盆棚はご先祖様へのおもてなし|飾り方から片付け方までを解説
公開日 : 2020/11/5
更新日 : 2020/11/5
お盆にはご先祖様の霊があの世から帰ってきます。ご先祖様をお迎えし、おもてなしをするには盆棚が欠かせません。お盆を気持ちよくお過ごしいただく盆棚を用意するには、どうしたら良いのでしょうか。今回は盆棚の飾り方から片付け方まで、お盆飾りの意味も含めて見ていきます。
公開日 : 2020/11/5
更新日 : 2020/11/5
目次
毎年お盆前に準備する盆棚
毎年、お盆にあの世から帰ってくるご先祖様の霊を迎えるために準備するのが、盆棚です。精霊棚や先祖棚とも呼ばれます。お盆前に準備を始めるのが一般的です。
盆棚に施されるお供物や飾りは、お盆飾りと呼ばれます。飾り方に特に決まりはありませんが、宗派や地域のならわしによって異なるケースがありますので注意してください。
盆棚の設置場所も、仏壇の前や横に飾ることが多く見受けられますが、地域によってはお墓に飾ることもあります。菩提寺やご親戚などに確認しておくと良いでしょう。
盆棚を飾る時期
盆棚を飾る時期は、迎え火でご先祖様をお迎えする13日の「迎え盆」から送り火でご先祖様をお送りする16日の「送り盆」までです。8月13日から16日に行われることがほとんですが、地域によっては旧暦の7月13日から16日をお盆としています。
盆棚の飾り付けは、お供え物などをお盆前の12日までに準備し、12日の夕方から飾り付けをするのが一般的です。ご先祖様が戻ってくる目印の役割をする盆提灯は、早めに飾っておいても問題はありません。7月または8月の上旬から飾っておくと良いでしょう。
片付ける時期は、お盆の終わりを告げる16日の「送り火」の後です。17日以降に片付けるようにしてください。
サイズ
盆棚のサイズに決まりはありませんが、二段から三段のひな壇形が一般的です。最上段に霊前灯やご先祖様の位牌を設置し、二段目にご先祖様に召し上がっていただくお膳(精進料理)と生花を飾ります。
昨今では、住環境の変化にともない、一段飾りの盆棚も多く見受けられます。四十九日まで使用した後飾り用机を保管しておいて使ったり、自宅にあるテーブルを使ったりして盆棚を用意するケースです。
盆棚を仏壇の前や横に置くのが難しい場合は、仏壇の引き出しを利用することもできます。盆棚のサイズに関わらず、大事なのはご先祖様をお迎えして、おもてなしをする気持ちです。
いずれも、まこものござや蓮の葉、または白い布を敷いてお盆飾りを施してください。感謝の気持ちを込めて、ご先祖様を迎える準備をしましょう。
便利なセット
盆棚やお盆飾りは個別に準備する方法と、便利なセットを利用する方法があります。仏壇仏具の各メーカーが用意したセットには、盆棚に必要なものが入っていますので、購入後は組み立てて設置するだけです。
仏具店で直接購入する他、インターネットを利用してオンラインショップで購入することも可能です。盆棚として使用する経机、盆提灯を既に持っている場合は、まこもとおがらのセットやわら製の精霊馬のセットなどを購入するのも良いでしょう。
レンタル
毎年、お盆には盆棚や盆提灯を飾ります。お盆が終わればご自宅で収納しますが、保管場所をとるのが難しい場合はレンタルが便利です。収納とお手入れの手間がなくなります。
中には、盆棚や盆提灯の組み立て、お盆飾りの飾り付けや片付けが不安な方もおられることでしょう。その際には、全てセットでレンタルできるコースを提供している店舗もありますので、検討してみるのも一つの方法です。
自作する
ご先祖様におもてなしをする盆棚は、全て購入したりレンタルしたりして準備します。業者さんに設置から飾り付けまで依頼する場合を除き、ご自身で設置することが基本です。
ここでは、簡単に自作する方法を見てみましょう。設置や飾り付けを本格的にしたい場合は、菩提寺か宗派の僧侶に確認することをおすすめします。
簡易的な作り方
簡易的な盆棚を作るのに必要なのが、小さな机かテーブルです。小さな机やテーブルを置く場所をとるのが難しい場合は、仏壇の引き出しを利用してください。
まこものござ、または白い布を敷いた盆棚の中央奥にお位牌を置き、お膳・夏野菜や果物と精霊馬をお供えします。盆棚の横に盆提灯を飾れば完成です。スペースがあれば、個人が好んだ食べ物もお供えすると良いでしょう。
新盆の盆棚
故人の四十九日が過ぎた後、初めて迎えるお盆が「新盆(初盆)」です。新盆では、通常のお盆と違う点があります。白提灯を飾ることです。初めてのお盆で帰ってくる故人の霊が迷わないようにという思いがこもっています。
白提灯には、家紋や戒名、〇〇家などを入れる場合がありますので、菩提寺やご親戚に確認しておくと良いでしょう。お盆が終わると、白提灯は処分します。昔ながらの、送り火で燃やす方法が現代では不可能です。地域でお焚き上げをする行事があるか、菩提寺で処分していただけるかなど確認してみてください。
白提灯の処分方法
地域のお焚き上げで燃やしたり、菩提寺にお願いしたりすることが不可能な場合は、一般ゴミとして処分する方法があります。白提灯に手を合わせた後、火袋を少しだけ燃やしてすぐに火を消してください。火が完全に消えたことを確認してから、白い紙で白提灯を包んで一般ゴミとして処分します。
白提灯の火袋を少しだけ燃やす方法が困難な場合は、塩でお清めをしましょう。その後、白い紙で白提灯を包んでから一般ゴミとして処分してください。お住いの自治体によっては、白提灯の処分方法が決まっているケースがあります。事前に確認してみることをおすすめします。
盆棚の飾り方
盆棚の飾り方に決まりはありません。気をつける点は、宗派や地域のならわし、住環境の違いがあることです。盆棚のサイズも同様で、様々なタイプがあります。盆棚を簡単に自作する方法については先に述べましたので、ここでは一般的な飾り方とお盆飾りの種類と意味を確認しておきましょう。
盆棚の一般的な飾り方
盆棚を仏壇の前に設置したら、まこものござを敷いてください。まこものござがない場合は、白い布を敷きます。敷物を敷いたら、笹竹を四隅に立ててそれぞれを縄で縛り結界を張ります。
縄には、そうめんやほうずき、昆布をつるしてください。盆棚の最上段中央、または一番奥の中央に、ご先祖様の位牌を置きます。複数、ご先祖様の位牌がある場合は、一番昔のご先祖様が一番右側になるように並べてください。
そこから順に手前に向かって、お膳・香炉・供花を置き、夏の野菜や果物・精霊馬・水の子・ミソハギなどをお供えします。盆提灯を盆棚の脇に飾り、完成です。
お盆飾りの種類
お盆飾りには、あの世から戻ってくるご先祖様だけでなく、お盆に戻ってくる全ての霊におもてなしをする気持ちがこめられているものもあります。ここでは、一般的に準備されているお盆飾りについて意味を確認していきましょう。
盆提灯
盆棚の脇に飾られるのが、盆提灯です。お盆に戻って来られるご先祖様が迷わず家にたどりつけるよう、目印として飾ります。種類は、吊るすタイプと置くタイプの2種類です。御所提灯や大内行灯、華やかな回転行灯などが一般的でしょう。
以前は、一対の盆提灯を盆棚の両脇に飾るとされていましたが、昨今は住環境の変化に伴い、一つの盆提灯を飾るご家庭が増えてきました。数や大きさに決まりはありませんので、故人の好みやご家庭に合ったものを選ぶことをおすすめします。
まこも
盆棚には、まこものござを敷きます。まこもは、漢字で「真菰」と書く、イネ科の植物です。古来から食用や薬用として生活に携わってきました。出雲大社の神幸祭でも、まこもが用いられています。
薬用成分を含むまこもは、病気を治し邪気を払うとも言われ、まこものござを敷くことで聖域を作る意味も持っています。まこものござが無い場合は、白い布で代用してください。
位牌・仏具
盆棚の一番奥、または最上段には位牌を安置します。その際、スペースがあれば、香炉・お線香・燭台・おりんや御本尊、遺影も設置しましょう。
精霊馬
盆棚を印象強くするものとして欠かせないのが、精霊馬です。きゅうりとなすにおがらをさして4本足にし、馬と牛に見立てています。ご先祖様が乗る乗り物です。
きゅうりの馬(精霊馬)には、「足の速い馬に乗って、一刻も早くあの世からご先祖様に帰ってきてほしい」という意味が込められています。いっぽう、「あの世へ帰る時にはゆっくり歩く牛の乗って、楽しみながらお帰りください」という名残を惜しむ思いをこめて準備されるのが、ナスの牛(精霊牛)です。お土産として供物を乗せて帰っていただく意味合いもあります。
精霊馬には、きゅうりやなすを用いるのが一般的ですが、異なる地域もあります。「ワラ」や「まこも」や「かや」を編んで作ったり、違う野菜を使ったりするほか、牛と馬の意味が逆など様々です。
ほおずき
赤く鮮やかな色を放つ美しいほおずきは、盆提灯と同じ意味を持っています。あの世からお越しになるご先祖様の足元を照らし、あの世へお帰りになる時の道を照らす目印です。
ほおずきは、お盆に戻って来られたご先祖様の魂が過ごされる場所とも言われています。食糧難などでお供えを準備することが難しかった時代には、ほおずきの鮮やかな色合いが少ないお供物を補完する役割も担っていました。
笹竹
盆棚のために用意する笹竹は、結界を張る役割と言われています。盆棚の四隅などに立てた笹竹の上部をそれぞれ縄で縛り、結界を張ります。
水の子
深鉢やスープ皿のような深めの器に蓮の葉を敷き、研いだお米・さいの目に切ったきゅうりとなすを盛り付けて閼伽水を注いだものが「水の子」です。地域によっては、蓮の葉ではなく里芋の葉を敷きます。
水の子は、お盆に戻って来られるご先祖様のためだけに用意されるものではありません。餓鬼や無縁仏や供養してもらえない霊など、すべての霊の喉を潤し、おもてなしをするためのお供えです。水の子には、とても優しい気持ちがこめられています。
閼伽水(あかみず)とみそはぎの花
閼伽水(あかみず)は、水の子に水を注ぐためのものです。深めの器に蓮の葉を敷き、きれいな水を入れます。みそはぎの花を5本から6本束ねて「みそはぎの束」とし、添えて完成です。
盆棚をお参りする際には、閼伽水をみそはぎの束にふくませて、水の子に注いでください。この行為が餓鬼や無縁仏などを供養することにつながり、ご先祖様の喜びにもつながります。
盆花
盆棚に飾る盆花は、ご先祖様の霊が盆花を依代に戻って来られる行事、「盆花迎え」から飾られるようになりました。「キキョウ」や「ハギ」、「ミソハギ」「オミナエシ」「ユリ」などが代表的です。故人が好んだ花を飾るのも良いでしょう。
盆花には適さない花もあります。毒のある花、トゲのある花です。香りが強い花も向いてません。故人が好きだった花であっても、避けたほうが無難です。
そうめん・昆布
ご先祖様があの世へ戻られる時、お土産を持って帰る際に使う紐としての意味を持つのがそうめんです。また、精霊馬に乗る際に使う手綱の役割も担うと言われています。
「よろ昆布」から「喜ぶ」意味を表してしるのが、昆布です。そうめんと共に昆布は、細く長く喜びや幸せが続いてほしいとの思いもこめられ、飾られます。
お膳
盆棚にお供えされるお膳には肉や魚を使わず、白飯・汁物・漬物・和え物・煮物の5品目が並びます。精進料理です。料理の配置の仕方は、宗派や地域のならわしによって違いがあります。初めて盆棚をご準備される場合は、菩提寺やご親戚に確認すると良いでしょう。
夏の野菜・果物
盆棚にお供えされる夏の野菜や果物には、「百味五果」の意味があります。「百味」はたくさんのおいしいもの、「五果」は「瓜・茄子・麺・饅・餅」です。この通りにお供えする必要はありません。
旬の野菜や果物をお供えすることが、ご先祖様の供養につながります。故人が好んだものをお供えしても良いでしょう。
宗派によって違う盆棚の飾り方
盆棚の飾り方にルールはありませんが、宗派による違いがあります。真言宗、日蓮宗、浄土宗、曹洞宗、浄土真宗、それぞれの盆棚の飾り方を見てみましょう。
真言宗
真言宗の盆棚で他の宗派と違う点は、閼伽水(あかすい)にミソハギを添えてお供えすることです。真言宗には、「追善供養」の考え方があり、生きている人が「水の子」に「閼伽水」を入れて餓鬼や無縁仏を供養することで、故人の徳を積むとされています。
ご先祖様だけでなく、お盆に帰ってくる全ての霊を供養し、おもてなしをするのが「水の子」と「閼伽水」です。優しい気持ちがこもった行為が、故人を極楽浄土へ導く助けにつながります。
他にも違うのが、お膳の配置です。和え物が中央・漬物が右上・煮物が左上になるよう、並べます。また、新盆では精進料理をお供えするのも特徴の一つです。箸を添えて、食べられる状態にしてお供えをします。
日蓮宗
日蓮宗は、盆棚を仏壇の前に置いて両脇に青竹を立てます。仏壇の最上段中央に日蓮大聖人像を置き、一番奥側に曼荼羅を掛けるのが特徴的です。両脇に立てた青竹は細い縄で繋げられ、ほおずきや青柿、青リンゴなどの旬のものを吊します。
真言宗と同じように違うのが、お膳の配置です。和え物が中央・漬物が右上・煮物が左上になるよう、並べます。
浄土宗
浄土宗で特徴的なのが迎え火や送り火です。井桁状の「#」に配置したおがらを焚き、焚いたおがらもお供えします。盆棚には小机を用い、まこものござを敷いた上に蓮の葉を置き、野菜や果物をお供えするのも特徴の一つです。
他にも違う点が、お膳の配置です。漬物が中央・煮物が右上・和え物が左上になるよう、並べます。また、故人が好んだものだったとしても、お酒やたばこなどの嗜好品は供えないのが一般的です。
曹洞宗
曹洞宗で盆棚に敷く敷物は、白い布のみです。まこものござは使いません。お団子をお供えするのも特徴的です。また、盆棚にお供えするお膳として、「霊供膳」または「御霊供膳」と呼ばれる精進料理が用意されます。
お盆の間、お食事の際にお膳をお供えすることで一緒に食事を楽しんでいるように過ごすのが、「霊供膳」または「御霊供膳」です。昨今では生活環境の変化から、1日に1回またはお盆の間に1日だけお供えするご家庭も増えています。
曹洞宗では、お盆にはご先祖様とお連れの方もいるという考え方があるため、お供えの数に注意が必要です。1人前分、多くお供えをするようにしましょう。新盆でも違いがあります。盆棚を白い布で覆う点です。新盆でお供えするお膳の箸は、仏様の報告に向けて添えます。
浄土真宗
浄土真宗のお盆は、ご先祖様に感謝をする「歓喜会」と呼ばれる期間です。故人は亡くなった後すぐに仏様になるため、お盆にあの世から帰ってくるという考え方が浄土真宗にはありません。迎え火や送り火もありませんし、盆棚を準備する必要もありません。
盆棚の片付け方
盆棚は、送り火をたくことでお盆が終わりを迎えた後に片付けます。一般的には17日以降とされていますが、地域によっては15日がお盆の最終日とされてることがありますので、注意してください。
お供物のうち、傷みそうな食べ物は家族でいただくのが基本です。食べることがご先祖様の供養につながりますので、早めにお下がりとしていただきましょう。
蓮の葉などの生物や植物は、処分する前に塩でお清めをしてください。お清めが済んだら、白い半紙やキッチンペーパーに包んで一般ゴミとして処分します。食べきれず、傷んでしまったお供物も同様です。
精霊馬
精霊馬は、ご先祖様があの世から来てお帰りにる際に、往復で乗られた乗り物です。処分する前に手を合わせて合掌し、塩でお清めをして供養しましょう。処分する際には、白い半紙やキッチンペーパーで包んでください。
菩提寺でお焚き上げしていただけるようであれば、お願いするのも一つの方法です。ご自宅での処分に気が引ける方は、ご検討されると良いでしょう。
おがら
迎え火や送り火を焚く際に使用する「おがら」も、一般ゴミとして処分できます。火が完全に消えてることを確認してから、捨てるようにしてください。送り火の直後は、特に注意してください。
盆提灯・盆棚
盆提灯と盆棚は、次の年も使います。盆提灯の火袋についたほこりをはたいて落とし、一つ一つの部品についた汚れをていねいに拭き取ってください。箱に戻す際には、防虫剤を入れて保管しましょう。
盆棚に使用した小机なども、きれいに汚れを拭き取ってお手入れしてください。傷などがつかないよう、布や紙で包んでから保管すると良いでしょう。
まこも
盆棚に敷いたまこもは、お盆が終わったら汚れがないか確認してみましょう。次の年も使える状態であれば、きれいに掃き清めてください。カビや虫がついたらいけませんので、しっかりと乾燥させて防虫剤とともに保管しておきましょう。
盆棚を処分する時
盆棚が古くなり、次の年には使えない状態になった場合は、お寺でお焚き上げをしてもらうようにしましょう。お焚き上げをしているお寺がない場合は、家庭ゴミとして処分をしてください。
一般ゴミか粗大ゴミなのかは、自治体に問い合わせてみることをおすすめします。また、一般ゴミや粗大ゴミのように家庭ゴミとして処分する際には、塩でお清めをしてから処分するようにしましょう。
盆棚におもてなしの気持ちをこめて
日本人の素晴らしい心意気であるおもてなしは、盆棚にもこめられています。大切なご先祖様があの世から帰ってくるお盆に、気持ちよくお過ごしいただくために準備するのが盆棚です。
毎年、行われるお盆において、どのような盆棚を用意し、ご先祖様をお迎えするのかは、各ご家庭のお考えにもよります。昔から伝わる方法で盆棚を準備するのか、ご家庭に合った盆棚にするのかはそれぞれのご判断によるところです。
大きな祭壇を用意するご家庭もあれば、コンパクトなタイプを用意するご家庭もあります。盆棚は大きさにおいても飾り方においても、特に決まったルールはありません。
大切なのは、ご先祖様を敬う気持ちとおもてなしの心でです。毎年、ご先祖様に気持ちよく過ごしていただけるよう、無理のない範囲で準備をしましょう。お盆が終わったらきちんと片付けをし、翌年に備えることも忘れないようにしてください。
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