「お墓はいらない」という方へ、新しい供養と墓じまいの方法をご紹介
公開日 : 2021/3/19
更新日 : 2021/3/19
ライフスタイルや考え方の変化により、お墓がいらないという方が増えています。そうしたニーズを受け、広まりつつある新しい供養法にはどのようなものがあり、費用はどれくらいかかるのでしょうか。お墓がいらないという方のために、新しい供養法や墓じまいの方法をご紹介します。
公開日 : 2021/3/19
更新日 : 2021/3/19
目次
「お墓はいらない」その理由とは?
自分の住む土地に霊園や墓地に墓石を建立してお骨を納め、それを次世代の子孫に受け継いでいくというのが伝統的な日本の埋葬のあり方です。
しかし、現在においては「お墓(墓石)はいらない」と考える人が増えています。その背景には、ライフスタイルや思想の変化があります。まずは「お墓がいらない」理由について考えてみましょう。
非婚化、少子化
昔は先祖代々受け継がれてきた土地に住み、家やお墓を守っていくという生き方が一般的でした。しかし現在では非婚化や少子化が進み、跡取りがいないという問題が顕在化しています。また、お墓を継ぐ家族がいるとしても、進学や転勤で故郷を離れることも珍しくありません。
そうした社会の変化により、お墓を維持することが困難な状況です。自分の代ではなんとかお墓の管理ができても、子供には負担をかけたくないという理由で墓じまいを考える方も増えています。
費用の問題
お墓を一基建てる際に必要な費用は地域や宗派、墓石の質や大きさなどにより変わりますが、100~350万円が相場です。また、民間霊園にお墓を建てた場合は、年間1~2万円の管理料がかかる場合もあります。
このようにお墓を建て、維持していくためにはある程度まとまった費用がかかり、それが負担に感じるためにお墓はいらないと考える人も少なくありません。
信仰や考え方の変化
現代日本においては宗教離れが進んでおり、特定の宗教を信じていないという人も増えています。それに伴い、死生観も多種多様化しています。
霊魂の存在を信じない、もしくは霊魂はお墓に宿らない、亡くなった人はいつでもそばにいるといった思想を持つ人にとっては、お墓は意味のないものになってしまうでしょう。
お墓を持たない場合の供養法
お墓がいらない理由は、上記のようにさまざまなものがあります。同じようにお墓がいらないという人でも、供養はされたい・本当はお墓はほしいけど費用や手間がかかるのが困る・供養自体がいらないなど、人によって考え方は異なります。
現代では、そうした多種多様なニーズにこたえられるような埋葬法、供養法が存在しています。その方法とそれぞれの特徴についてご紹介します。
永代供養墓
永代供養墓(えいたいくようぼ)では、お寺や霊園の管理者にお墓の管理を任せることができます。お墓を継ぐ人がいない、お墓が遠方にあるという場合に適しています。
遺骨を埋葬する方法としては、複数人のお骨を一緒に収める合祀墓や、納骨堂といった形式があります。お寺や霊園によって費用や埋葬の方法、法要の頻度などが異なりますので、事前に確認しておきましょう。
本山納骨
本山納骨は各仏教宗派の本山(開祖の廟所がある場所)に遺骨を埋葬する方法です。一種の永代供養墓ですが、本山に埋葬されるということで、特に信心深い人に望まれる方法です。寺院の運営にも信頼がおけ、安心してお骨を預けることができます。現在では墓じまい後の改葬先として選ばれるケースも見られます。
本山ということでその宗派でないと納骨できないと考えられがちですが、実際は宗旨や宗派に関わらず受け入れてもらえることが多いです。お骨は分骨して一部を納めるか、もしくは全骨を納めます(全骨は受け入れていない本山もあります)。
本山納骨で有名なのは浄土真宗ですが、他の宗派でも本山納骨は行われています。しかしながら、全ての本山で納骨を受け入れているわけではなく、条件もさまざまです。詳細については各本山に事前に問い合わせましょう。
樹木葬
樹木葬は墓地に遺骨を埋葬し、墓石の代わりに樹木を植える供養法です。明るい雰囲気の公園や花壇のような場所が多く、自然の中で花や緑に包まれて眠れるという点で人気が高まっています。
永代供養墓と同じく埋葬法にはさまざまな種類があり、場合によっては複数の遺骨が一緒に埋葬されたり、土に還ったりするケースもあります。そうした場合お骨を再び引き取ることはできませんので注意が必要です。
散骨
火葬した遺骨を粉状にして撒く方法です。山林や海など、思い出の場所や好きな場所に散骨を行うほか、ヘリコプターやセスナ機などで上空から海に遺骨を撒く「空中散骨」や、遺骨をカプセルに入れてロケットや気球で成層圏まで飛ばし、散骨する「宇宙散骨」など、さまざまな方法から選ぶことができます。
好きな場所に埋葬され自然に還ることができる、お墓がないために管理の手間がかからないという点が大きなメリットです。しかし、方法によってはトラブルになることも。例えば船上から海へ散骨する場合、予定日に天候が悪く船が出せないということもあります。延期となると親族が揃って埋葬に参加できない恐れもあります。
また、許可を得ず山林に散骨することで、山林の所有者である個人や国とトラブルになることもあります。散骨を選ぶ際には信頼できる業者に依頼し、方法については慎重に選択、検討するようにしましょう。
自宅で保管
墓地として認められていない土地に遺骨を埋葬するのは法律違反ですが、期限なく自宅で保管することは問題ありません。最近では手元供養といい、仏壇や小さな祭壇のようなものをしつらえ、そこに遺骨を安置する供養法をとる人もいます。
手元供養にはこのように自宅で保管するほか、遺灰をペンダントに入れる、ダイヤモンドに加工するなどして持ち歩くことも含まれます。いつでも大切な人と一緒にいられるという安心感を得られる点が手元供養のメリットです。
それぞれの供養法の相場
お墓がいらないと考える理由の1つに、高額な費用がかかるという点があります。それでは、伝統的な埋葬法で墓石を建てる場合と、上記のような方法を取る場合ではどの程度費用に違いがあるのでしょうか。それぞれの費用相場をまとめると、以下のようになります。
埋葬法、供養法 | 埋葬にかかる費用相場 |
墓石を建てる | 100~350万円 |
永代供養墓 | 50~80万円 |
本山納骨 |
5~30万円 |
樹木葬 | 10~80万円 |
散骨(海洋散骨) | 5~30万円 |
散骨(山林散骨) | 5~10万円 |
散骨(空中散骨) | 20~50万円 |
散骨(宇宙散骨) | 50~300万円 |
手元供養(骨壺を自宅に安置) |
骨壺代のみ |
手元供養 (アクセサリーに入れて持ち運ぶ) |
1~3万円 |
手元供養 (遺骨をダイヤモンドに加工) |
40~200万円 |
埋葬法によっては、墓石を建立する以上に費用がかかるものもあります。また、散骨は遺骨を乾燥、粉砕する費用が別途1~5万円必要になるなど、一般的な埋葬ではかからない費用がかかる場合もあります。上記のような埋葬法を検討する際には、費用やその内訳を入念に確認するようにしましょう。
お墓を用意しないことのメリット
上記のような方法を選び、お墓を持たないことでどのようなメリットがあるのか、詳しくご紹介します。
お墓の管理が不要
先ほどご紹介した通り、お墓がいらない理由の1つに維持管理の手間がかかるという点があります。しかし、永代供養墓や納骨堂では管理者がお墓を管理してくれます。また、散骨や手元供養はお墓を持たないため、管理自体が必要ありません。
少子化・高齢化・進学・就職などで生まれた土地を離れることが増えている現代日本において、お墓の管理は昔より大きな負担となります。お墓を持たない埋葬法、供養法によってその負担をなくすことが可能です。
費用を安く抑えられる
先ほどご紹介した通り、墓石を持たない埋葬法、供養法の多くは墓石を建立するより費用を抑えることができます。方法にもよりますが、特に骨壺を手元に安置する手元供養では、費用は骨壺代しかかからず、費用の負担は非常に小さくなります。
しかし、方法によっては費用が高くなってしまうこともあります。例えば散骨は骨を乾燥、粉砕する費用、船や気球のチャーター代、現地まで行く旅費などさまざまな費用がかかり、思ったより高くなってしまうケースが多いため注意が必要です。
故人の希望を叶えられる
お骨はお墓に埋葬するのが当然という昔ながらの考え方とは異なり、お墓に入りたくないと望む人も増えています。先述の通り現代では様々な埋葬法があり、その中から好きな埋葬法を選ぶことができます。
思い出の場所に埋葬されたい、1人は寂しいので他の人と一緒に眠れる合祀が良いなど、希望は人によってさまざまです。故人様の希望通りに埋葬を行うことで、故人様を亡くした悲しみを和らげることもできるでしょう。
宗教やしきたりにこだわらない埋葬が可能
最初にご紹介した通り、現在では無宗教の人が増えています。伝統的なお墓はどうしても宗教と結び付くものですが、新しい供養法は宗教やしきたりに縛られないものが多く、自分らしい形での埋葬が可能です。
お墓を用意しないことのデメリット
お墓を持たない選択にはメリットがある反面、デメリットもあります。メリットとデメリットを照らし合わせて、お墓を持つかどうか入念に検討するようにしましょう。
親族からの理解がえにくい
お墓をいらないと考える人は増えてはいるものの、やはり埋葬場所として、またご先祖様を祀る場所としてお墓はあって当然であると考える人も数多くいます。特に年配の方にとっては、お墓を持たない場合の供養法が受け入れられないということもあるかもしれません。
周囲の親戚に理解を得ないまま、お墓以外の方法で埋葬してしまうと、トラブルを招いてしまうこともあります。
お参りの場所が分かりづらい
お墓は単にお骨を埋葬する場所というものではありません。亡くなった方と会い、対話する場所、ご先祖様への感謝や仏の教えを学ぶ場所でもあります。お墓に向かって手を合わせ、仏様やご先祖様、故人様の存在を感じることで、自分自身の心と真摯に向き合うことができます。
お墓がないとどこに手を合わせれば良いか分からず、お参りしても気持ちが落ち着かないということもあるかもしれません。
遺骨を取り出すことができないケースがある
先ほどご紹介した埋葬法、供養法では複数人の遺骨を合同で埋葬するケースがあります。その場合、やはりお墓を建てて個別に遺骨を埋葬したいと思っても、もう遺骨を取り出すことはできません。散骨の場合も同様に、1度撒いたお骨を回収することはできません。
そうした方法を選ぶ場合は、あらかじめ分骨を行い、手元にお骨の一部を保管しておくのもいいでしょう。後にやはりお墓を建てたいと思った際には、保管していたお骨を埋葬すれば良いのです。
最終的に子孫に負担がかかる場合がある
お墓を持たない埋葬法、供養法はお墓の管理の手間を減らし、子孫に負担がかからないというメリットがあります。しかし、方法やその後の変化によっては、かえって負担をかけてしまう場合があります。
例えば、やはりお墓が必要という話になった場合、お墓を建てるのは子孫です。お墓を建てるには手間も費用もかかり、大きな負担になります。また、手元供養を選んだ場合、供養を行っていた人の死後、そのお骨をどう取り扱えば良いかで残された人を悩ませてしまうこともあります。そうした先のことも考えたうえでベストな方法を選びましょう。
今あるお墓を撤去する「墓じまい」の方法
お墓をすでに所持しているものの、お墓を持たない選択をした場合は、今あるお墓を撤去する「墓じまい」を行う必要があります。墓じまいは単にお墓を片付ければ良いのではなく、関係者への理解を得たり、法要を行ったりといったさまざまな手続きが必要です。手順をしっかり把握して、気持ち良く墓じまいができるようにしましょう。
関係者に連絡
墓じまいをする際には、まず現在のお墓に関わる人や施設に連絡、相談をすることから始めましょう。連絡すべき相手は以下の通りです。
親戚
墓じまいをするとなると伝統的なお墓の存在を重んじる親族から反対されることがあります。前もって相談し、なぜ墓じまいをしたいのか、現在お墓に納めているお骨はどうするのかをきちんと説明し、理解を得られるようにしましょう。
それに加え、僧侶に相談して閉眼法要の日にちを決めた後、参列のお願いをするための連絡も必要です。
墓地の管理者
今あるお墓の墓地の管理者に墓じまいをしたい旨を伝え、必要な手続きを教えてもらいます。菩提寺内の墓地に弔っている場合は離檀をしなければならない場合もありますので、事情や理由を説明したうえで、離檀に必要な手続きを取りましょう。
石材店
墓じまいを行う際には、墓石を撤去して墓地をきれいに片づけなくてはなりません。墓石の撤去には石材店の工事が必要になりますので、前もって依頼しておきます。石材店が決まっている墓地や霊園もありますので、管理者に確認しましょう。
閉眼供養
解体工事の前には僧侶に依頼して閉眼供養を行います。これはお墓に宿った仏様の霊を抜くための儀式で、お性根抜き、御魂抜きともいいます。
浄土真宗の場合はお墓に霊が宿っているという考え方をせず、長年お参りをしていたお墓への感謝の儀式ととして「遷仏法要」を行います。いずれにしても、一般的な法要と同じく、僧侶に渡すお布施や、状況によってはお車代や御膳料が必要です。
遺骨を取り出す
閉眼供養の際もしくは解体工事の時に埋葬した遺骨を取り出します。自分で取り出すことも不可能ではありませんが、墓石が重かったり扱い方が分からなかったりすることも多いため、石材店に頼んだ方が良いでしょう。
墓域を更地に戻す
閉眼供養が終わり、遺骨を取り出したら墓地を更地に戻します。石材店が墓石を取り外し、墓地を更地にして整地します。作業が終了したらその旨を管理者に連絡して墓じまいは完了です。
まとめ
ライフスタイル・思想の変化・費用や手間の軽減のため、お墓はいらないと考える方が増えています。現在では子子孫孫に渡る供養が必要ないものや墓標が必要ないものなど、さまざまな形の埋葬法、供養法がありますので、伝統的な墓石にこだわり過ぎる必要はありません。
しかし、伝統的なお墓にはやはり意味があります。お墓は単なる埋葬場所ではなく、ご先祖様や故人様と再会する場であり、感謝の気持ちを仲立ちに仏の教えを学ぶ大切な場所でもあります。
大切なのは故人様にとって、また自分にとって理想的な埋葬法や供養法は何かをさまざまな視点から考えることです。単に費用が安いから、手間がかからないからという理由で選んでしまうと、後悔やトラブルにつながる恐れもあります。
伝統的な墓石に限らない埋葬法や供養法といった選択肢が増えているからこそ、改めてお墓とは何か、供養とは何かを考える必要があります。その上で、最適な方法を選びましょう。
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