仏壇に供える樒(しきみ)とは? | 由来・特徴・用途などをご紹介

公開日 : 2020/9/19

更新日 : 2020/9/19

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しきみは仏壇・墓前・葬儀場などで見かける、美しい緑が特徴的な植物。なぜしきみを仏前に供えるのか、その由来や宗教とのつながりに触れながら、特徴や用途、榊(さかき)との違い、しきみの代用などについて詳しくお話します。ぜひお供えの参考にしてください。

公開日 : 2020/9/19

更新日 : 2020/9/19

目次

しきみとは?

見かけたことはあっても、しきみという名前やなぜ仏事に使われるのかなどは意外と知られていないもの。まずはしきみとはどんな植物なのか、名前の由来や見た目の特長についてお話していきましょう。

名前の由来

しきみ(樒)はしきびとも呼ばれ、鑑真和上が中国から日本にもたらしたものです。天竺にある青蓮華に似ているため、弘法大師が青蓮華の代わりに密教の祈祷に使用するようになったのが供え花になったはじまりと言われています。

 

しきみの名前にはいろいろな説があり、どれが名前の決め手となった由来なのかはっきりとはしていません。

 

よく言われているのが「四季を通して常に美しい緑である」ことから「四季美」となった、果実に猛毒を含むことで「悪(あ)しき実」が由来となった、また果実が敷き詰められたように成ることから「敷き実」と呼ばれるようになった、などの説です。

 

樒という漢字は、香木を意味する「木」へんに「蜜」。漢音では「びつ」と読みますが、平安期以降になって「しきみ」という和語が当てられました。

特徴

高さ10メートルほどの常緑樹で、分類はマツブサ科のシキミ属。葉は楕円形でつやがあり、美しい深緑の色が特徴的です。花はクリーム色で、細長い複数枚の花びらとガクがあり、独特な強い香りがあることから、香の木(こうのき)、香芝(こうしば)と呼ばれることもあります。

 

また秋から冬にかけ先の尖った星形の実をつけますが、その見た目は中華料理や台湾料理に使われる八角によく似ています。しかし実際に口にしてしまうと死に至ることもある、猛毒性があります。

 

しきみの花、茎、葉、根と全てに毒成分がありますが、特に実には猛毒のアニサチンが多く含まれていますので、間違っても口にすることなどないよう、注意が必要です。

しきみが使われる理由は?

そもそも、数ある植物の中からなぜしきみが仏事での使用に選ばれたのでしょうか。それにはしきみの特長が、さまざまな面で仏事に適していたからだと考えられます。

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死者を守り邪気を払う

しきみの強い毒性と香りは、昔から死者を悪霊から守り、邪気を払うとされてきました。昔は遺体を土葬する際、しきみの強い香りを嫌がって獣が近寄らないため、掘り起こされるのを防ぐ目的でしきみを一緒に植えていました。

 

またしきみには防虫成分も含まれているため、害虫からお墓を守るという意味でも使用されていたことが明らかとなっています。

 

このように、死者を守る風習の名残から、現在でも葬儀祭壇や枕飾りなどにしきみがよく使用されています。

お釈迦様を象徴する花に類似

青蓮華(しょうれんげ)の花はお釈迦様の象徴とされ、昔から仏事や修行に用いられていました。しかし青蓮華は手に入れることが難しいことから、弘法大使が青蓮華の代わりに、見た目が似ているしきみを使い始めたと言われています。

 

もともとしきみは青蓮華が咲く「天竺」に原生していた植物です。見た目はさることながら「同じ仏世界に生えている植物」という共通点も、しきみが仏事に選ばれるようになった理由に影響しているのかもしれません。

 

一年中使用できる

しきみの一番の特長とも言えるのが、そのつややかな美しい緑の葉。しきみは1年間で3回も芽吹くため、常に美しい緑の葉をつけています。現在はしきみ栽培をしている農家も多く、一度植えた木は50年以上もつそうです。

 

仏事はお彼岸やお盆の他にも一年を通して行われるため、いつでも必要な時に手に入るしきみは、まさに仏事に最適と言えます。

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日持ちする

「なかなか枯れずに長持ちする」という点も、しきみがお供えに用いられる大きな理由とされています。

 

しきみの枝は栽培農家で数日間に渡り水揚げが行われ、余分な葉は取り除かれた状態で出荷されているため、お水を入れた花立てにそのままお供えするだけで、特別な世話を必要としません。

 

またしきみには害虫を寄せ付けず、水を腐りにくくする効果も。しきみを他の仏花と一緒にお供えすることで、花の日持ちもよくなります。

 

宗教によるしきみの重要性

季節を問わず、美しい緑の葉が長持ちするとなれば、しきみはどんな宗教の仏事にも欠かせないものとなっている印象を受けます。

 

しかし実際は、宗教により思想が異なるため、しきみを重んじる度合にも違いがあり、いつでもどこでもしきみが用いられるというわけではありません。

浄土真宗

浄土真宗は浄土宗を開いた法然上人の弟子だった親鸞聖人によって開かれました。その教えでは亡くなった人は仏になり、八功徳水(はっくどくすい)と呼ばれる良質な水がみなぎる極楽浄土へ行くと考えられています。

 

そのため水に困ることもないので、仏壇にお水やお茶などの飲料水をお供えすることはありません。

 

八功徳水とは、甘(美味しい)・冷(冷たい)・軟(柔らかい)・軽(軽やか)・清浄(きれい)・不臭(臭いがない)・飲時不損喉(飲みやすい)・飲己不傷腸(お腹を下すこともなく安心して飲める)といった、「八つの優れた特質を持つ水」を言い、良質で清らかなものです。

 

この清らかな八功徳水を表すために浄土真宗で用いられるのが、しきみ。水の入った華瓶(けびょう)にしきみを供えることで、しきみの強い香りや毒性が邪気を払い、水が清められます

浄土宗

浄土宗は法然上人が開祖の宗派。浄土宗でもしきみは墓石や仏壇に供えられたり、儀式などに用いられたりします。

 

現在では浄土宗でもお供えには仏花がより一般的になっていますが、しきみをお供えしてはいけないという決まりがあるわけではありません。葬儀の祭壇などにもしきみが用いられていますし、また地域によっては仏花よりしきみをお供えするという場合もあります。

 

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日蓮正宗

静岡県富士宮市の大石寺が総本山で、日蓮大聖人の仏法を教えとする宗派。日蓮正宗では、しきみが特に重要視されています。

 

日蓮正宗の経典である「法華経(ほけきょう)」には、「木樒」としてしきみについて説かれていることから、多くの宗教がお墓や仏壇に花を供える中、日蓮正宗では花ではなくしきみを供えます。

 

色花がその美しい色を変えやがて散ってしまうことを「無常」と説き、しきみは常に緑が美しい「常緑樹」であることから、日蓮大聖人の過去世・現世・未来世、さらに遠い未来世にまで渡って変わらない命を意味する「常住不変」であることも解いています。

 

そのため日蓮正宗の葬儀では、来世に旅立つ仏となった人に永遠の命を祈るため、祭壇に色とりどりの花は使わずに、しきみだけで飾り付けます。

しきみ(樒)とさかき(榊)の違いは?

どちらも美しい緑の葉が特徴的なため、間違われることが多い「しきみ」と「さかき」。確かに見た目は似ていますが、「しきみ」は仏事、「さかき」は神事に用いられます。

 

ホームセンターなどで両方を見かけ、違いが分からない時の見分け方法としておすすめなのが、葉を良く見ること。しきみは葉が柔らかく、表面が少し波を打ったようになっているのに対し「さかき」は葉が硬めで楕円形、光沢のない濃い緑色をしています。

 

神棚に飾るのか、仏壇に飾るのか、その用途でどちらを使うのかが変わってきますので、間違えないよう注意しましょう。

しきみは何に使われる?

しきみが仏事に用いられるという話をしてきましたが、実際にどのように使われるのでしょうか。項目ごとに見ていきましょう。

仏壇

宗教や地域によって違いはありますが、しきみを仏壇の花立てに飾られることが多い植物です。しきみをほかの仏花と一緒に挿すことで花が長持ちする効果もあり、またしきみ自体が日持ちするので、頻繁にお花を取り換える必要もありません。

 

何よりもしきみの艶やかな緑が仏壇にあるだけで、気持ちも和みます。大きな仏壇がある場合は通常サイズのしきみでも大丈夫ですが、それ以外の場合は長さが半分になっている、小さな束のしきみを購入すると良いでしょう。

墓前

しきみの持つ強い香りや毒性が、邪気や動物から死者を守ると信じられていたことから、土葬の際にしきみが植えられたことの名残で、今でもお墓の花立てにはしきみが供えられます。

 

多くの場合は、カラフルな菊などの仏花と一緒に供えられますが、しきみだけを墓前に供える場合もあります

 

もちろん宗派によりますが、日持ちはしないが鮮やかな色花と美しい緑が長持ちするしきみをうまく組み合わせれば、墓前が華やかになり、故人も喜ぶことでしょう。

 

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末期の水

しきみは飾るばかりが使用用途というわけではなく、末期の水(まつごのみず)をとる際にも用いられます。

 

末期の水は、「死に水」とも呼ばれ、あの世に旅立つ前に亡くなった方の口の渇きを癒すため、唇を水で湿らせる儀礼です。現在では亡くなった後に行われますが、昔は死を迎える直前に行われていました。

 

小さな器に水を入れ、しきみの葉を一枚水に浮かべて清めます。そして脱脂綿や新しい筆の穂先で少量の水をとり、故人の唇を湿らすのですが、しきみの葉で唇を潤すこともあります。

 

納棺

しきみが納棺の際に用いられるのも、昔から伝わる風習の名残りと言えます。遺体の腐敗臭を抑えるために、香りの強いしきみを遺体の下に敷き詰めたことから、今でも納棺の際に使われることがあります。

 

とはいえ、現在では空調設備やドライアイスなどで遺体が腐敗することもなくなったため、あまりしきみが用いられることはありませんが、宗派や地域によっては今もしきみが用いられます。

祭壇

葬儀を行う際に遺影写真や供物などを飾る祭壇は、大きく分けて白木祭壇と花祭壇の2種類あります。白木祭壇は伝統的な祭壇として葬儀でも選ばれることが多かったのですが、最近は花祭壇のほうが主流。

 

この花祭壇にも、しきみが用いられることがあり、生花と一緒にしきみを飾る場合と、しきみだけで祭壇を飾る場合とがあります。生花で飾る祭壇は豪華で明るい雰囲気になり、しきみだけの祭壇は厳かで落ち着いた雰囲気に。

 

もちろん宗教の違いもありますが、宗教に関係なく、故人の好みや遺族の意向によっても、しきみだけで飾った祭壇が選ばれることも多々あります。

しきみの代用は?

幅広い用途で使われるしきみですが、しきみをそのままお供えする以外に代用できるものはあるのでしょうか。いくつかご紹介しましょう。

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門樒(かどしきみ)

大樒(おおしきみ)・樒塔(しきみとう)とも呼ばれ、葬儀の際に邪気を払う目的で、玄関前や寺院の門前に飾られます。大きさもある程度あり左右一対になっているため場所をとることから、寺院や葬儀場によっては門樒を受け付けていないところも。

 

関西地域では、門樒は花輪を送るよりも丁寧なお供えと考えられていて、今でも門樒が葬儀場に飾られます。

 

とはいえ、最近は家族葬や密葬などの小規模な葬儀が主流になってきたこともあり、その数もだんだん減少傾向にあります。特に関東地域ではあまり門樒を見かけることはないでしょう。

板樒(いたしきみ)・紙樒(かみしきみ)

門樒を置くようなスペースをとるのが難しいことから、より広く用いられるようになったのが板樒と紙樒です。実際にしきみそのものを飾るわけではなく、板樒は板に、紙樒は紙に氏名や所属を書いてしきみの代わりに会場前に張り出します。

 

こちらも門樒と同様、関西で広く用いられているもので、関東ではあまり見かけません。とはいえ関東にも板樒や紙樒を受け付けている葬儀場もありますので、希望する場合は、直接問いあわせをしてみましょう。

 

 

しきみが購入できる場所は?

「仏壇に飾りたい」「お墓参りに持参したい」といった場合、しきみは身近な所から手軽に購入できるため、急な入り用でも安心です。

スーパー・ホームセンター

しきみを栽培している農園には、全国のスーパーやホームセンターと取引をしているところもあるため、自宅近くのお店で一束500~800円程度で購入することも可能です。また鉢植えのしきみを販売しているお店もあります。

 

しかし関東ではしきみの需要が低いため、必ずしきみの取扱いがあるというわけではありません。しきみが必要な場合は、来店前に問い合わせすることをおすすめします。

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オンラインショップ

なんでも揃うオンラインショップですが、しきみも例外ではありません。多くの生花店やしきみ栽培農家が出店をしているため、大手オンラインショップであるアマゾンや楽天市場でも簡単に購入することができます

 

値段は一対で800~1,500円ほどで、根付きのものも購入が可能です。また小さな籠に入ったしきみのアレンジメントなどもあり、豊富な種類から選べるのも魅力。

 

一つ注意が必要なのが、オンラインショップでは本物とそっくりの造花も販売されているということ。値段が数千円したり、「水やりは不要」「手間がかからない」などと書かれている場合はほとんどが造花です。生花を購入したい場合にはサイトの内容をよく確認してから注文をしましょう。

 

 

しきみを知って正しいお供えをしましょう

しきみは強い香りや毒成分を持つことから、昔からお清めや邪気を払う目的でさまざまな仏事に用いられてきました。その用途は昔と今では少し変化はしていますが、しきみ本来の重要性は変わることはなく、昔ながらの用途でも地域によっては今も多用されています。

 

しきみの持つ本来の意味や用途を知って、正しくお供えをしましょう。