葬儀と確定申告の関係|相続税の控除対象の内容と注意点とは
公開日 : 2020/6/16
更新日 : 2020/9/4
被相続人が亡くなって相続人が財産を相続した時は、定められた期限までに相続税を納付る必要があります。葬儀費用の一部は控除できるため、あらかじめ制度を理解しておけば節税に繋がります。今回は、葬儀における相続税の申告について紹介します。
公開日 : 2020/6/16
更新日 : 2020/9/4
目次
確定申告とは
そもそも確定申告とは何なのかについて、最初にさらいしておきましょう。確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得にかかわる税金(所得税および復興特別所得税)を計算し、申告期限までに税務署に必要書類を提出する手続きのことです。
会社員であれば会社が計算した上で年末調整を行うため、確定申告は必要ありません。自営業やフリーランスとして働いている方、不動産収入がある方、給与所得や退職所得以外の所得が20万円を超える人が対象です。
それとは別に、亡くなった人から財産を相続した時は、相続が開始してから10ヶ月以内に相続税に関する確定申告を行います。今回は、こちらの相続税の確定申告を紹介します。
控除できる費用があれば納税額が安くなる
相続税の確定申告では、相続財産の総額から各種控除を差し引いて残った金額に対して、納税金額が決定します。相続する金額が高ければ高いほど税率が上がってしまうため、いかに節税ができるかは重要な要素です。
節税するためには、できるだけ控除を上乗せし、相続税の課税価格を圧縮することが必要です。のちほど詳しく紹介しますが、葬儀についても一部の項目で控除にできるため、相続税の圧縮につながります。
葬儀代金の相場
一般的に、葬儀代=非常に高いというのがイメージでしょう。相場がいくらくらいなのか、ご存知でしょうか。一般葬や家族葬・密葬など、葬儀の形態や規模によっても異なりますが、ここでは一般的な相場を紹介します。
ネット上の声を合わせると、おおよそ50万円~200万円が葬儀の相場と言われています。一般的には100万円以上はかかると考えておく方がいいでしょう。
これらの費用のうち、一部を相続税の申告から差し引くことができます。節税の恩恵が大きいため、覚えておくことをおすすめします。葬儀後は多忙なため勉強しにくいですから、普段から読み進めておくと良いでしょう。
葬儀代金の一部は控除可能
葬儀代金については、非常に高額と考える方が多いでしょう。しかし、前述の通り、葬儀代金の一部は確定申告の際に申告の対象として節税につなげることもできます。これを知れば、葬儀代に対するイメージが少し変わるのでないでしょうか。
ここでは、相続税の確定申告に控除として使用できる葬儀代、利用できない葬儀代にわけて紹介します。
相続税の控除の対象になる葬儀代
葬儀費用を相続税申告の経費に使えるといっても、全ての項目を控除できるわけではありません。まずは、控除として計上できる葬儀代について紹介します。
葬儀一式の費用
まず最初に、葬儀にかかって費用一式はすべて控除の対象です。通夜・葬儀・告別式にかかった費用や会場使用料など、葬儀社に支払った金額については控除になります。そのほか葬儀社の側で用意したお供え物の費用も対象です。
そのほか、会場設置費や受付をしてくれた人へのお礼の意味を込めた心づけ費用、参列者にお渡しする会葬お礼など、控除に適用できる項目は多岐に渡ります。基本的に「葬儀社とやりとりした費用は控除できる」という覚え方でも良いでしょう。
寺院費用
通夜や葬儀では、お布施という形で僧侶にお金を手渡しするシーンが多くあります。このようなお布施や戒名料をあわせて「寺院費用」と呼び、相続税の計算から控除することが可能です。
そのほか、僧侶に個人的なお礼の意味で手渡すお車代や御膳料もお布施に含まれることから、相続税から控除することができます。
飲食接待費
通夜では通夜振る舞い、葬儀では火葬中の待ち時間などに、参列者に食事をふるまうことがあります。これらは飲食接待費と呼ばれ、相続税から控除できます。そのほか、弔問に来た人にお出しする飲み物代も対象です。
スーパーやコンビニで会葬者用の飲料を買えばもちろん控除できますが、そのほかのルートで購入しても控除が可能です。
火葬費用
これは文字通り、ご遺体の火葬のために使った費用のことです。火葬場の仕様費用のほか、作業員の作業費などが請求にふくまれますが、いずれも控除することができます。そのほか、遺骨の納骨や埋葬に関する費用も経費の対象です。
遺体搬送費用
近年では自宅で亡くなることよりも、病院で亡くなることが一般的です。病院で亡くなった時は、葬儀社の霊柩車などを使って葬儀社や自宅に搬送する必要があります。これらは遺体搬送費用と呼ばれ、経費に含めることができます。
搬送に関わる運転手への費用のほか、病院での遺体の安置費用、死亡診断書の費用も同様です。また、病院から自宅までの搬送費用だけではなく、葬儀社から火葬場への費用も同様に経費になります。
相続税の控除費用にならない葬儀代
紹介した通り、数多くの項目が相続税の控除対象に含まれるのがお分かり頂けたでしょうか。しかし、一方では控除ができない項目も存在します。間違えて計上してしまうと、相続税申告のやり直しになる可能性もあるため、慎重に控除を行う必要があるのです。
今度は、控除として使えない費用について解説します。
香典返し
香典返しとは、香典を頂いた人に対してお返しの意味で菓子などを配ることを指します。この香典返しにかかった費用に関しては、相続税から控除することができません。同じお礼でも会葬お礼は経費になるため、勘違いしないように気を付けましょう。
また、香典返しを行わずに会葬お礼だけを行った場合、こちらが香典返しとして判断される場合があります。その際は会葬お礼でも控除にならないため、注意してください。
法事代
法事とは、葬儀の後に寺院などで故人の冥福を祈るためにお祈りをする行為のことです。四十九日法要のほか、初七日法要も対象です。この法事に関する費用は、葬儀代として控除をすることはできません。
近年では葬儀の後、一緒に初七日方法を行うことが一般的です。同じ日に行う行事でも、葬儀代金は控除できる・初七日法要は控除できないと対応が分かれる点に要注意です。費用については、分けて詳細を残すように葬儀社に相談しておくと良いでしょう。
墓石代
文字通り、故人のお墓を立てるための費用のことを「墓石代」と呼びます。墓石そのものの代金のほか、彫刻代金や建立の費用が該当します。法事と同じく、あくまで葬儀とは別の行事であると考えればわかりやすいでしょう。
葬儀費用を控除するための注意事項
相続税を申告する際は、できるだけ葬儀費用を上乗せさせることで相続税を安くすることができます。その時にもっとも大事になるのは、領収書を取っておくことです。これは通所の確定申告でも同様ですから、覚えておくことをおすすめします。
控除を申告する際、控えとして領収書をとっておくことが絶対に必要です。葬儀社に支払う費用に関しては、必ず領収書をもらってください。僧侶に支払う費用に関しては領収証は出ないため、100均などで「出金伝票」を書いて控えておくと良いでしょう。
万が一、後日に税務署から税務調査が入った時には、領収証が控除の証拠になります。たくさん控除をすると管理が大変ですが、面倒がらずに確実に保管しましょう。
準確定申告とは
相続税の確定申告とは別の流れですが、故人が個人事業主だった場合は「準確定申告」も必要になります。準確定申告は相続税の申告とは内容も期限も違うため、混同しないように気を付けて下さい。
ここでは、被相続人が自営業などで利益を得ていた時の準確定申告の概要について紹介します。
被相続人が事業収入等を得ていた場合に必要
故人が農家や自営業者などの「個人事業主」だった場合は、売り上げは事業収入として確定申告が必要です。1月1日から亡くなるまでの間で発生した事業収入については、相続人が準確定申告を行うことで申告しなければなりません。
確定申告には複式簿記を用いて特別控除を受ける青色申告と、特典なしの白色申告に分けられます。どちらの申告を選んでいるかで申告期限が変わっていくため、あらかじめ知っておかないと期限切れを招きます。
相続税は相続財産から控除分を引いた金額で相続税を計算しますが、準確定申告は事業収入から経費や控除を差し引いて計算します。全く別の手続きであることは覚えておきましょう。
準確定申告の申告期間
原則として、準確定申告は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内」と決められています。相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内ですが、期限が大きく異なる点に注意が必要です。
また、被相続人が1月1日から3月15日までに死亡していて前年分の確定申告書を提出していなかった場合には、2年分の準確定申告が必要です。
バタバタと忙しい時期に、やったことがない準確定申告を行うことは非常に大変です。難しいと感じたら無理をせず、税理士に相談をもちかけるのも1つの方法です。
葬儀にまつわる手続きを把握しておきましょう
今回は、葬儀にかかわる確定申告・準確定申告の手続きについて解説しました。両方とも手続きに難しく感じることがあり、期限ぎりぎりでは間に合わないこともあります。あらかじめ勉強を進め、万が一の時に困らないようにしましょう。
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