韓国のお墓事情はどのようなもの?日本とは大きく違うの?詳しく解説
公開日 : 2020/7/28
更新日 : 2020/9/10
韓国のお墓は近年で大きく事情が変わってきています。土の中に遺体を埋める土葬が主流でしたが、土地不足や様々な理由により、火葬の後にロッカー式の納骨堂に収める埋葬方法へ変わってきていますが、日本とは違いがあります。お隣の国、韓国のお墓事情を詳しく解説していきます。
公開日 : 2020/7/28
更新日 : 2020/9/10
目次
韓国のお墓
韓国では、お墓は土饅頭(つちまんんじゅう)と言われる丸い盛り上がった土の形をしているお墓が一般的でした。韓国の中心部では見られませんが、郊外へ行くと、土が盛られている山脈の景色を見ることができます。
近年、埋葬方法は火葬をしてからロッカー式や霊園の納骨堂へ遺骨を収めるというお墓スタイルが増えてきている傾向です。また土葬がまだまだ主流という考えには理由があります。詳しく見ていきましょう。
昔から続く土葬が主流だった
韓国では朝鮮王朝の時代に儒教(じゅきょう)と呼ばれる思想が入ってきてから、それまでの火葬が少なからず埋葬方法として行われていたのですが、遺体を焼かずに土を掘ったお墓に埋める土葬(どそう)が主流になりました。実に500年ほど土葬の風習が続いたのです。
韓国は高句麗・白済・新羅時代(372年から676年)に中国から仏教が伝わり、仏教の教えから火葬が主流でした。貴族や僧侶、王族を中心とした火葬という埋葬方法の記録が残っています。
しかし、昔から続いた土葬の風習は土地が不足してくるという問題や、お墓がある山の手入れを一族で行う維持管理の大変さという事もあって、徐々に変化していきました。
お墓は山ひとつを所有する?
韓国のお墓は、山を購入して土葬されたお墓に埋葬するというのが一般的でした。韓国の全土は日本の北海道ほどの広さのため、徐々にお墓を建てるための山が不足して、土葬をする土地が少なくなるということは火葬が増えるきっかけともなりました。
しかし、土葬は禁止という法律は無いため、郊外では土葬の風習がある地域が存在しています。山に先祖代々より土葬の風習がある地域では、秋夕(チュソク)という旧盆にお墓まいりをします。雑草で覆われた広大なお墓を一族総出でポルチョと呼ばれる草刈りをして、綺麗にして先祖にお参りをします。
土葬は儒教(じゅきょう)からの習慣
儒教とは、紀元前の中国による孔子(こうし)の思想を死後に弟子たちが深めていった学問です。2000年以上に渡り、東アジアでは影響力が根強く残っている教えです。埋葬方法においてはその思想の中で、両親を火葬することは親不孝と考えられています。
韓国での土葬という埋葬文化は、遺体を毀損(きそん)しては禁忌とする儒教の思想と、風水地理の考えと、「孝」という思想がおり混ざったものです。風水では吉となる場所を探して墓を建て、「孝」を行うことにより子孫繁栄とされてきました。
1990年代後半から火葬が増加
それでも、最近までは土葬が主流だった韓国のお墓の考え方も1990年代の後半から火葬が増えていきました。また2000年には「葬事等に関する法律」が見直された事もあり、国や自治体も積極的に火葬や納骨を定着させるべく推奨されるようになりました。
韓国では2000年以降から、火葬場や納骨堂の増加により自然が破壊されてしまうという事態になり、2009年に樹木葬などの自然葬制度を盛り込まれた法律が新たに改正されました。
ロッカー式のお墓が主流に
韓国のお墓は、土地の不足と昔からのお墓を建てた山の維持管理の大変さから、火葬後に納骨堂へ収める方法へと大きく変わってきています。また、2000年には「葬事等に関する法律」が見直された事もあり、国と自治体による火葬の普及も積極的に行われることになりました。
韓国のロッカー式納骨堂とは
ロッカー式納骨堂とは、ロッカールームのように扉がついたお壇が同じ大きさの扉がついて、並んだスタイルの納骨堂です。購入したスペースにより、下の段だと腰を曲げて屈んだり、上の段だと場合によっては踏み台に上がってお参りをしたりと、メリットとデメリットがあるのが特徴です。
韓国の納骨堂は、日本とは違い扉の部分が透けて中が見える構造になっているようです。また仏壇ではない納骨堂が多いため、骨壷が収納スペースに置かれ故人の写真が飾られていることが一般的です。また、デザインも豊富にあり、ロッカー式と言ってもシックな色合いから重厚感のあるものまで選ぶことができるほど多種多様なスタイルは日本と変わりません。
納骨堂の建物には家族がお参りができるスペースがあり、故人の写真をモニターに映してお参りをします。最初に合掌して、そして正座をして身をひれ伏します。腕を頭の上に伸ばして手のひらを上に向けます。この動作を数回と繰り返すお辞儀(チョル)を家族で行います。
このように参拝する人数よりも広いスペースが必要になります。また、韓国の納骨堂は公園などが隣接されていることが多く、駐車場も広く完備されています。
火葬後に納骨堂へ
韓国では、故人が最後に過ごした病院の斎場を利用することが一般的です。韓国は病院の敷地内で葬儀を行うことが多く、訃報を受けて駆けつける先も病院です。しかし、郊外では自宅で葬儀を行う方も少なくありません。伝統のしきたりや風習がある地域も存在するようです。
病院から火葬許可書などの書類を受け取ると、最寄りの火葬場に行きます。2時間から3時間ほどで火葬が終了して、骨上げなどはせずに係りのスタッフにより骨壷に遺骨が収められます。そのまま納骨堂へ移動して納骨されます。
樹木葬という自然と一緒に埋葬
樹木葬とは、許可を得た墓地などの土地に、墓石の代わりに樹木を植えて、そのたもとに遺骨を埋葬する方法です。個人から合葬までさまざまな種類があり、また納骨方法も散骨して土に還す事もできるので、選ぶときにも家族で話し合って決める必要があります。
韓国では樹木葬での納骨も増えてきています。2009年に樹木葬などの自然葬制度を盛り込まれた法律により、国が樹木葬を推奨することにより注目を集めました。国有林の中に国営の樹木葬墓地もあり、他の外国では樹木葬は国からの推奨されている事がないため、韓国は珍しいのかもしれません。
御影石の墓石
墓石で使われる御影石は、韓国が産地として有名です。韓国は御影石を使用した墓石も建てられる事があり、儒教の思想により両親や家族を大事に思う事から日本の墓石よりも大きいものが使用されています。
土葬から火葬へ移転する事も
韓国では、核家族化や少子化などの問題もあり火葬後に納骨堂や樹木葬へ埋葬する方法も増えてきています。それらの事から、先祖のお墓管理をすることが難しくなり土葬から納骨堂へ移葬(イジャン)する方も増えている現状です。
移葬の方法は、開葬という土葬を掘り起こして遺骨を収集して、火葬をしてから納骨堂へ納めます。土葬を掘り起こすのは大変な作業のため、移葬は請け負ってくれる専門の業者が存在します。
また、移葬には日取りが重要と考えられているため、閏月(ユンダル)と呼ばれる純太陰暦を暦日(カレンダー)との季節にずれがないようにするために中間に入れる1か月の期間に執り行います。
韓国のお墓参り
韓国の秋夕では茶礼(チャレ)という法事を行います。秋夕は名節と呼ばれ、旧正月と旧暦8月15日に墓参りをします。茶礼は、収穫した新米やお酒、果物をご先祖様にお供えしてお辞儀と呼ばれるお参りを行います。
茶礼が終わると、お供えした食べ物を家族で分け合って食べます。韓国のお墓参りでは、お供え物と清酒を準備することが大切で、清酒はお供えした後にお墓にかけたり、お墓の前で飲んだりすることが風習です。
日本とは違う葬儀
韓国のお墓事情について解説していきましたが、病院の敷地内が斎場となっている韓国の葬儀はどのようなものでしょうか。
韓国の葬儀は3日間
韓国の葬儀は3日葬(サミルチャン)と呼ばれ、3日間かけて葬儀が執り行われます。1日目は訃報の連絡や葬儀の手配や準備を行います。2日目は通夜のような葬儀が行われて、3日目は葬儀に相当することが行われます。
また、3日3晩にわたり喪主や故人の家族は交代で24時間弔問客を迎え食事を振る舞います。儒教の思想が浸透している韓国では、先祖や家族を大事にする思いがあるため、最大限の敬意を持つ気持ちが表れます。
遺族や参列者の服装は喪服の着用以外にも、黒系のワンピースやスーツを着用しても良いとされています。また、香典の代わりとなる「賻儀(プゥイ)」という袋にお金を包んで遺族に渡します。お焼香をした後に渡すことが作法です。
お焼香後は、遺影に向かってお辞儀(クジョル)をします。膝をついて深く2礼して、立ち上がって1礼をします。
1日目
亡くなった方に新しい服を着せて、白い布や布団をかぶせます。お香を焚いて、遺影にロウソクを立てます。故人と交友関係があった方に訃報を知らせます。葬儀の手配や担当する人を決めます。
2日目
故人を綺麗に拭いて、寿衣(スイ)と呼ばれる死装束を着せます。故人の口に水でふやかした生米を含ませます。死後24時間経過していれば、棺に遺体を安置します。遺族は喪服を着用して、故人から8親等までの遺族は正装して弔問客を迎えます。
3日目
祭祀(チェサ)と告別式をして、棺を必ず建物から頭を先に出るように運びます。土葬の場合は、墓穴に棺を下ろして、喪主が棺の上に土を3回ふりかけた後、平たくして土を盛り上げてお椀型のお墓を作ります。
葬儀後は、お墓にお供え物をして祭祀を行います。最後に喪服を脱ぐことで葬儀を終えます。故人が両親、配偶者、祖父母の場合は100日後または49日後に脱喪祭(タルサンジェ)を行うことが一般的です。
女性は髪に白いリボンをつける
韓国の葬儀では、白いリボンという「喪章」を身につけます。男性は襟の部分、女性は髪の毛に小さなリボンを付けます。韓国では遺族は、葬儀が終わった後も故人の哀悼の意味を込めて喪章を身につけます。
世界遺産になっている朝鮮王朝時代のお墓
韓国では2009年に世界遺産に登録された、朝鮮王陵(ちょうせんおうりょう)という古いお墓があります。1408年から1966年と5世紀に渡り、ソウル近隣地域におよそ40基ほどと造られました。
当時の都を中心にして、4kmから40kmの間に王陵をつくる決まりがあり、風水地理の習わしに沿った位置に建てらてました。距離の決まりは、王が1日に往復できる距離とされています。現在では、陵内は自然公園として解放していて、一般の方や観光客が訪れることができます。
近年では土地不足と合理的に変化してきている
韓国のお墓事情について解説していきました。韓国では儒教の思想を重んじており、昔からの先祖や家族を大切にするという風習から土葬の葬儀文化が根強くあります。日本ではほとんどが火葬ですが、韓国では最近になって火葬が半数をしめるようになりました。
土葬のお墓を建てる土地の不足や近年の核家族、少子化などの影響で火葬場から遺骨を納骨堂や樹木葬など、葬儀文化が変わってきています。
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