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日本国内で土葬が可能なのかについてわかりやすく解説します

日本ではほとんどの場合、葬儀後に火葬を経て埋葬されています。一方、市町村長の許可を得れば土葬も法律上は問題なく実施することができます。しかし、土葬で故人を弔いたい場合は、国内ではなかなか厳しい制約があります。今回は土葬の現状、土葬の手順や注意点を解説します。

公開日 : 2020/11/06

更新日 : 2020/11/06

目次

土葬という埋葬について

現在の日本において故人の葬儀では、ほぼ全てのケースで火葬を経て埋葬されています。しかしながら、歴史的には日本でも土葬が幅広く行われてきました。

 

宗教上の理由から、土葬の習慣が維持されている国も多いです。こちらでは土葬の歴史や、諸外国の土葬事情について解説します。

土葬の歴史は古い

土葬とは、土の中に遺体をそのままの状態で埋葬する方法を言います。日本の土葬の歴史は非常に古く、縄文・弥生時代では「屈葬」と呼ばれ、身体を折り曲げた状態で埋葬されていました。

 

それ以後、次第に人々の身分や地位に差ができてくる古墳時代、飛鳥時代には、地域の実力者の場合、大きな墓に埋葬されました。

 

しかし、鎌倉時代には浄土宗・浄土真宗が庶民等へ普及し、火葬も広まっていきます。その後、土葬・火葬の2つの埋葬方法が混在していきます。

 

昭和初期以降になると宗教上の理由というよりは、衛生面や墓地のスペースの確保も難しい等の理由で火葬が増加、現在では火葬が主流です。

アメリカ等ではいまだに土葬が多く行われている

キリスト教では、イエス・キリストが死後3日後に復活したと言い伝えられています。現在でも根強く死後の復活が信じられており、遺体を火葬で焼くと復活が不可能という考え方が強いです。

 

そのためキリスト教徒が多い国では、土葬率が一部の国を除き概ね高い傾向にあります。埋葬方法は遺体を清めた後、棺に収め布をかけそのまま土の中へ埋葬します。

 

特にアメリカでは遺体の埋葬の際、遺体から血液や内臓を取り出した上で、防腐剤を入れる「エンバーミング」という処理が施されます。この処置で衛生面の問題はほとんど解消されています。このように衛生面が充実していることから、アメリカでは土葬率が約60%となっています。

 

ただし、キリスト教徒が多い国なら必ず土葬率も高いわけではなく、イギリスでは土地が足りないと言う理由で、火葬率が約70%を超えています。

イスラム教国では火葬が禁忌

イスラム教では、聖典コーランに「現世を罪深く過ごした人間は地獄の炎で焼かれる」とあります。この地獄のイメージと重なり、生前の肉体が失われる火葬は禁忌とされています。

 

イスラム教の場合は土葬する際、穴を2段に掘って深い方へ遺体を入れ、そこへ木の板を敷き、その上に土を被せます。つまり、遺体が身を起こせるような空間も作って埋葬します。

 

なぜなら、最後の審判の結果を伝える天使が故人に来訪したら、故人の遺体が上半身を起こし、天使の声を聞くという言い伝えがあるからです。

 

このように宗教上の教義等で、火葬が難しい理由や土葬の埋葬方法にも違いがあるのです。

日本における土葬の現状

日本では故人の埋葬の前に火葬することが主流となっています。では、現在の日本で土葬は禁止されているのでしょうか?

 

こちらでは我が国の土葬の現状、土葬が困難となった理由、わずかに土葬の可能な地域があることを解説します。

土葬は日本でいつまで主流だった?

鎌倉時代に浄土宗・浄土真宗が庶民等へ普及し、火葬が広まったことは既に述べた通りです。しかし、火葬が広まるにつれ、急激に土葬が廃れていったわけではありません。

 

江戸時代には幕府が儒教を推奨していました。儒教は祖先崇拝・親孝行を尊ぶ教えのため、親の遺体を火葬することは無礼にあたると考えられました。

 

また、江戸時代ごろの技術力では、遺体を短時間で火葬するのは非常に困難で大量の薪が必要です。そのため、遺族の経済的な負担が大きいという理由もありました。

 

その後、明治時代に一時、火葬禁止令が出されたものの、人口増加に伴い土葬用墓地が枯渇し始めます。大正時代には、地方自治体が火葬場設営へ積極的となり、昭和初期(1930年代)で火葬の件数が土葬を上回りました。

土葬は法律上可能

我が国での火葬の割合は100%近くに達していますが、果たして明確に土葬を禁止する法律はあるのでしょうか?我が国の墓地・埋葬について規定した「墓地、埋葬等に関する法律」では、火葬・土葬共に同列で扱われています。

 

この法律によれば、市町村長の許可を得れば土葬も法律上は問題なく実施することができます。とはいえ、法律ではOKでも墓地管理者が許可をしなければ、やはり埋葬は困難です。なお、東京23区や都市圏では土葬自体を明確に禁止しているケースがほとんどです。

 

墓地管理者が許可してくれなかった、という理由で自宅の庭に故人を土葬すれば、墓地、埋葬等に関する法律へ違反してしまいます。また、刑法の「死体遺棄罪」にも該当してします。なお、焼骨したとしても自宅の庭に故人を埋葬することは禁止されるので注意しましょう。

 

どうやら我が国で故人を土葬で供養したい場合、そのハードルはなかなか高いようです。

現在では腐敗や衛生上の理由から土葬が困難

我が国においては、土葬できるだけのスペースの確保が難しいことはもちろん、衛生上の問題で、管理者から埋葬許可の下りないケースがほとんどです。

 

遺体の腐敗により遺族や葬儀参列者等への感染症リスクが高まるので、わが国では速やかな火葬が求められています。

 

また、日本ではアメリカほど、エンバーミングが盛んではありません。エンバーミングは日本においても遺体の見栄えを良くしたいと望む遺族のため、徐々に浸透してはいます。しかし、その費用が15万円~20万円程度と高めなので、早めに火葬(費用0円~15万円)した方が安上がりと言えます。

茨城や山梨・北海道等でわずかに土葬可能な地域あり

日本で土葬が可能な地域はわずかに点在しています。ただし、少なくとも東京都や埼玉県等の首都圏で土葬することはまず不可能です。

 

現在でも土葬が可能な地域は、北海道、宮城県、茨城県、栃木県、山梨県、岐阜県、鳥取県、高知県等の一部の地域に限定されます。その他に離島等で土葬が風習として残っている地域もあります。

 

都心から近い土葬が可能な霊園は次の通りです。

 

  • 茨城県常総市:朱雀(すじゃく)の郷
  • 山梨県山梨市:神道霊園
  • 山梨県北杜市:風の丘霊園

 

もちろん、これらの霊園は土葬のみを扱っているわけではなく、焼骨した遺骨を埋葬するスペースの他、霊園の一部を土葬スペースとして提供しています。

 

都心の方々で土葬したい方々は、こちらの霊園へ問い合わせしてみましょう。その際にはしっかりと空きスペースの有無、使用条件も確認してください。

土葬の長所と短所について

厚生労働省の発表によれば、最近の全国の火葬率は約99.97%となっています(2017年度)。2017年には約140万人が亡くなり、ほぼ同数が火葬されています。

 

日本国内で火葬が普及する中、その一方で389人(0.03%)が土葬によって供養されています。つまり、土葬には依然としてその埋葬方法を行うだけの利点があるのです。

 

こちらでは、土葬の長所そして短所について解説します。

土葬の長所とは

土葬の長所には次の3点があります。

 

  1. 故人の姿のままで埋葬が可能
  2. 故人を土に還すことが可能
  3. 教義を守ることができる宗教もある

 

「1」は故人を焼骨することが忍びないという遺族の他に、「死産」となってしまい胎児の遺体のまま供養をしたい、という遺族の願いにこたえられる点は大きいです。

 

なぜなら胎児を焼骨した場合、遺骨はほんの少ししか残りません。埋葬の際は特に母親の喪失感が増してしまうかもしれません。しかし、土葬なら胎児のままで埋葬することができます。

 

「2」は故人の遺体がいずれ自然な形で土へ還っていくという、古来からの考え方に合致するという点です。大地へ還りたいと願う故人の生前の希望にも合った埋葬方法です。

 

「3」は前述したキリスト教やイスラム教の考え方にも合う埋葬方法だからです。火葬が禁忌とされている信者は、土葬が行えれば、教義を守ったことになり安心するはずです。

土葬の短所とは

土葬の短所には次の3点があります。

 

  1. 埋葬に広いスペースを使う
  2. ある程度の深さの穴を掘る必要
  3. 遺体の腐敗が環境衛生に影響を及ぼす事態も

 

「1」は故人をそのままの姿で埋葬する以上、焼骨した場合より多くのスペースを使ってしまうことがその理由です。前述した通り、大正時代に土葬用墓地が枯渇し始めたことで、火葬場の設営が促進されました。

 

このように広くスペースを使ってしまう以上、霊園の管理者が土葬のスペースを確保したくても、なかなか難しい事情があります。

 

「2」は遺体の腐敗する匂いをシャットアウトし、野犬等に掘り起こされないよう、ある程度の深さまで掘らなければいけないことを意味します。

 

土葬できる地域でも、例えば2m以上の深さの穴を掘ることが条件として明示されている場合もあります。そのため、それなりの労力を必要とします。

 

「3」は深く穴を掘って埋葬したものの遺体の腐敗により地下水が汚染され、地表に地下水が出てきた場合、環境衛生に重大な影響を及ぼす恐れがあるからです。

土葬を行う場合の手順について

故人のために土葬を希望する方々は、火葬の場合と違って何か特別な手順が必要なのか?と疑問に思われるかもしれません。

 

こちらでは、土葬を行う場合の手順と費用、土葬についての悩みや質問への相談方法を解説します。

地方自治体の条例で土葬が禁止されていないかを確認

前述した墓地、埋葬等に関する法律で土葬が禁止されていなくても、土葬をしたい地域の自治体の「条例」で禁止されている場合があります。

 

地方自治体では地域の事情を考慮し、国が定めている法律よりも、その規制を強める条例を制定することが可能です。

 

つまり土葬をしたい方々(墓地・霊園管理者等も含めて)は、国が禁止していないことを理由にその条例を無視できないわけです。まずは条例で土葬を禁止されていないことを確認し、寺院・霊園等へ土葬が可能かを問い合わせます。

墓地管理者の許可が必要

地方自治体の条例で土葬を禁止されていないなら、寺院や霊園等に土葬が可能かを問い合わせます。とはいえ、土葬が可能な寺院・霊園ならばホームページで明記しているはずです。

 

ホームページ等で土葬が可能か確認後、土葬スペースに空きはあるのか、墓地使用の手続きの流れや、墓石等をたてるスケジュールも調整していきます。

 

ただし、土葬する際には「土葬許可証」を自治体から取得する必要があります。この許可証が無ければ、土葬する際に管理者から使用許可が下りないので注意しましょう。

土葬の手順と土葬の費用はどのくらいか

土葬の流れですが、火葬の場合と葬儀が異なるわけでもなく大きな違いはありません。土葬の大まかな流れは次の通りです。

 

  1. 死後7日以内に市町村窓口へ死亡届の提出し「埋葬(土葬)許可証」を取得
  2. 墓地の永代使用許可申請書を墓地管理者へ提出
  3. 永代使用料、基礎、工事料や土葬取扱費用等を払う
  4. 永代使用許可証の発行・埋葬場所を決定
  5. 土葬のための穴を掘る作業
  6. 埋葬地まで棺を搬送する
  7. 埋葬(土葬)許可証を管理者が受理
  8. 土葬・僧侶の読経開始
  9. 献花
  10. 主催者が解散を宣言

 

火葬の場合と異なるとすれば、火葬許可証ではなく、土葬を許可する旨が記載された土葬許可証が必要であることです。また、遺体の腐敗も懸念されるため葬儀当日に土葬が行われます。

 

その他に、土葬の際に例えば2m以上の深さの穴を掘ることが条件とされているなら、ショベルカーなどの重機を活用します。ただし、重機が入れないエリアなら、遺族等が規定の深さまで穴を掘ります。

 

気になる費用ですが、火葬費用はさすがに掛かりません。しかし、穴を掘る際にショベルカー等の重機を用いる場合は、50万円以上の費用(工事料・土葬取扱費用等)が必要です。

 

その他、永代使用料、墓石の購入・葬儀代・僧侶へのお布施等も含めれば、火葬より数十万~数百万円分、費用が高くなってしまいます。

土葬の会へ相談するのも良い方法

土葬についての不明な点や相談をしたことがあるのなら、2001年8月に発足した「土葬の会」へ相談してみましょう。

 

土葬の会では、提携する土葬が可能な墓地や霊園の紹介や、墓地の使用許可申請、土葬の際の穴掘り等、土葬全般を取り扱う団体です。ご自分で土葬のできる墓地や霊園を探すより、効率的に埋葬地を選び出すことができます。

 

土葬の会は宗教や人種を問わないことがモットーです。たとえ仏教とは異なる宗教であっても、土葬を希望する方々の相談にのってくれることでしょう。

土葬も火葬も故人の供養のための儀式

たとえ埋葬方法は違っても故人を悼み、迷わず極楽浄土へ向かうよう願う家族の願いに違いはありません。もちろん、土葬したか火葬したかの違いで、故人がどこへいくか決まるわけではないのです。

 

肝心なのは故人を埋葬した後でしょう。故人のお墓に家族や親せきが集い、献花やお線香をたて、法要やお墓参りをすることこそが故人への感謝や供養につながります。

 

埋葬方法にこだわることは大切です。生前に故人が願った方法なら叶えてやりたいものです。しかし、故人を忘れず、故人との思い出を大切にする心こそ、最も失われてはいけない真心です。