拓本を趣味にしよう!拓本のとり方や用意するもの、注意点を紹介
公開日 : 2020/4/20
更新日 : 2020/9/9
拓本は墨と画仙紙を使い、石碑などの銘文を美しく写し取るための手法です。難しそうに見えますが、意外に誰でも楽しめるのが拓本の魅力でもあります。以下では拓本の種類や採り方、準備するものを解説しています。手軽な趣味をお探しの方はせひ参考にしてください。
公開日 : 2020/4/20
更新日 : 2020/9/9
目次
拓本とは?
拓本とは、墨と紙を用い、石碑などに刻まれた銘や文字を、その凹凸を利用して写し取る技法のことです。用紙に写し取られた銘自体も拓本と呼ばれます。魚の拓本はとくに魚拓と呼ばれ、聞いたことがある人も多いでしょう。このように拓本は石や金属のほか、木や魚など、表面に凹凸のあるものならなんでも写し取ることができます。
拓本は道具さえ揃えれば、誰にでも簡単に行うことができます。以下に拓本の種類や採り方、拓本を採る際の注意点を解説していきます。手軽にできる趣味をお探しの方は、ぜひ参考にしてください。
拓本の種類
拓本にはいくつかの種類があります。それぞれの特徴や、おおまかな採り方を解説していきます。初心者でも楽しめる拓本はもちろん、上級者におすすめの拓本まで、いろいろな種類がありますので、ぜひ自分にあったものを探してみてください。
湿拓
湿拓(しつたく)は、濡らした紙や布を用いて拓本を採る方法で、もっとも基本的な拓本の採り方です。湿拓は、紙や布を湿らせて、石碑などの対象物に隙間なく密着させ、紙の上から墨をすりつけて模様を写し取ります。こういったように紙の上から墨をすりつけることを間接拓といい、対象物に直接墨を塗って紙に写し取る方法は直接拓と呼ばれます。
どちらの場合でも、対象物の凹部分は白く浮き上がり、凸部分は黒く塗りつぶされて、紙に映し出されます。もともと拓本と言えば湿拓を指していましたが、のちに乾拓という手法が生み出されたために、対比として「湿拓」と呼ばれるようになりました。湿拓の詳しい採り方は、後ほど詳しく解説しています。
乾拓
乾拓(かんたく)は紙や布を対象物の表面に広げたのち、タンポと墨を使って凹凸を写し取る間接拓の1種です。また、対象物の上に紙を広げ、鉛筆などで塗りつぶして凹凸を写し取るのも乾拓の一種になります。湿拓が古代の中国で生まれたのに対し、乾拓は明治維新後の日本で生まれたと言われています。
明治維新後、日本では考古学が盛んになり、古代の土器や瓦を写し取って保管したり、研究したりすることが行われました。その際に湿拓では研究物をいためる可能性があったことから、乾拓という技法が編み出されたのです。乾拓は鉛筆などの筆記用具と紙さえあれば行うことができるため、手軽に拓本を楽しみたい場合にもおすすめです。
魚拓
魚拓は魚の拓本のことで、釣った魚の大きさや形を原寸で保管したいときなどに行われます。魚拓には、魚の表面に墨を塗って紙に写し取る直接拓と、魚に紙を貼り付けて、その上から墨で写し取る間接拓の2種類の方法があります。直接拓が失敗が少なく手軽に行えるのに対し、間接拓は細かな模様までつぶさに写し取ることができるというメリットがあります。
魚拓は現在の山形県にあたる庄内藩が発祥と言われています。また、日本に現存する最古の魚拓は1839年にとられたフナの魚拓です。
烏金拓
烏金拓(うきんたく)とは、古代中国で盛んにおこなれていた拓本の方法です。墨を重ねて打つことで黒い部分をさらに黒くし、まるで烏の羽のように濃い色に見えることが名前の由来です。中国では拓本は書道のお手本として用いられることが多かったため、白い部分と黒い部分をはっきり区別して写し取ることが好まれました。
蝉翼拓
蝉翼拓(せんよくたく)は、烏金拓とは正反対に、セミの羽のように薄く写し取る拓本です。文字や模様の記録を目的とせず、美しい拓本を作ることに重きを置かれています。模様を損なわず、色味を抑えて写し取るのは難しいため、上級者向けの拓本と言えます。
拓本に必要なもの
拓本は紙と鉛筆があれば誰でも楽しむことができますが、もうすこし専門的に楽しみたいと思うなら、拓本に必要な道具を準備しなればいけません。ここからは、湿拓法で拓本を楽しむために必要な道具を解説します。
墨拓とタンポ
墨拓は、拓本用に作られた練り状の墨です。墨を油で練り上げたもので、にじみにくく、裏うつりが少ないことから、対象物を汚したくない場合や、初心者が使う場合におすすめです。一方、タンポは絹などを丸めた巾着状のもので、紙の上から押しつけるようにして使い、凹凸部分に墨をすりこむための道具です。
タンポの大きさや材質はさまざまです。化繊のタンポが安価で手に入れやすいのに対し、絹のタンポは柔らかく、細かい模様を写し取りたいときに便利です。タンポは手作りすることもでき、てるてる坊主を作る要領で、吸水性のある布に端切れを詰めて丸い形に仕上げれば完成です。
画仙紙
画仙紙は書画に用いられる大きめの和紙のことで、白色のものが多く、薄いのが特徴です。墨のかすれやにじみを美しく残すことができるため、拓本を採る際にも最適です。
そのほかに必要なもの
そのほかに準備すべきものとして、タオルを2つ、セロテープ、刷毛などがあります。タオルは画仙紙を湿らす際と、余分な水分を吸い取る際に必要です。セロテープは画仙紙を対象物に固定する際に利用し、刷毛は対象物の表面のゴミやホコリを払う際に用います。
拓本を採るときの注意点
拓本を採る際は、石碑などの対象物の所有者に必ず許可を取りましょう。拓本を採る際に汚してしまったり、破損してしまったりする可能性があり、無許可で行うとトラブルに発展しかねません。絶対に無許可では行わないようにしましょう。また、対象物の所有者にはなにがしかのお礼を用意しておくのが無難です。
拓本の採り方
いよいよ、拓本の採り方について解説していきます。以下では湿拓の間接拓の採り方を説明します。写し取りたいものにもよりますが、拓本の採り方はさほど難しくありません。ただし画仙紙は破れやすいので慎重に扱いましょう。また、細かい模様を写し取りたいときは、墨を薄く何度も重ねると失敗しません。
画仙紙を広げる
まず刷毛を使って、対象物の表面のホコリやゴミを取り除きます。油分がついていると墨が乗らないため、柔らかい布で汚れをふき取らなければいけない場合もあります。表面がきれいになったら、画仙紙を対象物の上に広げ、セロテープなどで固定します。画仙紙はあらかじめ対象物に合う大きさにカットしておきましょう。
画仙紙を固定したら、濡れたタオルで全体を拭いて紙を湿らせます。画仙紙が対象物に隙間なく張り付いたら、乾いたタオルで余分な水分をふき取るとともに、さらに画仙紙を密着させていきます。
墨をつける
濡らした画仙紙の上から、タンポを使って墨拓の墨を広げます。墨をつける際は、タンポに墨をとって、画仙紙の上からポンポンと軽く叩きつけるようにします。なるべく小刻みにタンポを動かすのが、きれいに写し取るコツです。ムラができないように、対象物の全形を写し取りましょう。
画仙紙を外す
まんべんなく墨をすり付けたら、画仙紙をゆっくり剥がします。濡れた画仙紙は破れやすいので取り扱いに注意しましょう。剥がした画仙紙は新聞紙などに挟んで持ち帰ります。これで拓本採りは終了です。
拓本を楽しもう
拓本は難しそうに見えて、意外に手軽に楽しむことができます。紙と鉛筆さえあれば誰でも楽しめますので、ぜひチャレンジしてみてください。
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