香典を薄墨で書くのはいつまで?薄墨の意味・書き方など詳しく解説
公開日 : 2020/10/7
更新日 : 2021/1/28
葬儀で持参する香典は、薄墨で書くのがマナーということはよく聞きますが、法要の香典も薄墨で良いのでしょうか。また、香典の中袋も薄墨で書いて良いのでしょうか。今回は、香典を薄墨で書く意味や書き方はもとより香典のマナー全般についてもご紹介いたします。
公開日 : 2020/10/7
更新日 : 2021/1/28
目次
香典で薄墨をなぜ使うの?
葬儀に持参する香典袋の表書きを書く際、薄墨を使うのはどうしてなのでしょうか? ここでは、葬儀に持参する香典袋を書く際に薄墨を使う理由について詳しく解説します。
薄墨でないとだめな理由とは?
一般的に通夜や葬儀の香典では、薄墨の毛筆で書くことが礼儀となっています。香典の表書きなどを薄墨で書くことは、「故人が亡くなったことにより悲しみの涙で墨が薄くなった」
「突然の故人の不幸に準備が間に合わず、充分に墨をする時間が無かったため、薄くなった」といった故人の死を悼む気持ちや悲しみの気持ちを表しています。このため、通常よりも多く水分を含ませた墨を使用します。
いつごろから始まったの?祝儀袋や香典袋のもとは?
葬儀の香典に薄墨を使う習慣はいつごろから始まったのでしょうか?そもそも香典袋自体はいつから使われ始めたのでしょうか?貨幣が一般的に流通していない時代は、香典についてもお供えに食品や布製品などを持参していましたので、現金を使い始めたのは、室町時代頃からといわれています。
また、香典を紙で包むようになった理由は、現代の折り紙の原型だとも言われている武家社会の「折形」(おりがた)の影響だと考えられています。武家社会での色々な儀式で使用する飾りである折形を模したものが、祝儀袋や香典袋の元になったといわれています。
香典に薄墨を使用するようになったのがいつ頃かは、はっきりとしていませんが、香典を紙で包むようになったとされている室町時代以降と考えて問題ないでしょう。
地域による違いはあるの?【京都では使用しない】
一般的に、通夜や葬儀の香典では、薄墨を使いますが、京都では薄墨を使用しません。しかし、現在では京都でも薄墨を使う場合もあり、はっきりとした地域性は無くなってきているようです。
葬儀に参列する際は、故人やご遺族に失礼の無いように、その地域の作法を事前に確認することをおすすめします。
薄墨はいつまで使うの?
通夜、葬儀及び葬儀と合わせて行なわれる初七日の香典までは、薄墨で書くのが礼儀ですが、四十九日法要以降は濃墨で良いとされています。
そもそも、薄墨で書く習慣は、突然の不幸に対する悲しみを表しているものですので、事前に法要を行うことがわかっており、落ち着いた気持ちで供養を行うことのできる四十九日法要以降は普通の墨を使用して問題ありません。
香典の表書きや中袋など全て薄墨でいいの?
香典には「御霊前」などの表書きだけでなく中袋にも、住所・氏名・金額を記載します。葬儀の香典の場合は、この中袋の記載も薄墨で書くべきでしょうか。中袋への記載は、読みやすさと正確性が重視される為、毛筆ではなく、ボールペン・万年筆・サインペンなどを使用しましょう。
その際は、はっきりとわかりやすい字を書くよう心がけましょう。毛筆の薄墨で書いても良いのですが、記載する情報が多く、字も小さくなる為、滲んで何が書かれているかわからないとなってしまっては、元も子もありません。
表書きを薄墨で書くことも、中袋を読みやすいペンで書くことも共に相手のことを考えてのことですので、中袋は読みやすいペンで書くことをおすすめします。
薄墨が用意できない場合はどうする?【お近くのコンビニで】
普段、薄墨用の筆ペンを用意しているご家庭は少ないのではないでしょうか。突然の訃報に慌てないために、薄墨用の筆ペンを用意しておくことをおすすめします。最近では、コンビニなどでも薄墨用の筆ペンを扱っているところが、多くあります。お近くのコンビニを確認してみてください。
もちろん毛筆で書くということであれば問題ありませんが、水分を含ませて薄墨で書くことは濃すぎたり薄すぎたりと案外難しいものです。薄墨用の筆ペンを使用する方が無難でしょう。
香典の書き方
ここからは、突然の訃報に慌てずに対応できるように、色々な香典のマナーについて解説していきます。まずは、香典の書き方について宗教・宗派の違いや数字の書き方などを細かく見ていきましょう。
表書き
表書き上段には、一般的に宗教・宗派問わず「御霊前」と書きます。ですが宗教・宗派によって専用の書き方もありますので、きちんと宗教・宗派に合わせて書きたい方は、以下の宗教別の説明をご覧ください。下段には、氏名をフルネームで書きます。連名で香典を渡す場合は、フルネームを横並びに書きます。
仏教【浄土真宗の場合は?】
仏教の場合、四十九日以前とそれ以降の法要で記載する文言が変わります。通夜〜四十九日までは一般的に「御霊前」と書きます。四十九日より後の法要では、「御仏前」となります。これは四十九日に故人が、成仏するとされている為です。
浄土真宗の場合のみ、通夜から「御仏前」と書きます。浄土真宗の教えでは、故人がなくなってすぐ成仏するとされているからです。他には、「御香典」や「御香料」といった書き方もあり、こちらは時期を問いませんので、覚えておきましょう。
キリスト教
キリスト教の場合は、「御花料」または「御偲料」と書きます。これらは、宗派がカトリックでもプロテスタントでもどちらでも問題ありません。
宗派独特のものについては、カトリックでは「御ミサ料」、プロテスタントでは「弔慰料」と書きます。また注意点として、プロテスタントでは一般的に使用する「御霊前」は使用しない為、気をつけましょう。
神道
神道の場合は、「御玉串料(おんたまぐしりょう)」、「御榊料(おんさかきりょう)」「御神饌料(ごしんせんりょう)」または「御神前料(ごしんせんりょう)」と書きます。いずれも葬儀、法要など儀式を問いません。
中袋あり・中袋なしの場合【住所および金額を記入する】
香典の中袋には、住所および金額を記入します。金額は表面の中央、住所は裏面の左下方に書きます。中袋については宗教・宗派に関わらず同じように書きます。まず、表面の中央上部に「金」と書きます。
その下に金額を書くのですが、漢数字の大字で書く慣習となっています。通常の漢数字では「一」、「二」、「三」、「十」、「百」、「千」、「万」と書くところを、漢数字の大字では「壱」、「弐」、「参」、「拾」、「佰」、「仟」、「萬」と書きます。
また、「円」という漢字も旧字体の「圓」を使います。これは、大事な金額の記載の改ざんを防ぐために昔から行われています。例えば1万円の場合は「金壱萬圓」と書きます。裏書きは、中袋が無い場合のみ、住所、氏名、金額を記入します。裏面の左下方に、住所、氏名、金額と記載します。
薄墨を使って香典を書く場合の注意点
香典袋に薄墨を使う意味や書く文言について見てきましたが、実際に薄墨を使う際は気をつけるポイントがあります。ここでは薄墨を使って香典を書く際に、気を付けるポイントについて解説します。
墨がにじむ場合はどうする?
薄墨で表書きを書く際にもっとも困ることは、薄墨のためどうしてもにじんでしまって上手にかけないということでしょう。普通の墨で書くより水分量が多いためどうしてもにじみが出てしまいます。また、薄墨用の筆ペンでもにじみは起こります。
毛筆で書く場合の対処法としては、通常よりも素早く書くということでしょう。ゆっくり筆を動かすとどうしてもにじみが発生しますので、少し早めに筆を動かして書くと良いでしょう。
薄墨用の筆ペンについては、書くまえにペン先をティッシュ等で軽く拭き取って水分を少なくするのが良いでしょう。毛筆に比べて薄墨用の筆ペンの方がにじみが出にくいため、毛筆で書くことが難しい場合は、薄墨用の筆ペンを選択しても良いでしょう。
文字が印刷されている場合は?名前だけ薄墨?
コンビニなどで市販されている香典袋は、表書きなどが濃い黒で印字されているものがほとんどです。中には葬儀用に薄い黒色で書かれたものもありますが、多くはないため、準備できるとは限りません。このような場合はどうすれば良いでしょうか。
それは、薄墨で書く理由を考えるとわかります。薄墨で書く理由は、突然の訃報を悲しむ気持ちを表しているため、実際に書く部分が薄墨で書いてあれば問題ないのです。表書きの上部(御霊前など)が印字されている場合は、下部の名前の部分を薄墨で書きましょう。
書き間違えてしまったら
表書きや名前を書き間違えてしまった場合は、もう一度香典袋を用意して書き直します。内袋の裏に書く住所を少しだけ間違えた程度であれば、定規で丁寧に二重線を引いて訂正しましょう。もしくは内袋を使わず、住所、氏名、金額を香典袋の裏側に記してもいいでしょう。
サインペンは使用しないように
わざわざ薄墨を使わなくてもサインペンなどを使って書いてもいいと考えるかたもいるのではないでしょうか。しかし香典にサインペンやボールペンなどを使うのは、作法上いいことではありません。
香典の表書きを書く際にサインペンを使用してはいけない理由は、作法の上では略式とみなされるためです。ですので、香典を書くときにサインペンやボールペンは極力使わない方が良いでしょう。ただし実際には、サインペンなどを使って書いて良い箇所が存在します。
それは中袋の部分で、中袋に書かれている金額はご遺族側が香典の金額などを確認するための箇所であるためです。このためご遺族側が確認しやすいように、わかりやすい濃さや事態を心掛けることが大切となってきます。
香典の包み方・お札の入れ方
香典は、黒白の水引が着いた不祝儀袋で包みます。正式には、奉書紙(ほうしょし/ほうしょがみ)と呼ばれる紙に包んでいましたが、現在は封筒を使うことが多くなっています。また、包む金額が5万円以上と高額な場合は、水引だけでなく香典袋も含め高級なものを使用しましょう。
中に入れるお札については、新札でも旧札でも特に問題はありませんが、あらかじめ用意していたという印象を与えるのは失礼にあたりますので、旧札または新札に折り目をつけて入れるようにしましょう。
香典はどうやって渡すの?
通常、香典やご祝儀袋などの金封は、袱紗(ふくさ)に包んで持参します。そして金封を渡す際は、袱紗から出して渡します。ここでは袱紗と香典の渡し方をみてみましょう。
香典を包む袱紗
袱紗とは、結婚式のご祝儀や葬儀のお香典・お布施など、慶事や弔事の際に使用する金封を包む四角い布のことです。
元来日本では、贈答品を持ち運ぶ際に風呂敷で包んで汚れや日焼けを防止していました。この習慣が、時代の移り変わりとともに、風呂敷から袱紗となり、慶弔行事のマナーとして金品を包む際の礼儀や心遣いを表すものとなりました。
香典の渡し方
香典を渡す際は、袱紗に包んで持参して渡します。袱紗の色は、弔事の場合、紺、深緑、グレー等の寒色系の色を使用してください。慶弔どちらでも使用できる色、紫を用意しておくと便利です。
渡す際に気をつけていただきたいのは、袱紗に包んだ香典を、先に出してしまわないことです。香典は渡す相手の目の前で袱紗から出し、表書きを相手側から読める向きにして袱紗の上に載せて差し出します。差し出す際は、落ち着いてゆっくり丁寧に、両手で渡すことを忘れないでください。
お札の入れ忘れに注意
香典を準備する場合で意外と多いのが、お札の入れ忘れです。あとから遺族側が気づいても、参列してくれた方に対して「香典が入っていなかった」とはなかなか言い出せないですよね。
必ず中身を確認してから渡すようにしましょう。また、5,000円札と1万円札も見間違えやすいので、内袋の金額を書き違えないようにきちんと確認しましょう。
香典の相場
香典の金額は、故人との関係とご自身の年齢によって変わります。ここからは、各法事別の大体の目安ご紹介します。宗派や地域により相場が異なりますので、気になる方は事前に確認することをおすすめします。
葬儀・告別式
やはり、葬儀や告別式に渡す香典の金額が、もっとも重要視されます。香典の相場は、基本故人との関係が深いほど、渡す人の年代が高くなるほど上がります。故人との関係と年齢別に表にまとめましたので見てみましょう。
故人との関係/年代 | 20代 | 30代 | 40代以上 |
両親 | 3万円~10万円 | 5万円~10万円 | 10万円以上 |
兄弟姉妹 | 3万円~5万円 | 5万円~10万円 | 5万円~10万円 |
祖父母 | 1万円 | 3万円 | 5万円 |
叔父、叔母 | 1万円 | 1万円~3万円 | 3万円 |
上記以外の親戚 | 3千円~1万円 | 5千円~2万円 | 5千円~3万円 |
友人、仕事関係者など | 3~5千円 | 3千円~1万円 | 3千円~1万円 |
初七日〜四十九日までの忌日法要
忌日法要は、初七日以降に7日ごとに行なわれるものですが、現在は初七日と四十九日のみ行うケースが一般的です。初七日については、葬儀と同日に合わせて行うことも多いです。この場合は、葬儀の香典の半額程度が相場です。
以下は、初七日を別に行う場合と四十九日の香典の大体の相場です。
故人との関係 | 金額 |
両親 | 3万円~10万円 |
兄弟姉妹 | 1万円~5万円 |
祖父母 | 5千円~3万円 |
叔父、叔母 | 5千円~3万円 |
上記以外の親戚 | 3千円~1万円 |
友人、会社関係者等 | 3千円~1万円 |
一周忌・三回忌
一周忌は、故人が亡くなってから一年後の命日です。三回忌は二年後の命日です。数え方が異なる為、「周忌」+1が「回忌」となります。間違えないように気をつけましょう。
このあたりから、法要の規模が小さくなり、参列する人も絞られてきます。香典についても身内・親族内で相談して決めていく形になるでしょう。
故人との関係 | 金額 |
両親 | 1万円~5万円 |
兄弟姉妹 | 1万円~5万円 |
祖父母 | 5千円~3万円 |
叔父、叔母 | 5千円~1万円 |
上記以外の親戚 | 3千円~1万円 |
友人、会社関係者等 | 3千円~1万円 |
七回忌以降の年忌法要
七回忌以降の年忌法要は、十三回忌、十七回忌、二十三回忌と続いていきますが、遺族・親族以外の方が参列することは少なくなります。また、法要自体毎回行うことも少ないでしょう。香典の相場も回忌を重ねるごとに低くなっていきます。
故人との関係 | 金額 |
両親 | 1万円~3万円 |
兄弟姉妹 | 1万円~3万円 |
祖父母 | 5千円~1万円 |
叔父、叔母 | 5千円~1万円 |
上記以外の親戚 | 5千円~1万円 |
友人、会社関係者等 | 3千円~1万円 |
法事の後に御斎(会食)が催される場合
法要の後には、施主からのお礼としてお斎と呼ばれる会食が催されることがあります。 通常は精進料理が出されますが、地域によってはお寿司であったり、普通の和食料理が出されるところもあります。
香典には、葬儀も含めたこれらの負担も軽くする目的がある為、会食分のお金も香典に上乗せして包みます。5千円~1万円が一般的ですが、参列する人の年齢や故人との関係を考慮して決めると良いでしょう。
香典を書く際は心を込めて丁寧に!
今回の記事では、香典をどうして薄墨で書くのかというところから、香典の書き方などのマナー、香典の相場についてまで詳しく紹介しました。香典は、故人やご遺族に想いを伝える非常に大事なものです。また、失礼がないようマナーについてもきちんと覚えて葬儀や法要に参列するようにしましょう。
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