労災による手続き|業務中に死亡した場合に受け取れる補償や給付金

公開日 : 2020/5/18

更新日 : 2020/9/6

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労災とは「労働災害」の略語であり、業務中の事故で死亡・負傷してしまうことを指します。労災の場合は労災保険が適用され、遺族には給金を受け取りできる権利が発生します。そこで今回は、葬祭で死亡してしまった時遺族側・会社側の手続きについて解説します。

公開日 : 2020/5/18

更新日 : 2020/9/6

目次

労災とは

世間でよく言われる労災とは、正式名称を「労働災害」と呼びます。業務や通勤など、仕事に関する行動をしていた際に負傷したり、死亡したりした場合に適用される制度のことです。

 

労働者にとって最も身近な補償であるものの、危険と隣り合わせの製造業でもない限りは強く意識することはないでしょう。手続きも複雑でわかりにくいところがあり、全体像を把握するのは大変です。

 

まずは、「労働災害(労災)」とは何なのか、基本的な部分を確認してみましょう。

労災保険が適用される

労災保険とは、労働災害による負傷や死亡が発生した時に保険の給付を行う制度のことです。正式名称は「労働者災害補償保険」と呼び、年金や健康保険などと並ぶ社会保険の柱の1つです。

 

ケガや病気に対する補償ということで思い浮かぶのは健康保険ですが、こちらは業務外の疾病や怪我に対して補償されるものです。一方の労災保険は業務上の負傷や死亡に適応している点が大きく違います。

 

労災が発生した場合、労災保険から「療養補償給付」等の給付を受けることができます。労災保険への加入は1人でも労働者を雇用する会社の義務ですが、保険料の全額を会社が支払うため労働者の負担はありません。

労災保険による給付の種類

健康保険は「医療費が3割負担」以外にも傷病手当金や出産一時金など、さまざまな手当てが存在します。労働災害も同じく、労災を適用された時に適用される補償は複数存在するのです。

 

ここでは、労災保険に含まれる補償の種類を紹介します。

遺族給付

遺族給付とは、「遺族補償年金」「遺族補償一時金」の2種類が存在します。労働者が死亡した時点での遺族との関係や、遺族との続柄・年齢によって、2つのうちどちらが支給されるのかが決まるのです。

 

受給資格者は、死亡した労働者の収入で生活していた人です。もっとも分かりやすいのは、扶養に入って生活していた妻でしょう。妻以外の「兄弟姉妹・子供・父母・祖父母」等は無条件とはいかず、支給には一定の条件があります。

 

遺族年金の給付額は遺族の人数が1人なら給付基礎日額の153日分から、4人以上の245日分まで幅があります。また、遺族年金を受け取れる人がいない場合は給付基礎日額の1,000日分に当たる遺族補償一時金が支給されます。

 

 

遺族特別支給金

通常の遺族給付とは別に支給される金銭のことです。一定の要件を満たした遺族に対して一律で総額300万円が支給されます。あくまで総額のため、受取る人が5人いれば1人あたりの受取額は60万円になります。

遺族特別年金

労働者が生前に受け取っていた賞与(ボーナス)を考慮した算定基礎日額を元にして支給される金銭のことです。支給される金額は遺族補償年金と同じで、受け取る人数が1人なら153日分、4人以上であれば245日分となります。

遺族特別一時金

遺族補償一時金の受給者に対して支払われる金銭です。算定基礎日額を元に1,000日分が支給され、1回だけ受け取ることができます。

葬祭料

労災保険では、労働者が業務んの範囲内で死亡した場合に葬儀費用の一部が支給されます。中でも業務災害(通勤ではない業務中に死亡した場合)に支給される時は「葬祭料」と呼んでいます。

 

「315,000円に給付基礎日額の30日分をプラスした額」か、給付基礎日額の60日分のいずれか高い方を葬儀を行う喪主に対して支給します。

葬祭給付

葬祭料と同じ支給内容ですが、こちらは通勤災害(通勤中に災害に遭った場合)に支給されるものです。

 

葬祭に限らず、通勤災害で支給を受ける場合は用語の最後に「~給付」ということが付くようになっています。

労災の申請方法

万が一労災によって家族が死亡してしまった場合、遺族年金の給付を受けるための申請を行わなければいけません。

 

ここでは、遺族年金を受給するための「請求の手続き」についても解説します。

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請求の手続き

所轄の労働基準監督署長にむけて、「遺族補償年金支給請求書」「遺族年金支給請求書」を提出します。特別支給金の支給申請がある場合は、遺族給付の申請と同時に同一の様式で請求します。

 

遺族年金の受給権者が2人以上いる場合は、そのうち1人を請求・受給の代表者として決定します。原則として、同順位の受給権者が遺族年金を等分割して受け取ることはできません。

請求書の書き方

請求書には、負傷した日時と死亡年月日を正確に記載する必要があります。また、災害の発生要因や発生状況を正確に分かりやすく記載しなければいけません。また給付金を算定するため、月の平均賃金と年間の給与総額を記入します。

 

記載した通りの内容で間違いないことを証明するため、事業主の名称・所在地・事業主の名称及び印鑑も必要になります。

 

これらの事情から、事故が発生したあとは会社側から詳細な説明を受けないと書類が書けないことになります。印鑑を受領して提出が完了し、至急が開始されるまでは会社と綿密な連絡が必要になるでしょう。

労災が発生した会社が取るべき対応

労災で死亡事故が発生した場合、会社側としても正しい対処が求められます。対応を間違うと「遺族から損害賠償を受ける」「刑事罰の対象になる」などの厳しい状況に置かれるため、必ず正しい手順を理解しておく必要があります。

事故現場の保存

事故が発生した場合、すぐさま行うべきは「警察・救急への通報」のほかに「事故現場の保存」が挙げられます。労働基準監督署や警察、遺族への正確な説明のためにも自己の状態を変えずに残しておくことが必要です。

 

発生してすぐに事故現場を写真・または動画で撮影しておくと確実でしょう。ここで正しく現場を残していないことが後に発覚すると、「隠蔽をした」と判断されかねません。

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関係者への事情聴取

事故現場を保存した後、関係者への事情聴取を速やかに行います。事情聴取が遅れるほど当事者の記憶もあいまいになり、遺族への報告が間違ってしまう可能性があります。遺族から不信感を抱かれないためにも、すみやかな事情聴取が大切です。

労働基準監督署への報告

労災が発生した場合、労働基準監督署へ報告の義務が発生します。労働安全衛生法に則って、「労働者死傷病報告」と「事故報告」が必要です。

労災の補償を受ける際のポイント

業務災害などで労働者が死亡してしまった場合、遺族として会社に確認しておくべき情報がいくつかあります。給付を多く受け取ることで、結果的に遺族の生活を助けることが期待されます。

会社の災害補償規定があるか確認する

株式会社には「就業規則」という決まりが存在し、労災補償規定として労災保険以外の補償規定を定めている場合があります。「死亡保障として〇万円を支給する」と書かれていた場合は、該当する金額を受け取ることが可能です。

 

会社としては独自の遺族補償に備えるため、生命保険に加入しているケースが大半です。労災保険の遺族給付は支給に時間を要してしまうため、会社の補償制度の方が手元に早く届くことになります。

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会社の対応によっては訴訟を検討する

遺族としてはショッキングなことですが、「なぜ死亡事故が発生してしまったのか」を徹底して追及するべきです。劣悪な労働環境や重労働が原因で死亡事故が発生してすまうケースも実際に発生しています。

 

納得できないと思うのであれば、金銭的な負担がかかることは理解した上で弁護士に訴訟の相談を持ち掛けるのも1つの手段です。裁判の場で事故の真実を明らかにすることで、遺族の気持ちが晴れるきっかけになる可能性もあります。

まとめ

今回は、労働災害(労災)について制度の全体像と、万が一労災で死亡してしまった場合の手続き方法について解説しました、全体像が分かりにくい制度ですが、万が一の時は真っ先にお世話になる制度でもあります。少しずつ理解を深め、万が一の時に備えるようにしてください。