喪服が白だったのは本当?喪服の歴史と現代の白喪服について
公開日 : 2020/4/20
更新日 : 2020/9/9
みなさんは昔の喪服が白だったのはご存知ですか?現代では喪服の色は黒が主流となりますが、なぜ白から黒に変化したのでしょうか。今回は白い喪服の歴史や意味について説明します。また、現代の白い喪服や白を取り入れる際の男女別ポイントも見ていきましょう。
公開日 : 2020/4/20
更新日 : 2020/9/9
目次
白い喪服の歴史と意味について
昔は白い喪服が主流だったのはご存知でしょうか。しかし「なぜ今は黒なの?」と疑問に思いますよね。ここではどういった経過で白から黒の喪服になったのか、喪服の歴史について紹介していきます。
昔の喪服は白が定義
喪服は葬儀や法事など、弔事の席に着ていく服装です。今の時代では故人の親族だけではなく、一般の参列者も悲しみに寄り添うために黒の喪服を着用するのが一般的です。一方で、昔の喪服の色は白と定義されていたのです。
古来より白色は神の色として扱われてきました。昔は白の喪服だけではなく、赤ちゃんの白い産着や結婚式の白無垢など、白の衣装が用いられるシーンもありました。人生の始まりから終わりまで白が用いられていたのです。
白い喪服の歴史
日本で白喪服を着用していたのは千年以上の歴史があります。故人の親族だけではなく参列者も含め、皆が白い喪服を着用していました。平安時代後期では宮中の貴族は墨染めの喪服を着用すると喪葬礼で定められていたこともありましたが、一般には浸透しませんでした。
昔は白い布を藍に染めるのが大変だったというのも、白の喪服を着用していた理由としてあります。江戸時代では簡単に手に入る喪服として、白い喪服が庶民の間で着用されていました。
喪服が白から黒になったきっかけ
喪服が白から黒に変わったのは明治維新以降とされています。そのきっかけとなったのが、明治天皇の嫡母である英照皇太后の葬儀です。葬儀に参列した世界各国の要人たちの服装が黒だったのが喪服の色に大きな影響を与えたといいます。
欧化政策を進める明治政府が西洋にならい黒を喪の色とし、徐々に一般の人にも黒い喪服が浸透されました。また、第二次世界大戦では戦死者の葬儀がひんぱんに行われていましたが、白の喪服では汚れが目立ち管理が大変なことも理由のひとつとされます。
物資が乏しい時代であったため、白より黒が便利なことから黒喪服が一般市民に広がったのです。
白い喪服の意味
昔は白い布を藍に染めるのが大変だった事情もありますが、白い喪服を着る理由もきちんと存在します。大河ドラマや昔の漫画で白い喪服が登場するシーンを例として、意味をそれぞれ紹介していきましょう。
亡くなった方の白装束に合わせる意味
2014年に放送されたNHK連続テレビ小説の「花子とアン」で白喪服を着ていたシーンが話題となったのはご存知でしょうか。ヒロイン花子の子ども、歩が6歳という若さで亡くなったときの葬儀では、参列していた多くの女性たちが白い喪服を着ていました。
納棺した遺体には通常白装束と呼ばれる白い衣装を着せます。白い喪服を着るのが主流だった時代では白い喪服を着る理由として、亡くなった方と同じ色の着物を着るためでもありました。白い喪服を着ることは「あなたの死とともに私も死にました」という参列者の悲しみを表現しているともいえます。
また、これから旅立つ故人の不安を和らげる意味合いも含まれます。白喪服を着るのは、亡くなった方の気持ちに立ち、供養するためでもあるのです。
未亡人の「再婚はしない」という決意
大正時代の東京を舞台とした漫画「はいからさんが通る」で、主人公の紅緒がシベリアで戦死した婚約者、忍の葬儀に白喪服を着るシーンがあります。昔の女性は、婚礼の際に着た白無垢を残しておき、夫が亡くなった際に白喪服として袖を詰めて着用していました。
白喪服に込められた意味は「貞女(ていじょ)は両夫に見(まみ)えず」。つまり、白喪服を着用するのは、夫が亡くなっても他家には嫁がないとする女性の決心でもあるのです。
現代の白喪服について
明治維新以降から徐々に黒い喪服が一般市民に浸透されましたが、現代でも白い喪服を着用するシーンがあります。ここでは現代の白い喪服についてや、レンタル事情を紹介していきます。
格式の高い家では白の喪服を着用
格式の高い家の場合、現代でも白い喪服が着用されています。嫁ぎ先の敬意を表すためにも白い喪服を嫁入り道具として持っていく風習もあるのです。伝統を重んじる歌舞伎界においても、白い喪服を着用するシーンが見られます。
2012年に歌舞伎俳優の中村勘三郎さんが亡くなった際の葬儀で、妻の好江さんが白い喪服を着たのは過去に話題となりました。
喪主は白の喪服を着用する地域も
喪主が正喪服(せいもふく)として白の喪服を着用する地域もあります。その際、喪主の男性は白の裃(かみしも)および袴、妻は白の和装喪服を着用します。富山県、埼玉県の一部の地域では、和装の喪服として喪主や遺族が白い喪服を着用する風習が残っているのです。
白喪服のレンタルはできる?
白の喪服は貸衣装屋でレンタルできるのでしょうか。実は白喪服のレンタルは一部地域に限られているので、あまり一般的とはいえないでしょう。白い喪服は一部地域を除き、現代の葬儀で見かけることはほぼありません。
喪服で白を取り入れる場合の男女別ポイント
葬儀に参列する際は、シャツやネクタイ、帯締めの色など、喪服のマナーに迷うこともありますよね。喪服で白を取り入れる場合の男女別ポイントを見ていきましょう。
喪服には格がある
まず男女の喪服について紹介する前に、喪服の格について紹介しておきましょう。喪服には正喪服と準喪服、略喪服の格式が存在します。正喪服は喪主や遺族が着る喪服で、参列者は準喪服や略喪服を着用するのがマナーです。
喪服の黒も染め具合によって違いがあります。何度も染め直した深く濃い黒や、光沢のない漆黒に近い喪服ほど格式が高いです。格式も葬儀における立場や場面で使い分ける必要があります。
男性の喪服で白を取り入れる場合
男性の喪服で白を取り入れるのはどんな場合があるのでしょうか。ここでは喪服におけるワイシャツとネクタイの色について主に説明していきます。
男性は白いワイシャツを着用
男性の喪服では、ブロード素材で襟の形がレギュラーカラーの白シャツを選ぶのが一般的です。正喪服のモーニングコートや準喪服のブラックスーツ、略喪服のダークスーツなど、どの格式でも洋装は白のワイシャツを合わせると覚えておきましょう。
ただし、白だからといっても模様のある織り地や襟に模様があるデザインはマナー違反となるので注意が必要です。また、細かい点ではボタンの色やステッチの色も白で統一します。
特定の宗教では喪服に白ネクタイの場合も
キリスト教系の新興宗教や一部の神道系宗派では、黒ネクタイではなく白ネクタイを身に着ける場合もあります。しかし特定の宗教をもたない方や、旧来の仏教、神道などを信仰している場合は黒ネクタイをつけましょう。
男性用スーツでは格式を問わず、白いワイシャツ以外はすべて光沢や模様のない黒1色で統一するのがマナーです。
女性の喪服で白を取り入れる場合
スーツに合わせる女性用のブラウスは、男性とは着用する色が違うので注意が必要です。また、和装小物の色選びにもマナーがあるのでチェックしましょう。
女性は略喪服のみ白のブラウスもOK
女性の場合は喪服で白のブラウスを合わせてもよいのでしょうか。女性は正喪服と準喪服の場合、全身黒で統一します。そのため、ブラウスも同様に黒を選びましょう。
ただし、「平服でお越しください」と書かれたお別れ会の案内を受け取った場合は略喪服でいくのがマナーです。その場合は黒のブラウスのほかに、暗めの色や白のブラウスを着用するのもOKです。
和装の場合は?
着物のコーディネートにおいて重要といえるのが和装小物です。女性の着物では、半衿と足袋を白にする以外は帯揚げや帯締め、バッグや草履を黒の小物で統一しましょう。略式の色喪服を着る場合も同様に帯締めと帯揚げは黒にします。
もっとも、夏に喪服を着用する場合、見た目が暑そうに見えるからと、帯締めや帯揚げの色を白にする場合もあります。
白い喪服は現代でも名残がある
白の喪服は現代ではあまり見かけなくなりましたが、喪主が白い喪服を着用している地域もいまだあります。白い喪服はあまり一般的ではないため、着用するにしても家の伝統や故人との関係を考慮したうえで判断する必要があるでしょう。
ご相談・お問い合わせください