霊璽(御霊代)とは?霊璽の作り方や歴史・神棚と祖霊舎の違いをご紹介
公開日 : 2020/9/18
更新日 : 2020/9/18
霊璽は、神道で亡くなった方を供養するための寝具です。仏教の位牌に当たるもので見た目も似ており、戒名のように文字入れも行います。霊璽にはどんな意味があるのでしょうか?霊璽の意味や作り方、種類、歴史などをまとめました。霊璽を処分する方法もご紹介します。
公開日 : 2020/9/18
更新日 : 2020/9/18
目次
霊璽(御霊代)について
神道では亡くなった方を供養するために、霊璽を作ります。霊璽は仏教の位牌に該当するもので、御霊代とも呼ばれます。霊璽と位牌の違いや霊璽の種類、歴史や作り方などをご紹介します。
霊璽について
霊璽は亡くなった方を供養するためのものですが、どんな意味合いがあるのでしょうか?霊璽の意味合いや霊号、位牌の違い、カバーで覆う理由、霊璽の歴史などについてまとめました。
霊璽はご先祖をお祀りするためのもの
霊璽は亡くなった方を供養するために、御霊を移す依り代のことです。仏教の位牌に当たるもので形も似ています。霊璽は亡くなった方を守護神として祀るためのものです。
お祀りすることでご先祖や亡くなった方が、遺族を守る守護神になると神道では考えます。霊璽は大切な神具なので、丁寧に扱う必要があります。
霊号について
霊璽は位牌に似ていますが、戒名のように霊号と呼ばれる文字入れを行う点も似ています。霊号は地域によっても付け方が変わってきますが、戒名と違ってシンプルです。仏教とは違って生前の名前をそのまま霊号に用います。
霊璽と位牌の違いについて
霊璽と位牌は似ていますが、見た目や扱いに違いがあります。位牌は濃い赤色や黒などに着色して、金で模様を施すものが多いです。クリスタルや陶器など見た目が華やかな位牌もあり、仏壇の上に置いて定期的に拝むことになります。
霊璽は、色や漆を塗るものではありません。霊璽は神としてお祀りするためのものなので、直接目に触れないようにします。そのため、色は塗らないのです。霊璽には直接見ないように布のカバーをかけることもあり、「白木覆い」「鏡錦付き覆い」などの種類があります。
霊璽を錦覆い(カバー)で覆う理由は?
霊璽は、直接見えないように錦覆いなどで覆います。これは、生きている人間が霊的なものを直接見ることができないとされているためです。霊璽を開封できないわけではありませんが、できるだけ慎むべきです。
お彼岸にあたる春秋季例祭や、お盆にあたる中元祭では霊璽の覆いを外してお祀りする場合もあります。
霊璽の歴史について
中国の儒教で、先祖を祀るための御霊代が使用されていました。これが、霊璽の元になったとされています。これは神主や木主などと呼ばれることもあり、仏教の位牌の由来でもあります。江戸時代の日本に伝わり、霊璽より先に位牌が使用されるようになりました。
その後、葬儀の形もさまざまなものが求められるようになり、葬儀の研究も進んでいきます。江戸時代から明治時代にかけて、霊璽も用いられるようになりました。霊璽の語源は確実なことが分かっているわけではありません。
印を意味する璽の字と故人を表す霊が合わさって霊璽になったといわれていますが、他にも説があります。璽は三種の神器の「八尺瓊勾玉」を表す言葉でもあるので、このことが霊璽の語源に関係しているという説もあります。
霊璽の穴について
霊璽の表には、小さな穴が開けられています。この穴は、御霊が自分の霊璽に出入りできるように開けられたという説があります。霊璽は覆いを被せたまま手に取ることが多く、暗闇で手に取る機会も多いです。そのため、穴の感触でどちらが表かわかるようになっています。
霊璽の形状と種類
霊璽は様々な形のものや種類があります。霊璽の基本的な形や材料、覆い(カバー)などについてまとめました。
霊璽の形は長方形が基本
現代の霊璽は、長方形のものが主流で位牌に近い形をしています。白木の霊璽は、最もシンプルでカバーをかけたものなどがあります。カバーの名前は錦覆いと呼び、霊璽と錦覆いがセットになったものも販売されています。
古い時代の霊璽は神鏡のような形式のものもあり、一部の地域では現在も使われています。
霊璽の材料
霊璽は白木作りと呼ばれるものが多く、材料はヒノキ材を使用したものが主流です。ケヤキ・ヒバ、センノキなども霊璽の材料として使われています。材料の木で、霊璽の優劣や決まりなどがあるわけではありません。
1人を祀る一体型
現代では祀る人数でも、霊璽の種類が分けられています。1本の霊璽で1人の御霊を祀るのが、一体型と呼ばれる霊璽になります。霊璽を最初に作る時は、一体型で祀るのが一般的です。
複数人の御霊を祀る繰り出し型
霊璽は基本的にご先祖や故人1人につき、1本用意することになります。しかし、現代では霊璽を置くスペースなどの問題で、10人程度まで1本の霊璽にまとめる場合もあります。これは繰り出し型や回出型と呼ばれる霊璽です。
祖霊舎が小さくて霊璽を置けない場合や数家族分の御霊をお預かりする場合などに、繰り出し型なら助かります。繰り出し方と一体型を併用することもできます。
鏡錦付き覆い
霊璽には、鏡が付いたものがあります。これは太陽神で神道の最上神である天照大神と関係しています。鏡が光を反射して太陽を見るために、霊璽に鏡を取り付けているのです。
神と向き合う際に、自分の姿を映すことで心を正すことにもつながります。鏡錦付き覆いは正面に鏡が付いた錦の布で、霊璽の周りを覆うためのものです。
白木覆い
白木覆いは、霊璽の周りを白木の箱で覆ったもののことをいいます。鏡は付けられていません。そのため、霊璽の前に鏡を置くようにするのが一般的です。
霊璽の作り方と文字入れについて
神道で人が亡くなった際は、神道の葬儀である神葬祭を行います。この際、霊璽を作ることになりますが、どうすれば良いのでしょうか?霊璽の作り方や文字入れ、霊号の書き方などをまとめました。
霊璽の作り方
霊璽を作る際は、まず神職の方に神葬祭の依頼をします。通夜祭と同時に行う遷霊祭で霊璽への入魂を行います。そのため、すぐに霊璽を準備する必要があります。神葬祭を依頼した際に、白木に称名が彫られた霊璽を用意してもらえるので自分で用意する必要はありません。
遺族が白木を選ぶ場合は遷霊祭か五十日祭までに、自分達で白木を準備しなければなりません。神具専門店で販売されているので、自分で選ぶことができます。仏教では、四十九日の法事で位牌へ入魂します。霊璽と位牌では入魂する時期が異なるので、注意しましょう。
仏教では四十九日までは白木製の仮の位牌で、その後は色が塗られた本位牌になります。神道は、基本的に新しい霊璽に変えることはありません。ただし、仮霊璽と本霊璽を用意する地域などもあります。
霊璽の文字入れと霊号の書き方
霊璽には、仏教の戒名に当たる霊号を文字入れします。故人の名前の後ろには「称名」「尊称」「結辞」が付けられます。称名は一般的に、男性なら「大人之(うし)」女性なら「「刀自之(とじ)」と記します。
年齢によっては「童子」「姫」「翁」「大刀自」が使われ、地域でも異なります。尊称は「命(みこと)」または「之命(のみこと)」、結辞は「霊」「霊位」「之霊」などになります。繰り出し霊璽は中に人数分の札が入っており、札の表に霊号、裏に享年が書かれています。
神棚と祖霊舎
祖霊舎は霊璽を置いてお招きする場所ですが、よく似た神棚とはどう違うのでしょうか?霊璽と神棚の違いや神棚封じ、霊璽の祀り方についてまとめました。
神棚は神様をお招きする場所
神棚は神様をお祀りする場所で、小型の神社といってもいい作りになっています。神社でいただいた神札をお祀りし、祈祷や感謝の意を示すことができます。神様をお招きする場所なので、御霊を祀る祖霊舎とは異なります。
神棚と祖霊舎が両方ある場合は、神棚を高い位置に作ります。また縁起のいい方角である南か東を向くようしましょう。
祖霊舎は霊璽の置き場所
亡くなった方は肉体はお墓に入りますが、御霊は霊璽に入ります。霊璽をお祀りするのが、祖霊舎です。神棚とは別物ですが、大きな祖霊舎は神社のように作られています。神棚よりも低い位置に作る必要があります。南か東を向くようにすることも忘れてはいけません。
神棚封じについて
神棚がある家で、親族に帰幽の人が出た時は神棚封じをする必要があります。神道の考えでは死は穢れとして忌避されます。穢れは気枯れの意味合があり、魂が弱っていると考えます。昔は人がなくなった際は、喪屋を作って日常生活と死の世界を隔離していました。
現代の神棚封じは、神棚の扉を綴じて白い紙で正面を覆い隠します。神道式の葬儀「神葬祭」は、神社では絶対に行いません。昔は自宅で神葬祭を行いましたが、現在は葬儀場で行うのが一般的です。
忌明けまでの期間は神棚封じを続け、神社への拝礼も行いません。忌明けまでの期間は50日とするのが一般的です。神棚封じとそれを解く役は、第三者に頼みようにしましょう。
霊璽の祀り方
ご先祖の御霊を霊璽に入れて家族を守ってもらうためには、毎日お祀りする必要があります。神棚がある場合は、祖霊舎より先に神棚に参拝します。神社や神棚と同じで、二拝二拍手一拝(お辞儀2回、拍手2回、お辞儀1回)で拝礼します。
祖霊舎への参拝は外扉は開けても構いませんが、霊璽の入った内扉は閉じたままにします。神棚と同様に米、塩、水、お榊などを供物にします。故人の好きなものや季節のものもお供えできます。
霊璽の処分方法
古くなった霊璽を新しいものと交換するなど、霊璽を処分する場合もあります。処分する方法などは、地域によっても異なります。3つの例を挙げながら、霊璽の処分についてご紹介します。
お焚き上げは可能
お焚き上げは粗末にできない品物を供養して処分します。焼却処分しますが、神聖な炎で浄化されて天に還っていくと考えられています。祖霊舎や神棚のお焚き上げは多いですが、霊璽のお焚き上げを行う業者もあります。
霊璽は一般ごみとして処分できる場合もありますが、ご先祖の霊が宿った霊璽を捨てるのは抵抗があるでしょう。お焚き上げを行って供養した方が、抵抗なく処分できるでしょう。霊璽だけのお焚き上げなら、1,000円~2,000円でできることが多いです。
神社に収めることもできる
お世話になっている神社には、神棚や祖霊舎などを納めることができます。新しい霊璽に変える場合や数人分をまとめる場合が多いですが、霊璽も神社に相談して返納するが可能です。
神棚や祖霊舎は購入したお店に返却できます。霊璽は霊号が入っているので、返却するのは難しいです。返却できる場合もあるので、処分したい場合はお店に相談してみましょう。
中古買取は難しい
神棚や祖霊舎などの神具は中古業者が買取も行っています。霊璽を買い取ってもらうことは可能でしょうか?中古業者が買い取るのは、再利用が可能な神具です。霊璽は名前が入っているので、再利用することは難しくなります。
そのため、中古業者が買い取るはほとんどありません。霊璽を処分するなら、買取以外の方法を考えましょう。
故人を祀るには霊璽や祖霊舎が必要
霊璽の意味合いや歴史、位牌との違いなどをご紹介しました。霊璽は故人をお祀りするために必要なもので、置き場所として祖霊舎も用意する必要があります。故人の御霊が宿るわけですから、丁重にお祀りして決まり事もしっかりと守りましょう。
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