五輪塔とは?歴史・構造・一般墓との違いを詳しく解説します
公開日 : 2020/4/20
更新日 : 2020/9/9
日本で、古くから伝わる供養塔のひとつ「五輪塔」。巷でよく見かける和型墓石や洋型墓石と呼ばれる一般墓を知っていても、「五輪塔」と呼ばれる供養塔をよく知らない人も多いのではないでしょうか。今回は、「五輪塔」の歴史や構造、「五輪塔」と一般墓の違いを詳しく解説します。
公開日 : 2020/4/20
更新日 : 2020/9/9
目次
五輪塔とは?
五輪塔とは、5つの石を積み重ねた、古くから伝わる伝統的なお墓です。5つの石はそれぞれ五大元素と呼ばれる宇宙の構成要素を象り、五輪塔で供養すると、死者の肉体は五大に還元され、極楽浄土に往生する、という意味合いが込められています。
現在では、供養塔として建立されることが多く、特定が困難な死者や御先祖様を祀る際に建てられます。
五輪塔の構造
五輪塔は、下から方形・円形・三角形・半月形・宝珠形の5つの石から成り立っており、インドの五大思想を象っています。では、5つの石はそれぞれどのような意味を持つのでしょうか。下記では、5つの輪に込められた意味と梵字について解説します。
五輪塔の5つの輪の意味
五輪塔は、インドの五大思想を元に作られています。五大思想というのは、下から地、水、火、風、空を意味し、宇宙を構成する元素を表しています。五大思想を積み重ねた五輪塔をお墓に用いることで、死者は五大に還元され、極楽浄土へ至る、という意味合いを持ちます。
また、五輪塔の5つの輪は、人間の五体を表しているとも言われていて、下から「足、胸、胸、顔、頭」となっています。一説では、五体満足という言葉は、五輪塔からきている、と言われています。
土輪
五輪塔の5番目に位置し、方の形をしています。方の形というのは、全ての角が直角な四角形です。土輪は、五大思想の地を表していて、地は大地や個体、安定を意味しています。また、土輸には「ア」と読む地を意味する梵字が刻まれています。
水輪
水輸は、五輪塔の4番目に位置し、円の形をしています。水輸は五大思想の水を表していて、水は液体や変化など形のないものを意味しています。また、水輸には、「ヴァ」と読む水を意味する梵字が刻まれています。
火輪
火輸は、五輪塔の三番目に位置し、三角形の形をしています。火輸とは、五大思想の火を表していて、熱やエネルギー、人の情熱や欲求を意味しています。
また、火輸には「ラ」と読む火を意味する梵字が刻まれています。
風輪
風輸は、五輪塔の二番目に位置し、半月の形をしています。風輸とは、五大思想の風を表していて、気圧や空気、成長、自由を意味しています。また、風輸には「カ」と読む風を意味する梵字が刻まれています。
空輪
空輸は、五輪塔の一番上に位置し、宝珠の形をしています。空輸とは、五大思想の空を表していて、空は虚空やスペースなど無限に広がる空間を意味しています。また、空輸には、「キャ」と読む空を意味する梵字が刻まれています。
五輪塔に記されている梵字
梵字とは、古代インドで誕生した文字で、奈良時代に仏教と共に日本に伝わり、神仏を一文字で表す際に用いられます。
現在では、五輪塔に刻まれるだけでなく、梵字を刻んだものをお守りとして持っていても、ご利益がある、とされています。
五輪塔の歴史
五輪塔は、今からおよそ900年前の平安末期に最初の五輪塔が作られました。では、どのようにして五輪塔ができ、どのように日本各地に波及していったのでしょうか。下記で、五輪塔の始まりから現在に至るまでを、詳しく解説します。
五輪塔の始まり
五輪塔は、一説ではインドで使われていた遺骨や遺髪を収めていた容器の形からできているといわれていますが、現在インドで使われていた容器が見つかっていません。このことから、五輪塔は日本が独自に作成したお墓だといわれています。
五輪塔の元になった五大思想がインドから中国を経由し日本に伝わりました。その時に、密教(仏教の一派)が五大思想を5つの輪に見立て、芝台の上に積み重ね、石塔の形を表現したものが、五輪塔の始めだと言われています。また、初期の五輪塔は、全体的に背が低い、という特徴があります。
五輪塔が日本各地に
平安時代末期に五輪塔ができ、鎌倉時代には、日本各地で五輪塔がお墓として使われるようになりました。五輪塔を広めることに尽力したのは、覚鑁(かくばん)上人と呼ばれるお坊さんです。覚鑁上人は当時、高野聖という念仏グループに属していました。覚鑁上人は木製の小さな五輪塔を持って、「死者の遺骨や遺髪、写経を入れると、極楽浄土に往生できる」と日本各地で唱えたことで、五輪塔が普及されたと言われています。
平安時代末期までは、死者は穢れていると考えられ、埋葬されただけでしたが、覚鑁上人の教えが広がったことで、死者が大切に供養されるようになりました。
五輪塔の現在
江戸時代中期には、お墓の約8割が五輪塔を用いていました。しかし、江戸時代中期になると、現代でもお墓として使われている和型墓石というお墓が一般的になり、五輪塔をお墓として使うことが減っていきました。それからは、供養塔として、ご先祖様や、特定できない死者を供養することが多くなります。
現在では、五輪塔の形を省略した一石五輪塔というお墓も普及していて、費用や面積を抑えて、建墓することができます。
五輪塔と宗教
五輪塔は、密教(仏教の一派)がインドの五大思想を元にし、死者を五輪塔に供養することで、成仏できる、という意味合いを持つお墓です。では、他の宗教で建墓する際の違いはあるのでしょうか。下記では、五輪塔建墓における、宗派ごとの違いを解説します。
五輪塔と宗派ごとの違い
五輪塔ができた当初は、宗派ごとの違いはありませんでした。しかし、江戸時代に入り、檀家制度が導入されると、宗教ごとに決まり事ができてきます。檀家制度の影響を受け、本来の五輪塔と異なる五輪塔を建墓する宗派をご紹介します。
浄土真宗
浄土真宗では、死後すぐに極楽浄土に往生すると考えられています。五輪塔とは供養することで、五大に還元され、極楽浄土に往生する、という考え方をしており、浄土真宗では、五輪塔を建墓することはありません。しかし、一説によると、浄土真宗の開祖、親鸞聖人のお墓は五輪塔だと言われています。
日蓮宗
日蓮宗では、五輪塔で供養することは問題ありませんが、五輪塔に刻まれる刻み文字が違います。本来の五輪塔は地、水、火、風、空の梵字を刻みますが、日蓮宗では、妙・法・蓮・華・経と刻みます。
浄土宗
浄土宗でも、五輪塔で供養することがあります。本来の五輪塔は、地、水、火、風、空の梵字を刻みますが、浄土宗では、南・無・阿弥・陀・仏と刻まれます。
五輪塔と一般墓
五輪塔は、現在主流の和型墓石や洋型墓石とは形が異なります。では、五輪塔と一般墓ではどのような違いがあるのでしょうか。下記では、五輪塔と一般墓の納骨方法や価格の違いについて、解説します。
五輪塔と一般墓の違い
五輪塔と一般墓の本質的な違いはありません。五輪塔は、供養塔として用いられることが多いため、亡くなった御先祖様や、特定できない死者を対象に祀ることが大半ですが、建てるお墓の方向性が悪かったり、五輪塔をお墓として使いたい方は五輪塔をお墓にしています。
納骨方法
五輪塔と一般墓の納骨方法の違いは一つしかありません。五輪塔には水鉢がないため、和型墓石などと同じように、水鉢を外して納骨することができません。もし水鉢を外して納骨したい場合は、注意しましょう。五輪塔をお墓として用いている際の納骨方法は、拝石納骨と納骨蓋からの納骨が一般的です。
価格
五輪塔の値段は、30万~220万円と値段の幅が広く、墓石のサイズや石材、彫刻などのデザインによって変わります。特に、墓石は耐久性の高さや吸水性の低さが大切になり、しっかりと選ばなければなりません。一般墓と五輪塔の値段の差はあまりないので、五輪塔の建墓は、一般墓と同じくらいかかります。
五輪塔についてのまとめ
五輪塔の歴史、構造、一般墓との違いを解説しました。近年、生前墓が注目され、生前に自分のお墓を用意する人が増えています。供養すると、五大に還元され、極楽浄土に至ると言われてる「五輪塔」を建墓してみてはいかがでしょうか。
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