樒とは一体?葬儀と樒の歴史と関係性を詳しく解説していきます

公開日 : 2020/4/22

更新日 : 2020/9/10

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貴方は樒と言うものをご存知でしょうか。樒は、昔には葬儀に欠かせないものとして準備されてきたものです。現在の葬儀でも名残をとどめていて、準備される方も少なくありません。今回この記事では葬儀と樒の歴史や関係性について、改めてご紹介していきます。

公開日 : 2020/4/22

更新日 : 2020/9/10

目次

樒とは?

樒とはマツブサ科シキミ属に属する高木の一種です。一年中緑色の葉を茂らせる常緑で、育つと高さが10メートルにもなります。春に白い花が咲き、どんぐりのような実をつけます。葉を中心に独特の強い匂いがあるので手で触れる時は注意しましょう。

 

樒の大きな特徴は、そのすべてにおいて毒性があることです。根・花・茎・葉・実がすべて危険であり、例外はありません。アニサチンという毒性が含まれ、間違って食べてしまうと命の危険すらあります。

 

樒の実は、根や葉やよりも毒性が強いのですが、トウシキミと呼ばれる食用の植物とよく似ているため、誤食による死亡事故が後を絶ちません。絶対に樒を口に入れないようにしましょう。

 

樒は日本特有の木であり、昔には万葉集に謳われるなど人々のつながりも深いものでした。なお、漢字が木ヘンに密と書くのは仏教の一派である密教の修法に使っていたからともいわれています。

 

樒は他にも「梻」「櫁」とも書き、また別名では「シキビ」「ハナノキ」「ハナシバ」「コウシバ」「コウノハナ」「仏前草」など多様な書き方と読み方があります。

樒と葬儀の関係

樒と葬儀は密接な関係を築いてきました。それは日本の古来の葬儀の在り方と関係があります。詳しく見ていきましょう。

樒は仏教とともに葬儀で用いられた

樒の木自体は日本特有のものですが、仏教では樒は仏教とともに伝えられたと言われています。この伝承の真偽は不明ですが、樒が仏教と関わり合いがあったために、仏教で葬儀が執り行われるようになると樒も葬儀に必要なものとして共に広がりを見せていったのは事実です。

 

仏教では樒は、極楽浄土に咲く青蓮華に似ていることから大切にされ、仏教には欠かせないものでした。年中、青い葉を茂らせる樒は永遠の命の象徴とされたのです。このように樒は仏教が伝わり、仏教での葬儀が普及し始めた6世紀ごろから、樒と葬儀の歴史が始まり、現代まで続いてきました。

樒を葬儀で用いる理由

樒を葬儀で用いる理由には二つの側面があります。現実的な面と精神的な面があり、それぞれで樒は葬儀での役目を担っていました。その二つの面を分けて見ていきましょう。

獣除けとして

樒を葬儀で用いる現実的な面は、「獣除け」です。樒はその葉や茎、根などすべてに毒性があり、獣たちは食べるどころか樒を避けて通ります。日本には昔、狼が生息するなどして土葬で埋めた遺体を掘り返され、荒らされる危険性がありました。

 

人の肉の味を覚えた獣は危険です。生きている人にも害が及ぶ可能性がありましたし、大切な人を食われてしまうのも忌避されました。そのため、人々は獣除けとして樒を遺体の傍に植えたり、葉を撒いたりしたのです。

 

樒は毒性に加えて独特の匂いも強いため、獣以外にも虫なども近寄りませんので、土葬では樒は非常に重要な役割を果たしていたのです。

 

魔除けとして

樒を葬儀で用いる精神的な面は、魔除けです。樒は毒性があり獣や虫が避けるものでしたし、樒には非常に独特の強い香りがあります。この性質から、魔を退けるとされてきました。

 

葬儀は故人を送る儀式であり、故人をあの世へ送り出す儀式です。魔物に儀式を邪魔されると故人が成仏できないと考えられてきました。そのため樒を儀式に用いたり、故人の傍や葬儀式場に飾るなどされたのです。

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樒を重視する仏教

仏教と樒は深いつながりがあります。上述したように、樒という漢字が木ヘンと密教の「密」からできているのもそのためです。また樒は年中濃い緑の葉を茂らせ、枝葉を切り落としても非常に長い間、持つ植物です。

 

花が手に入りにくかった時代に、いつでも美しい緑色の葉を常に茂らせる樒は死者に手向けるにふさわしいものとされ、仏教の儀式の中に取り入れられていきました。末期の水を口に含む際に使われるのも樒の葉であり、経机にも飾られます。

 

また、仏教の宗派の中でも日蓮正宗においては、特に樒を重視し祭壇の周りを樒で飾り、お柩に手向けるものも花ではなく樒と定められているほどです。そして、葬儀だけではなく宗派によって異なるものの、樒は仏壇に常にお供えをしておくものでもあります。

 

関西での需要が高い

葬儀で樒をお供えする傾向は、関東地方よりも関西地方が高いです。特に関西地方では樒を式場の四隅にたてて、結界として魔や邪気が入らないようにとすることが風習として残っています。

 

その名残から、関西地方では花よりも樒を飾る傾向が強く、喪家に花を送る際には樒が喜ばれることもあります。これは関西地方では花よりも樒の方が格式が高いと認識されているためです。

 

現在では、式場の作り方からを四隅に飾ることが物理的に難しくなっており、祭壇の横や式場の入り口などに置かれることが多くなっています。

 

なお関西以外でも樒は、昔は葬儀を行う家の門の左右に置かれて結界とされていました。葬儀式場で行うようになった今は、関西と同じく祭壇の横や式場の入り口などに飾られます。

樒と榊の違い

樒とよく混同される木に、「榊」があります。榊も樒と同じく年中緑色の葉を茂らせる高木なのですが、その色合いから見間違えられることが多いのです。樒は仏教で使われますが、榊は神道で重要視されています。

 

榊という字が木ヘンに「神」で作られているので、覚えやすいですが実物の見分けは付きにくいです。見分け方として一番わかりやすいのは葉の付き方です。あらゆる方向に枝葉を伸ばす樒に比べて、榊は葉が向きを揃えて枝につきます。

 

そのため榊は平べったく見えます。また榊よりも樒のほうが葉に艶がありますし、樒が持つ独特の匂いは榊にありません。榊は神道の葬儀では、神が宿る形代である玉串として扱われます。

 

樒は仏教、榊は神道と基本的に区別はされていますが、神仏習合の時代の名残で今でも神道で樒を用いる神社もあります。

樒について

樒は年中、美しい緑色の葉を茂らせる常緑高木で、その強い生命力と一年中葉を茂らせることから昔から仏教と深い関係にありました。また樒が持つ強い匂いと強い毒性が、死者を守るとされたことで葬儀での存在が大きくなったのです。

 

現在でも樒は葬儀に重要なものとされ、祭壇や経机に用いられます。特に関西地方ではお供えとして花よりも格式が高いとされて喜ばれることもあります。関西での葬儀にお供えを考えている場合には樒も念頭におくとよいでしょう。