離檀料とその相場|檀家をやめるときの法外な離檀料の支払い義務は?
公開日 : 2021/1/22
更新日 : 2021/1/22
離檀料は「りだんりょう」と読み、改葬の際に寺院に納めるお布施のことを指します。非常にまれな例ですが、法外な離檀料を要求されることもあるようです。この記事では離檀料の相場をはじめ、離檀の手順や役所への手続き、離檀でトラブルになった時の対処法などご紹介しています。
公開日 : 2021/1/22
更新日 : 2021/1/22
目次
離檀料とは
離檀料はその名の通り、「(寺院の)檀家(支援者)から離れるときに包むお金」という意味です。檀家になっている寺院に設置されている墓を墓じまいして、墓があった土地を寺院に返し、檀家と寺院としての関係を断つことを離檀といい、納めるお金は「離檀料」と言います。
離檀する理由
離壇するのはやむを得ないケースが多いようです。引っ越ししてお墓参りに行くのが難しくなった、高齢になったので墓守をするのがきつい、墓守が自分たちの代で絶えるなど切実な問題が理由になっています。
改葬によって寺院にかかる負担
檀家が1件減るということは、寺院の収入が減るということにつながります。寺院の運営のため収入が減るのは寺院にとって痛手となります。また、新しい檀家を探さなければなりません。
また、お墓を撤去して原状復帰するために工事業者が寺院に出入りし、機械も入るので、寺院に迷惑をかけてしまうことも考えられます。
改葬と墓じまいの違い
先ほどから「改葬」や「墓じまい」というワードが出てきています。この2語はこれからも何度か出てきますので、ここで改葬と墓じまいの違いをおさえておきましょう。
改葬
改葬とは、「お墓の引っ越し」とイメージするとよいでしょう。お墓にはご先祖様が遺されたものが納められ、安置してあります。
お墓に納められているものを、永代供養墓や納骨堂、他の寺院などに移すことを「改葬」といいます。お墓を住居の近くに改葬すると管理や供養がやりやすくなるというメリットがあります。
墓じまい
墓じまいはお墓を撤去して更地にすることをいいます。引っ越しでいえば住んでいた家から荷物を運び出し、できるだけ原状復帰して大家さんに渡すまでが墓じまいです。
引っ越しの荷物を前の家から新しい家に移すように、ご先祖様が遺されたものを新しいお墓に納め、安置するのが改葬です。
離檀料の相場
相場については諸説あり、だいたい5万円~20万円前後の金額が相場といわれています。法要1回~3回分という説もあります。
離檀料の相場
離檀料の相場については、寺院側との付き合いなど、これまでどのように寺院側と関わってきたかにもよりますが、目安としては5万円~20万円が相場といわれています。
離檀料は他にも5万円~20万円程度、3万円~20万円、3万円~15万円と言われていますが、だいたい5万円から20万円程度と考えて差し支えありません。
目安としては、1回の法要でお渡しするお布施の1回分~3回分の金額、といったあたりを包むのがよいでしょう。
離檀料の包み方
離檀料は、奉書紙か白封筒に入れ、表書きと裏書を書いて納めます。奉書紙、白封筒どちらであっても水引はかけません。
表書き・裏書き
表書きは「お布施」とします。できるだけ筆や筆ペンを使って書きましょう。裏面の左側にお布施をする人の名前と住所を書きます。
住所の番地や部屋番号には漢数字を使います。右側には金額を「金〇〇圓」と包んだ金額を書きます。漢数字の旧字体(壱、弐、参など)を使って書くのがマナーです。
奉書紙の包み方
離檀料は、白封筒でもよいのですが、できれば奉書紙で包みましょう。昔から伝わる包み方ですし、丁寧な印象を与えます。
折り方は、まず奉書紙をひし形に、角が自分のほうに来るように広げます。お札の上側が左に来るよう真ん中よりも右側にお札を置きます。お札に沿って奉書紙の上下を折ります。
奉書紙の左側の角がお札の上側に当たるように折り、お札に沿ってもう一度右へ倒します。残りの右半分もお札に沿って左側に折り、余りは裏面に巻き込みます。
離檀の流れ
離檀には様々な書類と手続が必要です。その他、納められている遺骨をきれいにするといった手順があります。
遺骨の確認~書類の準備
いうならば引っ越しの準備です。持っていくものをきれいにし、引っ越しに必要な書類を手配します。
遺骨の確認
遺骨を確認して整理します。誰の遺骨か、遺骨が何体分あるのか、汚れや破損はないか、などを確認しましょう。
寺院と石材店に相談
必要なことを決めたら寺院はもちろんのこと、石材店にも相談します。墓じまいするにあたり、お墓を撤去して、あった場所を更地にする作業をするのは石材店です。
見積をもらうなど、納得できる石材店を選び、寺院側とともに日程調整などをすすめておきましょう。寺院が石材店を指定していることもあるので、確認しておきます。
受入証明書
施主側は受入証明書や埋葬証明書などの書類を揃えていきます。まず「受入証明書」を改葬先の墓地や霊園などから発行してもらいます。「受入証明書」とは、改葬先の墓地や霊園が遺骨を受け入れてくれることを証明する書類です。
「受入証明書」は、後に「埋葬証明書」や「改葬許可申請書」と一緒に必要になる書類なので失くさないように気を付けてください。
埋葬証明書
「埋葬証明書」は主に墓がある現行の寺院など(「墓地・納骨堂管理者」)に書いてもらいます。遺骨が納めてある場所などを記入し、改葬前に遺骨がどこに納められているか報告する書類です。
改葬許可証
現在のお墓から遺骨を取り出す時と、新しい納骨先に納骨をする時に必要になる書類です。受入証明書と埋葬証明証とともに「改葬許可申請書」を、遺骨がある場所の市区町村へ申請し、発行してもらいます。
改葬許可をもらわないと改葬はできません。申請してから発行まで3日~1週間程度ほど要するため、スケジュールには余裕をもって申請しましょう。費用がかからない市区町村と、300円ぐらいの費用がかかる市区町村がありますので、確認しておきましょう。
遺骨のメンテナンス~開眼供養
いよいよ遺骨を古いお墓から新しいお墓に移しますが、その前にお墓に魂を宿らせる儀式を行います。
遺骨のメンテナンス
改葬先のお墓に納骨する前に、遺骨のメンテナンスをしておきます。専門の業者に依頼し、遺骨をできるだけきれいにしてもらいます。
遺骨は年を経るにつれ、水分を吸って溶ける、カビが生えるなど劣化してしまいます。汚れを取り除き、きれいにして乾燥させます。メンテナンスには2万円~3万円の費用を見込んでおくとよいでしょう。
閉眼供養
お墓から魂を抜く儀式です。お墓には先祖の魂が宿っていると考えられ、閉眼供養なしでお墓を解体する、遺骨を移動させるといったことは禁じられています。僧侶に依頼してお経をあげてもらい、お墓から魂を抜きます。閉眼供養には3万円~10万円のお布施が必要です。
お墓を解体
改葬する時、現行のお墓を石材店に解体してもらい、更地にして寺などの持ち主にお返しします。費用はだいたい1平米で10万円、2平米なら20万円、といったところが相場のようです。
離檀料
今までお世話になった証として離檀料を納めます。先述の通り5万円~20万円といったところが相場でしょう。時に法外な離檀料を請求されることもありますが、払う義務はありません。詳しくは後ほどご紹介します。
改葬先に改葬許可証を提出
市区町村に発行してもらった「改葬許可証」を改葬先に提出します。これで新しいお墓にお骨を移す準備が整いました。
なお、お墓ごと移動するのであれば、墓石を持ち込んでいいか改葬先に確認をとる必要があります。事前に確認しておきましょう。お墓ごと改葬すると、新しいお墓を建立せずに済むので費用が低く抑えられます。
開眼供養を行う
先ほど古いお墓の閉眼供養してもらうと述べました。新しいお墓にお骨を移すには、開眼供養で魂を新しいお墓に入れます。開眼供養ののちに、お墓に魂が宿り、ご先祖のご遺骨を納められるようになります。
離檀の費用
離檀料以外の離檀費用を確認し、予算と見比べ、離檀料にはいくらぐらいまで払えるか確認しておきます。知っておくと、高額の離檀料を要求された場合に落ち着いて対応できます。
現行のお墓にかかる費用
寺院に払うお金
寺院に支払うお布施は、閉眼法要のお布施5000円~1万円程度、埋葬証明書の発行手数料が400円~1500円程度なので、2万円程度見込んでおけば十分です。離檀料を納めるなら離檀料が上乗せになります。
石材店に払うお金
石材店にかかる費用について気を付けなければならないことは、墓石の運搬料です。もしお墓ごと改葬するのであれば、元の墓所から新しい墓所に移動する必要があります。
墓石は重いものなので料金が高額になり、20万円~80万円程度かかります。その他、お墓は新しいものを改葬先に建立する場合、古いお墓の墓石処分と区画整理で1平米につき10万円~20万円程度を見込んでおきましょう。
改葬先のお墓にかかる費用
開眼供養に5000円~10000円程度、御車料や御前料が必要なら合わせて3万円程度包みます。新しくお墓を建てた場合、墓石料は100万円~200万円くらい、永代供養墓の場合は5万円~100万円くらい、樹木葬や散骨の場合は5万円~100万円くらいが必要です。
離檀料のトラブル
お墓を改葬するにあたって、気持ちとして離檀料を払いますが、相場は5万円~20万円のところ、寺院側が高額の離檀料を要求することがあります。この場合、離檀料を巡り、寺院側と檀家側のそれぞれが拒否して話が前に進まないことがあるようです。
檀家側は離檀料を拒否し、寺院側は埋葬証明書の発行を拒否することがあります。トラブルが起こるのは極端な事例になり、ほとんどの寺院では円満に離檀できます。むやみに怖がることはありません。
次章ではトラブルにならないための方法、万が一トラブルになってしまった時、それぞれどう対応すればいいのかご紹介していきます。
離檀料は支払い無用
檀家は寺院に離檀料を要求されても、お布施なので気持ち以上の金額を支払う義務はありません。法律にも離檀料に関する規定はありません。お墓を寺院に設置する時の契約書に離檀料に関する定めがない限り、支払う義務はないとする見方が主流です。
判例
法律に謳っていないこともあり、確たる判例がありません。ただ、裁判にまで持ち込まれる場合もありますので、行政書士などの専門家にお願いして二者間に入ってもらい、減額の交渉などにあたってもらうのが有効な手段でしょう。
国民生活センター
国民生活センターは、寺院側が大金を要求してきても応じなくてよいという見解です。寺院側とよく話し合ってほしい、と呼びかけています。
憲法
離檀料を支払わなければ離檀をさせないという権利は寺院側にはありません。離檀料を支払わないと、「埋葬許可証」の発行を寺院側が拒否するといった事例もあるようです。
しかし、離檀料という確たる制度があるわけでもなく、憲法の第20条で信教の自由は保障されているので、離檀料はあくまでお気持ちで包むものであり、義務ではありません。
トラブルの回避
墓じまいによって寺院には少なからず迷惑をかけてしまいます。そのお詫びにお気持ちとして包むのが離檀料です。本来なら払う義務がない離檀料を寺院側が高額に要求してこないようにする方法について考えてみます。
事前に住職に相談・打診
寺院側も突然に離檀を申し出られると驚くでしょうし、いきなり申し出てくるのは失礼である、と怒って離檀料を要求してくる場合もあるでしょう。いきなり離檀や墓じまいの話をするのではなく、何かのついでに一相談として寺院側に離檀を匂わせてみます。
離檀を切り出す
しばらくして頃合いを見ていよいよ正式に離檀を申し出ます。先祖代々の墓を通して寺院には長い年月お世話になったわけですから、感謝の気持ちとともに話をしましょう。なぜ離壇するのか、理由も説明します。
引っ越しをして墓参りに来るのが難しくなってしまった、後継者がいないので永代供養に変更したい、など理由について丁寧に話をします。
それでも法外な離檀料を要求して来て話がこじれてしまうこともあります。そんな時はどうすればよいのでしょうか。
話が難航した場合
できるだけの努力はしたけれど寺院側と話がこじれてしまったら、一人で抱え込まず、応援を頼みましょう。
親戚
自分より年齢が高く、お寺のことにも詳しい親類がいたら、応援をお願いしましょう。その方と一緒に寺側との交渉をするなど、何かと助けてくれます。
石材店
墓の撤去や原状回復などは、寺院との付き合いがある石材店が請け負うことが多いです。その場合、石材店に相談してみるのもよい方法です。これまで何例も離檀を見てきたのは石材店なので、何かよい対処法を教えてくれるかもしれません。
また、話し合いの場所では寺院側と一対一で話をせず、石材店にも同席してもらいます。感情的にならずに話を進められるでしょう。
本山
同じ宗派の本山に直接訴え出る方法もあります。どこの本山も寺院が法外な離檀料を要求するのを認めてはいません。本山に事情を訴えて、相談してみましょう。本山がその寺院を諫めてくれる可能性が高いです。こじれることなく話し合いを進められるようになります。
専門家
法律に詳しい行政書士、司法書士、弁護士など専門家に相談するのもよいでしょう。公正に問題を分析してもらい、よい解決法を提案してくれるかもしれません。
自治体
改葬は、極端に言うと、「改葬許可証」があればできることです。改葬許可を得るためには本来現行の墓を安置している寺院が発行する「埋葬証明書」が必要です。
ところが高額な離檀料を納めなければ、埋葬証明書を発行しないと寺院側とこじれるケースもあるようです。市区町村役場にそのことを申し出て、埋葬証明書に代わる書類で手続きできないか、相談してみてください。
墓じまい・改葬を円満に
手順や必要な書類など、墓じまいや改葬についてお伝えしました。離檀料の相場をはじめ、離檀の手順や必要な書類などもご紹介しています。また、離檀料で法外の離檀料を要求された場合の対処法やそうならないための心得など、離檀に関することがらを幅広く紹介しました。墓じまいや改葬する時に参考にしてみてください。
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