですが、レンタルなどの場合は必ずチチにひもを通して張るようにしましょう。汚れたり、破損した場合はクリーニング代や弁償が必要になります。
鯨幕の手入れ方法
鯨幕は意外と傷みやすいのも特徴です。自分で保管する場合は、お手入れが大事になってきます。鯨幕の洗い方や保管方法などのお手入れについてまとめました。
洗濯機は避けて丁寧に洗う
鯨幕を自分で管理する場合は、お手入れが大事になってきます。使用した後の汚れはできるだけ拭き取るようにします。拭いても落ちない場合は洗うしかありませんが、洗濯機を使うのは良くありません。
鯨幕は色落ちしやすいので、自宅の洗濯機やコインランドリーで洗うのは避けましょう。自分で洗う場合は、手で押し洗いするのがおすすめです。自分で洗うのが不安な場合は、専門のクリーニング業者に依頼しましょう。
日光を当てずに乾燥させる
洗った後は、日光を当てずに陰干しをして乾燥させましょう。日光が当たると退色しやすいので、日の当たらない風通しの良い場所に干すことが大切です。
湿ったまま畳むと色移りの原因になるので、しっかりと乾燥させましょう。干す際はしわが出ないようにしっかりと伸ばしてから、干しましょう。
折り目に合わせて畳んだら、湿気が少なく日光が当たらない場所に
鯨幕を折りたたむ際は、しわを作らないようにしましょう。干した際にしわができた場合は、あて布を使ってスチームアイロンをかければ伸ばすことができます。しわを作らないためにも、元の折り目に沿って折りたたむようにしましょう。
日光が当たると退色の原因に、湿気は色移りの原因になります。湿気が少なく、直射日光が当たらない場所に保存することが大切です。
鯨幕を自分で用意する場合
葬儀で鯨幕を用意するには、どうしたら良いのでしょうか?基本的に葬儀社に依頼すれば、鯨幕も準備してもらえます。葬儀プランの飾付などに鯨幕が含まれているので、自分で用意する必要のないことがほとんどです。
ただし、葬儀社が用意できない場合や葬儀以外で使う場合などに、自分で用意しなければならないケースも考えられます。鯨幕を自分で用意する方法についてまとめました。
鯨幕は購入とレンタルが可能
鯨幕を自分で用意しなけらばならない場合は、鯨幕を購入することや個別にレンタルすることも可能です。鯨幕は仏具屋やネット通信でも購入できます。また、全国どこでも郵送でレンタル可能なサービスもあります。
ただし購入やレンタルで用意した鯨幕は、ひもやロープを使って自分で設置する必要があるので注意が必要です。特にレンタルした鯨幕は汚したり、傷をつけるとクリーニングや弁償のための費用が必要になるので気を付けましょう。
フリー素材の画像を使えば鯨幕は自作できる?
ネットのフリー素材には、鯨幕の画像もあります。こういったフリー素材を利用して、鯨幕を自作できると考える人もいるかもしれません。ただ、フリー素材の画像は用途が限られており、印刷に使えるようなものはほとんどありません。
フリー素材といっても、著作権がある場合や無料で利用できない場合もあるので十分に注意しましょう。
鯨幕の相場について
鯨幕を用意する場合、購入でもレンタルでも個別で費用が必要になります。購入とレンタルごとに鯨幕の相場についてまとめました。
鯨幕を購入する場合の販売価格の目安と注意点
鯨幕は180cm×180cmの1間角から180cm×9mの5間までのものは、簡単に購入できます。1間角は5000円くらいで、5間のものは2万円から3万円くらいが相場です。布の厚さや生地の質、色合いで価格も変わってきます。
レンタルに比べるとかなり高くなりますが、繰り返し使えるのがメリットです。あまり頻繁に利用しない鯨幕ですが、使う予定がある場合は購入した方がお得な場合もあります。
ネット通販の場合は、注文してから届くまで3週間などかなり時間がかかることもあります。通販で購入する場合は、使用する日までに間に合うか確認することが大切です。
鯨幕のレンタルする場合の費用の目安と注意点
鯨幕をレンタルする場合、横幅5.4m(3間)、横幅9m(5間)の2種類の大きさが用意されていることが多いです。費用は2500円~3500円くらいで、レンタル期間は2泊3日のものが一般的になります。延長の場合は、1日ごとに追加料金が必要な場合が多いです。
設置に必要なロープもついてくることが多いですが、ロープは耳(チチ)に通されていない状態でレンタルされるのが一般的です。ロープを通した状態でレンタルする場合は、追加料金がかかる場合もあります。
汚れがひどいとクリーニング代を請求されるので、雨天での利用やガムテープ・両面テープを使って取り付けるは控えるようにしましょう。鯨幕は屋外に張ることも多いので、雨などには注意が必要です。
鯨幕以外の幕
日本では鯨幕以外にも数多くの幕があり、葬儀で使われる幕もあります。鯨幕以外の主要な幕や葬儀で使われる幕についてまとめました。
紅白幕
紅白幕は、結婚式、入学式、卒業式、成人式などの慶事で使う紅白の幕です。目立つことからバーゲンセールで用いられることも多い幕となっています。慶事全般に用いられることもあり、非常になじみ深い幕といえるでしょう。
紅白幕を使わなくても、紅白歌合戦などイベントが赤と白に分かれて行われることは多いです。紅白の由来は「源平合戦に由来する」という説や「人間が生まれた時の色は赤で、死ぬ時の色は白」などさまざまな説があります。
紅白の由来そのものは古いようですが紅白幕の歴史は浅く、できたのは昭和に入ってからといわれています。そのため、紅白幕は伝統的な行事では利用されません。
青白幕(浅黄幕)
青白幕(浅黄幕)は濃い青と白の2色が縦じまになった幕で、鯨幕の黒と青を入れ替えたものをイメージすると分かりやすいです。浅黄とは水色よりも濃い青色を表しています。慶事と弔事の両方で利用されており、地域によって使われて方はさまざまです。
利用する場合は、地域の慣習を確認してから使うようにしましょう。鯨幕の色違いといわれることもありますが、葬儀に使われた歴史は鯨幕よりも古く江戸時代以前から葬儀に使われたといわれています。また、神式の葬儀で利用される場合もあります。
歌舞伎で舞台効果に使われる幕も浅黄幕と呼ばれていますが、こちらは浅黄色(濃い青色)一色の幕です。
五色幕
五色幕は文字通り五種類の色を使用した幕で、仏教の寺院の壁などに掛けられています。五色が中国の五行思想やインド哲学の五大を表すと考えられています。真言宗では5つの知恵を表す色として知られており、五智如来の色とも考えられています。
配色はさまざまな例があり、白・青・黄・赤・黒や青・白・赤・緑・黄などがあります。五行思想では、白は白虎、青は青龍、黄は黄龍、赤は朱雀、黒は玄武を表すと考えられています。五色幕をかけることは、仏教の寺院であることを表しています。
水引幕
水引幕は葬儀会場の入り口や室内の四方から垂らされた白く短い幕のことです。水引幕は土俵の屋根に張られた幕でもあり、相撲と縁が深い幕でもあります。相撲は元々鎮魂のための儀式で、そのことの名残でもあります。
葬儀会場では天井に張ることが多い水引幕ですが、自宅で葬儀を行う場合は玄関や天井だけでなく廊下や階段、壁などにも張っていきます。これによって、統一感を出すことができます。ただし、家族葬や直葬が増えたことで、水引幕を張らない葬儀も増えています。
朽木幕
朽木幕は、神道式の葬儀である神魂祭で用いる幕のことです。朽ちて木目が浮き上がった状態の木からデザインされた模様が施されているため、朽木幕という名前がついています。布は白いものが使われます。神魂祭では、祭壇の上に朽木幕を飾るのが一般的です。
歴史は古く、平安時代には大部屋の間仕切り用の幕として使われていました。当時は壁代や几帳などと呼ばれていたようです。現在の神社でも、朽木幕は部屋を仕切るための幕として利用されています。
貴族の家では間仕切りだけでなく、目隠しとしても利用されていました。現在では神式の葬儀の葬儀以外にも、テントの生地に朽木幕の模様が印刷されている場合があります。
葬式で使用されるその他の幕
葬式で利用される幕は、今まで紹介したものだけではありません。基本的に葬式に必要な幕の使用料は葬儀プランの代金に含まれています。しかし、幕の種類を知っておけば、幕の使用料がどのくらいなのか分かり、葬式の打ち合わせもスムーズにできます。
葬式で使用されるその他の幕についてまとめました。
ドレープ幕
サテン生地を使用した厚手の幕で、祭壇の後方に張られることが多いです。コンサートなどでも使用される幕で、葬儀場の壁を見せないために使われています。ドレープとは布を垂らすとできるゆったりしたヒダを表しています。
焼香幕
焼香幕は、「御焼香所」と書かれた白い幕のことです。焼香台の位置をわかりやすくするために、焼香台のまわりに張られます。
受付幕
受付幕は、受付代の位置を知らせるための白い幕のことです。受付と書かれている場合もありますが、無地の幕が使われることもあります。
青幕・黒幕
青幕・黒幕はあまり知られていませんが、自宅で通夜や葬儀を行う際に使用する幕です。取り付けられた家具などを覆うために使われることが多いです。
葬儀で利用されるのは鯨幕だけではない
鯨幕の意味や歴史などについてご紹介しました。葬儀で使われるようになったのは意外と最近だとわかって驚いた方も多いのではないでしょうか?葬儀で使われる幕は鯨幕以外のものもあります。鯨幕を使うか疑問に感じたら、葬儀社などに相談すると良いでしょう。
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