生前葬の意義や方法とは?メリット・デメリットの両面から解説
公開日 : 2020/6/24
更新日 : 2020/9/7
生前葬は江戸時代から存在する葬儀のかたちですが、現代において浸透しているとは言い難いです。生前葬は人生を見つめるうえで大きいな意義を果たしますが、反面、周囲に受け入れられにくいといったデメリットも存在します。以下で詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
公開日 : 2020/6/24
更新日 : 2020/9/7
目次
生前葬っていったい何?
生前葬とは、言葉通り、生前に行う葬儀のことです。形式や作法はさまざまですが、自分で自分の葬儀を取り仕切るパターンが多いです。生前葬はいわゆる「葬儀」と異なり、招待客と余興や食事を楽しみながら、明るい雰囲気の中でにぎやかに行うことができます。また宗教色が比較的薄いのも生前葬の特徴です。
生前葬は古くは、江戸時代の長崎で行われたという記録が残っています。現代においても有名人が行うことはありますが、一般人の間ではほとんど浸透していないといえるでしょう。生前葬が普及しないのには、どんな理由があるのでしょうか。メリットやデメリットを交えながら、生前葬についてご紹介していきます。
生前葬の目的
葬儀とは、死者をあの世に送るための儀式です。そうだとすれば、まだ生きているのに葬儀を上げる意味はあるのでしょうか。生前葬を行う動機とはなんなのか、主だったものをご紹介してみましょう。
葬儀に自分で責任を持つ
生前葬は自分の葬儀を自分で取り仕切るパターンが多いです。いつ・どこで・だれを呼んで・どんなことを行うか、など、通常なら遺族が行うべき選択を、存命中に本人が全て決めることになります。また生前葬には定型の決まり事がありませんので、自由な方法で葬儀をあげることができます。
また、生前葬を上げた場合、死後の葬儀は簡略化することができます。つまり、いざというときに遺族に時間的・経済的な負担をかけなくて済むというメリットもあります。このように生前葬は、自分の葬儀に自分で責任を持ちたいという理由で行われることがあります。
直接感謝とお別れを伝える
死後に挙げる葬儀では、参列者へのお礼や挨拶は、故人にかわって喪主が述べることになります。しかし生前葬なら、本人が直接、お世話になった人々にお礼とお別れを伝えることができます。生前葬は明るい雰囲気で行われることが多いので、湿っぽいお別れにしたくない場合にも有効です。
また、参列者の体力的な理由から生前葬をあげることもあります。高齢化に伴い、葬儀に参列するのが難しくなる可能性があるため、早めに葬儀を上げてお別れを済ませておきたいというわけです。
社会的な地位・立場に区切をつける
生きているとはいえ、葬儀をあげるということは、その人は社会的には死を迎えたことになります。生前葬後は、以前のように大々的な社会活動を行うことは少ないでしょう。そういった社会的引退のケジメとして、生前葬を上げるケースも多いです。
あるいは、喜寿や米寿といったある一定の年齢に達したときに、人生の節目の儀式として生前葬をあげることもあります。
「死」を覚悟するキッカケにする
前述のとおり、生前葬を上げると、その人はある種の死を迎えたことになります。当然、本人も周囲の人も、これから訪れる「死」に対しての認識が変化してきます。生前葬をあげて死を受け入れることで、その後の社会的な手続きや、残された家族の在り方を考えるキッカケにすることもあります。
死後のお葬式はどうなる?
生前葬は、死後に行う葬儀を前倒しで行うものです。そのため、理論上は死後の葬儀はあげなくてよいことになります。しかし、法律上、死後は必ず火葬にしなければいけません。直葬してももちろんかまいませんが、お経の一つくらい上げてやりたいというのが多くの遺族の心情です。
そのため、生前葬を行った場合でも、死後に簡単な家族葬や火葬式をあげるパターンが多いです。
生前葬のメリット・デメリット
あまり一般的でない生前葬ですので、そのメリットやデメリットも知られてはいません。以下に主なものをご紹介していきますので、生前葬を検討しているならぜひ参考にしてください。
生前葬のメリットとは
まずは生前葬のメリットについてご紹介していきます。生前葬は自分の思い通りの葬儀をあげることができますが、そこから得られるメリットは以下の通りです。
自由な葬儀が可能
生前葬にはこれといった決まりがなく、自由な形式で行うことが可能です。通常の葬儀のように僧侶を招いて読経をあげてもらうこともあれば、ホテルの会場などを貸し切って立食パーティのように行うこともできます。
形式ばった葬式ではなく、自由な葬儀を行いたいなら、決まりにとらわれない生前葬は大きなメリットを持ちます。
準備に時間をかけられる
通所の葬儀を上げるときは、遺体の保管や法定手続きの期限に追われるため、いろいろなことを短時間で決めていかなければいけません。しかし生前葬の場合はそういった時間の制限がありませんので、ゆっくり準備を行うことができます。
家族・参列者の負担を軽減できる
生前葬を上げた場合は、死後の葬儀は省略または簡略化してかまいません。生前に本人が葬儀を取り仕切ることで、死後に家族や遺族にかかる葬儀の身体的・経済的負担を軽減することができます。
生前葬のデメリットとは
生前葬が浸透していない理由は、やはりデメリットにあります。葬儀は死後の儀式という風潮が強いため、生前葬は多くの人にとって違和感を抱かれる傾向にあるのです。
理解を得るのが難しい
本人はよくとも、家族や周囲の人々に生前葬の意義を理解してもらうのは意外と大変です。なにしろ本人はまだ存命ですので、死後の儀式を行うことに抵抗感を持つ人は少なからずいます。反対を押し切って生前葬を行うと、せっかくのお別れの儀式が不和の原因になりかねないというデメリットがあります。
生前葬を上げたいと考えるなら、家族や周囲の人々とよく話しあうことが大切です。どうして生前葬を行いたいのか、どういう風にやり遂げたいのか、自分の気持ちを素直に打ち明けて、協力を仰ぎましょう。
二度手間になる可能性がある
遺族の心情として、生前葬を上げていたとしても、改めて葬儀を上げて故人を見送りたいという気持ちがあります。生前葬を上げていた場合の死後の葬儀は不要とは言え、なんらかの形で葬儀をおこなう家庭は多いです。
つまり葬儀を2回上げることになり、家族や参列者に負担をかけることがあります。こうならないためにも、生前に、死後の手続きなどについて家族とよく話し合っておくことが大切です。
生前葬にかかる費用
生前葬にかかる費用はケース・バイ・ケースで、これといった相場がありません。50万程度で済む場合もあれば、100万円以上かかる場合もあります。これは、生前葬のやり方に決まりがないためです。
たとえばホテルなどの大きな宴会場を貸しきって食事を行うなら、会場代と料理代が必要です。さらに生前葬では余興やゲーム、記念品としてプレゼントや花束を用意することが多いですが、当然これらの費用も必要です。
このように生前葬の費用にはこれといった相場がありません。内容をしっかり吟味し、どの程度の予算が必要なのかあらかじめ試算しておくことが大切です。
生前葬の内容の例
生前葬のとり行い方は自由です。ただし、決まりがないためにどういった流れで行えばいいのか分からない、と思う人もいるでしょう。以下に、生前葬でよく取り入れられている式次第をご紹介しますので、よければ参考にしてください。
会場は?
生前葬は食事会がメインになることが一般的です。そのためホテルの宴会場や、レストランの1室を貸し切って行うケースが多くみられます。葬儀社によっては、葬祭会館を会食場として提供しているところもあります。
もちろん、自宅で行ったり、菩提寺で行ったりすることもあります。生前葬の会場は、葬儀の内容に合わせて自由に選んでください。
式次第は?
生前葬は、生前にお世話になった人に、本人が直接感謝とお別れを述べる場です。式次第にこれといったルールはありませんが、思い出を振り返ったり、感謝を伝える機会を作ったりすると、心に残る生前葬にすることができるでしょう。
主催者や参列者の挨拶
多くの生前葬で取り入れられているのが、主催者のスピーチです。葬儀に集まってくれた人々に対し、直接、これまでの感謝とお別れを述べることができます。また弔事の代わりに、家族の代表者がスピーチをしたり、参列者からの挨拶がおこなれることもあります。
生前葬のスピーチでは、前向きになれるような、明るい内容が好まれます。参列者にお礼の気持ちを伝えることが大切ですので、人を暗い気持ちにさせるような挨拶は避けましょう。
思い出を振り返るスライドショーなど
スライドショーなどを利用し、みんなで思い出を振り返るイベントも、生前葬にはよく取り入れられています。参列者と思い出を共有することで、残りの時間をより大切に過ごしたいと、死に対して前向きな気持ちになることができます。
食事
コース料理がふるまわれることもあれば、立食形式でおこなれることもあります。精進料理である必要はなく、みんなが楽しめる食事内容を考えてみてください。
余興・ゲームなど
思い出づくりの一環として、ゲームやカラオケ大会、出し物などを行うことが多いです。ゲームの優勝者には景品が用意されることもあります。また、バンドを招いての生演演奏会も、生前葬にはよく取り入れられています。
生前葬は、これまでの感謝の気持ちを伝えるために開かれます。参列者がみんなで楽しめるような内容を考えるとよいでしょう。
花束やプレゼントの贈呈
参列者から主催者に花束が贈られたり、主催者が参列者全員に記念品を配ったりします。会葬御礼品や香典返しのように、消えものがいいなどの決まり事はありません。
生前葬の参列者が気を付けるべきこと
生前葬に招待される側になることもあります。ここからは、生前葬に招待された場合のマナーや注意点についてご紹介していきます。
服装
生前葬に参列するときの服装については意見が分かれています。厳粛な雰囲気の葬儀になるなら喪服や礼服が望ましいでしょうし、パーティのようなカジュアルな雰囲気の生前葬なら、堅苦しい恰好では浮いてしまいます。
もし案内状に「平服」と記されているのなら、その案内に従ってよいでしょう。できれば、前もって主催者に服装の目安について尋ねておくのがおすすめです。カジュアルな服装での参列が可能でも、相手に不快感を与えない服装・清潔感のある服装を心がけてください。
香典
香典についても明確なルールがありません。香典不要と事前に断られた場合や、会費制の生前葬でない場合は、念のため1~2万円程度を包んで持参していくと安心です。白無地の封筒か、奉書紙に包みましょう。表書きは「寸志」「御花料」などが無難です。
もし香典の要不要が分からないときは、服装の時と同様、事前に主催者に問い合わせるのがおすすめです。
忌引き
亡くなったわけではないので、生前葬には忌引きが適用されない可能性が高いです。場合によっては忌引き扱いになることもありますが、平日の生前葬に参列する場合は、基本的に欠席と見なされると心得たほうがよさそうです。
生前葬には話し合いが大切
生前葬は本人から直接参列者にお礼を言えるというメリットがありますが、反面、不謹慎だと非難される可能性も高いです。もし生前葬を行いたいと考えるなら、自分本位にならず、周囲と腹を割って話し合うことが大切です。
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