小池一夫さんの葬儀 |「子連れ狼」を手掛けた人気漫画原作者の最期は？

多くの有名漫画家を育成した小池一夫さんがどのような葬儀を迎えたのかについては、興味がある人は多いと思います。小池さんの葬儀の内容をお伝えする前に、まずは小池さんのプロフィールをご説明しましょう。

小池一夫さんは秋田県出身で中央大学法学部を卒業しました。最初は小説家を目指して断念し、その後弁護士になるために司法試験を目指しますが三度失敗するという挫折を味わっています。その後は雀荘・ゴルフ練習場のスタッフや外国航路の船員といった無頼の日々を送ります。この頃の社会経験が後の作品に生かされたのは間違いありません。

そして小池さんは32歳の頃に少年マガジンでさいとうプロダクションが原作者を募集するのを見て応募したところ、採用されました。そして「ゴルゴ１３」などのさいとうたかをさんの原作を任されるようになったのです。

その後は34歳で独立し、小山ゆうさんら漫画家たちと漫画スタジオを立ち上げ、盛んに作品を発表するようになりました。そしてその中から後の小池一夫さんの代表の作品となる大ヒットが生まれたのです。

小池一夫さんが34歳の時に発表した「子連れ狼」は剣の達人の主人公・拝一刀が子供の大五郎を連れて戦うという斬新な時代劇で、映画やテレビドラマにもなって小池さんを代表する作品となりました。主題歌の「しとしとぴっちゃん、しとぴっちゃん」や大五郎の「ちゃーん！」というセリフはとても印象的です。

子連れ狼はその陰惨でバイオレンスと言える作風と、大五郎の乗る乳母車に仕込まれた数々の武器のギミックが人気となり、一大ブームを巻き起こしたのです。子供を連れて戦う父親の姿に共感する子を持つ親御さんも多くいました。

また「子連れ狼」は海外でも出版され、アメリカで最初に成功した日本漫画とされています。アメリカで「子連れ狼」がアイズナー賞・ハーヴェイ賞などの数々の賞を受賞していることからもその評価が伺えます。「子連れ狼」が契機となって、日本漫画が海外に進出するようになったのです。

小池一夫さんは自身の作品だけでなく、後進の指導・育成にもとても力を入れていました。41歳の時に「小池一夫劇画村塾」を開設して新人漫画家の育成を始めています。

この塾では、「うる星やつら」の高橋留美子、「北斗の拳」の原哲夫、「グラップラー刃牙」の板垣恵介、「ドラゴンクエスト」の堀井雄二、「桃太郎電鉄」のさくまあきらと言った数々の非常に著名なクリエイターを育成しました。

小池一夫さんが高橋留美子さんの師であることは特に有名で、結婚をさせてあげられなかったことが唯一の後悔だという発言はよく引用されます。

こういった有名な漫画家やゲームクリエイターの「師匠」として若い世代の間でも認知されていたので、Twitterでは80万人以上のフォロワーを獲得し、そこでの発言の多くが注目されるなど、その死の直前までサブカルチャー界の重鎮として君臨していたのです。

小池一夫さんは創作論として「キャラクター原論」を提唱し、ストーリーよりもまずキャラクターを立てることをモットーに始動を行ってきました。その指導術により、キャラクターの魅力による大ヒットを生み出した著名クリエイターを多く育成できたのです。

また小池一夫さんはネットのニコニコ生放送で他の業界人との対談を行っています。「魔法少女まどか☆マギカ」の原案で、キャラクターよりもストーリーを重視する虚淵玄さんと、キャラクター重視の立場から意見交換をしたことで話題になりました。

小池一夫さんは大阪芸術大学芸の教授として招聘され、キャラクター 造形学科の学長に就任し、政府の「知的財産戦略本部」にも参画するなど、その活動は高い社会的評価を受けています。

そして国内の評価だけでなく海外でもファンは多く、小池さんの創作技法はクエンティン・タランティーノ、ジョン・ウーと言った有名なアクション映画監督に影響を与えています。

海外でも多くの賞を受賞し、「漫画のアカデミー賞」と言われるアイズナー賞で殿堂入りを果たしています。他に殿堂入りを果たした日本人は手塚治虫・大友克洋・宮崎駿と言った大物ばかりであり、そういった方々と同等の評価を受けているのです。

「子連れ狼」という大ヒットを生み出し、著名な漫画家を育成した小池一夫さん。その葬儀はどういったものだったのでしょうか。多くの業界人とファンに囲まれながら、盛大な葬儀が取り行われたのでしょうか。

小池一夫さんが肺炎により82歳で死去した後、その葬儀はご本人の意志により、近親者のみの小規模な葬儀で行われました。その死の公表は自身のTwitterでご遺族が簡潔に伝えるだけで済ませています。

これはとても意外に感じます。小池さんのような多くの弟子を持ち、ファンを沢山持っている著名人であれば、一般参加ができる盛大なお別れの会を催すのが普通に感じます。

ご自身の葬儀のやり方について小池さんが残された意志の詳細は不明ですが、小池さんはおそらく死ぬ時は身内の親しい間柄だけにして、忙しい弟子たちを葬儀で煩わせることはしたくなかったのでしょう。多忙の業界人だった小池さんらしい最期と言えるのではないでしょうか。

小池一夫さんは2019年4月17日に亡くなりましたが、その死の当日のツイートがTwitter上に今でも残っています。その最後のツイートは同年の4月11日に亡くなられた「ルパン三世」の作者、モンキー・パンチさんの死を悼む内容でした。

小池さんはツイートでかつてのライバルであり、共に合作もしたモンキー・パンチさんを懐かしく振り返っていましたが、その当日にご自身も後を追う様に亡くなられました。二人の漫画界の大物が亡くなったこの月は、長く記憶にとどめるべきでしょう。

また同じ日に、嫌いな人や嫌いな事を攻撃したり失礼な態度を取ったりしてはならない、嫌いなら関心を持たないようにしなさいという戒めもツイートしています。亡くなるその当日までネットメディアで後進の指導を行っていた小池さんは、根っからの指導者と言えるでしょう。

小池一夫さんの業績とその葬儀についてお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。小池さんほどの偉大な業績を残された方でも、その最期はとても質素であったことは意外に受け取られたと思います。冠婚葬祭は簡潔に済ませるのが業界人スタイルなのかもしれませんね。