加藤剛さんの葬儀|「大岡越前」など主に時代劇で活躍した名俳優
公開日 : 2020/7/15
更新日 : 2020/9/7
時代劇「大岡越前」で30年という長い間主役を務めた俳優の加藤剛さんが、2018年6月18日に胆のうがんで逝去されました。二枚目俳優としてデビューし、数多くのテレビドラマや映画で活躍した加藤剛さんはどのような人生を歩み、最期を迎えたのかについてご紹介します。
公開日 : 2020/7/15
更新日 : 2020/9/7
目次
加藤剛さんのプロフィール
加藤剛さんは、「大岡越前」や「水戸黄門」などの時代劇や映画「砂の器」など、数多くのテレビドラマや映画で活躍した俳優です。昭和を代表する名俳優である加藤剛さんの歩んだ人生についてご紹介します。
古くからの地主の家に生まれる
加藤剛さんは1985年2月4日、静岡県榛原郡白羽村(現在の御前崎市)で生まれました。実家は古くから続く地主で、自宅の敷地は800坪近くあり、その敷地から続く裏山も保有するなど裕福な家柄でした。幼少期には母の台所仕事や畑でサツマイモや麦などの作物を作る仕事を良く手伝う優しい子供だったことから、近所の人たちからは「坊ちゃん」と呼ばれていたそうです。 父の鉱一郎さんは小学校の校長をしていましたが、加藤剛さんは特にそのことについてはプレッシャーに感じることもなく、両親そして姉4人と兄、弟というたくさんの家族の中ですくすくと育ちました。
中学3年生で地元を離れる
加藤剛さんは、小学校の校長をしていた父から医師になるように勧められ中学3年生の時に上京し、戦争未亡人となり東京都文京区で美容室を営んでいた一番上の姉の家に寄宿しながら東京都立小石川高等学校へ入学します。 元々俳優になろうと思っていたわけではなく、「何か演劇や映画に関する仕事に就きたい」と思っていたという加藤剛さんは、高校時代に所属した柔道部の先輩がお芝居もやっており、その先輩から学園祭のお芝居を手伝うように命じられて舞台に立ったことから、演劇に興味を持つようになったそうで、早稲田大学へ入学後は第二文学部演劇学科で演劇を学び、学内の演劇や自由舞台で活躍したことがきっかけとなり本格的に俳優の道を目指すこととなりました。
早稲田大学在学中に俳優座養成所に入る
学内劇団の演劇活動に打ち込んでいた大学4年生の時、当時平幹二郎さんや仲代達夫さんらが所属し活躍していた「俳優座」の養成所に何と20倍の難関を突破し入所後、13期生として修了し生涯にわたり俳優座に所属し、劇団を代表する俳優の1人として活躍しました。 修了時の同期で「水戸黄門」の初代格さん役で知られる俳優の横内正さんは、初めて養成所で加藤剛さんに会った際、その美男子ぶりに驚いたといい「欠点のない男。こんな二枚目がいるんじゃ、かなわないと思った」というほど、加藤剛さんには養成所時代からスターになる素質があったようです。
22歳でドラマ「人間の條件」で鮮烈デビュー
俳優養成所に入所した翌年の1962年には、無名の俳優を探し求めていたスタッフよりテレビドラマ「人間の条件」の主人公・梶役に抜擢され、大学を1年間休学し、このドラマの撮影に専念しました。 見事鮮烈なデビューを飾った加藤剛さんは、このドラマの原作者である五味川純平さんからは「テレビ映画の優れた主演者」とその演技を高く評価されて一躍脚光を浴びると、1963年には「人間の条件」を観た木下惠介監督から、加藤剛さんの近代的な美貌を気に入られ、「死闘の伝説」でメインキャストに起用され映画デビュー。以降、二枚目俳優として活躍しました。
32歳で、時代劇「大岡越前」の主役に抜擢される
加藤剛さんといえば、やはり1970年から放送が開始された「大岡越前」で主役の大岡忠相役が印象的です。知性的で正義感が強い役どころが人気を博し、以降1999年まで約30年間続くTBSの看板番組の主役として全402話+スペシャル1本に出演しました。 また、『大岡越前最終回スペシャル版』では加藤剛さんの息子で俳優の長男・夏原諒さん、次男・加藤頼さんとの親子共演を果たし話題を呼びました。
「大岡越前」終了後も、時代劇だけではなく現代ドラマや映画の作品に出演
加藤剛さんは時代劇の俳優というイメージが強かったのですが、「大岡越前」の放送終了後は、時代劇はもちろんのこと現代ドラマや映画にも進出し数多くの作品に出演しました。 2000年以降には刑事ドラマに多く出演され、1974年に公開された映画「砂の器」では、冷徹さの裏に苦悩を隠し持つ気鋭の天才音楽家というとても難しい役柄を演じ、加藤剛さんの代表作の一つとなりました。
紫綬褒章の他、多くの賞を受賞した
加藤剛さんは、2001年に「芸術分野で優れた業績を挙げた功労者」として紫綬褒章を受章しています。長年に渡って主役を務めた「大岡越前」などが評価された受章でした。 その他にも、1972年と1992年の2度「紀伊国屋演劇賞」、1992年には「芸術選奨文部大臣賞」、2008年には旭日小勲章を受章しています。旭日小綬章を受賞した時には、「これからの後半をどう生きるかと言うときにこの賞は後押ししてくれるありがたい章だ。」と加藤剛さんは受章の喜びを語っていました。
2018年公開の「今夜ロマンス劇場で」が遺作となった
加藤剛さんの生涯で最後の作品は、「今夜ロマンス劇場で」でした。加藤剛さんは、結末が書かれていない映画の脚本を大切に持っている老人の役を演じました。稲葉直人プロデューサーは映画公開前の取材で、「加藤さんに断られたらこの映画は成立しない……そのぐらい重要な方でした」と語っていましたが、加藤剛さんにしか演じられない素晴らしい演技に、作品を観た人たちは「加藤剛さんの演技が凄い」「加藤剛さんが出演しているだけで作品に重みが出る」など、最期の最期まで素晴らしい演技を見せてくれました。
加藤剛さんの死因は胆のうがんだった
加藤剛さんは、胆のうがんのため都内の病院で亡くなりました。2017年頃には、テレビ出演した際に急激にやせられ心配されていましたが、翌年2018年3月末には体調を崩され、病院を診断しました。結果は「胆のうガン」でした。 「すぐ元気になるから大丈夫だから」と加藤剛さんは治療の為に入院し、一時退院してからわずか3か月後の6月18日に奥さんと2人の息子さんに看取られ逝去されました。父加藤剛さんと同じ俳優座に所属する次男の加藤頼さんは「父は苦しみのない顔でした」とコメントしています。 加藤剛さんは、プライベートではお酒も飲まずタバコも吸わなかったそうで、2007年には厚生労働省の「国民推進会議・健康日本21」に参加するなど、健康には気を遣っていたようです。 遺作となった「今夜ロマンス劇場で」の撮影前加藤剛さんは、「これが最後の映画になるからちゃんと撮ってくださいよ」と言ったといいます。この作品を撮った武内監督は「自分の演技を焼き付けてやるぞと役者魂みたいなのを感じた」とコメントています。 撮影中は体調が悪かったのにも関わらず、体調不良を悟られないように振る舞っていたり、年配だから周囲に気を使わせないようにしていたそうです。 遺作である「今夜ロマンス劇場で」は、加藤剛さんが自分の余命を理解したうえで出演した作品だったことから「俳優としての生涯の全てをこの作品で観てほしい」そんな気持ちが込められた作品となりました。
加藤剛さんの葬儀について
俳優として数多くの作品に出演した加藤剛さんの葬儀はどのようなものだったのか、ご紹介します。
葬儀は家族のみで営まれた
加藤剛さんの葬儀・告別式は、2018年6月28日に喪主を立てずに家族のみで執り行われました。加藤剛さんの訃報についても、遺族の希望で「お別れの会」が決まるまで非公表とされ、葬儀・告別式についても詳しい公表はされませんでした。 加藤剛さんは生前家族でいる時間をとても大切にしており、子供たちが幼少期には京都で撮影があっても必ず週末には自宅に帰り、子供を肩車をして家の中を回ったり、庭でかけっこをしていたそうです。大人になった後も2人の息子たちは父加藤剛さんと同じ俳優となり尊敬していました。最期は、家族だけで温かく見送られたのでしょう。
お別れ会には関係者や一般参列者などおよそ1000人が集まった
加藤剛さんの葬儀は家族のみで行われましたが、お別れの会が2018年6月30日、東京都港区の青山葬儀所で行われました。 加藤剛さんのお別れ会には共演した方たちや俳優座の仲間、ファンなど関係者とおよそ1000人が参列し、最後のお別れをしました。 祭壇には15年ほど前に撮影された笑顔の加藤剛さんの写真が掲げられ、3500本の花が彩りました。会では作品を朗読する加藤剛さんの生前の声を紹介。弔辞を述べた盟友の里見浩太朗さんは「いつも穏やかで優しく、心温かい笑顔が脳裏から離れない」と故人をしのび、映画「忍ぶ川」で共演し養成所時代から親交のある栗原小巻さんも加藤剛さんとの思い出と感謝の気持ちを語りました。 父加藤剛さんと、俳優座で舞台を共にしてきた次男の加藤頼さんが親族あいさつの中で「今日は最後の晴れ舞台。俳優加藤剛をカーテンコールで見送ってください」と参列者に呼び掛けると、場内は大きな拍手に包まれました。
祭壇の花は古郷の茶畑と富士山をイメージ
加藤剛さんのお別れの会の式場に飾られた祭壇は、スプレーマーム、バラ、トルコキキョウ、シネンシス、ドウダンツツジ、ルスカスなど約3500本の花で故郷(静岡県御前崎市)のお茶畑と富士山を表現し、まるで加藤剛さんがふるさとでお芝居をしているかのように飾られました。
加藤剛さんは最期の最期まで役者魂を持ち続けた
生涯俳優一筋の人生を歩んできた加藤剛さんは、最期の最期まで俳優としてのプライドを持ち続けました。改めて名俳優である加藤剛さんのご冥福をお祈りいたします。
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