沖縄のお墓|お参りの後、お墓の前で「親族一同がする」こととは?

公開日 : 2020/11/6

更新日 : 2021/7/15

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沖縄には沖縄独特のお墓があります。沖縄のお墓の外見は本州とは違う大きな特徴があり、人々は独特の作法や習わしでお参りします。本州との違いを比べて掘り下げていくのは非常に興味深いものです。この記事では、沖縄のお墓やお参りの仕方、ご遺体の安置方法などをご紹介します。

公開日 : 2020/11/6

更新日 : 2021/7/15

目次

沖縄のお墓が大きい4つの理由

沖縄のお墓は本州では考えられないほど規模が大きいお墓です。庶民は36坪(118.8平方メートル)、士族は144坪(475平方メートル)と、家と変わらないような広さです。なぜこのように大きい墓が必要なのでしょうか。

風葬の習わし

沖縄には遺体を風葬にする習わしが1960年ごろまで続いていました。亡くなったあと火葬や土葬をせず、人目にふれないところにご遺体を安置しておきます。自然に風化してお骨だけになった頃を見計らって、お骨を洗い(「洗骨」といいます)、改めて骨壺に納め、安置します。

 

現代では沖縄でも行われていないようですが、ボルネオ島のイバン族やインドネシア・バリ島のトルニャン族などは伝統的な風葬を行っています。

 

風葬するには棺ごと安置できる、ある程度のスペースが必要です。大きな棺ごと入れられて、棺をいくつか置いておくのにスペースが必要なことが、大きなお墓になっていった理由のひとつでしょう。

門中墓

お墓は門中(ムンチュー)で共有するのが、大きく作られていた理由のひとつです。沖縄では門中制度を承継しており、父方の直系血族が一族の族長を務めます。その家の門中でお墓を共有する習わしだったため、多人数で入るには大きな墓が必要でした。

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沖縄の気候

沖縄でお墓が大きく作られたのは、台風がいくつも通過する台風銀座と呼ばれる気候に負けないためでもあります。激しい雨、激しい風に耐えられるよう頑健な土台と屋根を作り、雨風に耐えられるような作りが必要でした。倒れたり傷んだりしないようなデザインになっています。

墓前で宴会をする

宴会に大人数が参加できるよう、広い敷地が必要でした。お墓参りの後はご先祖様の前で宴会を開くのが沖縄の習わしです。1年に3回のお墓参りでは、墓前にご馳走やお花を供えて焼香します。

 

焼香を終えたあとは、お墓の前で、親族がぐるりと輪を作り、ご馳走を仏前から下げてにぎやかに盛大な宴会が繰り広げられます。

沖縄のお墓は3タイプ

沖縄のお墓は、亀甲墓、破風墓、掘り込み墓の3タイプが主流です。風葬や、墓参の時の宴会に、十分な大きさと、暴風雨に耐えられる作りになっています。本州の古墳を思わせるような、規模の大きなお墓です。

亀甲墓

お墓の屋根を上から見たとき、亀の甲羅に似ているところから亀甲墓と呼ばれています。また、女性の子宮に似ているとも言われ、人間は死ぬと暗くて狭いところ、つまり母親の胎内に帰るという「母体回帰」の考え方を取り入れたお墓です。

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破風墓

「破風墓」(はふはか)は沖縄で最も古い墓の様式です。本物の家によく似た造りの、屋根が三角形のお墓です。「破風」とは屋根の先端の三角形のところをいいます。本物の家では破風をほどこす板を破風板といい、破風によって家の中に雨風が吹き込むのを防ぐ役割をしています。

掘り込み墓

掘り込み墓とは、名前の通り、山肌などに横穴を掘って棺を安置できるようにしたお墓です。自然にできた横穴や洞窟があれば利用することもありました。あまり人目につきませんし、風葬に適したお墓といえるでしょう。遺体の周りを囲むように石が積み上げられています。

お墓の内部

中は広く、四畳以上のスペースがあります。入ってすぐのところに「シルヒラシ」という部屋があり、まだ風化している遺体が安置されています。奥には階段状の棚があり、洗骨を終わった骨を骨壺に入れ、奥の棚に納めます。

 

棚は、多いもので10段以上あり、新しい骨壺が来ると、古い骨壺を奥の棚へと順に納め直します。三十三回忌を終えたお骨は、最も奥まった部屋に合葬されます。

沖縄ではお墓参りをむやみにしない

沖縄ではお墓参り年に3回と決められています。反対に本州ではお墓参りの時期や頻度には特に決まりがなく、お彼岸やお盆、祥月命日、月命日、年末年始など、基本的にはいつ参っても構いません。

年に3回の年中行事

一方沖縄では、年に3回しかお墓には行きません。「(一月)十六日(ジュウルクニチー)」、清明の節句に行う「清明祭(シーミー)」七月七日に行われる「七夕(タナバタ)」の3回です。回数が少ない代わりに、墓参りの時は親族一同でお墓を参り、焼香が終わるとご先祖様が眠るお墓の前で宴会を楽しみます。

十六日(ジュウルクニチー)

十六日「ジュウルクニチー」は、毎年旧暦の一月十六日ごろ(太陽暦では2月末ごろ)に行われるお墓参りです。旧正月の後に行われるので「グソーヌショウグァッチ(後生の正月)」ともいわれます。本島では家族が亡くなって初めて迎える十六日を、「新十六日(ミージュールクニチー)」といいます。

 

本州では、亡くなってから初めてのお盆を「初盆(はつぼん)」「新盆(にいぼん)」といいますが、「新十六日」と似ています。

清明祭

清明祭「シーミー」とよばれるお墓参りです。毎年旧暦の二十四節季の「清明」(太陽暦では四月五日ごろ)に行われます。清明は春分から十五日目のころ、万物に新鮮なエネルギーがみなぎる時節のことを指します。

 

シーミーは祝い事として扱われ、料理も赤いかまぼこを用い、お祝い事のためのお重を作ります。賽の目状にきちんとおかずを詰めた二重(カタシー)や四重(チュクン)をもって、お墓に行きます。重箱料理はお墓に供え、一連の儀式が終わったら、参加者みんなでいただきます。

 

家族が亡くなって1年以内の喪中の家では、新十六日は行いますが、お祝い事である新明祭は控えます。

七月七日

「タナバタ」は、旧暦七月七日(太陽暦8月上旬ごろ)にご先祖様に「そろそろお盆ですよ」と知らせに行く行事です。家族だけの少人数で参り、供え花、ウチャトゥ(お茶)など基本的なお供えをして、ご先祖様をお迎えするためにお墓を掃除します。沖縄の人でも七月七日は「お墓の掃除の日」と思っている人は少なくないようです。

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お彼岸・お盆

春分の日、秋分の日の前後1週間が、本州と同じく沖縄でもお彼岸ですが、沖縄ではお彼岸にお墓参りはしません。お盆は旧暦7月13日から7月15日(太陽暦8月中旬・下旬・9月初旬)ですが、仏壇で供養してお墓には行きません。

 

やたらとお墓参りをしないのが沖縄のルールなので、家の仏壇にお供え物をしてご先祖様を供養します。お盆のお迎えは家の前で儀式をします。

 

門または玄関の真ん中に「ヒラウコー(お線香)」を「タヒラ(2枚)」置き、両脇に二対のろうそくを、並べて置きます。門前へ向かって家長を中心に親族が集まり、「本日の盆の入り口、家族全員でご先祖様をおもてなしいたします。どうぞおいでください」といった意味の文言を唱えます。

お墓参りの作法

ヒジャイヌガミ様にお供えする

まず初めにお墓の左側(向かって右)にいるとされている「ヒジャイヌガミ様」にお供えと挨拶をします。ヒジャイヌガミ様はお墓を守ってくれている神様です。「お墓を守ってくださってありがとうございます」という意味の文言を唱えます。

 

供えたウサンミ(お重料理)から2個ずつおかずを取り出し、お皿にならべてヒジャイヌガミ様にお供えします。

ご先祖様にお供えをする

ヒジャイヌガミ様に供えた分を重箱に補充して、ご先祖様に供えます。おかずが入った重箱とおもちが入った重箱を交互に、2列にお供えします。お重の正面は豚の三枚肉のおかずが入っている方です。

 

1列目は正面がご先祖様側に向くように、2列目は自分たちに正面が向くようにして並べます。次にお箸を用意します。ご先祖様用は向かって左、つまりご先祖様の右側に置きます。自分たちの分は向かって右側に置くようにします。

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ウチカビ、ヒラウコーを焚く

あの世でのお金「ウチカビ」と、お香「ヒラウコー」を焚きます。ウチカビは1人につき3枚、ヒラウコーは連結している6本のうちの3本を焚きます。

お墓に供える花

お墓に供える花は、忌明けしていれば色とりどりのきれいな花を、忌明け前なら白一色の花をお供えするとよいでしょう。予算は500~2000円前後をめやすにします。できるだけ日持ちのするお花が好まれます。

好まれる花、好まれない花

カーネーション、デンファレ、アンスリウム、キク、スターチス、グラジオラスなどがよいでしょう。好まれない花は、茎や葉に棘があるバラやあざみなどの花、毒のある水仙やスズランなどの花と、香りが強い花です。

供える本数

お墓の花立ては思っているよりも細いです。左右に対になっているので、両方ともに供えますが、花の種類や本数が同じになるよう活けましょう。3本、5本、7本と、本数は奇数にしてください。

ウサンミ

ウサンミ(重箱料理)を詰めて墓にいき、墓守の神様とご先祖様にお供えし、儀式が終わるとお下げして、みんなでにぎやかに宴会をします。重箱にはどんな料理が詰めてあるのでしょうか。

 

料理は「天、地、海」の食材を使ったものを作ります。カステラかまぼこ(卵と魚のすり身を混ぜて作った甘いおかず)、紅白かまぼこ、揚げ豆腐、天ぷら、田いも、昆布、ごぼう、こんにゃく、皮付きの豚の三枚肉の9品が基本で、大根の煮つけ、白身魚の昆布巻きを代用することもあります。

お墓参り3つのルール

沖縄のお墓参りには独特のルールがあります。本州とはひと味違うお墓参りにまつわることについてご紹介します。

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お墓参りはむやみにしない

本州では年に何度かお墓に参る習わしがありますが、先ほどお伝えしたように、沖縄では十六日、清明祭、七月七日と、年に3回だけお参りします。

          

沖縄では、「周囲の霊魂がついてくる」「周囲の霊魂が寂しがる」ため、お墓参りをするのは、年に3回だけ、むやみにしてはいけないルールがあります。年に3回しかない代わりに、十六日・清明祭・七月七日は盛大に行います

他家のお墓は拝まない

他家のお墓を拝んだり会釈したりしてはいけないことになっています。お墓の敷地を通ることも厳禁です。他家のお墓を気遣うためのルールです。

お墓の扉を開けるとき

納骨の際などで墓の扉を開けるとき席をはずした方がよい人がいるというルールです。妊婦さんとその家族、子ども、新築中の家主とその家族、納骨する場合には、故人と同じ干支の人は同席してはいけない決まりになっています。お墓に引かれてしまう、といういわれがあるためです。

お墓参りに必要な物

本州ならお線香やろうそく、お水、掃除用具、数珠などを持っていってお墓参りをしますが、沖縄はどうなのでしょうか。

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ビンシー

中が6つに仕切られた重箱です。自宅で用意して蓋をして、そのままお墓に持って行き、お墓で蓋を取ればお供えできるようになっています。仕切りの中には、お酒、花米、洗ったお米や十円玉3つなどをセットします。花米とは炊く前の生成したお米です。

 

引き出しもついていて、お供えするお米やお酒、ウチカビ、ヒラウコー、お賽銭などが入れてあります。

ウチカビ

ウチカビを焚く煙をあの世に届けておけば、次にお参りに来るときまで、ご先祖様はあの世でお金に困らない、という意味合いがあります。茶色で一面に古銭が描かれています。焚くときは「カニバーキ」の中で焚きます。

カニバーキ

カニバーキは金属製のボウルのようなもので、中に円形の網を敷いてウチカビやヒラウコーなどの焚きものをします。この時、チャーギと呼ばれる植物も一緒に焚くことがあります。最後にお供え物のお酒をかけて火を消します

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ヒラウコー

ヒラウコーはカニバーキの中で、燃やしてあの世へ何かを伝えたり、運んだりする役割をします。本州の線香のようなものですが、6本1組でくっついています。単位は平(ひら)です。

 

ヒラウコーは簡単に分離でき、1平6本で焚くこともあれば、半平(3本)を焚くこともあります。神や祖霊に願を伝える、魂を移動する、遠くの場所へ通信する役割があると言われています。

昨今のお墓事情

最近では昔のお墓を存続させづらくなっています。古いお墓には管理する人がおらず、かといって墓じまいしようにも誰かのお墓であることは間違いないので、手をつけられないお墓も少なくないといいます。

 

高齢者が自分たちの代で管理が大変な昔ながらのお墓は墓じまいして、子どもたちには現代的なお墓にしてほしい、という人が増えています。お墓の核家族化も進みつつあり、家族だけで、兄弟だけで、という人が増えてきました。

 

破風墓や亀甲墓だけでなくプレートタイプの洋型や本州に多い和形などでお墓を建てる人も多くなっています。昔ながらの亀甲墓や破風墓はニーズが減っているようです。

 

自分で自分のお墓を持つにも手続きがかなり大変で、手続き不要の霊園などにお墓を建てるケースが多くなっているといいます。

大切にしたい郷土の文化

沖縄のお墓は特徴的でした。大きさや屋根、内部の構造など、本州では見られないお墓が沖縄にはあります。また、お参りの方法や年に3回だけしかお墓に参ってはいけないなど、沖縄独自の文化には興味深いものがありました。沖縄独自のお墓にまつわる風習は途絶えてしまわないよう、継承されていく方向で検討していただきたいものです。