成年後見人になるために必要なこととは/資格は必要なのか?
公開日 : 2020/8/25
更新日 : 2020/9/10
成年後見人とは何か、どのような時に必要とされるのかということをはじめ、成年後見人になるにはどうしたらよいのかなど紹介しています。成年後見人になるにはいくつかの条件があります。それに伴う書類・手続き方法など知っておきたいポイントをわかりやすく解説しています。
公開日 : 2020/8/25
更新日 : 2020/9/10
目次
そもそも成年後見人とは?
成年後見人とは、実際に認知症や知的障害等の精神上の疾患により判断能力が著しく低下した方の財産を保護するために、家庭裁判所から選任されて、ご本人の財産保護や身上監護を行う人のことをいいます。
成年後見人を定めた場合、財産の分配や処理などに関して、成年後見人の同意なく決めることはできません。要するに、本人に自由意志決定権は無く、成年後見人の同意がなければ法律上の契約はもちろん取消もできないのです。
成年後見人ってどんなときに必要?
本人の判断能力が低下して、意思決定が低い状態が長期間継続している正常な判断を下すことが困難になり、本人や家族の財産等が守られなくなる場合などに成年後見人を立てることができます。
例えば、本人が認知症になって勝手な契約をしてしまい不利益を生じてしまう、脳死状態になり本人に判断を委ねられなくなった場合などがそれにあたります。
成年後見人には誰がなれるの?
成年後見人には「任意後見人」と「法廷後見人」があります。法定後見人は家庭裁判所が適任者を選別するので、だれでもなれるわけではありません。制度上では、任意後見人と法廷後見人も、不適格者の条件が設定されています。
任意後見人(制度)
任意後見人とは、本人が正常な判断能力を有しているうちに、将来的な自分自身の成年後見人となる人をいいます。
例えば、今はまだ大丈夫(健康)だけど将来的に認知症(病気)が心配かもしれないというときに事前に公証人役場で任意後見契約を結んでおき、認知症の疑いがでた時に家庭裁判所に申し立てをして任意後見監督人の選任をしてもらいます。
任意後見監督人とは選んだ任意後見人がしっかり職務を果たしているかをチェックする人です。任意後見人と後見事務範囲は自由に決めることができます。ただし、結婚・離婚・養子縁組などについては後見事務範囲に取り込むことはできません。この制度を「任意後見制度」といいます。
要するに、元気なうちに契約を交わす時は任意後見人(制度)となります。事前に準備しておけることで、不安感を解消したい場合にはいいでしょう。
任意後見人の不適格者
任意後見人の不適格者は「未成年者、家庭裁判所で解任された法定代理人、保佐人、補助人
破産者、本人に対して訴訟をしている人、その配偶者、その直系血族、行方の知れない者」です。
法廷後見人(制度)
法廷後見人とは、認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分な方に対して、本人の権利を法律的に支援、保護する人です。本人の判断能力の程度に応じて支援の仕方が変わります。
判断能力を常に欠いている状態の方には成年後見人を、判断能力が著しく不十分な方には保佐人を、判断能力が不十分な方には補助人を裁判所が選任します。
例えば、本人が急に倒れて意識不明の状態が続いている、これからも続きそうだ、という場合に利用できます。判断能力が不十分な人が不利益な結果を招くことがないように、法律で保護して支えるということです。
家庭裁判所は支援者を選定し、支援者は本人の為に職務を果たします。後見人は家庭裁判所に報告義務があり、その監督を受けます。この制度を「法廷後見制度」といいます。
法定後見人の不適格者
法廷後見人の不適格者は「未成年者、家庭裁判所で解任された法定代理人、保佐人、補助人
破産者、行方の知れない者、本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族、不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者」です。
成年後見になるための手続きはどうするの?
まずは、家庭裁判所へ申し立てをすることから始まります。内容にもよりますが、申し立てから審判に入るまでは2ヶ月ほどかかります。
最近では審判までの時間がだいぶ短縮されたようですが、申し立てからすぐに審判となるわけではないので注意が必要です。そして任意後見と法廷後見では少し手続きが異なります。
任意後見の場合
(1)信頼できる任意後見人を選定
(2)公証人役場で公正証書を発行
(3)判断力の低下がでてきたら、後見人が家庭裁判所に申し立て
(4)任意後見人として相応しいかどうかが問われ、認められれば継続
任意後見人の最大の特徴は、制度を利用するご自身が選ぶことが可能な点で、逆に言えば選ばれるためには、ある程度の信頼が必要ということになります。
法廷後見の場合
(1)家庭裁判所へ申し立て
(2)調査官の事実調査
(3)精神鑑定
(4)審判
(5)審判の結果報告
申立人と本人、成年後見人(保佐人・補助人)は家庭裁判所で事情を聞かれます。家族や親族がいないため、申し立てができない場合は、代わりに市区村長が申立てすることもできます。裁判所にて書類一式をもらい、準備しておきましょう。
書類は多いので不備があると保留となるため、事前準備はしっかりしておくことが大事です。また記載された候補者が選定されることがほとんどですが、稀に家庭裁判所の判断により、弁護士または司法書士が選ばれることもあります。
精神鑑定はほとんど行われることはないですが、家庭裁判所が必要と判断した場合は行われます。審判後は家庭裁判所から審判書をもらって後見が始まります。
成年後見になるための必要書類は?
任意後見の場合は「申立書、申立書付票、医師による診断書、本人の戸籍謄本、住民票、後見登記事項証明書、診断書」です。
法廷後見の場合は「戸籍謄本、住民票、診断書(後見用の専用用紙あり)、医学鑑定依頼文書(医師への確認)、登記されていないことの証明書、後見開始申立書、申立の趣旨(後見申立の理由)ご本人についての照会書(経歴、財産、収入支出を記入)、親族関係図」です。
診断書に関しては後見申立専用の診断書でなければならない場合があるので、必ず指定用紙を準備してから病院へ提出するようにしてください。指定用紙以外で申請した場合、改めて診断書を取り直すことになるため、無駄な診断書料を払わないためにもお気をつけてください。
費用はどれくらいかかるの?
任意後見人になるための費用は、おおよそ3〜4万円程度です。内訳は任意後見契約にかかる費用として2〜3万程度、申立費用として5千円程度となっています。
一方で法定後見人になるための費用は、任意後見人とは違い、精神鑑定費用によって大きく変化します。もしも精神鑑定が必要ない場合は、おおよそ1万円前後の申立費用で済むのですが、精神鑑定費用が必要となった場合は、更に少なくとも5万円から、最大で10万円程度は考慮する必要があるでしょう。
法定後見人の申立たてを行える人とは
法定後見人の申立てを行える人は限られています。具体的には「制度を利用する本人、四親等内の親族、四親等内の親族がいない場合は自治体の首長など」です。
ちなみに親等の数え方は、親子関係が加わることに1親等を加算されることになっています。例えば父母や子供は1親等ですが、祖父母は親の親なので2親等となります。つまり四親等内の親族の範囲とは、上は高祖父母までで、下は玄孫までとなります。
高齢化社会に欠かすことのできない成年後見制度
日本は現在、超高齢化社会と言われるほどに、高齢者が増えています。これはデータからも明らかで、日本政府が発表している高齢社会対策大網には、65歳以上を高齢者としていますが、2018年の時点で、総人口の約3割に及んでいるとのことです。
そして厚生労働省の研究によると、認知症の発症率は2018年の時点で約7人の1人とされており、高齢者の5人に1人がなると予測されています。
ご自身の大切な人が認知症などの判断能力が劣るような病気になってしまった場合、必要となってくるのがこれまで述べてきた成年後見制度です。法定後見人は裁判所の判断が必要となりますが、任意後見人は制度を利用する本人が望めば、基本的には家族でもなること可能です。
いざというときのために、成年後見になるための方法や手続きを理解しておくことは非常に重要ですので忘れずに覚えておくとよいでしょう。
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