葬式における「塩」の役割とは|使い方やその手順も併せて紹介
公開日 : 2020/10/15
更新日 : 2020/10/15
葬式後に塩で身体を清めるという考え方は、神道の教えに習っています。その教えとは、死を穢れと捉えるということです。神道では、穢れを家に持ち込まないように塩で穢れを落とすことになっています。以下では、このお清めの塩の具体的に役割や使い方の手順を紹介します。
公開日 : 2020/10/15
更新日 : 2020/10/15
目次
神道の教えに習い、葬式で塩を撒く
葬儀に参列した際、会葬礼状の中に清めの塩が入っていたり、葬儀の最期にお清めの塩が配られることがあります。この塩は、家に入る前に体を清めることを目的で葬儀参列者の配布されいます。では、なぜ塩で清めなければならないのでしょうか。
この塩で身体を清めるという考え方は、神道の教えに習っています。その教えとは、死を穢れと捉えるということです。つまり、葬儀に参列すると穢れてしまうことになります。そのため、身体に付いた穢れを家に持ち込まないように、家に入る前に塩で穢れを落とすことになっています。
この清めの塩で祓うのは故人の霊ではありません。人の死に際し、寄り付いてきた邪気を祓う目的で行われます。さらに、清めの塩には死の穢れを落とす目的以外もあります。具体的には「鎮魂」、「安霊」、「供物」です。
葬式における塩に対するQ&A
以下では、葬式において使用される塩に関して良く持ち上がる疑問を5つ取り上げています。そして、こちらの疑問に対してQ&A方式で回答しています。葬式に参列する前に、知っておくべき常識として抑えておきましょう。
仏教の葬式で塩を用意する必要はあるか
最初に、仏教の死に対する考え方を紹介します。まず、仏教では死を穢れの対象とは捉えていません。死は身近にあるもので、しっかりと向き合い、生きていくために活かすという教えがあります。故に、仏式の葬儀では体を清める塩を用意しないケースもあります。
特に浄土真宗の葬儀では、清めの塩を用いることはありません。なぜなら、人は亡くなったときに、浄土に生まれ変わる「往生即成仏」の教えが伝わっているからです。しかし、近年のお葬式では神道の考えも混在し始めています。
そのため、葬儀場で小袋に入った塩を手渡される場合があります。その結果、死を穢れと捉えない仏式のお葬式でも塩が配られることがあります。それぞれの地域の習わしやお寺、遺族の考え方に合わせて、お清めの塩を用意してください。
身内の葬儀の後にも塩で清める必要はあるか
もちろん、地域次第ではしきたりで葬儀後は塩を撒くことが当たり前になっていることもあります。しかし、葬儀後に塩で清めなければならないというルールはありません。あくまで、塩で穢れを清めるという考え方は神道だけにあてはまります。
つまり、身内の死を穢れとするのは如何なものかと考えれば塩は撒く必要はありません。一方で、死の穢れを家に持ち込まないという考えがある場合は、身内や他人に関係なく塩で身体を清めます。
まとめると、考え方や所属する宗教次第で塩で清める・清めないの違いが生まれるということです。ただし、一般的には身内の葬儀の後は塩で清めることをしないケースが多くを占めています。
単なる迷信だと考えられる場合もあるか
上述したように、宗教や宗派にとってお清めの塩を使う場合もあれば、使わない場合もあります。そのため、この習慣に、疑問を投げかける宗派もあります。例えば、浄土真宗では、死を不浄とする考えに基づくお清め塩は、迷信だと定義しています。
つまり、親しかった人やお世話になった人が亡くなり、それを悼む気持ちで参列する一方で、故人を不浄のものとして忌み嫌うのはおかしいという考え方もあるということです。このように、お清めの塩ひとつにも個々人の価値観や宗派の定義が反映されています。
お清めの塩が余った場合の対処法は
葬儀会場等で頂いたお清めの塩は、なるべく使い切ってください。多くの場合、葬儀の際に配られる塩の袋には「非食用」と書かれています。場合によっては食塩だけでなく乾燥剤も入っていることもあります。
しかし、食用としての基準を満たしていない場合があります。そのため、塩が余ってしまった場合でも決して食べないでください。必ず、生ごみとして市町村のごみ収集に出してください。
もし捨てることに抵抗を感じる方は自宅の庭に撒いたり、キッチンやトイレに流す等の方法で処分してください。
なぜ、お清めに「塩」が採用されたのか
なぜ葬式後に体を清めるために「塩」が採用されたのか。こちらを説明するには、塩の持つ2つの役割を紹介しなければなりません。1つは、上述したように穢れを祓う役割です。もう1つの役割は、細菌の繁殖を抑える役割です。
塩は安定した物質で、長期間の保存に適した劣化の少ない物質です。そのため、現在のようにドライアイスで遺体を冷やして保存できなかった時代は、塩の性質を利用して死体が腐敗を遅らせていました。そして、塩には水と火の力が備わっているといわれることもあります。
これは塩の精製時に「海水」を「火」で煮詰めるためです。この過程から、塩は「不浄なものを洗い流す水」と「不浄なものを焼き尽くす火」の浄化作用があるとされてきました。こうした考え方から、葬式で塩が導入されました。
お清めの塩を用意できなかった時の代用とは
清めの塩が無い場合には、海水。もしくは、食塩で代用可能です。理由は、お清め塩はもともと海水の代用として生まれたとされているからです。
神話時代の「死んだ妻のイザナミを迎えに黄泉の国へと下ったイザナギが、黄泉の国から戻った際に海水で身を清めた」という話が元となっており、身を清めるには海水を使うようになりました。
しかし、海水がすぐに手に入らない地域も多く、海水を運ぶことが難しい場所で塩が代用されるようになった経緯があります。こうした経緯からも、お清めの塩の代用として海水由来の塩が一番ふさわしいとされます。
葬式後の塩の正しい使い方と手順を紹介
ここでは、葬式の後に身体に撒くお清めの塩の正しい使い方。併せて、お清めの塩で穢れを落とす時の正しい手順を紹介していきます。神道に属する方は、こちらの手順や使い方を参考にしてみてください。
家に入る前に塩を撒く
神道では、葬式後に穢れや邪気を払って家に持ち込まないという考え方があります。そして、この考え方に沿って塩で身体の穢れを清めます。そのため、穢れを家に持ち込まないように玄関で塩を撒く必要があります。
この時、玄関先を汚したくないという方もいるかもしれません。もしくは、ご近所に見られたくないという方もいるかと思います。しかし、家の中でお清めを行っってしまえば穢れや邪気が家の中に入ることになってしまいます。
そのため、葬式後に塩を撒くという行いをする際は、必ず穢れや邪気を家の中に入れないためにも玄関に入る前に行うようにしてください。
塩を身体にかける手順を紹介
お清めの塩は体に適当に撒けば良いものではありません。お清めの塩を撒くには順番があります。ここでは、神道の作法に則って手順を紹介してきます。神道に属する方であれば下記の通りに行ってください。
まず、水で手を洗ってください。次に塩を胸に撒きましょう。そして、胸に撒いた後は、背中から足元にかけて撒いてください。次に、塩を足元に撒きましょう。ここまでできたら、体に付いている塩を軽く手で払ってください。最後に足元にある塩を踏んだら終了です。
もちろん、葬儀に参列していない家族がいる場合は、その人に塩をふってもらうのが理想的です。ただし、自分で撒いても問題はありません。もし地域の風習や個人的に穢れを気にされる場合は、今回の記事を参考にしながら順番通りに行うようにしてみてください。
塩を撒くことを忘れた場合の対処方法
もし、お清めの塩を体に撒くことを忘れて家の中に入ってしまった場合は、外に出て、玄関でやり直せば問題ありません。あくまで、慣習のようなもののため、葬儀後は塩で清めるというルールはありません。そのため、この部分を気にしすぎる必要はありません。
もし、すでに喪服から普段着へ着替えてしまった場合。その時は再度、着用していた喪服に着替えて玄関の外に戻り、塩を撒くことで身体を清めることが正しい方法とされています。
手順を抑えて、葬式後に塩で穢れを清めましょう
ここまで、葬式におけるお清めの塩の役割やその意味。さらに、塩の撒き方やその手順を紹介してきました。初めて葬儀に参列する方で、お清めの塩を使う手順がわからない方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
ご相談・お問い合わせください