アメリカのお墓事情を詳しく解説|土葬から火葬そして新たな埋葬法へ

公開日 : 2020/7/16

更新日 : 2020/9/10

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キリスト教徒が多いアメリカと仏教徒が多い日本では、信仰する宗教が違うということもありますが、お墓事情が異なります。そこで今回こちらでは、アメリカのお墓事情を宗教の違い、墓地の歴史などいろいろな切り口から詳しく解説します。

公開日 : 2020/7/16

更新日 : 2020/9/10

目次

アメリカのお墓

アメリカのお墓と聞いた時、みなさんはどのようなお墓をイメージしますか?実際にアメリカでお墓を目にしたことがあると言う人も多いかもしれません。また、お墓巡りも人気があるため、アメリカ旅行中に有名人のお墓を観光として見たことがあるという人は知っているでしょう。

 

アメリカのお墓を見たことがあるという人以外は、映画のワンシーンや海外のニュースで目にするような平板上の石の上に十字架が置かれていたり、十字架が墓石に刻まれたタイプのお墓ではないでしょうか。

 

もちろんみなさんが想像する通りのお墓が並んでいる墓地もありますが、最近では独創的なお墓が増えているのも事実です。独創的なお墓が並ぶ様子は、まさにお国柄と同じだと印象を受けるでしょう。

 

アメリカのお墓は個人墓

アメリカのお墓は、基本的には故人が一人だけでお墓に入る個人墓です。日本のように、先祖代々が同じ一つのお墓に入る家族墓ではありません。個人墓であるか、家族墓であるかは、お墓の在り方としてはアメリカと日本の大きな違いです。

アメリカと日本の宗教の違い

アメリカと日本とのお墓の違いは、宗教の違いやお墓への埋葬方法の違いが大きく影響しています。ここからは、アメリカと日本で多数を占める宗教の違いを見てみましょう。

アメリカ

アメリカでもっとも信仰者の数が多い宗教は、キリスト教です。同じキリスト教であっても宗派にもよりますが、キリスト教では土葬埋葬が基本です。土葬が基本と言うのは、キリスト教においての死生観が深く関係しています。

 

なぜなら、キリスト教の教えでは故人は死後に再び生き返り、イエス・キリストの手によって最後の審判を受けるとされています。しかし、遺体を火葬してしまっては生き返るための肉体が無くなり、その最後の審判が受けられなくなってしまうと考えられています。

 

1876年にアメリカで初めてルモイーヌ博士によって火葬場がワシントンに作られ、博士自身が初めて火葬を行いました。そして近年では、さまざまな理由から火葬が行われることも多くなりました。

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日本

日本でもっとも信仰者の数が多い宗教は仏教です。日本で火葬が行われるのは、仏教の開祖と言われている釈迦が火葬されたことが影響をしていたり、火葬によって魂を天に送るという考えがあったりということが火葬埋葬の始まりです。

 

火葬が一般的になる明治時代初期までは、日本でも土葬埋葬を一般的に行っていました。その後、一度火葬禁止令が出されましたがすぐに解除され、火葬がさらに普及しました。現在の日本では、法律によって火葬をしなければならないと定められているわけではありません。

 

しかし、自治体ごとに衛生面や墓地としての場所の確保の観点から、土葬をすることに関して細かい取り決めが作られている上に、実際に土葬ができる場所は少ないのが現状です。

アメリカの土葬方法

キリスト教徒が多いアメリカで一般的に行われている土葬の方法について見てみましょう。アメリカのお墓は高さはあまりありませんが、大きいと感じたことがある人も多いでしょう。アメリカのお墓が日本のお墓よりも大きいのは、土葬をするからでもあります。

エンバーミング

1834年にエンバーミングに関するフランス語で書かれた本が英訳され、専門家によって施されるようになったことが始まりです。南北戦争での戦死者である著名な軍人達には、エンバーミングが行われました。エンバーミングができる専門家が少ない上に高額な費用が掛かる時代でした。

 

1870年代になると、葬儀屋がエンバーミングを行うようになりました。この時代は金属製の棺のような箱に氷を入れた遺体の保存方法が行われていましたが、それでも夏場は氷だけでは保存効果が持続せず、葬儀の前に遺体が腐敗することもありました。

 

1878年には薬品会社がエンバーミングの学校を作り、そこで講習を行うとともにエンバーミング用の薬剤が販売されました。これは薬品会社がエンバーミングを普及させるために行ったものです。さらに、1894年にはエンバーミングは免許制となりました。

棺に入れて

アメリカでは遺体をそのまま土葬していましたが、1678年ごろから棺が使われるようになりました。エンバーミング処置を行った遺体を棺に入れます。遺体を入れた棺は墓地へと運ばれます。墓地では、地中深くに棺が収まるサイズの容器がセットされていて、そこへ棺をおさめます。

アメリカでの火葬

キリスト教徒が多きアメリカでも、日本と同じように火葬も行われています。ここからは、アメリカで火葬が行われるようになった理由と、土葬を基本とするキリスト教における近年の火葬についての考えを解説します。

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火葬が行われるようになった理由

ここまででもご紹介したように、土葬が一般的に行われていたアメリカでも火葬が行われることも多くなりました。キリスト教では肉体が残っていることが大切ではあるのですが、火葬が行われるようになったのには理由があります。

 

もちろんアメリカでは昔から火葬が行われていました。それは、住まいから離れた場所で亡くなり、帰省するまでに時間がかかるためでした。しかし、2000年を過ぎてから火葬が行われる理由は、土葬にかかる費用やエンバーミングの費用、土地の問題があげられます。

 

また、アメリカでの火葬は日本とは違い、遺骨というよりも遺灰の状態になるまで火葬されるため、故人が生前に好きだった場所に散骨をしたいと考える人も増えたからです。

キリスト教における火葬

キリスト教の中でも宗派によって埋葬方法に関する違いがあります。最も火葬を禁止する宗派のカトリックでも、長い間その考えは守られてきました。しかし、時代の流れには逆らうことができず、1963年に法王ヨハネス23世は火葬を公認しました。

 

その他の宗派であるプロテスタントは、カトリックよりも比較的早い段階で火葬が行われるようになりました。

アメリカの墓地の歴史

アメリカのお墓事情は、アメリカの墓地の歴史にも関係しています。時代によって左右される部分と、そうではない部分とがあります。アメリカ人の大多数が郊外の住宅地で自然に囲まれて住んでいることからもわかるよに、左右されない部分として、景観があります。

 

ここからは、景観を中心にアメリカの墓地の歴史を見てみましょう。

田園墓地

アメリカのお墓も日本のお墓と同じように、墓石だけのシンプルなお墓から始まりました。植民地時代の墓石は薄く、同じ方向を向いて建てられました。これは、キリストが現れるとされている東側を向けて死者を埋葬していたからです。

 

その後、墓地改革によって郊外に庭園のような美しい田園(庭園)墓地がつくられました。植民地時代の墓地には無かった門や塀で墓地が囲まれたことや彫刻なども飾られた点が、大きな変化です。これは、墓地を郊外に作ったことで、お墓が荒らされることを避ける為でもありました。

 

田園墓地はブームとなり商業的にも成功しました。現在の墓地のモデルとなったのも田園墓地です。お墓が個人の所有物であるという概念もこのころから始まりました。

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公園墓地

墓地の美化運動の影響で、田園墓地からさらに開放感のある公園墓地へと変化しました。田園墓地では、墓地全体を囲む柵以外にも、それぞれのお墓の区画を囲む柵が設けられるようになり、さらにお墓が個人の所有物であるという雰囲気が出ました。

 

しかし、公園墓地ではお墓を囲む生垣や鉄柵を禁じ開放的な空間をつくり、調和を取るためにお墓の装飾や記念碑のデザインには管理者の許可を必要としました。墓地は、アメリカの観光名所や都市公園、屋外の彫刻美術館、植物園の役割をするようになりました。

 

公園が整備されたことで、墓地のある公園が不要になったことや、もともと郊外につくられていた公園墓地も、市街地が拡大するにつれてお墓の引っ越しが必要となりました。壊されたお墓は、ビーチに捨てられ大潮で潮が引くと墓石が現れる場所もあったそうです。

墓地の商業化

アメリカの墓地の商業化が進むと、一見墓地とは分からない景観が広がる墓地が増えました。お墓は高さのあるタイプの墓石ではなく、プレートを埋め込むタイプのお墓が多くなりました。

 

暗いイメージのある墓地を明るいイメージに変えようと、墓地で結婚式を行うなど斬新なアイデアが取り入れられました。

新たな埋葬方法

宗教的な死生観ももちろん大切なことではありますが、火葬も土葬も、どちらも環境にやさしい埋葬方法ではないという考えから、新たな埋葬方法が研究され発表されています。

 

新たな埋葬方法が広まることで、土葬の際に必要なエンバーミング処理で排出される薬剤での地下水汚染や火葬の際に使用する多量の燃料は不要になり、お墓の敷地の確保の問題も解決に向かうと考えられています。

 

ここからは、既に法律で認められた方法とこれから実用化に向けて進められていくであろう方法をご紹介します。

自然還元葬

2019年4月に、アメリカワシントン州で「自然還元葬」に関する法案が可決され、同年5月21日に成立、2020年5月1日に施行されました。自然還元葬は、地球に優しい死体処理とされ、コスト面に関しても土葬と火葬のどちらよりも抑えられるようです。

 

自然還元葬は、遺体を藁やチップなどの自然素材で覆い、3週間から7週間をかけて微生物が分解します。

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プロメッション

プロメッションとは、遺体をマイナス18度で凍らせた後、木製の棺に寝かせた凍った遺体を専用の装置に入れ、さらにマイナス196度の液体窒素に浸して凍結します。その後、遺体と棺に振動を加えると、粗い粉になります。その粉をフリーズドライにする機会にかけて水分を抜きます。

 

この時、歯の治療で使われた金属の詰め物や手術で体内に入れられた金属を除きます。遺体の体重の30パーセントまで水分を抜いた状態で、骨壺よりほ大きな棺に入れて、土の浅い部分に埋める方法のことを言います。

 

こうすることで、約1年で腐植土になると考えられています。この方法はまだ法的に認められてはいませんが、実用化に向けて進んでいます。

歴史を重ね続けるアメリカのお墓事情

個人墓か家族墓だという違いだけでなく、日本とは異なる死生観であることから、日本とはお墓事情が大きく異なることがおわかりいただけたことでしょう。日本以外のお墓事情を知ることで、日本のお墓事情にも興味が湧いてくるのではないでしょうか。