お地蔵さまってどんな人?意外と知らない正体やご利益を解説!
公開日 : 2020/4/20
更新日 : 2020/9/10
道路脇などでよく目にするお地蔵さまですが、その正体やご利益は意外と知らなかったりするものです。以下ではお地蔵さまのいわれや正体など、お地蔵さまに関するトリビアをまとめています。今日日深いことばかりですので、ぜひ参考にしてください。
公開日 : 2020/4/20
更新日 : 2020/9/10
目次
お地蔵さまとは?
お地蔵さまは正式には地蔵菩薩といい、仏教における菩薩の一尊です。日本では剃髪し、袈裟を身に着けた僧侶の姿で知られています。お地蔵さまは道路脇などいたるところで像を見かけることが多く、また、柔和な表情をしているため、子供からお年寄りにまで広く親しまれています。
菩薩とは、仏陀が悟りを開く前に修行を積んでいた時代の呼び名、または、悟りを得ているにも関わらず衆生を現世の苦しみから救うために活動する者を指します。地蔵菩薩は後者で、煩悩に苦しむ人々を救うために六道をめぐっていると伝えられています。
すなわち、釈迦が入滅(死亡)し、弥勒菩薩が現れるまでの56億7000万年間は、世界には人々を救う仏が不在になります。地蔵菩薩は弥勒菩薩が現れて悟りを開くまでの間、仏の代わりに衆生を救うとされています。六道とは人が死後に生まれ変わる世界を指し、餓鬼・畜生・地獄・人道・修羅・天道の6つの世界です。それぞれの世界にはそれぞれの苦しみがあり、地蔵菩薩はその苦しみを人の代わりに受け負っています。
地蔵菩薩は古代インドで生まれ、サンスクリット語では「クシティバルガ」という名前です。「クシティ」は「大地」、ガルバには「胎内」という意味があり、その名の通り、大地の母のような大きな慈悲で、人々を包み込んでくれる存在です。
お地蔵さまのご利益
お地蔵さまには28の功徳と7の利益があると言われています。代表的なものとして、人々の苦しみを救ったり、子供を守ったりするご利益がよく知られています。お地蔵さまはそのほかにも、無病息災や交通安全・五穀豊穣・戦勝祈願など、さまざまなご利益をもたらしてくださいます。中には容姿端麗に生まれることができるというご利益や、大臣などのお金持ちの子供なれるといった、現代の感覚からするとユニークなご利益もあります。
お地蔵さまの真言とご利益
お地蔵さまのご利益にあやかりたい場合は、真言(マントラ)を唱えるとよいとされています。地蔵菩薩の真言で最も簡単なものは「オン・カカカ・ビサンマエイ・ソワカ」です。大まかに訳すと「稀有なほど尊いお地蔵さま」となり、お地蔵さまへの呼びかけを表しています。
真言を唱えるときは言葉の意味を深く考える必要はなく、唱えるという行動自体に意義があるとされています。
子供の守り神としてのお地蔵さま
地蔵菩薩は立場の弱い人を優先して守護する菩薩として知られていますが、その通りに、お地蔵さまは子供の守護者としてとても有名です。子供が親より先に亡くなることは親不孝とされており、幼い子供はその罪のために、三途の川を渡ることができず、鬼にいじめられながら河原で、成仏のための功徳を積まなければいけません。
地蔵菩薩は積極的に賽の河原に足を運び、成仏できないでいる子供を鬼から守りながら、功徳を積ませ、成仏に導いていくという説話が知られています。ここから転じて、お地蔵さまは、この世でか弱い存在である子供の守護・救済を担うと考えられています。また、お地蔵さまが信仰の対象としてとても人気があるのも、弱者を見捨てない点に起因しています。
道祖神としてのお地蔵さま
道路わきにぽつんとたたずむお地蔵さまを見かけることも多いでしょう。道路脇などに建てられたお地蔵さまは、その土地を悪いものから守る道祖神、すなわち土地神さまとして信仰を集めています。
地蔵菩薩信仰は平安時代に日本に伝来・普及していきましたが、その過程で、お地蔵さまへの信仰は本来の教義とは乖離し、道祖神やその土地の神さまと習合していきました。こういった仏と神の合体を神仏習合と呼びます。
道祖神として祀られているお地蔵さまには、疫病が村に入り込まないよう魔よけをしたり、旅人の安全を願ったりなど、さまざまな役割があります。また墓地にお地蔵さまが設けられることも多く、墓地に魔物が入り込まないように見張るとともに、故人の安らかな眠りを守ってくれると言われています。
このように、お地蔵さまはその土地土地における民間の信仰と合体し、広く崇められてきました。
水子供養のお地蔵さま
水子とは流産などにより胎児のまま亡くなった子供、または生まれてすぐ亡くなった子供を指します。水子地蔵または水子供養とは、そんな水子の回向のためにお地蔵さまを祀ることで、日本独特の風習だと言われています。水子地蔵は水子のお墓の隣や、その家のお墓の近くに建てられることが多いです。
水子地蔵はその姿によって担う役割が異なっています。以下に、水子地蔵の主な姿と役割を解説します。
錫杖を持った水子地蔵
錫杖を持つ水子地蔵は、賽の河原で苦しむ子供たちを救う地蔵菩薩をあらわしています。先ほども説明したように、親より先に亡くなった子供は三途の川を渡ることができません。子供は親の幸せを長いながら、河原で石を積み上げて塔を築こうとしますが、鬼が邪魔をしてなかなか完成させることができません。
地蔵菩薩はそんな子供を鬼から守り、石の塔を完成させて、成仏に導きます。また地蔵菩薩は、子供たちが成仏した後も安らかに眠れるよう、いつまでも守ってくれると言われています。錫杖を持った水子地蔵はそんな地蔵菩薩の姿を映しており、水子の冥福を祈り、守り続ける役割を果たしています。この姿の水子地蔵は水子寺などで多く見かけます。
合掌している・子供を抱いている水子地蔵
合掌している水子地蔵は慈母観音菩薩をあらわしています。慈母観音菩薩は亡くなったみず子たちの母親代わりを担い、水子たちに母のような慈悲をそそぐ菩薩です。一方、子供を抱いた水子地蔵は子安地蔵とも呼ばれ、子供の守護尊であるほか、子授けや安産祈願の菩薩として妊婦にも信仰されています。
慈母観音菩薩や子安地蔵は、幼くして亡くなった子供たちを、母親の代わりに慈しむ役割を担っています。錫杖と子供を抱えた姿の水子地蔵もあります。
閻魔大王の仮の姿?
日本の仏教においては、閻魔大王は地蔵菩薩の化身だとされています。閻魔大王が死後の人の魂を裁くのに対し、地蔵菩薩は現世の人々に寄り添い、その行動をつぶさに観察しています。よって、人は死後閻魔大王の裁判で嘘をついても、すぐに見破られてしまうというわけです。
また、生前に一度でも地蔵菩薩に手を合わせた人は、死後の閻魔大王の裁判で許され、極楽に行くことができると言われています。
中国における地蔵信仰
中国でも地蔵菩薩の信仰は盛んであり、日本と同じく閻魔大王と同一視されています。中国仏教では、地蔵菩薩は冥界をすべる王であるため、地蔵王菩薩とも呼ばれています。
六地蔵とは?
6体のお地蔵さまが並んでいる光景をよく目にしますが、こういったお地蔵さまは「六地蔵」と呼ばれます。6という数字は仏教の六道思想に基づいており、6体はそれぞれ檀陀地蔵・宝珠地蔵・宝印地蔵・持地地蔵・除蓋障地蔵・日光地蔵などと呼ばれます。諸説ありますが、それぞれ順番に地獄・餓鬼・畜生・修羅・人道・天道における菩薩の名前と言われます。
六地蔵は死者の冥福を祈って墓地に建立されることが多く、有名なものでは中尊寺金色堂の六地蔵が挙げられます。
赤いものを身に着けるのはなぜ?
お地蔵さまが赤い頭巾やよだれかけをつけている姿を見かけることも多いでしょう。赤は仏教において「清く」「正しい」「正直な色」とされており、魔よけの意味があります。お地蔵さまは子供守護者であるため、自分の子供が健康に育ちますようにという願いを込めて、親は赤色のものを奉納することが多いです。
頭巾やよだれかけといった、子供用のものを身に着けている理由も同様です。
心やさしいお地蔵さまにお参りしよう
お地蔵さまは知っていても、その正体やご利益を知らなかったという人も多いでしょう。お地蔵は人々を分け隔てなく救ってくださる慈悲深い仏尊です。今度からお地蔵さまを見かけたら、来世の幸福や家族の健康を願って手を合わせてみるのもよいでしょう。