【俳句作り】6月の季語にはどんなものがあるか?有名俳句もご紹介
公開日 : 2020/4/20
更新日 : 2020/9/9
俳句や俳諧などにおける季語は、日本の風土や文化などと関わりが深く、趣深いものとなっています。四季が比較的はっきりしている日本においては、季語も多種多様なものがあります。ここでは、6月の季語やそれを含む有名な俳句をご紹介します。
公開日 : 2020/4/20
更新日 : 2020/9/9
目次
そもそも季語とは?
季語は、俳句や俳諧などにおける季節を表わす言葉です。俳句では特に「季題」と呼ばれたりもします。日本の風土や人々の機微をよく表わす言葉となっています。 すでに平安時代の歌に一定の言葉で季節を表わすという表現がみられ、時代が下ることにその重要性が高まっていきました。
「季語」という言葉
「季語」という言葉を最初に使ったのは、明治から大正にかけて活躍した俳人・俳論家(俳諧の評論家)の大須賀乙字と言われています。大須賀乙字は東京帝国大学文学部国文科を卒業した後、東京音楽学校(東京藝術大学)で教鞭をとりました。 大須賀乙字が注目を集めたのは、1908年東京帝大在学中に発表した評論「俳句界の新傾向」でした。また1915年の若手俳人の句会での衝突事件、海紅堂事件でも知られています。1920年にインフルエンザのために40歳の若さで亡くなっています。
日本の6月はどんな季節か?
日本の6月は、春から夏に入っていく時期に当たります。地域によって差がありますが、1か月あるいは1か月半続く梅雨の期間に当たり、降水量が増加します。 関東においては田植えの時期であり、また麦の収穫期に当たりますので、農家にとっては多忙な月となります。下旬には、一年で最も昼が長くなる夏至を迎えます。 陰暦では「水無月」(みなづき)と呼ばれます。多くの説がありますが、一説には、水の月という意味で、田んぼに水を引く月であると解釈されます。
6月の花嫁
6月を意味するJune(ジューン)は、ローマ神話における結婚や家庭をつかさどる女神Juno(ジュノー)に由来しており、この月に結婚する花嫁はジューンブライドとして、幸せになるという言い伝えがあります。日本でも、この言い伝えは1950年代ごろより広まりました。
衣替え
6月は衣替えの季節に当たります。衣替えはもともと宮中の行事ですが、次第に民間にも広がっていきました。現在では6月1日、学校や会社などでは、制服が生地の薄い夏服へと変わります。また官庁などではクールビズとして、ネクタイなしで過ごすことも奨励されています。
父の日
毎年、6月の第3日曜日は、父の日とされています。父親に対して贈り物などをして感謝を示す日です。もともと1934年に制定されたアメリカの年中行事の一つでしたが、1950年ごろには日本にも伝わり、定着していきました。
6月の季語とは?
以下では、6月の季語についてどんなものがあるか具体的に見ていきましょう。著名な俳人の句についてもご紹介します。
自然
芒種(ぼうしゅ)は、二十四節気(1年を24等分したもの)の9番目で、稲や麦の種まきをする時期を指します。新暦では6月6日ごろに当たります。芒種を含む俳句としては、例えば、次のようなものがあります。 ごんごんと芒種の水を飲み干せり 夏井いつき 入梅(にゅうばい)は、梅雨入りを指します。新暦では6月11日ごろに当たります。入梅を含む句としては、次のようなものがあります。 入梅や蟹かけ歩く大座敷 小林一茶 夏至は、二十四節気の10番目で、毎年6月21日ごろに当たります。夏至を含む俳句としては、次のようなものがあります。 納骨の双膝をつく夏至の砂 鳥居美智子
人事
伊勢神宮では、神嘗祭など様々な行事で供えられる御料米のための田植が行われます。その儀式は、伊勢のお田植、あるいは御田祭と呼ばれ、笛や太鼓の演奏のなか、田植がなされます。お田植を含む句としては、例えば以下のものがあります。 恋人の乳守出来ぬ御田うヘ 井原西鶴 東京の日枝神社で行われる山王祭は、江戸三大祭の筆頭とされ、また京都の祇園祭、大阪の天満祭とともに日本の三大祭として親しまれています。山王祭を含む句としては、例えば以下のようなものがあります。 山王祭太鼓に湖は白みゆく 大矢東篁 富士山に登り、浅間神社(富士権現)に参拝することは、富士詣と呼ばれます。江戸時代には関東で富士講が流行し、陰暦の6月に多くの人が修験のいでたちで富士詣に出かけました。富士詣を含む句としては、例えば以下のものがあります。 富士詣一度せしといふ事の安堵かな 高濱虚子
動物
蛍は、夏の夜に腹部を発光させながら飛び交う昆虫です。世界には約4000種が生息しているとされますが、日本では約40種が確認されています。本州以南に生息するゲンジボタルが有名です。蛍について、芭蕉は多くの句を詠んでおり、例えば、以下のものがあります。 草の葉を落るより飛蛍哉 蝸牛(かたつむり)は、渦巻き状の殻、2本の触角を持つ、陸の巻貝の総称です。移動能力が低いため、各地に多種多様な固定種が進化し、生息しています。梅雨の時期に現われるというイメージが強い生物です。蝸牛を含む句としては、例えば以下のものがあります。 夕月や大肌ぬいでかたつむり 一茶 蚕蛾(さんが)は、幼虫の蚕が蛹となって繭を作り、やがて羽化して成虫となったものです。野生を失って完全に家畜化されており、ほぼ飛ぶことはできず、えさを食べることもできません。交尾の後、卵を産んで約10日で寿命を終えます。蚕蛾を含む句としては、例えば以下のものがあります。 微動しつつ二つの蚕蛾のまだ触れず 橋本多佳子
植物
紫陽花(あじさい)は、6月から7月かけて開花し、白や青、紫、赤の鮮やかな花を咲かせます。原種は日本のガクアジサイで、ヨーロッパで品種改良されたものはセイヨウアジサイと呼ばれます。紫陽花は多くの句に詠まれており、例えば以下のようなものがあります。 紫陽花やはなだにかはるきのふけふ 正岡子規 アマリリスは、初夏にユリに似た赤や白などの大きな花をつける多年草です。中南米が原種でヨーロッパで品種改良が進みました。日本には江戸時代に入ってきています。アマリリスを含む句としては、例えば以下のものがあります。 燭さはに聖母の花のアマリリス 水原秋櫻子 ガーベラは、ピンクや白、オレンジなど様々な色の大輪の花を咲かせる多年草です。南アフリカが原種で品種改良され、明治期に日本に入ってきました。花のもちがいいため、切り花や鉢植え用として用いられています。ガーベラを含む句としては、例えば以下のものがあります。 ガーベラに雨ひと粒ひと粒予告めく 寺田京子
季節を慈しむ
以上、6月の季語についてご紹介してきました。毎年めぐってくる季節も、自分のことや仕事のことなどに掛かりきりになって、ついつい見過ごしてしまいがちですね。そんなときは、視野を広げて移り行く季節を慈しむ心の余裕がほしいものです。
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