墓石の文字の彫り方は? 宗派で異なる種類や書体【ありがとうもOK】
公開日 : 2020/12/13
更新日 : 2020/12/13
墓石に文字入れをするとき、ありがとうなどの言葉もOKです。宗派によって種類が異なり、書体も違います。今回は「墓石の文字の種類・宗派による一般的な文字・洋型墓石に刻む文字・好きな文字を刻もう・文字いれをする費用相場・塗装を補修する方法」について紹介しましょう。
公開日 : 2020/12/13
更新日 : 2020/12/13
目次
墓石の掘り方(文字・位置)は自由
墓石には文字が彫刻されていますが、どんな文字を入れればいいのか悩んでしまうこともあるでしょう。まずは、墓石の種類や部位の名前について解説します。
墓石の種類
墓石はおもに3つの種類に分かれます。和型墓石・洋式墓石・デザイン墓石で、和型墓石といえば竿石(さおいし)と呼ばれる縦長の立方体の正面に彫刻するのが一般的であり、日本ではもっとも多いスタイルといえるでしょう。
存在感があって、一目で自分の家のお墓だと分かる目印のような意味合いもあり、先祖から墓石にこだわっている場合もあります。一方、洋式墓石やデザイン墓石は和型墓石と比べて背丈が低いのが特徴です。
まったく文字を入れない・単語・メッセージなど、バラエティに富んで自由に文字を彫刻することができます。
墓の部位の名前
墓石では、部位によって名前が異なります。一番うえの縦長の墓石は「棹石(さおいし)」と呼ばれ、正面部分に家名・題目・好きな言葉を入れることができ、棹石の右側面に戒名・没年月日を入れましょう。
台石の左側面に建立年月日・建立者名、裏面に建立者名を入れてください。文字・位置が自由といっても一般的に入れるべき文字ルールは存在するため、基本はどこにどんな文字を入れるのか必ずチェックしておきましょう。
とくに家名は多くの墓石に見られる文字であり、必ず入れる箇所を確認してから彫刻依頼をしてください。
文字の種類について
墓石に彫刻する文字の種類も多種多様です。そこで、文字の種類について、詳しく解説していきましょう。
書体について
墓石で使う文字の書体は決められているものと思ってしまいますが、実際はとくに決まりごとはありません。日常で使っている「楷書(かいしょ)体」・崩し文字の「行書(ぎょうしょ)体」があります。
ほかにも、行書をもっと崩したスタイルの「草書(そうしょ)体」・中国由来の「隷書(れいしょ)体」などあって、どれを選んでも問題はありません。しかし、一般的な楷書体や行書体は普段から見慣れている文字です。
そのため、だれでも読みやすい楷書体はとても人気があり、選ぶ人が多いのもうなづけるでしょう。
基本は正字を利用
一般的に墓石に刻む文字は「正字」が使われ、正規文字の略であり、略字や俗字ではない、正当に記載された文字を指します。たとえば「灯」は正しい漢字ではあるものの、新字体で正字では「燈」です。
普段何気なく使っている文字の中には新字体があり、正字ではないということを頭にいれておきましょう。もしも、正字かどうか分からない場合は、石材業者に相談をしてから決めると失敗がありません。
棹石の側面や裏面に戒名や没年などを刻む
和型の墓石には、埋葬される人の戒名・没年月日・俗名・享年を棹石の側面や裏面に刻みます。宗派・地域などによってどの順番で刻んでいくかは異なりますが、向かって右側面の右側から順に刻んでいくことが多いです。
敷地に余裕があれば墓誌を建ててそこに刻むこともあり、俗名は生前の姓名であって、煩悩に満ちている理由から刻まない考え方が強くあります。個人墓・夫婦墓では、戒名を棹石正面に刻んだ場合も、没年月日・俗名、享年を棹石側面・裏面に刻むのが一般的です。
棹石の左側面や裏面に建立者名や建立年月日を刻む
建立者名や建立年月日についても、棹石の左側面や裏面に刻みます。棹石は仏石なので避けて、へりくだって上台石左側面に刻むのがよいですが、上台石側面が狭いことから、棹石の左側面や裏面に刻むことが多いです。
建立年月日は「〇年〇月吉日」・「埋葬者の回忌」・「法要などの年月日」にします。年については、和型墓石であれば元号で表し、洋型墓石は西暦で表すことが増えているため、無難にそれに合わせるとよいでしょう。
宗派による一般的な文字
墓石の文字は、宗派によっても異なります。浄土真宗・天台宗・真言宗・浄土宗・臨済宗・曹洞宗・日蓮宗それぞれで見てみましょう。
浄土真宗は「南無阿弥陀仏」
浄土真宗では「南無阿弥陀仏」(なむあみだぶつ)がもっとも大事な言葉であり、この言葉を墓石に彫ることが多いです。「南無阿弥陀仏」とは、阿弥陀仏に帰依するという意味をもっています。
帰依とは、仏さまなどの力にすがる意味があり、「倶会一処」(くえいっしょ)は、亡くなった人はすべて菩薩さまと1つの浄土で会うことができるといった意味です。そのため、浄土真宗では「南無阿弥陀仏」「倶会一処」を墓石に彫ります。
天台宗は「南無阿弥陀仏」「梵字」
天台宗では、本尊の阿弥陀如来に帰依することをあらわす「南無阿弥陀佛」と墓石に彫ることが多いでしょう。ほかにも、梵字をいれたあとに「〇〇家先祖代々」などといれることもあります。
そもそも梵字の意味は、仏教の原始経典に使われた言葉であるサンスクリット文字です。そのため、梵字をいれるときは阿弥陀如来を表す「キリーク」か大日如来を表す「ア」をいれるのが一般的でしょう。
真言宗は「南無大師遍照金剛」
真言宗では、宗祖である空海が帰依するという意味をもつ「南無大師遍照金剛」をいれます。また、大日如来を表す「ア」の梵字をいれたあとに「〇〇家先祖代々」などといれるのが一般的でしょう。
空海は、平安時代初期の僧であり、弘法大師(こうぼうだいし)の諡号で知られる真言宗の開祖としても注目されています。空海は、真言宗の開祖のほかに、書家や文人としても評価されている宗祖です。
浄土宗は「南無阿弥陀佛」
浄土宗は、本尊の阿弥陀如来に帰依することを表す「南無阿弥陀佛」をいれます。また、阿弥陀如来を表す「キリーク」の梵字をいれたあとに「〇〇家先祖代々」などといれるのが一般的でしょう。
浄土宗は、大乗仏教の宗派のひとつで、浄土信仰に基づく日本仏教の宗旨・法然を宗祖としています。また、鎌倉仏教のひとつでもあり、阿弥陀仏をとなえて極楽浄土へうまれていくことを願う宗派です。
臨済宗・曹洞宗は「南無釈迦牟尼佛」
臨済宗・曹洞宗は、本尊であるお釈迦様に帰依する「南無釈迦牟尼佛」をいれたり、円相を表す「〇」をいれたあとに「〇〇家先祖代々」などといれたりするのが一般的で、臨済宗・曹洞宗ではこの文字をいれましょう。
円相というのは、悟りや宇宙などこの世の心理と呼ばれるものを端的に円で象徴させたものを指します。
日蓮宗は「南妙法蓮華経」
日蓮宗では、信仰対象の経典である法華経に帰依するという意味の「南妙法蓮華経」をいれます。また、書体においては、ひげ文字と呼ばれる独特な書体を使うのが一般的で、日蓮宗では基本の文字でしょう。
単に「妙法」とひげ文字でいれたあとに「〇〇家先祖代々」などといれることもあります。日蓮宗は、鎌倉時代「日蓮聖人」によって開かれた宗派で、お釈迦様が説かれた妙法蓮華経をよりどころにした宗派です。
洋型墓石に刻む文字
洋型墓石に刻む文字には、いろんなパターンがあり、象徴的な1文字や意味をこめやすい2文字以上などあります。そこで、洋型墓石に刻む文字を紹介しましょう。
1文字は「心・愛・絆・偲」
洋型墓石に刻む文字として、1文字にこめると「心・愛・絆・偲」などが挙げられるでしょう。遺された人への印象的なメッセージとなるような、自分の想いをこめた文字が選ばれるのが一般的です。
愛や心などは円満で明るい未来を象徴すべき文字であるということを、墓石に刻むことで永遠に伝えられていくでしょう。
2文字以上は「誠実・希望・一期一会」
洋型墓石に刻む文字として、2文字以上にこめると「誠実・希望・一期一会」が挙げられます。1文字よりももっと具体的な意味をこめやすい点から、故人の人柄を表したり、メッセージを残したりするのが特徴的でしょう。
「希望」など、明るい未来を意味する言葉は故人が後世の親族に向けて、幸せに暮らせるようにとの想いがこめられやすいです。
1つの句は「心やすらかに・ありがとう」
洋型墓石に刻む文字として、2文字以上の中には1つの句として使う場合もあります。たとえば「心やすらかに・ありがとう」といった文字は、故人が後世の親族に向けての熱いメッセージといえるでしょう。
「心やすらかに」のほかに「また会う日まで」や「いい人生、いい旅立ち」「会いにきてくれてありがとう」などがあります。
詩や歌詞を刻む
洋型墓石に刻む文字として、故人が好きだった言葉や詩・歌詞などで共有する人もいます。墓石に刻まれた言葉とともに、音楽・過去の背景などを思い浮かべてお墓参りにいくたびに熱い思いがこみあげてくるでしょう。
ただし、詩・歌詞を彫刻するときは著作権の許可をとる必要があり、著作権違法に問われないように注意してください。
好きな文字を刻もう
墓石に好きな文字を刻むのが、最近では多く見られるようです。個性的なデザイン墓石などはオリジナルメッセージを伝えやすいのが特徴でしょう。
好きな文字や言葉を刻むメリット・デメリット
好きな文字や言葉を刻むメリットは、子供が女子だけの家庭で娘が結婚して姓が変わっても家名の入っていないお墓があれば、娘が継承しても違和感がありません。家名を刻まないことで継承者が変わっても墓石を刻みなおす必要がない点がメリットでしょう。
また、好きな文字や言葉を刻むデメリットは、家墓で代々継承していくお墓を独特な文字を刻むことで人に違和感を与えてしまうかもしれない点です。宗教的に向かない文字などもあるため、事前に親族などと相談が必要でしょう。
掘り方の違いで印象が変わる
墓石に文字を彫刻するにはいろんな方法があり、掘り方によって印象がガラッと違ってきます。そこで、代表的な墓石の彫り方を挙げてみましょう。
スタンダードな「彫り込み」
墓石に文字を彫刻する方法1つ目は「掘り込み」です。もっともスタンダードな方法で、ハッキリと文字が浮かびあがるのが特徴であり、とくに筆を置く地点を深く掘り込むことでメリハリがつきます。
地方では関西のほうが関東よりも深い彫りを好み、ハッキリとした文字で故人の想いを伝えることができるでしょう。
文字を浮きたたせる「浮かし彫り」
墓石に彫刻する方法2つ目は「浮かし彫り」です。文字部分を彫るのではなくて、文字の周囲を削って文字を浮きたたせるのが特徴で、文字部分に塗装をしなくても、簡単に文字を目立たせることができます。
墓石を削ると、中の色が違う石であればわざわざペンキを塗る必要がない点でも、手軽に墓石の彫刻が可能です。
平に彫る「平彫り」
墓石に彫刻する方法3つ目は「平彫り」です。筆を置く地点などで堀の強弱をつけることがなく、平に彫る方法で、パッと見は迫力がないものの、スッキリとしたおだやかな印象に仕上がります。
しっかり・くっきりと文字と周囲を区別したい場合は、掘り込みや浮かし彫りの彫り方がよいでしょう。
V字の彫刻刀で削る「ヤゲン彫り」
墓石に彫刻する方法4つ目は「ヤゲン彫り」です。V字の彫刻刀で彫り込む手法であり、文字の中央にスジがつくのが特徴的で、中でも梵字などで多く使われる彫り方としても注目されています。
文字の真ん中にスジができることでとても美しい仕上がりとなり、後世に伝える墓石として推奨されるでしょう。
繊細な部分に最適な「線彫り」
墓石に彫刻する方法5つ目は「線彫り」です。スジ彫りとも呼ばれ、細く線の部分を彫りこんでいく技法で、文字よりも周りの絵などに使われることが多く、繊細な表現をつくることができるのが魅力的でしょう。
菊などの花の細かい部分をキレイに彫ることができ、文字とともに一層見た目を引き立たせることができます。
墓石に文字入れする費用相場
墓石にいれる文字はいろんな種類があるのはわかっても、値段がどれくらいなのか気になるものです。そこで、墓石に文字いれをする費用相場を紹介しましょう。
石材店に支払う値段
墓石に文字をいれるとき、石材店に支払う値段は、文字の大きさ・書体などによって違います。相場としては、墓石の正面に家名などの文字をいれる場合、だいたい2万円から4万円のようです。
また、地域・墓地・寺院の習慣によっては、10万円近い値段がかかることもあり、事前に見積もりを出してもらいましょう。
戒名料の値段の相場
戒名料は、宗派・戒名のランクによって大きく異なります。また、寺院によっても異なり、4つに分かれた戒名のランクを事前にしっかりと確認しておくことで、あとになって思った以上の金額に驚愕することはないでしょう。
戒名のランク | |
信士・信女 | 20万~30万円 |
居士・大姉 | 30万円~50万円 |
院信士・院信女 | 50万円~100万円 |
院居士・院大姉 | 100万円~ |
墓石に彫られた文字の塗装を補修する方法
墓石に彫られた文字の塗装を補修する方法は2つあり、石材店に依頼するか自分で塗り直すかです。両方の方法について解説します。
業者に依頼する
墓石の文字を塗装した場合、年の経過によって剥げてしまうこともあります。塗装の補修の値段は石材店によって異なりますが、だいたい1万円から3万円くらいが一般的な値段といえるでしょう。
朱文字を白にする・剥げた部分を塗る・新たに塗るなど、いずれの場合でも値段はそれほど変わりません。
自分で補修する
石材店に頼むと値段が高くなるため、ホームセンターなどで墓石文字用の塗料を購入して塗り直す方法もあります。市販のペンキで塗り直す場合、まずペイント落としなどで文字表面の色を完全に落としましょう。
ペイント落としを水洗いして乾かし、文字部分にペンキを塗ったあとにはみ出した部分をカッターで削れば完成です。
まとめ
今回は「墓石の文字の種類・宗派による一般的な文字・洋型墓石に刻む文字・好きな文字を刻もう・文字いれをする費用相場・塗装を補修する方法」について紹介しましたが、いかがでしょうか。これからお墓を建てる人は、ぜひ参考にしてみてください。
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