鯨幕とは何のこと?日本で使われる鯨幕以外の幕についても詳しく解説

公開日 : 2020/10/9

更新日 : 2020/12/8

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「鯨幕」とは、目にしたことはあるけれども呼び名までは知らないという人が多いアイテムです。今回こちらでは、単なるイメージとして鯨幕を知っている人や鯨幕に関して何も知らないという人に鯨幕についてはもちろんのこと、鯨幕以外の幕についても詳しく解説します。

公開日 : 2020/10/9

更新日 : 2020/12/8

目次

葬式で使われる鯨幕

鯨幕とは、「くじらまく」や「げいまく」と呼ばれ、白と黒の布を交互に並べた縦じまの幕のことです。「蘇幕」と書き表されることもあります。鯨幕は、葬式に参列した際に目にすることはあっても、その名前までは知らないという人が多いのではないでしょうか。

 

または、同じ仏教であっても宗派によってや、お住まいの地域によっては目にしたこともないという人もいるかもしれません。一見どれも同じように見える鯨幕は全国的には上下左右に縁があるタイプが一般的ですが、関東では下に縁が無いタイプが用いられることもあります。

 

今回はその鯨幕について詳しく解説します。

鯨幕の由来

多くの人が疑問に思うであろう「鯨幕」という呼び名ですが、「鯨」という言葉からもわかるように鯨が由来しています。その名前の由来には諸説あります。1つは、古来より鯨は日本人にとってとても身近な存在であり、黒と白は鯨を連想させたものであったという説があります。

 

また、黒と白という見た目の通り、鯨の背中が黒くお腹が白いことが由来となっているという説や、鯨の皮は表面は黒いけれど内側は脂肪があり、その部分が白いことが由来となっているという説です。さらに、鯨の皮は黒く、革を剥いだら身が白いという説もあります。

 

諸説ある鯨幕の由来ですが、日本では「鯨鍋」などにして鯨を食する習慣があったことから、単なる鯨の見た目ではなく鯨の身に関係する由来の方が有力な説だと言われています。

鯨幕の歴史

鯨幕の歴史はとても浅く、昭和に入ってからです。それまでは、日本での弔事では白い幕や浅黄幕と言われる青と白の2色の幕が使われていました。しかし、江戸時代になって西洋文化が日本に入ってくると、「弔事には黒」というイメージが定着しました。

 

黒い色にお悔やみや悲しみのイメージが定着し、「弔事には黒」というイメージがより一般的になったのには、葬儀社が鯨幕を葬式で使用するようになったことも理由の一つです。このことによって、鯨幕は葬式の場で多く使われるようになりました。

 

しかし、西洋の文化が日本に入ってくるまでは、黒といえば高貴な色であり結婚式などの慶事の場で使われていました。また、神事の場では昔から鯨幕が使われていました。つまり、本来は黒と白の2色の鯨幕は、慶事や弔事に関係なく使用されるものだったということです。

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鯨幕を張る意味

鯨幕を使用するかどうかは、宗派だけでなく地域や土地のしきたりによっても異なります。鯨幕を張る場合は、葬祭場の会場の中や自宅で葬式を行う場合は部屋の中、またその建物の周囲に張られます。周囲に張ることで葬式が行われていることを周囲に知らせることもできます。

 

鯨幕を張る場合の鯨幕の役割は、葬儀場の内部を仕切るためや見せたくない部分を隠すため、結界を作るためです。葬式を行う際に鯨幕を必ず張らなければならないということではないため、鯨幕を張るかどうかは親族で話し合ったり葬儀社やお寺に確認をしたりしましょう。

 

特に自宅で葬式を行う場合は、見せたくない部分というのは多いのではないでしょうか。そのような場合は、鯨幕を張ることで参列者に見せたくない部分を見せずに済み、すっきりとした状態で葬式を行うことが可能です。

鯨幕以外の幕

日本で使われている幕と呼ばれるものには鯨幕以外にも「紅白幕」「浅黄幕」「五色幕」「定式幕」「水引幕」「朽木幕」などたくさんあります。鯨幕以外の幕に関しても呼び名は知らなくてもどこかで目にしたことがある幕も多いものです。

 

ここからは、鯨幕以外の幕についてそれぞれ詳しく解説します。

紅白幕

紅白幕は幕の種類の中でも最も多く目にする幕だと言えます。なぜなら、入学式や卒業式、成人式や結婚式、施工式や祝賀会などの慶事全般の多くの場で使用されているからです。視覚的な効果を狙って、バーゲンセールなどでも使用されることがあります。

 

紅白幕が使用されるようになったのは、昭和に入ってからのため歴史は浅いです。紅白幕は昔から縁起が良いとされてきました。「赤」は赤ちゃん「白」は死を意味し、この二つを組み合わせると「人生」になり晴れの舞台だとされているからです。

 

赤白幕ではなく紅白幕と呼ぶのにも理由があります。「紅」の漢字を使うのは、「赤」という文字は「赤裸々」など「むき出し」という意味を持つからだと言われています。

浅黄幕(青白幕)

浅黄幕(あさぎまく)とは、皇室が新年祝賀や園遊会などの儀式で使用する青と白の幕のことで青白幕(あおじろまく)とも言います。これらの儀式で浅黄幕が使用されるのには、親しい方との出会いを喜ぶ意味があります。地域によっては葬儀などでも使用されています。

 

浅黄幕の歴史は古く、一定の場所を囲い込むという意味から合戦の陣幕とも呼ばれていました。青と白の2色になったことは、浅黄幕が確立された江戸時代までさかのぼります。江戸時代で生地に色をつける方法として使われていた植物の色が由来しています。

 

青一色ではなく青と白の2色使いになった理由は、青の染料となる植物の採集できる量が少なく、白いままの生地と一緒に使うことで染色しなければならない範囲を少なくしたからです。

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五色幕

五色幕は、仏教の寺院に掛けられる5つの色の幕のことを言います。配色にはいくつか種類がありますが、一般的には白・青・黄・赤・黒の5つの色です。青と黒は一般的な青と黒ではなく、伝統的な表現である緑と群青が使われています。

 

五色というのは、インドの哲学である地・水・火・風・空の五つの要素である五大や、中国の火・水・木・金・土の五種類の元素である五行思想に基づいているといわれています。

 

五色幕を掛けることで、仏教の寺院であることを表しています。同じ文教でも真言宗では5つの知恵と言われ、五智如来の色とされています。

定式幕

定式幕(じょうしきまく)は、狂言幕とも呼ばれ歌舞伎や落語などの舞台の幕開きや終幕の際に使われている黒・柿色・萌黄(緑)の3色の縦じまの模様の幕のことを言います。歌舞伎の舞台では幕はとても重要な役割を担っているうえに、劇場の品格を表しています

 

「定式」とは「いつも使われている」という意味で、江戸時代には江戸三座である中村屋・市村座・森田座の芝居小屋だけが使用することを許されていました。配色も小屋によって異なり、中村屋は黒・白・柿色、市村座は黒・萌黄・柿色、森田座は黒・柿色・萌黄です。

 

現在は、劇場によって色の配色が異なります。例えば、歌舞伎座は森田座式、国立劇場は市村座式の定式幕が使用されています。

 

水引幕

鯨幕と同じように葬式の場において使われる幕に水引幕があります。鯨幕と異なり、水引幕は白い短い幕のことを言います。相撲の土俵のつり屋根に張られている幕も水引幕です。これはかつて相撲は人が亡くなった際に鎮魂のために行っていたことの名残です。

 

一般的には式場内の天井上部に張りますが、寺院などでは本堂の外に張ったり、自宅で葬式を行う場合は、玄関や廊下、天井、壁、階段に水引幕を張ったりすることで会場に統一感を出すこともあります。

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朽木幕

朽木幕(くちきまく)は神道で用いられる幕で、白地に布筋という紺のラインと模様が施されたもので、仏式の葬式で用いられる鯨幕にあたります。神道の葬式の場では、朽木幕にしめ縄を飾ります。一般的には祭壇の上部に飾られます。

 

朽木というのは、模様のことで「朽木柄」や「朽木模様」と言われています。白い布に紫の模様が施されているのですが、木が朽ち果て浮かび上がったような模様であることからこのように呼ばれるようになりました。

 

平安時代には「壁代」や「几帳」とも呼ばれ大部屋の間仕切りとして使われていました。現在でもこの風習は神社で見ることができます。

葬式で使用される幕

仏式の葬式で使用される幕は、鯨幕以外にもあります。例えば、祭壇の後方に飾る「ドレープ幕」、焼香台の周りに張られる「焼香幕」、受付台の周りに張られる「受付幕」、自宅での葬式の場合に作り付けの家具を覆う「黒幕」などです。

 

すべての幕が使用されるわけでなく、使用する幕の種類は依頼する葬儀社によっても異なります。これらの幕の使用料は葬儀のプランに含まれていることが多いため、個別に依頼をすることは少ないですが、幕の種類を知っておくことで葬式の打ち合わせもスムーズです。

 

葬儀プランの見積もりを取った際など幕の種類を知っておくことで、どの幕はプランに含まれているのか、どの幕はプランに含まれていないのかを見分けることができます。

鯨幕の準備方法

葬式で鯨幕を張るかどうかに関して決まりはありませんが、もし鯨幕を張ることになった場合にどのように手配をしてよいのだろうかと悩む人も多いでしょう。そこで、鯨幕の準備方法について詳しく解説します。

鯨幕の販売

鯨幕は、仏具屋やのぼり屋、インターネット通販などで販売されています。鯨幕を購入する場合は、鯨幕を張るための突っ張りポールや鯨幕と同じ白と黒の紐も一緒に購入しましょう。厚手でしっかりとした生地のものを選べば、丈夫で長持ちします。

 

鯨幕を購入するメリットは、汚れや破損を気にすることなく使用できる点です。ただし、鯨幕を注文してから手元に商品が届くまでに数日を要するため、幕を張りたい日に納期が間に合うのかどうかしっかりと確認してから購入しましょう。

 

デメリットは、鯨幕は何度も使用するものではありません。保管するための場所もそれなりに必要となります。そのため、ご親戚などと共有するのも良いでしょう。

鯨幕のレンタル

鯨幕は、レンタルすることも可能です。仏具店や葬儀社でレンタルできます。レンタルする場合のメリットは、購入するよりも安価な値段で鯨幕を利用でき、保管する必要も無く手軽に利用できるという点です。

 

しかし、レンタルにはデメリットもあります。デメリットと言える点は、汚したり破損したりした場合はクリーニング代や弁償をしなくてはならないということです。そのため、借りている間に汚したり破損したりしないように気を付けて使いましょう。

 

特に、建物の周りつまり屋外に張る場合は、天候にも気を付けなければなりません。悪天候の中でレンタルした鯨幕を使用した場合、汚してしまう確率が高くなってしまいます。

鯨幕の相場

普段購入する機会がめったにない鯨幕の相場に関して気になる人も多いのではないでしょうか。鯨幕を購入する場合の相場は、サイズにもよりますが9メートル幅で20,000円から25,000円程度です。同じ9メートル幅をレンタルする場合の相場は、3,500円程度です。

 

余談ですが、証券用語に「鯨幕相場」という用語があります。これは、株価の相場が上げと下げが交互に日替わりで繰り返す状態のことを言います。この状態は、白と黒の陽線の形状が葬式などで使用される鯨幕に似ていることからそう呼ばれています。

鯨幕の張り方

鯨幕を張る際、まずは幕の裏表を確認しましょう。鯨幕と同じ白と黒の配色の紐を幕のチチの部分に通します。チチというのは、幕の上部に取り付けられている紐を通すための筒状のテープのことです。

 

鯨幕はポリエステルやナイロン製などできるだけ軽量になるように作られてはいますが、それでも重みはあるため、たるまないように張らなければなりません。これは、たるんだ様態では地面に鯨幕が触れてしまい汚れや破損の原因になるからです。

 

場合によっては紐ではなく押しピンや画びょうなどを使って張る場合もあります。その場合はチチの部分に挿すのではなく幕の本体部分に挿すようにしましょう。

鯨幕の手入れ方法

鯨幕の手入れ方法は、まず使用した際について汚れを落とします。ふき取るだけでは落とせない汚れは、やさしく手で押し洗いをして落としましょう。決して洗濯機を使ってはいけません。洗った後はしわにならないようにしわを伸ばし形を整えて、しっかりと乾燥させます。

 

乾燥させる際には、直射日光を避けて風通しのよい場所で陰干しをしましょう。こうすることによって、生地が傷むことを防げます。しっかりと乾燥させた鯨幕は、表面が内側になるように折り畳みます。

 

折り畳む際にはなるべくしわにならないように、もとの折り目に沿って畳みます。鯨幕を保管する場所は、直射日光の当たらない場所がおすすめです。陽に当たると色褪せを起こす場合があるからです。

わからないときは相談しよう

葬式に参列した際に目にする鯨幕について説明しました。葬式のイメージが強い鯨幕が慶事の場でも使われていたということに驚いた人も多いのではないでしょうか。葬式に鯨幕を張るかどうか、購入するかレンタルするか迷っている人は、まずは詳しい人に相談をしてみましょう。