安部譲二さんの葬儀❘最愛の家族に見守られて迎えた最後の時

安部譲二さんの異色の経歴までは知らずとも、お顔はテレビで拝見したことがあるという人は多いのではないでしょうか。阿部譲二さんの葬儀について紹介をする前に、詳しいプロフィールを見てみましょう。

安部譲二さんは、東京市（現在の東京都）で日本郵船に勤務する父の4人兄弟の末っ子として、裕福な家庭に生まれました。幼少期は父の転勤に伴い、ロンドンやローマで育ちました。ローマの家の裏には動物園の門があり、よく遊びに行っていたそうです。

安部譲二さんがロンドンで過ごしていた頃は、ナチスがロンドンに毒ガスを撒く可能性があり防毒マスクが配布されることもあったそうです。危機一髪のところで日本に帰国した安部譲二さんは、母方の実家のある池田山（現在の品川区五反田）で過ごし、戦時中は疎開も経験しました。

安部譲二さんは、幼少期をロンドンやローマで過ごしたこともあり、英語とイタリア語が堪能でフランス語も少し話せました。のちに、語学が堪能であることが、安部譲二さんの就職に役立つこととなります。

安部譲二さんは、麻布小学校開校以来の神童と呼ばれていました。なぜなら、小学校低学年の時に父親が所有していたシェイクスピアや夏目漱石などの世界文学の全集、世界歴史に大きな影響を与えた歴史書でもある「プルターク英雄伝」などを読破したからです。

安部譲二さんは、進学校として知られている麻布中学校に在学をしていました。麻布中学校の同級生に故・橋本龍太郎元首相がいます。二人は受験番号が一番違いの前後だったことが縁で仲良くなったそうです。

中学校在学中に、江戸川乱歩が編集長を務める推理小説雑誌「宝石」が増刊号として出版される「新鋭28人集」の小説に応募して、見事に入選を果たしました。安部譲二さんが応募した作品名は、「悪血（わるち）」です。内容は成人向けの内容が含まれるものでした。

応募した作品は入選したのですが、中学2年生が書いた作品だと江戸川乱歩が知った結果、「新鋭28人集」に掲載されることはありませんでした。「新鋭28人集」は、27人分の作品が掲載された状態で出版されました。安部譲二さんはこの時、作家デビューし損ねたことになります。

進学校として知られる麻布中学校を卒業した1954年に、既に暴力団安藤組の幹部の舎弟として安藤組の事務所に出入りをしていたという安部譲二さん。16歳の時には正式な暴力団組員でした。当時の安藤組は若者からの支持があり、大学生や高校生の構成員も珍しくはありませんでした。

麻布中学校を卒業した安部譲二さんは、暴力団との関係が発覚し夏祭りで傷害事件を起こしたことで除籍となり、麻布高校への内部進学は叶いませんでした。父親のすすめで幼少期を過ごしたことのあるイギリスに留学するも4ヶ月で退学となり、イギリスから国外退去させられました。

カメラマンになりたいと思っていた安部譲二さんは、カメラマンアシスタントとして欧州を放浪後に帰国しました。帰国後は、慶応義塾高校、逗子開成高等学校、須磨学園高等学校など6校の転校を繰り返しましたが、最終的には7つ目の東京保善高等学校の定時制を22歳で卒業しました。

安部譲二さんが初めて拳銃で撃たれるという経験をしたのは18歳の時です。この時は外国人に拳銃で撃たれたそうです。その後、19歳の時に強盗殺人未遂と銃砲刀剣類所持等取締法違反で逮捕されることになりました。

この時、安部譲二さんは、外国人のところに借金の取り立てに行き、用心棒から殺されそうになり、拳銃と車を奪って逃走したそうです。その結果、懲役2年6カ月、保護観察付の執行猶予5年の有罪判決を受けることになりました。

麻薬及び向精神薬取締法違反の実刑も重なり、日本での服役は4年間ですが、海外での服役も合わせると通算で8年間を刑務所で過ごしました。

食べることが大好きな安部譲二さんは、高校に通いながらレストランで働く中で、クレープシュゼットの作り方をマスターしました。ホテルニューオータニのメニュー会議の中でクレープシュゼットをすることが決まり、作れる人を探している中、安部譲二さんは声をかけられました。

この時代にはまだ英語が話せる人が少なく、そんな中、安部譲二さんは幼少期を海外で過ごしたことから英語が話せ、そのことも有利となったことでしょう。契約をしようと人事課に行くと、そこには自分を捕まえたことのある元警察官ばかりだったそうです。

なぜなら、当時のホテル業界には警察からの天下りが多く、前科があり暴力団組員でもあった安部譲二さんとしては、多くの元警察官と一緒に働くことは出来ないと考えホテルニューオータニへの入社は断念したそうです。

23歳で日本航空へ入社し国際線の客室乗務員として勤務した。しかし、客への暴力や前科3犯である上に執行猶予中であることが判明し、退社することになりました。安部譲二さんは、日本航空に務めた丸4年の歳月が、人生の唯一の晴れがましい思い出であると振り返っています。

退社後はレストランやライブハウスの経営、外車販売、食品加工会社、プロモーター、キックボクシングテレビ解説者など、青年実業家として多くの職業を経験しました。

日本航空へ勤めている間に安藤組は解散となりましたが、小金井一家にヘッドハンティングされ組員となっていました。

安部譲二さんは、海外で前科3犯、国内では前科14犯であった1981年、44歳の時に暴力団から足を洗い、1983年からは小説を書き始めました。しかし、すぐに単行本として出版してくれる出版社は見つからず、不遇の時代を過ごしました。この頃は、競馬予想で食べていたそうです。

そんな中、1986年に4年間の府中刑務所での服役経験を書いた雑誌の連載が文藝春秋の目にとまり「塀の中の懲りない面々」として作家デビューを果たしました。「塀の中の懲りない面々」は、100万部を超えるベストセラーとなりました。

服役の体験がユーモラスに描かれた「塀の中の懲りない面々」は、1987年に藤原也さん主演で映画化されました。それとともに、人気作家としての地位も築かれました。

「塀の中の懲りない面々」が映画化やドラマ化されると、世間で起こった汚職や詐欺などの事件が多発し、それらを新聞が取り上げました。すると人々は繰り返されるこれらの事件のことに対して「懲りない〇〇」と言うようになりました。

このことで、「懲りない〇〇」が流行語大賞の流行語部門で金賞を受賞しました。

1987年には「塀の中のプレイ・ボール」、「極道渡世の素敵な面々」などを執筆し、その後も多数の本を出版しました。

2005年には第22巻で完結となった「RAINBOW-二舎六房の七人-」で、漫画の原作者として第51回小学館漫画賞一般部門を受賞しました。「RAINBOW-二舎六房の七人-」はアニメ化もされました。

橋元元首相などの政財界から作家委の三島由紀夫、元プロ野球選手の江夏豊さんなど各界の著名人とも交流があり、その交友関係の幅広さを武器にテレビでも活躍しました。

安部譲二さんの葬儀・告別式は、本人の意向により喪主を妻である美智子さんが勤め近親者のみで行われました。ファンの方とのお別れの会は、本人の希望により行われていません。

葬儀・告別式が滞りなく執り行われたことは、安部譲二さんのOfficialホームページ「大人気ないオトナ」にて、事務所から報告されています。

安部譲二さんは、2019年9月2日午前1時18分に、東京都内にある自宅で妻の美智子さんが見守る中、急性肺炎のため82歳で亡くなられました。

2015年には大腸がんが見つかり手術を受け、さらに2018年の末に肺への転移が見つかりました。肺への転移が見つかたのと同じころ、散歩中に右大腿骨と右手首の骨折をして東京都内の病院に入院をしていましたが、本人が自宅でのリハビリを希望し、2019年4月に退院しました。

その後、自宅にてリハビリを続けていましたが、8月の末から肺炎を患っており、9月1日に容体が急変し、2日に息を引き取りました。

安部譲二さんの最後の言葉は、妻である美智子さんとの会話です。容体が急変する1日の夜、「ジュースが飲みたい」と言った安部譲二さんに対して、「はい」と返事をして果物ジュースを飲ませてあげたそうです。この言葉が安部譲二さんの最後の言葉となりました。

海外で前科3犯、国内でも前科14犯の元暴力団組員であった安部譲二さん。40歳半ばで暴力団から足を洗い作家を目指し、その夢も実現させました。そんな安部譲二さんの異色の経歴と葬儀について詳しくご紹介しました。