墓誌はかならず必要?役割・書き方から立てるときの注意点を解説

公開日 : 2020/2/10

更新日 : 2020/9/10

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宗派によって書き方の向きや内容が異なりますが、墓誌には「戒名」「俗名」「命日」「年齢」の4点が一般的に刻まれます。故人の名前だけでなく、一族の歴史を伝えるものとして大切な意味をもつ墓誌。墓誌の書き方や彫り方に迷っているなら、今回の内容をぜひ参考にしてください。

公開日 : 2020/2/10

更新日 : 2020/9/10

目次

墓誌とはどのようなもの?

お墓参りに行ったときに墓石の横に置かれている墓誌を見かけた経験がある人も多いでしょう。墓誌には、そのお墓に埋められている故人の名前や経歴などが書かれています。つまり、墓誌とは「その墓に入った人の記録版」なのです。 そんな墓誌について、まずは意味や役割、書くタイミングなどについてみていきましょう。

墓誌とは?

墓誌は、香炉や塔婆立てなどの墓所所在品のひとつで、板のような石です。そこには、ご先祖様の名前や命日などが書かれています。宗派や土地の慣習によって「墓標」「霊標」「法名碑」など呼び方は異なりますが、基本的にすべて墓誌のことを指します。 設置する場所に決まりはありませんが、スペースの左右開いている空間に置かれているケースが多いです。

墓誌の意味

一般的にそのお墓に埋められている人の生前の名前や戒名、没年月日が記されている墓誌。ですが、墓誌はお墓を作るにあたって、かならず必要というわけではありません。 先祖からのお墓であれば、直接墓石に戒名や没年月日を書いているケースもあります。 つまり、考えようによっては「墓誌=1つの家系図」なのです。 ただ、亡くなる人が増えて書くスペースが無くなった場合、墓誌に「○○家先祖代々之霊位」と書くこともあります。ほかにも、「墓銘碑」として故人の略歴や座右の銘や辞世の句など短い文を書く人もいます。

墓誌の役割

前述したとおり、墓誌の役割は埋蔵されている人が誰なのかを示すことです。墓誌には、どの時代の誰が納骨されたかという歴史、つまり戒名や生前の名前、命日が記されています。そのため、自分の家系にどんな名前の先祖がどの時代にいたのかが一目でわかるようになっています。 ただ、日本ではもともと埋葬者の名前や命日は、寺院などが過去帳にて記帳しています。寺院の記載内容と墓誌の重複も多く、そのため墓誌を建てずともかまわないと考える人もいます。 ですが、核家族化が進んだ近年では、先祖の話をする機会も少なくなってきました。お墓参りのときにふと自分の家のルーツを知り、同時に後世に自分を伝える証として、墓誌の需要は今後も増えていくでしょう。

墓誌の由来

中国が発祥の墓誌は漢の時代にはすでにあったとされていて、当時棺とともに地下に埋めてしまう物でした。そのため、初めは姓名や歴官、父祖姻戚などを書いただけのそれほど大きいサイズではなかったようです。やがて時代が進み、現在の地表に立てる墓誌の形を取るようになりました。 ちなみに、墓碑に故人の経歴や言葉、座右の銘なども記した「墓名碑」を英語ではエピタフといいます。この語源は、「墓の上に」を意味するギリシャ語「エピタピオス」からといわれています。 歴史は古い墓誌ですが、日本で現在の墓誌が普及し始めたのは、ここ30年前ほどです。かつての日本は一代で1つのお墓が多く、故人の戒名を墓石に刻むだけでよかったため、何人もの名前を書くための墓誌は需要がありませんでした。 しかし、1900年前後から法律の改定や墓地の数不足によって、一代に限らず先祖代々を1つのお墓で祀ることが多くなります。墓石に刻めるのはおおよそ8名~12名分であり、墓石だけだと埋葬者の名前を刻むのには限界がでていました。 そんなとき、家墓に入る多くの埋没者の名前を刻む記録版として日本で普及したのが「墓誌」なのです。

墓誌は誰が決める?

基本的に、お墓の決定権は墓地の名義人、つまり祭祀承継者にあります。このことは、墓誌に関する決定権も同様です。 お墓の承継者は、これまでの慣習として長男や長女がお墓を継ぐという考え方が一般的でした。ですが、実は法律には「誰でなくてはいけない」という決まりはありません。法律上は亡くなった人の指定や家族の慣習、家庭裁判所の判断で選ばれた人が継承者となるとしています。したがって、次男や次女、姪や甥などでも承継することも可能です。 また、決定権以外の、たとえば支払いの費用に関して兄弟や親類に助けてもらうのはかまいません。墓誌の負担を分担する場合は、将来的に墓誌に書かれる人同士で分けるのがおすすめです。

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墓誌はいつ書く?

墓誌を建てる時期や書く期限は、とくに決まっていません。名前を書かなければうまく成仏できないという話でもないので、墓誌への彫刻は残された家族の心の準備次第でOKです。 ただ、一般的には亡くなった人の遺骨をお墓に入れる「納骨式」までに終わらせておくのが良いとされています。なぜなら、墓誌への彫刻はそのお墓に誰の遺骨が埋められているのかを伝えるものだからです。 ですが、 ・墓地探しから始めている ・気持ちが整理できていない という人は、慌てて準備しなくてもかまいません。 納骨は基本的にいつおこなっても良いとされており、これは墓誌の手配も同様です。心が落ち着いてからでかまわないので、安心してくださいね。

墓誌は誰が彫る?

実際には、どんな人が彫るのでしょう。墓誌は、「建てなければ供養にならない」というものではありません。第一、墓誌がなくても、墓石にはおおよそ8~12名分の戒名を彫れます。 にもかかわらず墓誌を彫る人は、「墓石にもう書くところがない」「お墓のデザインを崩したくない」「開眼供養が面倒くさい」という3パターンに分かれます。 とくに、お墓の中心的存在である「竿石」に書く場合、石材屋が文字を彫る前に「閉眼供養」でいったん故人の魂を抜きます。彫り終わった後、「開眼供養」で再度魂を入れ直す必要があります。この儀式はお寺から僧侶を呼んで読経してもらうため、お金も時間もかかります。 墓石に文字を彫るたびに、金銭的・時間的負担がかかるのが嫌な人は、魂抜きをしなくて良い墓誌を石材屋に依頼して建ててしまうほうが良いでしょう。

墓誌の書き方は?

通常故人の名前や経歴を伝える記録版である墓誌は、縦書きで右から左に書いていくのが一般的です。ですが、どの場合でも同様というわけではなく、宗派によって書き方が異なります。それぞれくわしくみておきましょう。

墓誌は縦書き?横書き?

多くの仏教・神道では、縦書きで墓誌に右から書いていきます。仏教では位牌に書かれている字体が基準となるため、文字を彫る前に石材店のスタッフに位牌の字体をみてもらいましょう。 一方、キリスト教では、書体についての決まりはとくになく、楷書体や隷書体などで左から右へ横書きに書いていきます。そのため、和型の墓誌よりも横書きに応じたデザインを選ぶ必要があります。

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墓誌に彫る内容

それでは、墓誌に彫刻するとき、どのような内容を書けば良いのでしょうか。墓誌に書く内容は仏教・神道の場合とキリスト教の場合、無宗教の場合と大きく3つに分けられます。それぞれ確認していきましょう。

仏教や神道の場合

仏教では、以下の4点の内容を墓誌に書きます。 ・戒名 ・生前の名前(俗名) ・没年月日(命日) ・年齢 墓誌に書くときは、仏壇の位牌などに使われている文字のフォントや年齢(数え方)に合わせましょう。戒名とは、寺院から授かった名前のことですが、宗派によっては戒名の呼び方も異なります。 たとえば、浄土真宗なら墓誌を「法名碑」、戒名を「法名」と呼び、日蓮宗では戒名を「法号」といいます。 神道では、「墓誌」の代わりに「霊標」と呼ばれる板石に霊号を書きます。 仏教と異なり神道の霊標には、 ・生前の名前の後ろに諡(おくりな)を追加したもの ・帰幽日(命日) ・年齢 3点の内容が多く見られます。

キリスト教の場合

お墓・墓誌について、「供養」という仏教的感覚とは違って「感謝」の意味をあらわすという意味が強いキリスト教。 基本的には、 ・洗礼名(ホーリーネーム) ・俗名 ・生まれた日~亡くなった日 ・召天○○歳 の4点が刻まれます。 注意すべきところとしては、没年月日を西暦で書く必要があるという点です。洋型墓石や墓誌には十字架や聖書の一説、好きな言葉などを刻む人が多いこともクリスチャンの特徴です。 また、教義の違いで「召天」や「帰天」を使うこともあるので、彫刻前に神父や牧師にくわしく聞いておきましょう。

無宗教の場合

無宗教であれば、戒名を授からないため、故人の名前と没年月日を書くことになります。霊園のルールの範囲内であれば、自由に文字などを彫ることが可能です。 また、永代供養墓などの合祀墓や何人もの個人が祀られているところでは、大きな墓誌に亡くなった順に書き、その墓誌が墓石の代わりにしているケースもあります。

墓誌に書く銘文はどんなものが良い?

墓誌の内容に決められたルールはありません。墓誌を建てる人の好みによって、オリジナルを出すことができるのも墓誌の特徴です。 オリジナルを出す墓誌の例として、「銘文」があります。現代でも臨書されていて有名なものは、たとえば随時代の「美人薫氏墓誌銘」、北魏時代の「司馬顕姿墓誌銘」などがあります。 「美人薫氏墓誌銘」は、後宮の「美人」という女官を務め、19歳の若さで亡くなった薫氏の墓誌銘です。また、「司馬顕姿墓誌銘」は北魏王朝第7代皇帝だった宣武帝の家来の司馬顕姿の墓誌銘で、厳格な書風から重みを感じさせる作品です。

墓誌に書く順番は?一般的な2つのパターン

墓誌に書く順番に決まりはありません。そのため順番は地域ごとの慣習や寺院の考え方によります。ここからは、墓誌に名前などを書く一般的な順番についてみていきましょう。

亡くなった順番に書く

もっともシンプルで間違いが起こりにくいのは、亡くなった順番に書くという方法です。順番に左上から書いていくのでバランスがとりやすく、きれいに仕上がります。 ただし、亡くなる順番は必ずしも年齢順とは限りません。祖母の前に孫の名前があると違和感を覚えるという人もいるでしょう。単純に亡くなった順番で書くこの方法では、立場がわからなくなるというデメリットがあります。 そこで、家族内での関係性を示すため、親類の系統別に書く人もいます。たとえば、1段目には長男の系統を、2段目には次男の系統を、という風に分けて書くのです。 「次男まで書くなんて」と考える人もいるかもしれませんが、お墓に入る範囲も法的には明確に決まっていません。そのため、墓主と墓地管理者の承諾があれば兄弟で同じお墓に入るなど、ある程度の融通を利かせることができます。

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夫婦並べて書く

夫婦のつながりを重視したい場合は、夫婦連名で書く方法もあります。 この場合、 ・次に書く予定である部分を空けておく ・赤い筆で存命中の人の名前を書いておく ことで、スペースが確保されます。 人はかならず死を迎えるので、スペースを空けていたとしてもいつかは埋まります。また、夫婦並べて書いておけば、後世の人が見たときに一族の位置関係が分かりやすいというメリットがあります。 ただ、最近は未婚率が増加しており、独身で人生を過ごす人も多くなっています。夫婦連名の墓誌のなかでポツンと1人だけの名前では悪目立ちすると嫌がる人も多いでしょう。

墓誌をかいてもらうのにかかるお金とは?

墓誌を書いてもらうとき、費用はいくらかかるのでしょう。 墓誌の価格は石材の大きさやデザインなどによって大きく変化します。墓誌の基本サイズは高さ55㎝、横幅70㎝、厚み10cmほど。ですが、墓誌の形に決まりはありません。厚みがぶ厚く大きくなるほど高く、薄くなるほど安く建てることができるでしょう。

墓誌を単体で立てる場合

一般的に墓誌を立てるときに必要な経費は、「墓誌本体代+設置費+彫刻代」です。墓誌単体なら5~20万円程度が必要となります。石の種類は現在では国産だけでなく、中国産やインド産など輸入石材も増えています。 たとえば、中国産石材の相場は5~10万円程度ですが、国産石種や黒御影石は高く、30~35万円ほどが相場となっています。高価な石材ほど光沢があり、堅牢な傾向があるので、予算や石材店と相談しながら慎重に選びましょう。 また、彫刻代の一般的な相場は、1人あたり3~5万円です。文字の大きさや特殊な文字などを依頼する場合は、追加料金がかかることもあります。さらに、納骨法要をおこなう場合は1~3万円かかります。

墓誌をお墓とのセットで立てる場合

お墓(墓石そのもの)の価格の目安としては、一般的に70~200万円が相場となっています。墓誌とセットとなれば、中国などの安い外国産の石材で5~10万円、国産など高級石材なら30~35万円と彫刻費がプラスされます。 お墓の価格は墓地の場所や広さ、石材の種類やデザインなどで価格は大きく変化します。さらに、お墓は墓石だけを買えば良いのではなく、設置費用や基礎工事費用、タイ新加工費用や永代使用料などさまざまな費用が必要となるので注意しましょう。

墓誌に関する注意点

一族の歴史を伝える半永久的な記録版といえる墓誌ですが、立てるうえでの注意点があります。以下に2つの注意点を紹介するので、参考にしてください。

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墓誌を書くときの注意点

墓誌や霊標に追加彫刻を依頼する場合は、できるだけ現地での作業をお願いしましょう。お墓の形状や場所の事情で向上に持ち帰らなければならない場合は仕方ありませんが、移動込みでは料金が大きく変わることがあります。 墓石を動かさずに現地にて作業をしてもらえば、墓誌に書く前に文字の確認できるだけでなく、費用もおさえられます。

新しく墓誌を立てるときの注意点

墓誌を新しく立てるときは、宗教ごとの違いについて注意しましょう。例えば禅宗なら「墓誌」ですが、浄土真宗なら「法名碑(法名版)」。また、神道なら「霊標」、キリスト教の場合は和型の墓誌はつくらず、横書きに書いていきます。 先祖代々の家柄を伝える大切な墓誌なので、家はどの宗教なのかあらためて確認することが大事です。

墓誌についてのまとめ

墓誌には、戒名・俗名・命日・年齢の4点が一般的に刻まれます。ただ、宗派によって書き方の向きや内容が違ってくる場合もあります。故人の名前を書くだけでなく、一族の歴史を伝えるものとして大切な意味をもつ墓誌。墓誌の書き方や彫り方に迷っているなら、今回の内容をぜひ参考にしてくださいね。